本論文は5章と付録からなり、第1章は概論、第2章はVSP(垂直地震探査)におけるP、S波の分離、第3章は反射法地震探査におけるコヒーレント雑音の除去、第4章は3本の記録を用いて反射法探査におけるコヒーレント雑音の除去、第5章結論、からなる。 地下の構造を調べる方法は反射法、VSP、屈折法などあるが、VSPにおいては地表から下方へ向かう波、上方へ向かう波が混在している。また、上方へ向かう波もP波とS波が混在している。地下の構造を知るためにはこの中から上方へ向かうP波だけ、S波だけを分離する必要がある。論文提出者は周波数、深さの領域で方程式を微係数で展開する事により、近接する3〜5本の記録を用い高速でかつ精度の高い方法を開発し、実際の観測結果に応用した。従来から用いられているf-k法などに比べ雑音除去、計算速度などの観点で極めてよい結果が得られることが示された。 反射法地震探査では地下から反射してくる地震波がほしい情報であるが、地表面に沿って伝わる表面波と後方からの散乱波が地下反射波に対するコヒーレントな雑音となる。地下の反射面の形状を得る上でS/Nの向上をねらったのが第3章の内容である。波動場を地表に沿って前方へ進む波と逆方向へ進む波、及びその地表方向の微分を用い近似する。これらを用いることにより下方からの波動を近似的に求める方法を提唱した。複雑な地下構造を仮定しその理論地震波形と人工的な雑音を加えたものを用い、雑音が充分除去されたことや確かめた。実際の記録にも応用し、従来の方法に勝る結果をより高速に得た。 さらに3次元の場合に対しても方法を展開した。 以上、従来の方法に勝る地下イメージの解析方法に近似的ではあるが充分な精度でかつ高速に解析する方法を考案し、合成データ、野外データに応用しその実用性を確かめた。従って、本学博士(理学)の学位を授与できると認める。 |