本研究は創傷治癒過程及び線維化を伴う皮膚疾患の発症において重要な働きをしていると考えられる細胞成長因子である結合組織成長因子(CTGF、Connective Tissue Growth Factor)の発現のメカニズムを明らかにするため、CTGFプロモーターのTGF に反応する部位の解析を試みたものであり、下記の結果を得ている。 1.CTGFのプロモーターをルシフェラーゼアッセイを用いて解析し、TGF に反応するCTGFプロモーター部位の存在を示した。同部位には、既知の転写因子結合部位は存在せず、新奇の転写因子結合部位の存在を示唆した。 2.CTGFプロモーターにおけるTGF 反応部位を用いて、ゲルシフトアッセイをおこない、この部位に転写因子の結合があることを確認した。 3.メチレーションインターフェレンスアッセイを行うことにより転写因子が結合している部分を特定した。この塩基配列は、今までに報告された転写因子結合部位とは異なり、新奇のものであることが確認された。 4.さらにこの転写因子結合部位(TGF Response Element:T RE)に、点変異を持つCTGFプロモーターを作成し、ルシフェラーゼアッセイを行ったところ、TGF に対する反応が失われ、この部位がTGF 反応部位であることを確認した。 5.TGF からCTGFプロモーターまでの転写の過程を、転写経路修飾物質を用いて調べ、タイロシンキナーゼやプロテインキナーゼCがTGF からCTGFに至るまでの経路に関係している可能性が低いこと、TGF の反応は、T REを通じてcAMPにより抑制の方向に修飾されることを示した。 以上、本論文はCTGFのプロモーターの解析により、新しいTGF に反応する転写因子結合部位を同定し、またcAMPが、この転写経路を抑制の方向で修飾することを明らかにした。本研究は、TGF 反応部位をコントロールすることにより、CTGFの発現を特異的に制御し、線維化を伴う疾患の治療に応用しうる臨床的発展性を有しており、今後の線維性疾患の治療の発展に重要な貢献をなすと考えられ、学位の授与に値するものと考えられる。 |