No | 127455 | |
著者(漢字) | シディキ,モシン | |
著者(英字) | ||
著者(カナ) | シディキ,モシン | |
標題(和) | 砕波帯内における流況場の断面二次元分布 | |
標題(洋) | Cross Shore and Vertical Distributions of Time Varying Current Field under Breaking and Broken Waves | |
報告番号 | 127455 | |
報告番号 | 甲27455 | |
学位授与日 | 2011.09.27 | |
学位種別 | 課程博士 | |
学位種類 | 博士(工学) | |
学位記番号 | 博工第7541号 | |
研究科 | 工学系研究科 | |
専攻 | 社会基盤学専攻 | |
論文審査委員 | ||
内容要旨 | 本論文では,砕波帯内における波の砕波に伴う流れ場の時空間構造に着目し,室内実験および数値予測モデルの構築を通じてそのメカニズムの解明を試みた. まず断面二次元水槽において,砕波帯内での水理特性に焦点を当てた実験を行った.実験では,異なる規則波を様々な底面条件に対してそれぞれ作用させ,底面からの高さの異なる多地点での流速を詳細に計測した.底面形状は一様斜面とし,潜堤を設置した場合としなかった場合とを比較した.さらに,潜堤を設置しない条件では,3種類の異なる底面粗度条件に対して同一の実験を行った.本論文で構築する数値モデルでは,任意の底面粗度条件や潜堤などのような構造物に伴う砕波形態の変化に対する適用性を高めることを目的の1つとしている.既往研究では不足しているこれらの特性の検証データを取得することを念頭におき,上述のような実験条件を選定した. 本研究で新たに構築したモデルは,ポテンシャル流れに基づく非定常波動モデルおよびせん断流れモデルの2つのサブモデルで構成される.波動モデルは,弱非線形分散波モデルとして修正ブシネスク方程式をベースとし,砕波減衰項には砕波に伴い形成される大規模渦(Surafce Roller)の生成・伝播により表現した.Surface Rollerは波のエネルギー減衰を表現するとともに,砕波帯内で顕著に見られる表層付近での岸向き質量および運動量の輸送量も算定する.一方,せん断流れを考慮した非定常流れ場モデルはレイノルズ方程式に基づき,波動モデルから波やSurface Rollerによる運動量・質量輸送量を入力して,時々刻々変化するせん断流場を算定する.このとき,渦粘性場は1方程式乱流モデルで算定するが,砕波に伴う乱れと底面摩擦に伴う乱れは互いに独立して形成されると仮定して,それぞれ別々に算定した. 新たに構築した流れ場モデルでは,波およびSurface Rollerによる質量輸送量を考慮した連続式に基づき平均水位の変動を算定し,その結果を応力場にフィードバックすることによって,運動方程式と連続式の両者を満たしている点で,既往のモデルと大きく異なる.これにより,底面せん断応力は波やSurface Rollerによる応力と静水圧との差として自動的に算定される.構築したモデルは,潜堤の設置により大きく変化する砕波やそれに伴う戻り流れ場を精度良く再現することが確認され,本論文で導入したSurface Rollerにより,表層部での質量輸送量の変化や応力場の変化を妥当に説明できることが明らかとなった. | |
審査要旨 | 本論文では,砕波帯内における波の砕波に伴う流れ場の時空間構造に着目し,室内実験および数値予測モデルの構築を通じてそのメカニズムの解明を試みた. まず断面二次元水槽において,砕波帯内での水理特性に焦点を当てた実験を行った.実験では,異なる規則波を様々な底面条件に対してそれぞれ作用させ,底面からの高さの異なる多地点での流速を詳細に計測した.底面形状は一様斜面とし,潜堤を設置した場合としなかった場合とを比較した.さらに,潜堤を設置しない条件では,3種類の異なる底面粗度条件に対して同一の実験を行った.本論文で構築する数値モデルでは,任意の底面粗度条件や潜堤などのような構造物に伴う砕波形態の変化に対する適用性を高めることを目的の1つとしている.既往研究では不足しているこれらの特性の検証データを取得することを念頭におき,上述のような実験条件を選定した. 本研究で新たに構築したモデルは,ポテンシャル流れに基づく非定常波動モデルおよびせん断流れモデルの2つのサブモデルで構成される.波動モデルは,弱非線形分散波モデルとして修正ブシネスク方程式をベースとし,砕波減衰項には砕波に伴い形成される大規模渦(Surafce Roller)の生成・伝播により表現した.Surface Rollerは波のエネルギー減衰を表現するとともに,砕波帯内で顕著に見られる表層付近での岸向き質量および運動量の輸送量も算定する.一方,せん断流れを考慮した非定常流れ場モデルはレイノルズ方程式に基づき,波動モデルから波やSurface Rollerによる運動量・質量輸送量を入力して,時々刻々変化するせん断流場を算定する.このとき,渦粘性場は1方程式乱流モデルで算定するが,砕波に伴う乱れと底面摩擦に伴う乱れは互いに独立して形成されると仮定して,それぞれ別々に算定した. 新たに構築した流れ場モデルでは,波およびSurface Rollerによる質量輸送量を考慮した連続式に基づき平均水位の変動を算定し,その結果を応力場にフィードバックすることによって,運動方程式と連続式の両者を満たしている点で,既往のモデルと大きく異なる.これにより,底面せん断応力は波やSurface Rollerによる応力と静水圧との差として自動的に算定される.構築したモデルは,潜堤の設置により大きく変化する砕波やそれに伴う戻り流れ場を精度良く再現することが確認され,本論文で導入したSurface Rollerにより,表層部での質量輸送量の変化や応力場の変化を妥当に説明できることが明らかとなった. 以上の研究成果は,3本の査読つき国際会議講演集にて既に公表されており,さらに,学術雑誌へ投稿の準備を進めている.Moshin氏はこれらの研究を,既往研究のレビュー,全体的な研究計画から,室内実験や数値モデルの構築に到る詳細な研究計画,実施,成果の取りまとめにいたる全ての作業を博士論文研究の中で行った.また,本論文の研究成果は,既往の研究に対しても,特に砕波帯内で顕著な大規模渦に伴う変化を取り入れた点で,砕波帯内の波高だけでなく,流速波形の高精度予測をも可能にし,かつ,二次的に生成する戻り流れの鉛直分布やそれに伴う底面せん断応力の変化も高精度に予測可能とした点で,独自性・優位性を持っている.以上の観点から,本論文は博士(工学)の学位請求論文として合格と認められる。 | |
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