2.2葉傾斜角の画像計測手法の有効性の検討 2.2.1 シミュレーション画像による検討
ここでは、シミュレーション画像を用いて提案手法の基本的な有効性を検討する。
(1)小平面群の平均傾斜角の計測
平均傾斜角が20度、40度、60度とそれぞれ異なる3種類の小平面群のシミュレーション回転撮影画像を作成し、平均傾斜角を計測した。得られた結果は、本手法が小平画群の平均傾斜角を計測可能であることを示した。
(2)小平面群の傾斜角の3次元分布の再構成例1
平均傾斜角が0度、20度、40度、60度および90度とそれぞれ異なる5種類の小平面群を水平方向に並列した仮想複合群落のシミュレーション回転撮影画像を作成し、傾斜角の3次元分布の再構成を試みた。得られた結果は、本手法が小平面群の傾斜角の3次元分布の再構成が可能であることを示した。
(3)小平面群の傾斜角の3次元分布の再構成例2
平均傾斜角が20度、40度および60度とそれぞれ異なる3種類の小平面群を同軸の3層をなす様に配列した仮想複合群落のシミュレーション回転撮影画像を作成し葉傾斜角の3次元分布の再構成を試みた。得られた結果は、本手法が小平面群の傾斜角の3次元分布の再構成が可能であることを示した(Fig.3-1)。
2.2.2 作物個体画像を対象とした平均葉傾斜角の計測
ここでは、栽培管理の人為的制御により形状差を生じた苗個体を対象に平均葉傾斜角の計測を試みる。
(1)遮光処理によるコマツナ苗の形状差の解析
遮光処理を施して形状差を人為的に形成したコマツナ苗個体群の回転撮影画像からくさび状特徴量を計算した。くさび状特徴量と実際の葉傾斜角は良く一致し、くさび状特徴量は処理による葉群の形状差を良く示した。
(2)過剰潅水処理によるトマト苗の形状差の解析
過剰潅水処理を施して形状差を人為的に形成したトマト苗個体群の回転撮影画像からくさび状特徴量を計算した。縦に2分割した左半分画像から得られたくさび状特徴量は、処理による葉群の形状差を良く示した。
2.2.3 作物個体画像を対象とした葉傾斜角の3次元分布の計測
提案した葉傾斜角の3次元分布の計測法(以下、庄野法と呼称)を複数のトマト個体に適用することにより、その有効性を実証的に検討する。
材料および方法
(1)供試材料(画像)の作成
光および水環境のむらが生じるように調整し、形状のばらつきを故意に発生させたトマト苗15個体を作成し、それぞれから最大256階調、896×896ドットの回転撮影画像を得た。
(2)方法
各画像において、128×128ドットの小区画を左上方から右下方まで16ドット毎に位置をずらしつつ抽出して葉傾斜角の2次元分布を求め、さらに、葉傾斜角の3次元分布を再構成した。次に、葉傾斜角の3次元分布形状を円筒形状に正規化し、円筒を内側から3層に分割した。さらに各層において、葉傾斜角を同一水平面上で平均し、1次元プロファイル(3層×49要素)に変換し、最終的に平均化により3層×6要素に集約した。さらに、得られた形状情報に主成分分析を施し、単純な指標への統合を試みた。
結果および考察
供試材料No.1における葉傾斜角の3次元分布をFig.4-1に示す。本図には当該材料の形状的特徴が視覚的に良く表現されている。ここで、第1主成分ベクトルから第3主成分ベクトルをFig.4-2にイラスト化した。さらに、指標化の結果を2次元散布図としてFig.4-3に示す。以上の計測および解析作業は、作物の形状的特徴の傾向やばらつきなどを明確化かつ可視化することが充分可能であると考えられる。