No | 127451 | |
著者(漢字) | 劉,邦安 | |
著者(英字) | ||
著者(カナ) | リュウ,バンアン | |
標題(和) | 群杭挙動に関する模型実験 | |
標題(洋) | Model tests on behavior of group pile | |
報告番号 | 127451 | |
報告番号 | 甲27451 | |
学位授与日 | 2011.09.27 | |
学位種別 | 課程博士 | |
学位種類 | 博士(工学) | |
学位記番号 | 博工第7537号 | |
研究科 | 工学系研究科 | |
専攻 | 社会基盤学専攻 | |
論文審査委員 | ||
内容要旨 | 構造物の基礎を構成する杭の挙動は、地盤と構造物の相互作用の研究テーマとして代表的なものの一つであり、古くから多くの研究例が知られている。しかしそれらの多くが解析的なものであって実証性に乏しいか、現場測定であって地盤の条件が不確かなものが、大半である。また、一本の杭という単純化を行ったがゆえに、現実に使われる多数杭(群杭基礎と呼ぶ)の挙動が軽視されてしまって来た。そのような実情に鑑み、本研究は群杭の挙動と周辺地盤との相互作用を実験的に検討した。内容は二部に分かれ、地震時に液状化地盤流動の影響を受ける群杭とその防護、鉛直載荷を受ける群杭の支持力発現機構を取り扱っている。前者では地盤流動荷重が群杭内部で分配される状況を測定し、それを応用して既設構造物の群杭基礎の耐震補強方法を提案した。また後者では杭周辺の土圧分布や変位分布を観察し、新たな支持力計算手法を提案している。 | |
審査要旨 | 構造物の基礎を構成する杭の挙動は、地盤と構造物の相互作用の研究テーマとして代表的なものの一つであり、古くから多くの研究例が知られている。しかしそれらの多くが解析的なものであって実証性に乏しいか、現場測定であって地盤の条件が不確かなものが、大半である。また、一本の杭という単純化を行ったがゆえに、現実に使われる多数杭(群杭基礎と呼ぶ)の挙動が軽視されてしまって来た。そのような実情に鑑み、本研究は群杭の挙動と周辺地盤との相互作用を実験的に検討した。内容は二部に分かれ、地震時に液状化地盤流動の影響を受ける群杭とその防護、鉛直載荷を受ける群杭の支持力発現機構を取り扱っている。 本論文は全8章からなっている。以下、逐次、章ごとに内容を紹介する。 第1章は、上述のような研究意義の紹介である。 第2章では、先行研究の文献をレビューしている。最近の研究では最大11×11の大型群杭基礎を用いて液状化地盤の側方流動問題を調べた例があり、群杭内部の荷重分担についても議論がある。しかし分担の詳細なメカニズムについては調べきれておらず、その継続として本研究が行われた。鉛直載荷の問題では1971年に大規模な現場実験が行われて以来、杭と地盤の相互作用を詳しく調べた研究が無い。むしろ杭先端付近の砂粒子の破砕の問題に、興味の中心が移ったようである。本研究では1971年には出来なかったような、杭と地盤の相互作用の問題を、実験的に詳細に調べることとした。 第3章は、重力場の振動台模型の加振による地盤流動と杭との相互作用実験の方法を説明している。緩傾斜地盤の中に群杭を設置し、これを加振・液状化させた。群杭の配置としては、3×3の正方形配置を基本とし、2×4の配置、地盤流動方向に一列に配置したケース、同じく流動と直行して一列に配置、3×3の群杭の前方に防護用の杭を追加設置したケースなどがあり、また杭間の距離を変化させて、相互作用の程度に差を生じさせている。 第4章は前章の実験結果の提示と分析である。傾斜地盤中の過剰間隙水圧の時刻変化を見ると、水圧上昇過程の次に低下があり、その後再び上昇して地盤が流動する。その後加振が已むと圧密現象が卓越して水圧は徐々に低下してゆく。最初の水圧上昇過程では、地盤振動と水圧変動とは位相がそろい、地盤の激しい振動を反映している。しかし一時低下後の水圧再上昇段階では、水圧と振動とは180度位相が変わるが、それは地盤が完全に軟化したことが原因と思われる。群杭内部の流動圧分担は、先行研究と同様に、最上流側と最下流側とで分担が大きく、内部で軽減が見られた。また流動直交方向で比較を行うと、地盤流動にさらされる外側で分担が大きい。ただし、模型実験特有の事柄として、実験土槽と群杭との間のスペースが小さい場合は、外側の杭には流動圧があまり作用しない。最上流側の杭には流れる地盤が衝突するので流動圧が多く作用する。このことを利用して、既設群杭基礎の上流側に、いわゆる捨て杭を設ければ、本構造の基礎杭を防護することができる。しかし最下流側にも大きな荷重が作用することは、従来の衝突の考え方では説明できなかった。そこで地盤の高さを詳しく観察し、杭より下流側の傾斜地盤が早く流失して杭の前後に偏土圧を生じ、これが流動圧として測定されることを見出した。つまり最下流の杭には前面に液状化砂をとどめる働きがあるので、最下流側の捨て杭にも群杭基礎を防護する機能があることになる。また杭に作用する流動圧と地盤流動速度とを比べることにより、液状化地盤に速度依存性のあることを再確認した。 第5章は、鉛直載荷実験のためにあらたに製作した模型実験装置および実験方法の説明である。杭周辺の地盤の変位を観測するため、色砂の埋設方法を工夫した。またタクタイルセンサーと言う圧力分布センサーを導入し、地盤中の応力分布を計測した。さらに、杭先端の接地圧分布を計測するため、4重の同心円状のロードセルを製作した。 第6章では実験結果と分析を提示している。それによれば、杭基礎の深さを表す拘束圧は、杭の支持力に及ぼす影響が小さい。むしろ杭先端に発生する超高圧状態が重要で、ここに破砕された砂の剛体的土塊が形成され、これが下方へ推進されることによって、空孔形成のような状況は生まれて杭に支持力を発生させている。すなわち、杭先端にすべり破壊現象が生じて支持力が生ずる、という古典的な理論は、実際と一致しない。 第7章は結論と今後の展望、第8章は参考文献リストである。 以上、本研究は、構造物を支える支持機構として広汎に用いられている群杭の振る舞いについて、静的鉛直載荷と地震時横方向載荷(液状化と地盤流動)の2面から実験的に研究を進めたものである。前者では地盤流動荷重が群杭内部で分配される状況を測定し、それを応用して既設構造物の群杭基礎の耐震補強方法を提案した。また後者では杭周辺の土圧分布や変位分布を観察し、新たな支持力計算手法を提案している。近年、その必要性が強く認識されている既設構造物の耐震補強への提案も含まれており、有用性に富む独創的な研究成果と評価できる。よって本論文は博士(工学)の学位請求論文として合格と認められる。 | |
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