学位論文要旨



No 125361
著者(漢字) キルカヤック,レベント
著者(英字) KIRKAYAK,Levent
著者(カナ) キルカヤック,レベント
標題(和) コンテナスタックの動的挙動の数値的および実験的解析
標題(洋) NUMERICAL AND EXPERIMENTAL ANALYSIS OF CONTAINER STACK DYNAMICS
報告番号 125361
報告番号 甲25361
学位授与日 2009.09.28
学位種別 課程博士
学位種類 博士(環境学)
学位記番号 博創域第523号
研究科 新領域創成科学研究科
専攻 人間環境学専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 准教授 鈴木,克幸
 東京大学 教授 都井,裕
 東京大学 教授 粟飯原,周二
 東京大学 教授 吉村,忍
 東京大学 講師 渡邉,浩志
内容要旨 要旨を表示する

The objective of this study is to understand the dynamic behavior of container stack on deck, during marine cargo transportation via a systematic study of the effect of the parameters such as rotation, frequency, gap and weight. These parameters effect are involved in such situation, where adverse loading conditions play role in response. However investigation of physics of this problem and validation of higher order dynamics, effect of twistlock gaps, lashing systems etc. cannot be implemented easily. This study is goaled to analyze container stack dynamics fundamentally to avoid container loss problem with Numerical and experimental studies. Numerical model is verified with experimental results and the validation of this numerical model and gained insights that taken from experimental results play an important milestone to implement analysis of a more complex problem and understand the dynamics of stack more and help to avoid container loss problem.

審査要旨 要旨を表示する

コンテナ船の大型化に伴い、港での荷役作業も長時間化の傾向にある。FAT (フルオートマティック・ツイストロック)と呼ばれる新しいラッシング金物の導入や、ラッシングバー等の軽量化により、荷役効率の改善、荷役時間の短縮が期待される。現在の船級規則では、最近の技術であるFATについては安全評価基準が実際上定められておらず、ユーザーであるオーナー自身がメーカーの情報に基づいて、ないしは自身の技術評価を行なう評価する必要がある。FATによる固縛は、港湾での荷降ろし時にロック解除作業が不要である反面、航海中にも、万が一、コンテナを上に引き上げるのと同等の力がかかればロック解除状態になる懸念がある。船体の大型化によって、従来のローリングやピッチングといった剛体運動に加えて、スラミングによる船体のウィッピングや、船体の捩れといった弾性体挙動が荒天時には引き起こされ外力あるいは加速度も剛体運動によるものに加わるが、これによってコンテナスタックがどのような挙動を示すか、といった問題についてはこれまでにほとんど検討が行われておらず、その挙動の基本的な特性を知る必要がある。本論文は、このこれまでほとんど扱われていない新しい問題に対して、スケールモデルを用いた実験、および非線形数値シミュレーションに基づき評価する手法を開発することを目的としている。

本論文は7章からなり、第1章は研究の背景や、研究の目的の説明である。第2章は提案した1/4スケールモデルの詳細、その満たすべき相似則、および等価な剛性を持たせるための構造設計法に関して議論している。第3章は実験に関する説明で、震動台と測定法、実験条件の説明と、実験結果の評価について議論している。第4章は数値シミュレーションについての説明で、コンテナスタック、ツイストロックのモデル化、シミュレーション手法、およびシミュレーションの結果について議論している。そして、第5章において総合的な議論を行い、動的な影響の評価、コンテナの剛性の影響の評価、ツイストロックのガタの大きさの評価、船体のヒールの影響の評価などを行っている。また、6章において簡略化したモデルを提案し、その有効性の評価を行っている。第7章は結論であり、論文のまとめを行っている。

これまで、コンテナスタックのスケールモデルによる実験は行われたことがなく、今回のツイストロックとコンテナのスケールモデルは、論文提出者が主体となって模型の設計まで行ったものであり、実験条件などの選定も論文提出者が行った。また、コンテナスタックの相似則も過去に提案されたことはなく、論文提出者が独自に考案したものであり、新規性は非常に高いと考えられる。また、従来の震動台における実験では加速度計が用いられてきたのに対し、今回の実験ではガタや隣り合うスタック間の衝突により衝撃的な加速度が発生し、加速度の計測では問題があるため、提出者が高速度カメラの画像による測定を独自に考案し、実施したものである。本論文において行われている実験は、(株)MTIとの共同研究として行われているが、論文提出者が主体的に計画し行ったもので、寄与は十分にある。

また、コンテナユニットのモデルとして、実際のコンテナの詳細構造にあわせて詳細メッシュ分割することなく、主な剛性を合わせた簡易モデルによって表現する方法を提案し、ツイストロックのモデル化も非線形バネとして非常に簡単に表現する方法を提案している。そして、そのモデルが実験とよく一致することを示している。この面でも論文の新規性は高い。

さらに、加振周波数や振幅、ガタの大きさ、コンテナの剛性の影響を検討するため、簡易的な2次元モデルを提案し、将来的な拡張を提案している。

これまでのコンテナの剛性などの規則は、基本的にローリングによる静的な荷重に基づいて行われているが、スラミングによる船体のウィッピングなどの荷重を正しく評価するためには、加速度による慣性力や、ツイストロックのガタや隣り合うコンテナスタックの衝突による荷重など動的な影響の評価が不可欠である。特に、ガタやスタック間の衝突による衝撃的な荷重が重要になると考えられるが、これらは非常に非線形性の強い現象で、解析には非線形有限要素法を用いた高度な解析技術が必要になる。この研究は、コンテナ船における固縛の評価、規則制定のための重要な一歩であり、コンテナ船における安全なコンテナ輸送のための社会的にも大きな意義を持った研究である。

したがって、博士(環境学)の学位を授与できると認める。

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