本研究は、真核細胞に普遍的に存在するグリコシルフォスファチジルイノシトール(GPI)による蛋白質の細胞膜への固定に必須であるGPI anchor attachment(GAA1)蛋白を高等生物で初めて明らかにした研究であり、下記の結果を得ている。 1.シグナルシークエンストラップ法を用いて、621アミノ酸からなる蛋白をコードする約2kbの新たなcDNAを単離、同定し、アミノ酸配列のホモロジー検索により、これが酵母GAA1と25%の同一性、57%の相同性を持つ高等生物におけるホモログであることを明らかにした。 2.GAA1mRNAが各臓器に普遍的に発現していること、またマウス胚性幹細胞および心臓の分化、発生とともに減少することをノーザンブロット法により示した。 3.マウスジェノミックライブラリーより約16kbのマウスGAA1遺伝子のクローニングを行い、8.4kbの塩基配列を解読し、約3.6kbのBamHI断片の中に12個のエクソンと11個のイントロンからなることを明らかにした。またBACライブラリーのスクリーニングによりヒトGAA1遺伝子をクローニングし、FISH、Radiation Hybrid Panelによりヒト染色体8番長腕の8q24に存在することを示した。 4.GAA1アンチセンスを一過性に発現することにより、本来細胞表面にGPIアンカーされる蛋白の細胞表面への発現が減少すること、恒久的に発現することにより、細胞表面に発現されないことを示した。 以上、本論文は蛋白質を細胞表面に固定するGPIアンカーの付加に必須であるGAA1蛋白を酵母以外の真核細胞について、世界で初めて明らかにした。本研究はGPIアンカーの研究の伸展に重要な貢献をなすと考えられ、学位の授与に値するものと考えられる。 |