論文の題目は「ビデオメトリによる身体運動メカニズムの定量的解析とその医工学への応用に関する研究」であり、6章で構成されている。 第1章「序章」は序論であり、研究の背景、従来の研究、研究の目的および研究の特色がのべられている。本研究の目的はビデオメトリによる身体運動の三次元計測を行う実用的計測システムの構築、計測データを用いた身体運動の可視化、身体運動メカニズムの定量的およびその身体運動解析の医工学への応用を図ることである。 第2章「ビデオメトリによる身体運動の三次元計測」においては写真測量学の原理を用いてステレオCCDビデオカメラのシステムを構築して身体運動の三次元(3D)計測を行っている。また一般カメラとの精度比較を行い、その得失を明らかにしている。 第3章「身体運動の可視化」においては身体運動解析のためにステックモデルとワイヤモデルを提案し、その連続動作のオーバーレイ表現やアニメーションアルゴリズムを開発し、後続の動的解析への支援を可能にした。 第4章「身体メカニズムの定量化」においては医工学的情報として重要な体重心、変位、速度、加速度、慣性モーメント、トルク、力積、消費エネルギー、仕事量、パワースペクトル、インパルス応答、足圧を抽出する手法をのべ、実際に健常者と障害者の被験者について、立ち上がり動作、立位平衡、歩行の三つのケーススタディにより定量的解析を行った。これにより本研究で示したパラメータが両者の違いを明瞭に示すことが明らかにされた。 第5章「ビデオメトリによる身体運動解析の医工学への応用」においては本研究で示したシステムおよび手法が医療診断へ適用されるシステムのありかたとその可能性をのべており、実用化への示唆を与えている。 第6章は「結論および将来への課題」である。本論文で得られた結論は、ステレオCCDビデオカメラによるビデオメトリにより身体運動の3D計測が可能であり、その定量化および視覚化が障害者の医療診断に有効に適用可能であることをケーススタディにより明らかにしたことである。 以上を要約すると本研究はビデオメトリの医工学への応用可能性を実験により明らかにしたものであり、医工学における新技術を開発したものであり、その学術的貢献はきわめて高いと判断できる。 よって本論文は博士(工学)の学位請求論文として合格と認める。 |