論文の題目は「レーダーインターフェロメトリによる数値地形モデル作成および土地被覆分類に関する研究」であり、5章で構成されている。 第1章「序章」は序論であり、研究の背景、従来の研究、研究の目的および研究の概要がのべられる。本研究の目的は第1にレーダー画像の生データからインターフェログラムを作成するアルゴリズムを開発すること、第2にインターフェログラムから数値標高データの変換するアルゴリズムを開発し、第3にインターフェログラメトリの副次的情報を用いたカラー合成を行うことにより土地被覆分類への応用可能性を明らかにすることである。 第2章「インターフェログラムの作成アルゴリズムの開発」は合成開口レーダ(SAR)の画像再生処理のアルゴリズムの開発とその検証を行っている。現在世界的にインターフェログラムの作成を行っている機関はきわめて少なく、そのアルゴリズムの詳細は公開されていないため、限られた文献から独自に開発をしなければならない状況である。本研究では理論上また文献調査から最も適切なアルゴリズムと考えられる手法を開発し、検証を試みた。 第3章「インターフェログラムを用いた数値地形モデル作成アルゴリズムの開発」はその概要をのべたあとインターフェログラムの幾何モデル、観測条件、位相差から標高値の検証を明らかにした。現時点ではSARインターフェロメトリの絶対的精度を明らかにするだけの研究が進んでおらず、相対精度を既存の地図から得られた数値標高データとの比較によって求めている。 第4章「インターフェログラムと用いた土地被覆分類」ではインターフェログラムから得られる位相、位相差、後方散乱係数強度などを組合わせてカラー合成することにより、白黒のレーダ画像よりはるかに土地被覆に関する情報が得られることを明らかにしている。 第5章「結論」である。本研究の目的の第1および第2のアルゴリズムの開発は本論文に示されるように、具体的にかつ詳細にその理論を体系化して誰でもがそのアルゴルズムを開発できるようにし、かつ実際に開発を行った。その成果は、公表されている成果とほぼ同等の水準であり、十分に国際的価値があるものと認められる。第3の目的である土地被覆分類への応用は未だ公表されているものはなく、新しい画像判読可能性を期待させる成果が得られたといえる。 以上を要約するに本研究はリモートセンシング工学のなかの合成開口レーダインターフェロメトリの理論およびアルゴリズムを公表したことは、閉鎖的であったこの分野の工学発展に多大の貢献を与えたものといえる。よって本論文は博士(工学)の学位請求論文として合格と認められる。 |