学位論文要旨



No 126097
著者(漢字) 渡辺,悦郎
著者(英字)
著者(カナ) ワタナベ,エツロウ
標題(和) 肝臓・腎臓特異的な有機アニオントランスポーター基質のファーマコフォア解析・三次元定量的構造活性相関解析
標題(洋)
報告番号 126097
報告番号 甲26097
学位授与日 2010.03.24
学位種別 課程博士
学位種類 博士(薬学)
学位記番号 博薬第1362号
研究科 薬学系研究科
専攻 生命薬学専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 教授 杉山,雄一
 東京大学 教授 嶋田,一夫
 東京大学 准教授 楠原,洋之
 東京大学 准教授 池谷,裕二
 東京大学 特任准教授 樋坂,章博
内容要旨 要旨を表示する

【序論】

医薬品の主要な代謝・排泄器官である肝臓・腎臓には多数のトランスポーターが発現しており、さまざまな内因性・外因性物質の輸送を行っている。このうち、organic anion transporting polypeptide (OATP) 1B1/SLCO1B1およびOATP1B3/SLCO1B3、organic anion transporter (OAT) 1/SLC22A6およびOAT3/SLC22A8は、それぞれ肝、腎特異的に発現する有機アニオントランスポーターであり、OATP1B1とOATP1B3は肝細胞の類洞膜側に、OAT1とOAT3は腎近位尿細管上皮細胞の側底膜側に発現し、血液中から組織内への薬物の取り込みに重要な役割を果たす(図1)。当研究室の解析によると、この組織内への取り込みは医薬品の循環血中からの消失経路を決定づける重要なステップである。同じ組織に発現するOATP1B1とOATP1B3の基質選択性が重複しているのに対して、OAT1とOAT3の基質選択性には一部重複が見られるものの、OAT1はOAT3に比べて腎特異的な分布を示す極性の高い低分子アニオン性化合物の輸送活性が顕著に高く、反対にOAT3はbulkyなアニオン性化合物の輸送活性が高い。OAT3は、OATP1B1、OATP1B3とも基質選択性が重複しており、肝腎両組織へ分布する薬物の特性を説明することができる。また、肝胆系輸送はアニオン性薬物の肝排泄メカニズムとして重要な経路であり、OATP1B1やOATP1B3により肝細胞内取り込まれたのち、胆管側膜に発現するトランスポーターMRP2により、胆汁中へと排泄される。このように、生体内ではアミノ酸配列はまったく異なるものの、基質選択性が類似したトランスポーターが連携することで、効率的な異物排泄システムを形成している。トランスポーターの基質選択性・輸送活性は医薬品の体内動態に深く関わっていることから、その輸送活性を制御することで、医薬品の標的組織選択的な送達、あるいは排泄経路の制御など医薬品体内動態の最適化につながる。しかし、これらトランスポーターは複数回膜貫通型の構造をとり、その立体構造は明らかにされていないため、現状では構造に基づいたドラッグデザインは困難である。一方で、異物排泄に関わるトランスポーターは基質認識特性があいまいであり、多様な構造的特徴を有する化合物を多数基質とすることから、Km 値や輸送活性の異なる化合物の情報を複数得ることができる。そこで、ligand-based drug design の手法を用いて、薬物トランスポーターの基質認識を合理的に説明できるモデルの構築と、医薬品の体内動態最適化法として薬物トランスポーターのin silico スクリーニング法の開発を目的として研究を行った。

【方法と結果】

本研究では、基質となる薬物に共通する構造的特徴が存在することを仮定し、トランスポーター基質のファーマコフォア解析、三次元定量的構造活性相関としてComparative Molecular Field Analysis (CoMFA)解析を行った。

1.活性値としてKm 値を用いた解析

トランスポーターの基質認識部位周辺の環境の手掛かりを得るため、基質のトランスポーターに対する親和性に関連したパラメータであるミカエリス定数(Km 値)を活性値として用いた。Km 値はHEK293 細胞発現系を用いた輸送実験もしくは文献値により求め、OATP1B1、OATP1B3、OAT3 それぞれで13、16、15 個の化合物をモデル構築のための学習セット化合物とした。分子配座解析プログラムCAMDAS により生成した各基質のエネルギー極小配座集団を、6 種類の物理化学的特性球(水素結合受容、水素結合供与、水素結合受容/供与、疎水性、芳香環、ハロゲン)の三次元的な配置として表し、分子重ね合わせプログラムSUPERPOSE により各基質の配座集団同士を重ね合わせた。重ね合わせの手法としては、まず高活性の3 化合物の配座集団の総当たり的な重ね合わせにより、重なりの良好な配座集団を選び出した。最高活性の化合物の選ばれた配座集団をさらに他の化合物の配座集団と次々と重ね合わせ、配座の選び出しを繰り返し、配座の組み合わせを20~40 パターン程度に絞った。それら全てのパターンについて、三次元定量的構造活性相関の一手法であるCoMFAを行った。活性予測式の良否はcross-validated r2 (q2) 値により判断した。最もq2 値の高いパターンを最適パターンとして選び、推定される結合配座と活性予測式を得る手法を確立した。OATP1B1、OATP1B3、OAT3 基質のCoMFA の結果、3 つのトランスポーターのいずれについても高いq2 値が得られた (表1) 。また、各トランスポーターについて、全基質の結合配座に共通して重なっていた物理化学的特性球の三次元配置を、そのトランスポーターの基質群のファーマコフォアとした (図2)。OATP1B1、OATP1B3 基質のファーマコフォアは水素結合受容球1 つ、疎水性球3 つから構成され、互いに類似していた。一方、CoMFA 等高線図では、OATP1B1 基質とOATP1B3 基質のモデルは異なっていた (図2)。ファーマコフォアモデルでは、OATP1B1 とOATP1B3 間の基質認識における類似性が反映され、さらにCoMFA 等高線図において、特異性を見出すことができた。一方、OAT3 のファーマコフォアモデルは水素結合受容球1 つ、疎水性球2 つから構成され、OATP と比較して疎水性球が1 つ少ないという結果が得られた。OAT3 はOATP と比較して分子量が小さく極性の高い化合物を基質とする傾向があることを反映していると考えられる。さらに、競合阻害を仮定してKm 値とKi 値は同程度の値であるとみなし、Ki 値を用いてCoMFA 活性予測式の検証を行った (図3) 。OATP1B1、OATP1B3、OAT3 それぞれで8、2、2 個の化合物を用いて検証を行ったところ、OATP1B1、OATP1B3 に関しては、実測値と予測値は比較的良好な予測性が得られた。一方OAT3 に関しては、2 個中1 個の化合物で実測値と予測値が一致していた。OATP1B3、OAT3 については検証セット化合物数が少ないため、今後さらに化合物数を増やして検証することが必要である。

2.活性値としてVmax/Km 値を用いた解析

In silico スクリーニングへの応用のため、輸送活性(Vmax/Km 値)を活性値として用いた三次元定量的構造活性相関解析、ファーマコフォア解析を行った。Vmax/Km 値はトランスポーター発現細胞を用いて実測し、OATP1B1、OATP1B3、OAT3 それぞれで13、16、14 個の化合物を学習セット化合物とした。CoMFA の結果、q2 値は、いずれのトランスポーターにおいても有意だとされる0.3 を超える値が得られた (表1)。ファーマコフォア解析の結果、OATP1B1、OATP1B3 基質のファーマコフォアはいずれも水素結合受容球1 つ、疎水性球3 つから構成され、また互いに類似していた。一方、OAT3 基質のファーマコフォアは水素結合受容球1 つ、疎水性球2 つから構成され、OATP のモデルと比較して疎水性球が1 つ少なかった (図4)。以上のファーマコフォアモデルの結果は、活性値としてKm 値を用いた解析結果と同様である。一方、CoMFA 等高線図においては、OATP1B1 とOATP1B3 間で特異性は見られず、類似した結果が得られた(図4)。OATP1B1、OATP1B3、OAT3 それぞれで6、7、8 個の検証セット化合物を用いてCoMFA 活性予測式の検証を行ったところ、OATP1B1、OAT3 については実測値と予測値は比較的近い値が得られた。OATP1B3 についてもmethotrexate を除いて妥当な結果が得られた。

これまでのCoMFA の結果をまとめると、肝排泄型、もしくは肝排泄が優位な化合物についてはOATP1B1、OATP1B3、OAT3 による予測値は妥当であった。腎排泄型の化合物で、OAT3 が取り込みに関与するものについては、OAT3の輸送活性予測値は概ね妥当だが、OATPの予測値は検証できていないため、肝腎振り分けのin silico予測精度については今後の検討課題だと考えている。腎排泄型の化合物で、主にOAT1が取り込みに関与する化合物 (2,4-dichlorophenoxyacetate、adefovir、cidofovir、p-aminohippurate、tenofovir) の特性球の配置は、OATP1B1、OATP1B3、OAT3基質のファーマコフォアとは重ならない。したがって、OAT1が取り込みに関与する腎排泄型薬物は判別可能である。

MRP2により胆汁排泄を受ける化合物は、OATPの学習セット化合物に4化合物含まれていた。また、MRP2により胆汁排泄を受ける7化合物 (olmesartan、SN-38、E3040 glucuronide、grepafloxacin glucuronide、HSR-903、glycyrrhizin、taurolithocholate sulfate)の特性球配置はOATP1B1、OATP1B3のファーマコフォアと重なり、かつOATP1B1、OATP1B3による輸送活性予測値を得た。

【まとめと考察】

CAMDAS、SUPERPOSE、CoMFAを組み合わせた、トランスポーター基質の三次元定量的構造活性相関モデル、ファーマコフォアモデルを構築する手法を確立した。多様な構造を有する有機アニオン系化合物を基質として認識する3つのトランスポーターについて、一義的に収束する有意なCoMFAモデルを得ることに成功した。この手法は他のトランスポーターにも応用可能である。同定したファーマコフォアモデルにより、基質とはならない化合物を容易に識別することが可能になる。CoMFAモデルによる検証は概ね正しいことが示されたが、予測が外れる場合もあり、今後さらに学習データとして用いる化合物構造の多様性を増やしていくことで精度を高めていくことが可能だと考えている。本研究により、OATP1B1、OATP1B3、OAT3の基質選択性を反映したファーマコフォアモデル、CoMFAモデルを構築することができた。また、in silicoスクリーニングに関して、CoMFAモデルを用いることで、肝排泄型ならびに肝排泄優位型医薬品の判定が可能なこと、ファーマコフォアモデルにより、OAT1が関与した腎排泄型医薬品を判定することができることを示した。MRP2基質がOATP1B1/OATP1B3基質のファーマコフォアを満たすことから、in silicoによっても両トランスポーター間での基質選択性の類似性が示唆された。OATPによる肝排泄型・肝排泄型医薬品の輸送活性予測は達成できていることから、本知見はOATPとMRP2が連携したin vivo胆汁排泄をin silicoで定量的に予測できることを示している。

本研究によりアニオン性薬物の組織分布の肝腎振り分け、胆汁排泄を定量的に予測可能なCoMFAモデルを構築することができた。本モデルは、医薬品開発において候補化合物の体内動態最適化に貢献するものと考えている。

図1.アニオン性医薬品ノ排泄経路の肝臓振り分けに働くトランスポーター群

表1.CoMFAの結果

図2.活性値としてKm値を用いたOATP1B1, OATP1B3, OAT3基質のファーマコフォアモデル、CoMFA等高線図(BSPの構造と共に示した)

図3.Km値とvmax/Km値モデルにおける実測値-計算値相関図

図4.活性値としてvmax/Km値を用いたOATP1B1, OATP1B3, OAT3基質のファーマコフォアモデル、CoMFA等高線図(BSPの構造と共に示した)

審査要旨 要旨を表示する

医薬品の主要な代謝・排泄器官である肝臓・腎臓には多数のトランスポーターが発現している。肝臓に発現するorganic anion transporting polypeptide (OATP) 1B1/SLCO1B1およびOATP1B3/SLCO1B3、腎臓に発現するorganic anion transporter (OAT) 3/SLC22A8は血液中から組織内への取り込みに特に重要な役割を果たしている。OATP1B1、OATP1B3、OAT3は基質選択性が重複しており、これらトランスポーターにより、肝腎両組織へ分布する薬物の特性を説明することができる。また、肝胆系輸送はアニオン性薬物の肝排泄メカニズムとして重要な経路であり、OATP1B1やOATP1B3により肝細胞内へ取り込まれたアニオン性薬物は、胆管側膜に発現するトランスポーターMRP2により胆汁排泄を受ける。このように、生体内では異なるファミリーに属するにも関わらず基質選択性が類似したトランスポーターが連携することで、効率的な異物排泄システムを形成している。トランスポーターの基質選択性・輸送活性は医薬品の体内動態に深く関わっていることから、その輸送活性を制御することで、医薬品の標的組織選択的な送達、あるいは排泄経路の制御など医薬品体内動態の最適化につながる。しかし、膜タンパクであるトランスポーターの立体構造は明らかにされていないため、現状では構造に基づいたドラッグデザインは困難である。一方で、多様な構造的特徴を有する化合物を多数基質とするトランスポーターに関する基質の情報は複数得られている。

以上の背景において、申請者は、ligand-based drug designの手法であるファーマコフォア解析、三次元定量的構造活性相関Comparative Molecular Field Analysis (CoMFA)解析を用いて、薬物トランスポーターの基質認識を合理的に説明できるモデルの構築と、医薬品の体内動態最適化法として薬物トランスポーターのin silicoスクリーニング法の開発を目的として本研究を遂行した。以下に詳細を示す。

【本論】

1.活性値としてKm値を用いた解析

申請者は、トランスポーターの基質認識部位周辺の環境の手掛かりを得るため、基質のトランスポーターに対する親和性に関連したパラメータであるミカエリス定数(Km値)を活性値として用いた。Km値はHEK293細胞発現系を用いた輸送実験もしくは文献値により求め、OATP1B1、OATP1B3、OAT3それぞれで13、16、15個の化合物をモデル構築のための学習セット化合物とした。分子配座解析プログラムCAMDASにより生成した各基質のエネルギー極小配座集団を、6種類の物理化学的特性球(水素結合受容、水素結合供与、水素結合受容/供与、疎水性、芳香環、ハロゲン)の三次元的な配置として表し、分子重ね合わせプログラムSUPERPOSEにより各基質の配座集団同士を重ね合わせた。高活性の3化合物の配座集団の総当たり的な重ね合わせにより、重なりの良好な配座集団を選び出した。選ばれた最高活性の化合物の配座集団をさらに他の化合物の配座集団と次々と重ね合わせ、配座の選び出しを繰り返し、配座の組み合わせを20~40パターン程度に絞った。それら全てのパターンについて、三次元定量的構造活性相関の一手法であるCoMFAを行った。活性予測式の良否はcross-validated r2 (q2) 値により判断した。OATP1B1、OATP1B3、OAT3基質のCoMFAの結果、3つのトランスポーターのいずれについても高いq2値を示す結合配座ならびに活性予測式を得た。全基質の結合配座に共通して重なっていた物理化学的特性球の三次元配置を、そのトランスポーターの基質群のファーマコフォアとすると、OATP1B1、OATP1B3基質のファーマコフォアは水素結合受容球1つ、疎水性球3つから構成され、互いに類似していた。一方、CoMFA等高線図では、OATP1B1基質とOATP1B3基質のモデルは異なり、特異性を見出すことができた。一方、OAT3のファーマコフォアモデルは水素結合受容球1つ、疎水性球2つから構成され、OATPと比較して疎水性球が1つ少ないという結果が得られた。OAT3はOATPと比較して分子量が小さく極性の高い化合物を基質とする傾向があることを反映していると考察している。申請者はさらに、Ki値を用いてCoMFA活性予測式の検証を行ったところ、OATP1B1、OATP1B3に関しては、実測値と予測値は比較的近い値が得られ、精度の高い活性予測式であることを示している。一方OAT3に関しては、2個中1個の化合物で実測値と予測値が一致していた。OATP1B3、OAT3については検証セット化合物数が少ないため、今後さらに化合物数を増やして検証することが必要である。

2.活性値としてVmax/Km値を用いた解析

申請者は、in silicoスクリーニングへの応用のため、輸送活性(Vmax/Km値)を活性値とした解析を行った。Vmax/Km値はトランスポーター発現細胞を用いて実測し、OATP1B1、OATP1B3、OAT3それぞれで13、16、14個の化合物を学習セット化合物とした。CoMFAの結果、q2値は、いずれのトランスポーターにおいても有意だとされる0.3を超える値が得られた。ファーマコフォア解析の結果、OATP1B1、OATP1B3基質のファーマコフォアはいずれも水素結合受容球1つ、疎水性球3つから構成され、また互いに類似していた。一方、OAT3基質のファーマコフォアは水素結合受容球1つ、疎水性球2つから構成され、OATPのモデルと比較して疎水性球が1つ少なかった。ファーマコフォアモデルの結果は、活性値としてKm値を用いた解析結果と同様である。一方、CoMFA等高線図においては、OATP1B1とOATP1B3間で特異性は見られず、類似した結果が得られた。得られたCoMFA活性予測式の検証を行ったところ、OATP1B1、OAT3については実測値と予測値は比較的近い値が得られた。OATP1B3についても1化合物を除いて妥当な結果が得られた。

CoMFAの結果をまとめると、肝排泄型、もしくは肝排泄が優位な化合物についてはOATP1B1、OATP1B3、OAT3による予測値は妥当であった。腎排泄型の化合物で、OAT3が取り込みに関与するものについては、OAT3の輸送活性予測値は概ね妥当だが、OATPの予測値は検証できていないため、肝腎振り分けのin silico予測精度については今後の検討課題だと申請者は考えている。腎排泄型の化合物で、主にOAT1が取り込みに関与する化合物の特性球の配置は、OATP1B1、OATP1B3、OAT3基質のファーマコフォアとは重ならない。したがって、OAT1が取り込みに関与する腎排泄型薬物は判別可能である。

MRP2により胆汁排泄を受ける化合物は、OATPの学習セット化合物に4化合物含まれていた。また、MRP2により胆汁排泄を受ける7化合物の特性球配置はOATP1B1、OATP1B3のファーマコフォアと重なり、かつOATP1B1、OATP1B3による輸送活性予測値を得た。

以上本研究により、申請者はCAMDAS、SUPERPOSE、CoMFAを組み合わせた、トランスポーター基質の三次元定量的構造活性相関モデル、ファーマコフォアモデルを構築する手法を確立した。さらに、多様な構造を有する有機アニオン系化合物を基質として認識する3つのトランスポーターについて、一義的に収束する有意なCoMFAモデルを得ることに成功した。同定したファーマコフォアモデルにより、基質とはならない化合物を容易に識別することが可能になった。CoMFAモデルを用いることで、肝排泄型ならびに肝排泄優位型医薬品の判定が可能なこと、ファーマコフォアモデルにより、OAT1が関与した腎排泄型医薬品を判定することができることを示した。MRP2基質がOATP1B1/OATP1B3基質のファーマコフォアを満たすことから、OATPとMRP2が連携したin vivo胆汁排泄をin silicoで定量的に予測できることを示した。

本研究により、申請者はアニオン性薬物の組織分布の肝腎振り分け、胆汁排泄を定量的に予測可能なCoMFAモデルを構築することに成功した。以上の成果は、医薬品開発において候補化合物の体内動態最適化に貢献するものと考えており、博士(薬学)の学位を授与するに値するものと認めた。

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