本研究は、極低出生体重児における長期に及ぶ人工換気療法による気管支肺異形成(BPD)、喉頭下狭窄、気道感染など合併症発生の機会の増加や、患児の罹病率や死亡率の増加を防ぐために、必要最小限の期間で抜管の方向へ持って行くことを可能にする目的で、極低出生体重児における早期抜管のプロトコールを作成するとともに、抜管後N-CPAPの使用を加え、抜管成功率の向上を試みたものであり、下記の結果を得ている。 1.研究対象は1)出生体重1,500g未満、2)在胎週数34週未満、3)出生後早期より機械的人工換気を要した、4)生後7日以内にweaningが可能であった、5)重症感染症や先天奇形を合併していない患児60例を無作為にN-CPAP群(30例)とヘッドボックス群(30例)に分けた。 2.極低出生体重児における早期抜管のプロトコール:臨床的に、weaning可能と評価された児は以下のプロトコールに従って、抜管の方向へ持って行った。PaO2は50-70mmHgを目安として、吸入酸素濃度(FiO2)を0.35以下になるまで2-10%ずつ下げる。最高吸気圧(PIP)は15cmH2Oまで2-5cmH2Oずつ下げ、その後、15cmH2Oを維持し、もし胸郭の上がりが過大であれば、2cmH2O下げる。終末呼気圧(PEEP)は人工換気療法中5cmH2Oを維持する。人工換気回数(IMV)はPaCO2≦50mmHgを目安として、30/分まで5-10/分ずつ下げ、以後、10/分まで2-5/分ずつ下げる。その時点で、アミノフィリン4mg/kg体重をloading doseとして静注或いは経口投与し、その後12時間毎に2mg/kg体重を維持量として投与する。loading doseを投与した12-24時間後、経気管内チュープCPAPを開始し、1時間経過観察を行い、呼吸性アシドーシスや頻回もしくは重症な無呼吸発作が起こらなければ、抜管する。平均抜管時日齢はN-CPAP群は5.4±2.6日、ヘッドボックス群は6.0±2.1日、全体では早期抜管成功率は66.7%(40/60)であった。 3.抜管後使用したN-CPAPシステムは下記の利点が挙げられる、1)患児の体位変更が容易である、2)吸入気体の湿度、温度、酸素濃度が適宜コントロール可能である、3)着脱が容易である、4)患児の自発呼吸に対し抵抗が低い、5)極低出生体重児にも使用可能な材質と大きさである、6)管路が簡単で扱いが容易である、7)安全性が高くかつ低価格である。特にこのCPAPシステムは呼吸器の使用が不要であることが大きな利点でありNICUにおける呼吸器の不足の解消に役立つと思われた。 4.早期抜管成功率は、N-CPAP群では86.7%(26/30)、ヘッドボックス群では46.7%(14/30)であった。抜管後N-CPAPを使用することにより、抜管成功率は有意に向上することが認められた(p=0.001、 2)。 5.両群を合わせて、抜管に失敗した例は20例で、最も多い原因は無呼吸発作の15例であった。その大部分はヘッドボックス群に属した。無呼吸発作を起こす可能性の高い極低出生体重児においてN-CPAPの抜管後の使用により無呼吸発作の予防や治療が抜管成功率を高める上で重要であったと思われる。 以上、本論文は極低出生体重児における早期抜管のプロトコールを作成し、さらに抜管後N-CPAPの使用を加え、早期抜管成功率の向上が可能であることを明らかにした。本研究は、技術的な問題による使いにくさのために、現状では臨床的応用が少ないN-CPAPを、極低出生体重児における安全、かつ有効な呼吸療法とすることを可能にしたことで、極低出生体重児の呼吸治療に重要な貢献をなすと考えられ、学位の授与に値するものと考えられる。 |