学位論文要旨



No 125027
著者(漢字) 佐藤,薫
著者(英字)
著者(カナ) サトウ,カオル
標題(和) カイコ無翅突然変異体flugellosの原因遺伝子の同定と解析
標題(洋) Identification and functional analyses of the responsible gene for a wing-deficient mutant, flugellos (fl) of the silkworm, Bombyx mori
報告番号 125027
報告番号 甲25027
学位授与日 2009.03.23
学位種別 課程博士
学位種類 博士(生命科学)
学位記番号 博創域第445号
研究科 新領域創成科学研究科
専攻 先端生命科学専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 教授 藤原,晴彦
 東京大学 教授 山本,一夫
 東京大学 教授 三谷,啓志
 東京大学 教授 後藤,由季子
 東京大学 教授 嶋田,透
内容要旨 要旨を表示する

序論

完全変態昆虫の翅は、幼虫の間は翅原基という未分化な組織として体内に存在し、脱皮・変態の際に昆虫ホルモンであるエクジソンに応答して組織分化が進行し、翅が形づくられていく。昆虫の翅形成の分子機構に関してはショウジョウバエを中心に研究が進められてきたが、パターン形成機構のみに着目したものが多く、昆虫ホルモンとパターン形成との関連はほとんど明らかになっていない。

本研究で用いた、カイコ無翅突然変異体flugellos(fl)は、カイコ連鎖地図の第10連鎖群13.0にマップされる劣性の自然突然変異体で、4つの複対立形質が報告されている。fl(劣性ホモ個体)の翅原基は4齢幼虫時まではほぼ正常に発生するが、5齢(終齢)期に入ると本来起こるべき形態形成が進行せず、flの蛹と成虫には翅が生じない[図1,図2A]。一方、flは翅以外には目立った異常は見られない。flでは、エクジソンに応答して発現誘導される初期後期遺伝子BHR3や後期遺伝子Urbainの発現が翅原基特異的に低下するなど、変態時のエクジソン応答に異常がみられ、このため、翅原基の組織分化が進行せず、翅が形成されないことが示唆されている。このflの原因遺伝子と機能が明らかになれば、昆虫ホルモンと翅のパターン形成との接点を見出すことができるとともに、昆虫の翅形成機構について進化発生学的に重要な知見が得られると期待される。そこで、本研究ではまずflの原因遺伝子を同定することにした。

[1].flの原因遺伝子の同定

f1は独立に4つの変異系統(fl,flk,fln,flo)が得られている。先行研究で、flkではfl遺伝子座と同一染色体上に存在する遺伝子AnnexinB13(AnxB13)を含む200kb以上のゲノム領域が欠失していることが示唆されていたが、その欠失範囲は決定されていなかった。また、カイコBACライブラリーを利用して、AnxB13を起点としたゲノムウォーキングが途中まで進められており、その過程で、AnxB13近傍にはLRPL、NOS、NSLの3つの遺伝子が存在していることが示唆されていた[図2B]。

私は、まず、これら3つの遺伝子に着目し、flkゲノムでの欠失や他のfl系統での変異を解析した。その結果、いずれもflkゲノムでの欠失がみられたが、flやfln系統では欠失やナンセンス変異などの目立った変異がみられなかった。そこで、これまで同定していない欠失範囲内に真のflの原因遺伝子があるのではないかと考え、W-1遺伝子(KMO)までのBACクローンを新たに単離して配列解析を行った[図2A,B]。その結果、flkの欠失領域の左端に相当する箇所に、Notchシグナルの制御に関わるショウジョウバエfringe(fng)のオーソログ(eombyxmorifng、以下Bmfng)が存在することを見出した[図2B]。それぞれのfl系統について、Bmfngの変異を明らかにしたところ、flkはゲノム中からBmfngの一部を含む領域が欠失した変異体であった[図2B]。また、fl、flo、flnの転写産物をRT-PCRで調べた結果、いずれも欠失や挿入によるフレームシフト突然変異が生じていることが判明した[図2C]。fngは、糖転移酵素をコードし、fl、flo、flnなどのフレームシフト突然変異体ではこの酵素の機能に重要とされるDxDモチーフを含む前に翻訳終結してしまうため、分子的な機能を完全に欠損していると考えられる。これらの結果から、Bmfngがflの原因遺伝子であることが強く示唆された。

Bmfngの各組織での発現を半定量RT-PCR法で解析したところ、翅原基で特に強い発現がみられ、さらにホールマウントin situ hybridization(WMISH)法で発現パターンを調べたところ、翅原基の背側領域で特異的に発現していることが明らかとなった[図3A]。ショウジョウバエ翅原基の背腹区画境界でのNotchシグナルの下流にあるwingless(wg)の誘導にはfngが必要であることが知られている。そこで、wgのオーソログ(Bmwnt1)の発現をWMISH法により野生型とflの翅原基で比較した結果、野生型カイコではBmwnt1が背腹区画境界で発現していたが、刀ではほとんど検出されなかった[図3B]。このことから、カイコ翅形成においてもBmfngがNotchシグナルによるBmwnt1の誘導に必要で、flの翅原基ではNotchシグナルが正常に活性化されておらず、翅の背腹軸形成とそれに続く組織分化が正常に進行していないと考えられた。

[2].Bmfngのエクジソン応答性の解析

f1の翅はエクジソンに応答して発生しないことから、その原因遺伝子はエクジソン応答カスケードと何らかの関連性をもつと考えた。そこで、野生型カイコの翅原基をエクジソン添加(+20E)・無添加培地(-20E)でinvitro培養し、Bmfngの発現を半定量RT-PCRを用いて調べた。その結果、Bmfngがエクジソンによって発現誘導されることがわかった[図4A]。さらに、タンパク質合成阻害剤(シクロヘキシミド)存在下では、この誘導が抑制されることから、Bmfngの発現誘導はエクジソンによる間接的な制御によることがわかった[図4B]。

flでBHR3の発現が翅特異的に低下していることは以前から示されていたが、経時的な発現変動については詳細に解析されていなかった。そこで、in vitro培養したfl翅原基でBHr3の経時的な発現誘導パターンを調べた結果、エクジソン添加後3時間程度でみられる発現誘導は野生型カイコとほぼ同じだったが、その後の発現上昇が起こらないことが明らかになった[図4C]。エクジソンによるBmfngの発現誘導が、BHR3などの初期後期遺伝子の発現上昇にとって重要である可能性が考えられる。本研究により、エクジソンによるBmfngの発現制御を介して、翅のパターン形成に重要なNotchシグナル経路とエクジソン応答カスケードが連関している可能性が示された。

[3].カイコの組織分化におけるfng依存的Notchシグナル

Notchシグナルは生物種を越えて保存された細胞間シグナル伝達系であり、様々な組織の発生過程で重要な役割を果たしている。fngはNotchタンパク質の細胞外ドメイン内O-フコース型糖鎖をグリコシル化することで、Notchのリガンド分子との結合性を変化させ、最終的にNotchシグナルの下流に影響を及ぼす。ショウジョウバエではfng依存的なNotchシグナルが様々な組織の正常な発生分化に必須で、機能欠損型のfng変異体は致死になる。上述したようにカイコのflではBmfngは機能欠損しているにも関わらず、翅の発生のみが異常となる。両者の違いはどのように生じるのだろう?

一つの可能性として、カイコでは翅原基以外の組織でもショウジョウバエと同様の発生機構が働いているが、翅原基以外の組織ではBmfng以外の遺伝子がNotchのO-フコース型糖鎖修飾を行っているということが考えられる。この可能性を検証するために以下の実験を行った。まず、RT-PCR法により翅原基以外の組織でのBmfngの発現を解析したところ、脳や脚、触角原基、精巣、卵巣でも翅原基と同様強く発現していた。次に、糖鎖構造が明らかとなっている哺乳動物のNotchオーソログであるNotch1のO-フコース型糖鎖構造[図5A]を参考に、その糖鎖を特異的に認識するいくつかのレクチンを用いて、カイコのNotchタンパク質の糖鎖構造を解析した。その結果、野生型カイコの翅原基において、Notchタンパク質と思われる約300kDaのタンパク質が糖鎖修飾を受けていることが示唆された[図5B]。これに対し、flでは、この糖鎖修飾を表すシグナルがほとんど検出されなかった。さらに、翅原基と同様Bmfngの強い発現がみられた脳・脚・触角原基・精巣・卵巣の解析したすべての組織においても、野生型カイコではシグナルが検出されたのに対し、flではシグナルがほとんど検出されず、これらの組織すべてにおいてNotchのO-フコース型糖鎖修飾が少なくとも大幅に減少していることが示された[図5C]。以上の結果から、fngは翅原基以外の組織においても発現し、NotchのO-フコース型糖鎖修飾に関して主要な役割を果たしていること、さらに、fngの機能を代替する機能をもつ因子が存在する可能性が低いことが示唆された。また、カイコゲノムデータベース上でも、BmFngタンパク質と相同性の高いタンパク質をコードする遺伝子は見つからない事実は、上記の結果と一致する。

第二の可能性として、カイコでは翅原基以外の組織の発生分化がショウジョウバエとは大きく異なり、翅以外の組織ではNotchシグナルが働いていない、あるいは、fng依存的なNotchシグナルの代わりにfngの機能に依存しないNotchシグナルが使われていることが考えられる。この可能性を検証するために、様々な組織におけるNotchシグナルの活性化の状況を解析した。ショウジョウバエでは、Enhancer of split[E(spl)]遺伝子群の発現がNotchシグナルによって直接制御されており、Notchシグナルが活性化されると、様々な組織で少なくともいくつかのE(spl)遺伝子の転写が誘導されることが知られている。

カイコゲノムデータベースを検索したところ、4つのE(spl)遺伝子が存在することがわかった。まず初めに、これらのE(spl)がNotchシグナルによって発現制御されているかを検証するために、Notchシグナル阻害剤(DAPT)の存在・非存在下で翅、脳、脚をin vitro培養し、半定量RT-PCR法によりE(spl)遺伝子群の発現を解析した。その結果、DAPT存在下ではE(spl)遺伝子群の発現が抑制されており、カイコにおいてもE(spl)遺伝子群がNotchシグナルの活性化によって発現誘導されることが示唆された。次に、翅原基や脳、脚に加え、触角原基、精巣、卵巣におけるE(spl)遺伝子群の発現を半定量RT-PCR法により解析し、野生型カイコ(+/fl)とfl個体(fl/fl)で比較した。その結果、野生型カイコでは解析したすべての組織においてE(spl)遺伝子群の発現がみられたのに対し、flでは、翅原基(WD)におけるE(spl)遺伝子群の発現がほとんどみられなかったが、それ以外の組織においては野生型と同様の発現がみられた[図6]。以上の結果から、翅原基を含むすべての組織でNotchシグナルが活性化されているが、翅原基ではfng依存的なNotchシグナルが主要なNotchシグナルであるのに対し、それ以外の組織ではfng非依存的なNotchシグナルが主要なNotchシグナルであることが示唆された。このことが、flで翅以外に目立った異常がみられないことの大きな要因となっていると考えられ、翅以外の組織については、カイコとショウジョウバエで異なる機構によって発生することを示唆している。

結論

本研究において、私は、flの原因遺伝子としてBmfngを同定した。さらにBmfngの発現がエクジソンで誘導されることを見出し、Bmfngの発現制御を介して、Notchシグナルとエクジソン応答カスケードがクロストークしている可能性を初めて示した。一方、翅の発生機構がショウジョウバエとカイコである程度保存されていることが示された。しかし、翅以外め組織分化においては両者で異なる機構が介在している可能性が高い。ショウジョウバエでは成虫組織は幼虫期にimaginaldiscとして存在するが、カイコを含む多くの完全変態昆虫の幼虫では翅がwingdiscとして存在する以外、他の組継は幼虫組織のprimordiaとして発生分化する。このような発生様式の違いとNotchシグナルの活性化機構になんらかの関連があるとすれば興味深い。本研究により得られた結果は、昆虫類における組織の発生機構の保存性と多様化を考える上で、非常に重要な足がかりとなる。

図1.野生型カイコ(WildType)と変異体(fl)の成虫

図2.fl遺伝子座のゲノム構造と各fl系統におけるBmfng遺伝子の変異Aカイコ連鎖地図第10連鎖群。B.fl遺伝子座のゲノム構造。灰色はflkゲノムの欠失範囲を示す。C.fl,flo,flnにおけるbmfngの変異。fl,floはexon3に相当する領域が欠失しており、flnはexon2-3が重複していることでフレームシフトが生じる。黒域はORFを示し、▼ はエクソンジャンクション、*はストップコドンを示す。

図3.カイコ翅原基におけるBmfngとBmwnt1の発現パターン(WMISH)A.野生型カイコ翅原基でのBmfngの発現パターン切片で観察したところ、背側領域でのBmfngの発現がみられた。B.野生型カイコ(Wildtype)、fl変異体(fl)翅原基でのBmwnt1の発現それぞれの発現パターンを右に図示した。flでは背腹区画境界でのBmwnt1の発現がみられなかった。

図4。カイコ翅原基におけるBmfngのエクジソン(20E)応答性(半定量RT-PCR)A.カイコ翅原基のin vitro培養系を用いたBmfngの20E応答解析B.シクロヘキシミド(CHX,10μg/ml)存在下におけるカイコ翅原基のin vitro培養系を用いたfngの20E応答解析C.カイコ翅原基のin vitro培養系を用いたBHR3の20E応答解析●,野性型カイコ;○,fl変異体;直線,+20E(2μ9/ml);点線,-20E;*P<0.005;,**P<0.05;n=3-5.

図5.レクチンを用いたfl個体における糖鎖上の検出A.哺乳動物Notch1のO-フコース4糖構造とMAM、RCA1、LotusAレクチンの認識部位。Sia,シアル酸;Gal,ガラクトース;GlcNAc,N-アセチルグルコサミン;Fuc,フコースを示す。FngはFucにβ1,3結合でGlcNAcを付加する。B.MAM,RCA1、LotusAのレクチンを用いて解析したとき、fl変異体(fln)では約300kDaのタンパク質(Notch)に糖鎖異常が検出された(矢印)。C.翅原基を含むいくつかの組織におけるMAMレクチンプロット及び抗Notch抗体(allotch)を用いたウエスタンブロット。fl変異体(fl)では翅原基以外の組織でもNotchの糖鎖に異常が生じている(矢印)。WD,翅原基;BR,脳;1G,脚;ANT,触角;TS,精巣ov,卵巣。

図6,Notchシグナルの標的遺伝子E(spl)の発現解析(半定量RT-PCR)翅原基を含むいくつかの組織におけるE(spl)の発現を野生型(+/fln)、fl変異体(fln/fln)それぞれ解析した。翅原基以外の組織では浮変異体(fnl/fnl)でもNotchシグナルの活性化が起きている。WD,翅原基;BR,脳;LG脚;ANT,触角;TS,精巣;OV,卵巣

審査要旨 要旨を表示する

本論文は3章からなり、第1章はカイコ無翅突然変異体flugellos(fl)の原因遺伝子の同定について、第2章は刀の原因遺伝子Bmfngのエクジソン応答性の解析及びfl翅原基におけるエクジソン応答異常の解析について、第3章はカイコの翅などの組織分化におけるfng依存的Notchシグナルの必要性についての解析、について述べられている。

本研究で用いたflは、カイコ連鎖地図の第10連鎖群13.0にマップされる劣性の自然突然変異体で、4つの系統が報告されている。flの翅原基は終齢期以降の形態形成が進行せず、flの蛹と成虫には翅が生じない。また、flではエクジソンに応答して発現誘導される初期後期遺伝子BHR3などの発現が翅原基特異的に低下するなど、変態時のエクジソン応答に異常がみられ、このため、翅原基の組織分化が進行せず、翅が形成されないことが示唆されている。このflの原因遺伝子と機能が明らかになれば、昆虫ホルモンと翅のパターン形成との接点を見出すことができると考えられた。そこで、まずflの原因遺伝子をポジショナルクローニングによって同定することにした。先行研究で、4つの刃系統のうち、flkゲノムではfl遺伝子座と同一染色体上に大規模な欠失があり、flの原因遺伝子はこの欠失内に存在すると考えられた。そこで、カイコBACライブラリーを用いてゲノムウォーキングを行い、がゲノムの欠失内に存在する遺伝子を枚挙し、それぞれのfl系統での変異を解析した。その結果、Notchシグナルの制御に関わるfringe(fng)遺伝子(Bmfng)に、すべてのfl系統で欠失などの機能欠損型の変異がみられた。これらの結果から、Bmfngがflの原因遺伝子であると結論付けた。

flの翅はエクジソンに応答して発生しないことから、Bmfngはエクジソン応答カスケードと何らかの関連性をもつと考えた。そこで、翅原基のin vitro培養系を用いてBmfngのエクジソン応答性を調べたところ、Bmfngがエクジソンによって誘導されることがわかった。エクジソンによるBmfngの発現誘導が、BHR3などの初期後期遺伝子の発現促進にとって重要であると考えられる。本研究により、エクジソンによるBmfngの発現制御を介して、翅のパターン形成に重要なNotchシグナルとエクジソン応答カスケードが連関していることが示された。

Notchシグナルは生物種を越えて保存された細胞間シグナル伝達系の一つであり、様々な組織の発生過程で重要な役割を果たしている。fngはNotchタンパク質のO-フコース型糖鎖をグリコシル化することで、Notchとリガンドとの結合性を変化させ、最終的にNotchシグナルの下流に影響を及ぼす。ショウジョウバエではfngの糖鎖修飾の機能に依存したNotchシグナルが様々な組織の正常な発生分化に必須であり、機能欠損型のfng変異体は致死になる。一方、カイコのflではBmfngは機能欠損しているにも関わらず、翅のみが異常となる。両者の違いが生じる可能性として二つ考えられた。一つの可能性は、カイコでは翅原基以外の組織でもショウジョウバエと同様の発生機構が働いているが、翅原基以外の組織ではBmfng以外の遺伝子がNotchのO-フコース型糖鎖修飾を補填することでシグナル伝達自体が正常に駆動しているということ、第二の可能性は、カイコでは翅原基以外の組織の発生分化がショウジョウバエとは大きく異なり、fng依存的なNotchシグナルの代わりにfngの機能に依存しないNotchシグナルが使われていること、である。第一の可能性を検証するため、レクチンを用いてflの様々な組織におけるNotchタンパク質の糖鎖異常を解析し、第二の可能性を検証するため、翅原基を含む様々な組織におけるNotchシグナルの活性化の状況を野生型カイコとflとで比較解析した。その結果、flの翅以外の組織では、Notchタンパク質の糖鎖修飾は行われていないにもかかわらず、Notchシグナル自体は野生型カイコと同程度に活性化していた。このことから、翅原基ではfng依存的なNotchシグナルが主要であるのに対し、それ以外の組織ではfng非依存的なNotchシグナルが主要であることが示唆された。このことが、flで翅以外に目立った異常がみられない大きな要因となっていると考えられ、翅以外の組織については、カイコとショウジョウバエで異なる機構によって発生することを示唆している。

なお、本論文第1章は、松永朋子、二橋亮、小嶋徹也、三田和英、伴野豊との共同研究であるが、論文提出者が主体となって分析した及び検証を行ったもので、論文提出者の寄与が十分であると判断する。

したがって、博士(生命科学)の学位を授与できると認める。

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