学位論文要旨



No 124881
著者(漢字) 久木,基至
著者(英字)
著者(カナ) ヒサギ,モトユキ
標題(和) 心筋梗塞後心室中隔破裂に対する新しい外科治療 : 拍動下リアルタイム三次元心エコーガイド下中隔閉鎖術
標題(洋)
報告番号 124881
報告番号 甲24881
学位授与日 2009.03.23
学位種別 課程博士
学位種類 博士(医学)
学位記番号 博医第3301号
研究科 医学系研究科
専攻 外科学専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 教授 矢作,直樹
 東京大学 特任教授 許,俊鋭
 東京大学 講師 本村,昇
 東京大学 特任准教授 宇野,漢成
 東京大学 講師 竹中,克
内容要旨 要旨を表示する

目的:心筋梗塞後の心室中隔破裂は比較的稀な疾患ではあるが、生命にかかわる合併症である。保存的治療では心不全に陥り、死亡する確率が非常に高い。従って、外科的治療が必要になるものの、早期の外科治療をもってしてもいまだに死亡率が高く、待機的外科治療では待機中に死亡し手術に至らない患者も多い。そこで本実験では、心室中隔破裂に対する新しい外科的手法を考案しその可能性を評価する。

方法:本実験の心内操作はすべてリアルタイム三次元超音波(RT3DE) (iE33, Philips Medical Systems, Andover, MA)を使用し、そのガイド下に施行する。6頭の豚を用い、全身麻酔後胸骨正中切開を置き、エコープローベを直接心臓の表面に当てる。右室自由壁に小切開を置き、6頭すべてに直径5-10mm程度の心室中隔欠損(VSD)を作成する。欠損孔の大きさおよび位置をRT3DEにて評価する。カラードップラーを用いてVSDのflowがあることも確認する。その後RT3DEガイド下に小切開を置いた右室の自由壁からAmplatzer(AGA Medical Corp, Golden Valley, Minn)のシースを挿入し、VSDを通過させ、Amplatzerのディスクを左-右の順で開きVSDを閉鎖。Amplatzerと中隔との位置関係をRT3DEにて確認した後、Amplazterをリリースする。左室造影をVSDの閉鎖前後に撮影し、VSDのflowおよび閉鎖後の遺残シャントの有無を確認する。カラードップラーエコーにても同様にVSDの遺残シャントの有無を確認する。

結果:実験はすべての豚にて問題なく施行された。VSDはそれぞれの豚にて同定することができ、RT3DEガイド下にAmplatzerにて確実に閉鎖することができた。デバイスの不具合や空気の引き込みなどは生じなかった。左室造影およびカラードップラーエコーにても6頭すべてにおいて遺残シャントは認められなかった。

結論:リアルタイム三次元超音波ガイド下にAmplatzerを用いて、人工心肺を使用することなく安全に心室中隔欠損孔を閉鎖することができた。この新しい外科的手技を心筋梗塞後心室中隔破裂の治療に応用することにより、従来の外科的閉鎖術に比べ低侵襲でできるため、周術期の死亡率を減らすことができるのではないかと考えている。

審査要旨 要旨を表示する

本研究の目的は、比較的稀ではあるものの、生命にかかわる合併症である心筋梗塞後の心室中隔破裂に対する新しい外科的手法を考案しその可能性を評価するものである。

本実験の心内操作はすべてリアルタイム三次元心エコー装置(RT3DE) (iE33, Philips Medical Systems, Andover, MA)を使用し、そのガイド下に施行する。6頭の豚を用い、右室自由壁に小切開を置き、心室中隔欠損(VSD)を作成後、欠損孔の大きさおよび位置をRT3DEにて評価した。2Dカラードップラーを用いてVSDのflowがあることも確認した。その後RT3DEガイド下に小切開を置いた右室の自由壁からAmplatzer(AGA Medical Corp, Golden Valley, Minn)を用いてVSDを閉鎖。Amplatzerと中隔との位置関係をRT3DEにて確認した後、Amplazterをリリース。左室造影をVSDの閉鎖前後に撮影し、VSDのflowおよび閉鎖後の遺残シャントの有無を確認。2D カラードップラーエコーにても同様にVSDの遺残シャントの有無を確認した。

実験の結果、すべての豚にて問題なく施行された。VSDはそれぞれの豚にて同定することができ、RT3DEガイド下にAmplatzerにて確実に閉鎖することができた。デバイスの不具合や空気の引き込みなどは生じなかった。左室造影および2D カラードップラーエコーにても6頭すべてにおいて遺残シャントは認められなかった。

以上より、リアルタイム三次元心エコーガイド下にAmplatzerを用いて、人工心肺を使用することなく安全に心室中隔欠損孔を閉鎖することができた。この新しい外科的手技を心筋梗塞後心室中隔破裂の治療に応用することにより、従来の外科的閉鎖術に比べ低侵襲でできるため、周術期の死亡率を減らすことができるのではないかと考えている。

以上、本論文はリアルタイム三次元心エコー装置およびAmplatzerを用いることにより、心室中隔欠損孔を低侵襲かつ安全確実に閉鎖できることを明らかとし、これを心筋梗塞後心室中隔破裂の治療に臨床応用することにより、救命率を上げることができると考えられ、学位の授与に値するものと考えられる。

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