動圧密工法は、重さが10〜25トンの鉄筋コンクリート製の重錘(底面積は3〜4m2)を10〜20m程度の高さから繰り返し落下させて地盤を締め固める工法で、砂質土や砂礫地盤はもとより、岩砕、山土、廃棄物処理場等の地盤の改良に広く使用されてきている。しかし、合理的設計法は未だ確立されておらず、その施工に当たっては、実績にもとずく経験則によって当初設計を行い、施工途中の地盤調査に準拠して、随時設計を改変していくという未熟な方式が取られている。そこで設計方法を改善し施工の信頼性を向上させることを目的として、特に砂地盤を対象にして原位置試験と室内実験を行った。これらを取りまとめて、動圧密のメカニズムを解明し、設計方法の改善に役立つ資料の整備と基本的考え方の提案を行ったのが本論文である。 第1章ではまず動圧密工法についての概略と現状を説明し、現在の概略設計の考え方とその手順を紹介している。 第2章では、室内および原位置で行われた既往の研究成果を紹介し、本研究の意義と方向付けを行っている。 第3章では、臨海埋立地の緩い砂質地盤で行った動圧密工法の原位置試験について述べている。この敷地の地盤調査、加速度計と間隙水圧計の配置と埋設状況、重錐落下の間隔と順序、そして、動圧密施行後に実施した改良効果の検証結果について述べている。 前章で述べた動圧密工法の原位置試験の結果およびそれについての考慮を行ったのが第4章である。まず、落下させた重錘面(2m×2m)の直下および2つの重錐落下の中間点においてコーン貫入試験を実施して平面的な締固め効果の分布を調べた。その結果、重錐の中心から6m以内の範囲で深さ6m以浅の部分でコーン抵抗が増加しており、この範囲に締固めの効果が及んでいることがわかった。 落下の瞬間に着目すると、40G〜60Gの鉛直加速度が重錘直下で発生し、250〜370ton/m2の動的接地圧が地盤面に作用することがわかった。その衝撃で間隙水圧が最大値を記録するが、その後間隙水圧は残留し、その量は最大有効上載圧の70〜80%に達することがわかった。 第5章では現場重錘落下試験の際に発生した地盤内のせん断ひずみを加速度の測定データに基ずいて算出し、それと重錘落下で生ずる地盤のくぼみ量との関係を論じている。即ち加速度を二度時間で積分して変位の時間変化を求め、その最大値に対する地盤内各点のひずみを算出し、このひずみ量は地盤のくぼみ量にほぼ比例することを確かめた。その結果、重錘の重量と落下高さ及び地盤の硬さを示す平均N-値がわかれば、重錘落下によって地盤の各部分に発生するせん断ひずみの値が推定できることがわかった。 第6章では室内の三軸せん断試験装置を用いたシミュレーション実験について記述している。前章で求めた原位置観測のデータに基づいて算出したせん断ひずみと同じものを非排水状態で砂の三軸試料に与えて間隙水圧を発生させる。これを消散させたときの体積ひずみを実験的に求め、発生した間隙水圧との間の関係を求めている。 第7章では、以上の成果に基づき重錘落下による締固めのメカニズムの考察を行っている。つまり、室内実験で求めたせん断ひずみと残留間隙水圧、そしてその消滅に伴う体積変化の間の関係を用いて、原位置測定で得たせん断ひずみが地盤に生じたとき如何なる体積変化が発生するのかを推定してみた。更にこれに対応する相対密度の変化量を求め、これを龍岡による経験式に適用して原位置のコーン貫入抵抗qc値の増加を算定してみた。一方、これを原位置で直接測定したqc値を比較してよい一致が得られることを示した。 前章までは一ケ所の重錘落下に関する考察であったが、何ケ所かで行われる重錘落下の影響を受けてある点の地盤土が締固まるという点に留意し、複数の重錘落下の重ね合わせ効果を考察したのが第8章である。重錘落下点から離れたいくつかの点で行ったコーン貫入抵抗値の増加分を吟味して、重ね合わせがほぼ成立することを確かめ、これを適用して複数の重錘落下による締固め効果をqc値で評価していく方法を提案している。 第9章では、本研究でえられた成果の実際問題への適用性を現行の設計法の改良を含めて検討している。つまり、締固め効果をqc値で判定することを前提にして、目標のqc値をうるのに必要な重錘の大きさ、落下高さ、落下間隔を与えられた地盤条件のもとで、いかに求めるべきかについて、その具体的手順を提案している。 第10章は結論で本研究の成果を総括している。 以上を要するに、本研究は未解明な点の多い動圧密工法について、原位置の実験観測と室内実験に基づいて、重錘落下による砂質地盤の締固めのメカニズムを究明し、未熟な現行設計法の改良に連なる新しい手順を提示したものである。 これらの成果は土質工学の分野の発展に寄与するところが大きいと考えられる。よって本論分は学位請求論文として合格と認められる。 |