本研究は移植および腫瘍免疫においても重要な役割を演じている可能性のあるTヘルパー細胞のTh1/Th2サブセットの関与を明らかにするため、マウスアロ心移植モデルおよびsyngeneicなマウス腎細胞癌(Renca)モデルにおけるTh1(IL2,IFN- )/Th2(IL4,IL10)サイトカインの発現の解析を主に検討したものであり、下記の結果を得ている。 1.無処置のアログラフトではグラフト内にTh1/Th2サイトカインとも発現されるが、ドーナー特異的輸血(DST)、抗CD4抗体、サイクロスポリンAにて移植寛容、移植片生着延長を導入した場合にはグラフト内、脾臓にTh2サイトカイン優位の発現がみられ、グラフト内のTh1サイトカインは抑制されていた。 2.DSTにより移植寛容を導入されたレシピエントマウスの脾臓のうち、FcR T細胞に寛容誘導能力があることが細胞移入実験により示された。 3.Renca腫瘍が生着したBalb/cマウスにおいては腫瘍内にはIL-2,IFN- 、IL-4は発現されないが、IL-10,TGF- 1は発現されていた。Renca腫瘍のホストの脾臓においては、IL-4、IL-10、TGF- 1 mRNAは発現されるが、IL-2、IFN- はほとんど検出されなかった。 4.Renca細胞接種時に抗IL4抗体を投与するとRenca腫瘍の増殖抑制が見られたが、この抑制効果にはCD4およびCD8細胞の存在が必要であった。 5.IL4を強制発現させたRenca細胞のBalb/cへの接種では腫瘍体積の減少および腫瘍生着率の低下が見られた。 以上、本論文は移植拒絶におけるTh1およびTh2サイトカインの共発現と移植寛容におけるTh1に対するTh2サイトカイン優位の発現を明らかにした。またマウス腎細胞癌モデルにおいては免疫抑制性のTGF- 1およびTh2サイトカイン優位の発現を明らかにした。本研究は移植拒絶、寛容や腫瘍におけるTh1/Th2サブセットの関与の解明に重要な貢献をなすと考えられ、学位の授与に値するものと考えられる。 |