No | 127293 | |
著者(漢字) | 渡邊,恵佑 | |
著者(英字) | ||
著者(カナ) | ワタナベ,ケイスケ | |
標題(和) | 操縦マニピュレーションにおける接触運動の学習に基づく操作支援の研究 | |
標題(洋) | ||
報告番号 | 127293 | |
報告番号 | 甲27293 | |
学位授与日 | 2011.03.24 | |
学位種別 | 課程博士 | |
学位種類 | 博士(情報理工学) | |
学位記番号 | 博情第331号 | |
研究科 | 情報理工学系研究科 | |
専攻 | 知能機械情報学専攻 | |
論文審査委員 | ||
内容要旨 | 本論文は、操縦によるマニピュレーション作業を対象とし、操縦操作の試行自体から操縦を補助する機構を生成することによって操縦操作を支援し操作内容の改善を図っていく手法と、それを実現するための操縦マニピュレーションシステムについて扱っている。 以下、論文の各章ごとにその概要を述べる。 第1章では、研究の背景として、非整備環境におけるロボットによる作業に対する要求の高まりと、その手段としての操縦手法の重要性を挙げている。そのうえで、環境との接触を伴うマニピュレーションを対象とし、操縦操作の試行自体によって操作補助機構を生成するシステムを構築する、という研究の目的について述べている。 第2章では、操縦マニピュレーションにおいて操作支援手法が求められていることを示し、従来研究として仮想拘束を利用した支援手法や操作の抽象化に基づく支援手法をとりあげ、それらの内容と問題点について述べている。そして、本研究における前提・制約条件を明らかにしたうえで、従来研究の問題点を解決するために、以下の要素から構成される手法を提案している。(1)操縦マニピュレーションシステム (2)操縦モード切り替えによる操縦手法 (3)操作補助機構生成手法 (4)操作補助機構を利用した操縦手法 (5)操作補助機構の適応機能。 第3章では、操縦マニピュレーションシステムについて、その要求機能を整理したうえで、マニピュレータのハードウェアを(a)並進・回転運動をそれぞれアームと手首が分担して行う「並進・回転分担型マニピュレータ」 (b)並進3自由度の受動コンプライアンスを持ち、手首とグリッパの間に挿入される「並進コンプライアンス機構」 (c)把持力を機械的に維持できる「3本指平行グリッパ」、の各要素によって構成したことを示す。さらに、マニピュレータ以外の構成要素である操縦入力・力覚提示装置やミドルウェア群を含む操縦マニピュレーションシステム全体をどのように実装したかについて述べる。 第4章では、複数の操縦モードを切り替えて操作を行う手法の詳細について述べる。具体的には、操縦モードは「並進位置指令モード」、「回転角度指令接触操作モード」、「並進位置指令・回転倣い制御モード」の3つからなり、タスクの進行状況や接触反力に応じてこれらを手動または半自動で切り替えるものである。この手法によって、環境との接触を伴う回転操作が一定の条件下で可能となることを示している。 第5章では、第4章で述べられている操縦モード切り替えによる操作によって実施された1回の試行(以下、基準試行と呼ぶ)から得られるデータのみから、以降の操縦を補助するための操作補助機構を生成する手法を提案している。操作補助機構は、仮想拘束軌道と関節運動学習から構成される。これらを利用することにより、操縦モード切り替えを行わずに基準試行と同等の操作を行うことが可能となる。 第6章では、基準試行と異なる条件下で操作補助機構を利用して操作を行う場合について扱っている。基準試行と異なる初期条件下での試行においては、生成された操縦補助機構をそのまま適用したのでは操作を完遂できない場合がある。また、操作を完遂できたとしても、作用する反力が増大することも多い。そのような状況への対処法として、自動修正操作と反力抑制補償の2つの要素からなる操作補助機構適応手法を提案している。 第7章では、第4章から第6章にかけて述べた手法の有効性を確かめるために実施した操作支援実験について、その詳細と結果を述べている。実験では、具体的なタスクとしてpeg-in-holeを対象とし、5名の被験者が参加した。これまでに述べた手法について検証するため、各手法に対応して、(I)操縦モード切り替えによる試行(基準試行) (II)操作補助機構を利用した試行 (III)操縦による修正操作試行 (IV)自動修正操作を用いた試行 (V)反力抑制補償を用いた試行、の5つの試行を実施した。これらの一連の実験を通して、第2章で提案した操縦支援手法について、操縦モード切り替えによる操作、操作補助機構の生成、およびそのタスク内分散への適応という各要素に関し、対象タスクにおいてそれぞれ有効に機能することが確認され、これにより、操縦支援手法全体としてもその有効性を示すことができたとしている。 第8章では、本研究の成果および意義をまとめたうえで、将来の課題を示し、本研究の結論としている。 | |
審査要旨 | 本論文は、操縦によるマニピュレーション作業を対象とし、操縦操作の試行自体から操縦を補助する機構を生成することによって操縦操作を支援し操作内容の改善を図っていく手法と、それを実現するための操縦マニピュレーションシステムについて扱っている。 第1章では、研究の背景として、非整備環境におけるロボットによる作業に対する要求の高まりと、その手段としての操縦手法の重要性を挙げている。そのうえで、環境との接触を伴うマニピュレーションを対象とし、操縦操作の試行自体によって操作補助機構を生成するシステムを構築する、という研究の目的について述べている。 第2章では、操縦マニピュレーションにおいて操作支援手法が求められていることを示し、従来研究として仮想拘束を利用した支援手法や操作の抽象化に基づく支援手法をとりあげ、それらの内容と問題点について述べている。そして、本研究における前提・制約条件を明らかにしたうえで、従来研究の問題点を解決するために、以下の要素から構成される手法を提案している。(1)操縦マニピュレーションシステム (2)操縦モード切り替えによる操縦手法 (3)操作補助機構生成手法 (4)操作補助機構を利用した操縦手法 (5)操作補助機構の適応機能。 第3章では、操縦マニピュレーションシステムについて、その要求機能を整理したうえで、マニピュレータのハードウェアを(a)並進・回転運動をそれぞれアームと手首が分担して行う「並進・回転分担型マニピュレータ」 (b)並進3自由度の受動コンプライアンスを持ち、手首とグリッパの間に挿入される「並進コンプライアンス機構」 (c)把持力を機械的に維持できる「3本指平行グリッパ」、の各要素によって構成したことを示している。さらに、マニピュレータ以外の構成要素である操縦入力・力覚提示装置やミドルウェア群を含む操縦マニピュレーションシステム全体をどのように実装したかについて述べている。 第4章では、複数の操縦モードを切り替えて操作を行う手法の詳細について述べている。具体的には、操縦モードは「並進位置指令モード」、「回転角度指令接触操作モード」、「並進位置指令・回転倣い制御モード」の3つからなり、タスクの進行状況や接触反力に応じてこれらを手動または半自動で切り替えるものである。この手法によって、環境との接触を伴う回転操作が一定の条件下で可能となることを示している。 第5章では、第4章で述べられている操縦モード切り替えによる操作によって実施された1回の試行(以下、基準試行と呼ぶ)から得られるデータのみから、以降の操縦を補助するための操作補助機構を生成する手法を提案している。操作補助機構は、仮想拘束軌道と関節運動学習から構成されており、これらを利用することにより、操縦モード切り替えを行わずに基準試行と同等の操作を行うことが可能になるとしている。 第6章では、基準試行と異なる条件下で操作補助機構を利用して操作を行う場合について扱っている。基準試行と異なる初期条件下での試行においては、生成された操縦補助機構をそのまま適用したのでは操作を完遂できない場合があり、また、操作を完遂できたとしても、作用する反力が増大することも多いため、そのような状況への対処法として、自動修正操作と反力抑制補償の2つの要素からなる操作補助機構適応手法を提案している。 第7章では、第4章から第6章にかけて述べた手法の有効性を確かめるために実施した操作支援実験について、その詳細と結果を述べている。実験では、具体的なタスクとしてpeg-in-holeを対象とし、5名の被験者が参加した。これまでに述べた手法について検証するため、各手法に対応して、(I)操縦モード切り替えによる試行(基準試行) (II)操作補助機構を利用した試行 (III)操縦による修正操作試行 (IV)自動修正操作を用いた試行 (V)反力抑制補償を用いた試行、の5つの試行を実施している。これらの一連の実験を通して、第2章で提案した操縦支援手法について、操縦モード切り替えによる操作、操作補助機構の生成、およびそのタスク内分散への適応という各要素に関し、対象タスクにおいてそれぞれ有効に機能することが確認され、これにより、操縦支援手法全体としてもその有効性を示すことができたとしている。 第8章では、本研究の成果および意義をまとめたうえで、将来の課題を示し、本研究の結論としている。 以上、本論文は環境との接触を伴う操縦マニピュレーションを対象として、操縦操作の試行自体によって操作補助機構を生成し、さらに試行を通して補助機構の適応を行うことで操作を支援するという手法を提案し、それを実現するシステムを構築するとともに、実験によってその有効性を実証したものであり、情報理工学分野に貢献するものであると判断される。 よって本論文は博士(情報理工学)の学位請求論文として合格と認める。 | |
UTokyo Repositoryリンク |