本研究は大腸癌術後肝再発を正確に予測するマーカーを確立するために、大腸癌浸潤先進部での細胞形態と大腸癌原発巣の接着関連糖鎖の発現に注目して進められた。大腸癌浸潤先進部での細胞形態は1個から数個の癌細胞が孤立して小胞巣状に存在する形態(focal dedifferentiation:FD)を、接着関連糖鎖はsialyl LewisX:sLe(X)を検討対象とし、下記の結果を得ている。 1、大腸癌原発巣のFDは非再発例に比べ同時性肝転移例で有意に高度であった。 2、大腸癌原発巣のsLe(X)の発現は非再発例に比べ同時性肝転移例で有意に強かった。 3、大腸癌原発巣のFDにおけるsLe(X)の発現は非再発例に比べ同時性肝転移例で有意に強く、FD、sLe(X)単独で2群を分けるよりも、さらに有効であった。 4、大腸癌治癒切除後の肝再発症例と非再発症例の間にはDukes分類、ly、v以外にFD、sLe(X)、FDにおけるsLe(X)の発現に有意な差を認めた。 5、Dukes’C大腸癌治癒切除後の肝再発症例と非再発症例の間にはリンパ節転移数、ly、v以外にFD、sLe(X)、FDにおけるsLe(X)の発現に有意な差を認めた。 以上、本研究は、大腸癌原発巣のFD、sLe(X)、FDにおけるsLe(X)の発現を検討することにより、大腸癌肝再発が正確に予測できる事を明らかにした。この結果は、大腸癌の肝再発を早期に発見するための指標となり、大腸癌の治療成績の向上にも寄与するものと考えられ、学位の授与に値するものと考えられる。 |