本論文は「テレビ電話・テレビ会議用高能率動画像符号化に関する研究」と題し、高能率動画像符号化方式の実現、符号化方式の標準化への寄与を目指して行われた研究をまとめたものであり、6章よりなる。 第1章は「序論」であり、動画像通信の現状と将来、高能率動画像符号化方式の研究動向について論じ、本研究の目的、本論文の構成と概要を述べている。 第2章は「フレーム間予測誤差符号化方式」と題し、高能率動画像符号化方式の中枢技術をなす直交変換符号化の効率化と、これを利用したフレーム間予測誤差符号化について論じている。入力ブロックの3種類のクラス分け、すなわち、交流電力、有効な係数位置のパターン、粗いベクトル量子化によるクラス分けを論じ、クラス分けを利用した適応化を導入することにより、直交変換符号化の効率が改善されること、就中、ベクトル量子化によるクラス分けが優れていることを示した。動き補償付フレーム間予測方式とこの適応化を用いる適応DCT符号化を行うことにより、従来方式より0.5〜1dB高い再生画像SN比が得られることを示した。 第3章は「再生画像品質改善に関する検討」と題し、変形補償と呼ぶ方式による画像品質の改善、ポストフィルタによる符号化雑音低減について論じている。ブロックマッチング方式による動き補償は、画像の並行移動部分には適するが、目や口等の形状変形部分には適さないことに注目し、変形補償という方式を提案し、これにより、16kb/s超低ビットレートテレビ電話画像符号化に於いて、7.5フレーム/秒の高いフレームレートを得られることを示した。また、2種類の符号化雑音除去ポストフィルタによる画像品質の改善を試み、低ビットレートCCITT標準符号化方式のブロック状雑音と急峻なエッジ周辺に現われる雑音を効果的に低減できることを示した。 第4章は「高能率動画像符号化方式における符号化制御アルゴリズム」と題し、大幅な符号量削減に起因するこま落ちと符号化雑音の発生を制御し、画像品質に対する主観的印象の向上を目的とする符号化制御法を提案し論じている。すなわち、数100〜数10kb/sの低ビットレート符号化においては歪み、雑音の発生を許容せざるを得ない、また、時間的に情報量が変化する動画像を一定速度で符号化するためには、符号化パラメータを制御する必要があるとし、時間的、空間的歪み、雑音の量を視覚的にバランス良く決定する符号化制御アルゴリズムを提案し、これを動き補償フレーム間予測-DCT符号化方式に適用した場合主観的な品質を向上できることを確認した。 第5章は「高能率動画像符号化国際標準化に関する検討」と題し、高能率動画像符号化方式の国際標準化に参画し寄与した研究について述べている。すなわちフレーム間予測誤差を符号化する際のブロックサイズの選定を実験的に行い4×4あるいは8×8が最も効率が良いことを明らかにした。また、フレーム間予測誤差符号化の選定に関し、ベクトル量子化方式とDCT方式の比較を行い効率、画像品質上大きな差の無いことを明らかにした。更に、ループフィルタは再生画像品質を改善する効果が大きいことを明らかにした。 第6章は、結論で、本研究の成果、意義を要約している。 以上これを要するに、本研究は、適応化の導入によるフレーム間予測符号化の高効率化、変形補償の導入、ポストフィルタによる画像品質の向上、符号化制御方式の定式化と主観的な特性の改善等の高能率動画像符号化方式の改善の研究を行い、また、ブロックサイズの最適化、代表的なフレーム間予測誤差符号化方式の比較等国際標準化における寄与をまとめたものであり、電気通信工学上寄与するところが少なくない。 よって本論文は博士(工学)の学位請求論文として合格と認められる。 |