学位論文要旨



No 213325
著者(漢字) 徳永,光晴
著者(英字)
著者(カナ) トクナガ,ミツハル
標題(和) レーダーインターフェロメトリによる数値地形モデル作成および土地被覆分類に関する研究
標題(洋)
報告番号 213325
報告番号 乙13325
学位授与日 1997.04.17
学位種別 論文博士
学位種類 博士(工学)
学位記番号 第13325号
研究科 工学系研究科
専攻 社会基盤工学専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 教授 村井,俊治
 東京大学 教授 虫明,功臣
 東京大学 教授 高木,幹雄
 東京大学 助教授 柴崎,亮介
 東京大学 助教授 清水,英範
内容要旨

 レーダーインターフェロメトリとはレーダの位相差を利用してレーダ画像データを干渉させる技術を意味し、1960年代に金星探査を目的とした研究例が報告されている。近年になって地球観測衛星に合成開口レーダが搭載されるようになり、レーダ画像データの入手が容易になった。そのため、同一地域を複数回観測した合成開口レーダを利用して干渉処理の研究がなされるようになった。理論的にはレーダーインターフェロメトリを利用することにより、高精度の標高値算出や微細な地形変動を捉えることが可能になる。しかしながら、現在ではまだデータが干渉するための観測条件や処理アルゴリズムが確立しておらず、得られる精度やアプリケーション分野に対する適応可能性の研究が十分になされていない。

 本論文では、合成開口レーダの生データから画像化するアルゴリズムおよび干渉データから標高値を算出するアルゴリズムを開発し、数値地形モデル作成と土地被覆分類への適応性を研究した。

 地球観測衛星ふよう1号の合成開口レーダデータを利用した結果、標高値データに関しては精度が約50mの標高値データを得ることができた。理論値に比べて精度が劣っているが、衛星の位置・姿勢の精度および参照した標高値データの精度が原因であるとの推察が得られた。また、土地被覆分類については、異なる観測日のレーダ後方散乱係数および干渉データを組み合わせた画像を作成し、土地被覆の判読を行った。光学センサの画像を利用した場合に比べて全体の把握は困難であるが、光学センサ画像からでは判読が難しかった植生地域を分類することができた。

図1タイ・プーケット島ふよう1号SARデータ合成画像(赤:後方散乱係数、緑:後方散乱係数、青:位相差)
審査要旨

 論文の題目は「レーダーインターフェロメトリによる数値地形モデル作成および土地被覆分類に関する研究」であり、5章で構成されている。

 第1章「序章」は序論であり、研究の背景、従来の研究、研究の目的および研究の概要がのべられる。本研究の目的は第1にレーダー画像の生データからインターフェログラムを作成するアルゴリズムを開発すること、第2にインターフェログラムから数値標高データの変換するアルゴリズムを開発し、第3にインターフェログラメトリの副次的情報を用いたカラー合成を行うことにより土地被覆分類への応用可能性を明らかにすることである。

 第2章「インターフェログラムの作成アルゴリズムの開発」は合成開口レーダ(SAR)の画像再生処理のアルゴリズムの開発とその検証を行っている。現在世界的にインターフェログラムの作成を行っている機関はきわめて少なく、そのアルゴリズムの詳細は公開されていないため、限られた文献から独自に開発をしなければならない状況である。本研究では理論上また文献調査から最も適切なアルゴリズムと考えられる手法を開発し、検証を試みた。

 第3章「インターフェログラムを用いた数値地形モデル作成アルゴリズムの開発」はその概要をのべたあとインターフェログラムの幾何モデル、観測条件、位相差から標高値の検証を明らかにした。現時点ではSARインターフェロメトリの絶対的精度を明らかにするだけの研究が進んでおらず、相対精度を既存の地図から得られた数値標高データとの比較によって求めている。

 第4章「インターフェログラムと用いた土地被覆分類」ではインターフェログラムから得られる位相、位相差、後方散乱係数強度などを組合わせてカラー合成することにより、白黒のレーダ画像よりはるかに土地被覆に関する情報が得られることを明らかにしている。

 第5章「結論」である。本研究の目的の第1および第2のアルゴリズムの開発は本論文に示されるように、具体的にかつ詳細にその理論を体系化して誰でもがそのアルゴルズムを開発できるようにし、かつ実際に開発を行った。その成果は、公表されている成果とほぼ同等の水準であり、十分に国際的価値があるものと認められる。第3の目的である土地被覆分類への応用は未だ公表されているものはなく、新しい画像判読可能性を期待させる成果が得られたといえる。

 以上を要約するに本研究はリモートセンシング工学のなかの合成開口レーダインターフェロメトリの理論およびアルゴリズムを公表したことは、閉鎖的であったこの分野の工学発展に多大の貢献を与えたものといえる。よって本論文は博士(工学)の学位請求論文として合格と認められる。

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