学位論文要旨



No 127486
著者(漢字) シャンマー,ハイサム
著者(英字)
著者(カナ) シャンマー,ハイサム
標題(和) CT画像を用いた現物の形状復元に関する研究
標題(洋) Digital Shape Reconstruction of Physical Objects Using CT Images and Applications
報告番号 127486
報告番号 甲27486
学位授与日 2011.09.27
学位種別 課程博士
学位種類 博士(工学)
学位記番号 博工第7572号
研究科 工学系研究科
専攻 精密機械工学専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 教授 鈴木,宏正
 東京大学 教授 新井,民夫
 東京大学 准教授 増田,宏
 東京大学 准教授 大竹,豊
 理化学研究所 副チームリーダー 加瀬,究
内容要旨 要旨を表示する

Industrial CT has been used as a powerful non-destructive tool to examine the inner structure of an object for purposes of manufacturing quality control, shape measurements, visualization and digital shape reconstruction in order to create a digital representation in the form of a surface model from measured data of a physical objects, to meet the requirements of different areas in engineering applications in CAD/CAM/CAE with minimal amount of user assistance.

The research which this dissertation is based on aims to reconstruct digital shapes of physical objects in the form of surface mesh models using CT images of these objects. Mainly we focus on solving three main challenges, first is to segment the CT volumetric data of a mechanical assembly into its parts data taking in regard information about material and shape of the parts. Second aim is to generate the mesh surfaces models of tiny features such as gaps, clearances, and detachments which exist in between jointed parts. Third aim is to generate surface mesh models for deforming objects at any time using 4D CT images obtained at defined timestamps. The proposed methods in this dissertation are not only novel ideas, but also have high originality in aspects related to their problem formation, applications, and future possibilities for expansion.

審査要旨 要旨を表示する

シャンマー ハイサム提出の本論文はDigital Shape Reconstruction of Physical Objects Using CT Images and Applications(CT画像を用いた現物の形状復元に関する研究)」と題し,全6章よりなり,機械部品等の実物をCT装置で計測し、その画像から形状データを再構成する問題を扱っている.

第1章では,研究の背景を説明し,研究の目的について述べている。産業用X線CTの計測精度の向上に伴い、従来の非破壊での検査目的利用から、形状計測に利用されるようになってきた。その中で、CTデータからCAD等での利用価値の高い表面形状データを三角形メッシュなどの形に変換する処理が利用されている。

しかし、対象物が組み立て品でそれを組み立てた状態でスキャンした場合には、各部品毎の形状を抽出することが困難であった。一つの理由は、従来手法がCT値の閾値を利用するために、一つの処理当たり一つの材質しか扱えないことである。もう一つは、同じ材質でできた部品が組み立てられている場合に、CT画像ではそれらの境界が撮像されず一体の部品として扱われることである。このような問題は、一般にはセグメンテーションの問題として分類されるもので、そのセグメンテーションとさらにはセグメンテーションの結果から表面形状を抽出することを研究の目標と設定した。

第2章では,上記の問題設定に対して、さらに詳しく述べるとともに、関連する先行研究について紹介している。また本研究でターゲットとするCT画像の性質についても説明している。セグメンテーションの既存手法としては、閾値処理、領域拡張法、Watershed法、Graph-Cut法があり、それらの得失について論じている。さらに、CTデータから表面メッシュを生成する方法について、二つの材質のCT値の中間の値を閾値として、Marching Cubes法に代表される等値面生成手法によって三角形メッシュを生成する方法を紹介した。また本研究では境界が非多様体となるため、Dual Contouring法についても紹介している。

第3章では、複数の材質からなる部品が組み合わされたもののCT画像において、材質ごとにセグメンテーションする問題を扱う。この問題は次の第4章でも別の方法によって扱われるが、本章ではGraph-Cut法をベースにした大域的な最適化によって問題を解く。多媒質の場合に大域的なアプローチの必要性について述べた後に、CT画像にGraph-Cut法を適用するための方法を提案している。これらは先行研究に準じてはいるものの、画素数の大きいCT画像に適用するための効率化や、多媒質を扱うために繰り返しGraph-Cutを適用する方法について新規性が認められる。さらに、得られたセグメンテーションからDual Contouringによって表面メッシュを生成する際に生じるアーチファクトを緩和する手法を提案した。この手法を実際の機械部品のデータに適用して良好な結果を得ている。

しかし、この手法では、CT値の大きく異なる材質からなる多媒質部品において局所的な特徴が失われることがあるという問題点があった。これはGraph-Cutのもつ大域性の副作用として現れる。そこで第4章では、Active Contour法にヒントを得て、領域を拡張する方法を提案している。これをCreeping Contour と名付けた。まず領域を拡張する基本方程式を示し、さらにそれを離散領域(画像)で近似的に効率よく計算を行う方法を提案している。これが従来の手法とはもっとも異なる点である。また複数の材質に対して並列的に処理を進めることができるために、計算量も小さい方法となっている。これを適用することによって、前章の手法に比して優れた結果を得ている。

第5章では,単一材質の場合の部品のセグメンテーション問題について扱っている。同じ材質の部品が組み立てられている場合には、それらの境界はCT画像上では撮像されないために、CT画像だけでセグメンテーションを行うことは原理的に不可能である。そこで、外部情報としてその部品のCADデータを用いている。CADデータをCT画像に位置合わせし、さらにそれをラスタライゼーションすることによって独立部品の領域を求めセグメンテーションを行っている。CT画像とCADデータらから位置合わせのための特徴点を抽出する方法について提案し、実際のアルミでできた組み立て品に適用した結果を示した。

第6章では結論として、本論文では組み立て部品のCT画像に対して、複数材質の場合と単一材質の場合において、組み立て品を構成する部品をセグメンテーションする法を提案し、また、それぞれについて実際にプログラムを作成し、実部品形状のデータに適用することによって、その適用可能性を示し、手法の評価を行ったことが述べられている。また将来課題についても示してある。

以上を要約するに,本研究により、従来の手法では困難であった、産業用X線CTによって組み立て品を分解せずにスキャンし、そこから各部品毎の形状情報を取得する新しい手法が提案されたと言え、本分野に関して大きな貢献をしたと言える.

よって本論文は博士(工学)の学位請求論文として合格と認められる.

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