次に、抱合代謝物の胆汁排泄過程についてin vivo実験、in situ肝灌流実験、単離CMVを用いたin vitro実験により検討を加えた。なお、実験にはSDラットの他、胆管側膜上に存在する有機アニオン系化合物に対する一次性能動輸送担体(canalicular multispecific organic anion transporter;cMOAT)が遺伝的に欠損しているEHBRも用いた。
2-2.肝灌流系を用いたE3040およびグルクロン酸、硫酸抱合体の肝胆系移行解析 両抱合体の肝胆系移行における肝臓から胆汁中、あるいは血液中(灌流液)への排泄過程を解析するため、14C-E3040の定常状態肝灌流法により肝臓中で生成する両抱合体の胆汁中への排泄クリアランス(CLu,bile)、肝臓から血液(灌流液)中への排出クリアランス(CLu,outflow)を算出した。ここでCLu,bileおよびCLu,outflowは、胆汁中、灌流液中への両抱合体の排泄速度をそれぞれの肝臓中での非結合型濃度で除することにより得られる。また、EHBRにおいても同様の検討をすることによりin vivoで観察されたグルクロン酸抱合体の胆汁排泄低下の原因についても考察した。
SDラットにおける定常状態での両抱合体のCLu,bile、CLu,outflowを比較すると、グルクロン酸抱合体においてはCLu,bileがCLu,outflowに比べ約2倍大きいのに対し、硫酸抱合体ではCLu,outflowがCLu,bileの約20倍大きな値を示し、両抱合体間で胆汁と血液中への振り分けが大きく異なり、グルクロン酸抱合体では胆汁中へ、硫酸抱合体では血液(灌流液)中へ優位に振り分けられることが明らかとなった。一方、EHBRにおいては硫酸抱合体のCLu,bile、CLu,outflowはともにSDラットとほぼ同様の結果が得られたのに対し、グルクロン酸抱合体に対してはSDラットに比べ、CLu,bileは約1/33に低下しCLu,outflowが約4倍に上昇していた。この結果からEHBRにおけるグルクロン酸抱合体の胆汁排泄の低下、血液(灌流液)中への排出の増加は主に肝臓から胆汁中への排泄能の著しい低下によるものであることが示された。
また、両ラットともにグルクロン酸、硫酸抱合体の胆汁排泄には著しい濃縮性が認められることから両抱合体の胆管側膜透過過程には何らかの能動輸送系の関与が示唆された。