本論文は「電気通信事業における線路技術の開発と実用化」と題し、電気通信線路技術の事業導入の判断のあり方、ならびにこれから展開されるであろう情報文明へ向けての挑戦の戦略について論じたものであり、8章よりなる。 第1章は「序論」であり、通信線路技術の展開を論じ、本論文の目的と構成を述べている。 第2章は「通信ケーブル技術」と題し、電気通信事業を支える、金属導体を用いたケーブルから光ファイバケーブルにいたる通信ケーブルの心線、絶縁、外皮、しゃへいなどの構造要因や電気的特性要因の発展過程、ならびに、外皮の接続技術、線路設備の信頼性を確保する技術など多様な線路技術を歴史的、体系的に示し、各種通信ケーブルの技術的位置付けを論じている。特に、実用化に至らなかったものの、光ファイバの出現の直前に研究・開発した広帯域サービス用細芯同軸ケーブルの技術的位置付けを論じている。 第3章は「ケーブル外被接続技術」と題し、CCPケーブル、地下多対ケーブル、PEFケーブル、同軸ケーブル、光ファイバケーブルなどの通信ケーブルの構造と外被接続技術の相互発展の過程、ならびに、長期信頼性を確保する試験項目について論じている。 第4章は「屋外施設の信頼性」と題し、自然環境との闘いのなかで、台風や強い季節風などによるケーブルのダンシング現象について検討した結果とその対策について論じている。また、地下ケーブルの信頼性の向上を目的としてケーブル内に乾燥ガスを封入しその内圧によってピンホールからの湿気や水分の侵入を防止するガス保守方式採用の意義と構成を論じている。 第5章は「5.6mm同軸ケーブルの実用化」と題し、広帯域サービス用の5.6mm同軸ケーブル(細芯同軸ケーブル〉の国際標準化動向、ケーブル構造、伝送規格、敷設技術、接続工法、試験技術など、事業導入に必要な技術の開発を述べている。また、光ファイバの出現に照らし、最終的には事業導入を断念した理由について論じている。 第6章は「加入者線路網の変遷」と題し、通信事業創業以来の加入者線路網の変遷について、メタルケーブルの時代を中心に、社会的背景と配線法の関連について論じている。 第7章は「将来形通信インフラの形成」と題し、次世代をになう通信というメディアの特性について検討し、通信と放送を融合した、B-ISDNの環境を整備する基本戦略を論じている。特に、重要な点は、ユーザの満足であり、アプリケーションを提示、啓発することであり、これを関西文化学術研究都市で実施する考え方を述べている。 第8章は「結論」であり、本研究の成果を要約している。 以上これを要するに、本論文は電気通信の基盤をなす電気通信線路施設への新しいケーブルの事業導入の判断、ケーブル構造、伝送規格、ケーブル接続、敷設、試験および配線法など事業導入に必要な技術の開発、ならびに、これから展開されるであろう情報文明へ向けての挑戦の具体的戦略を明らかにしたものであり電気通信工学上貢献するところが少なくない。 よって本論文は博士(工学)の学位請求論文として合格と認められる。 |