上述の形質を分類基準として採用して無殻渦鞭毛藻の分類学的な再編成を試み、それに従い86種を記載した。ただ、本研究では混乱を避けるため新たな属・種などの分類学名称の設立を行わず、過渡的に属群として集約した。
1)Gymnodiniaceae科 よく発達した縦溝と横溝を有しており、オセルス眼を有しない。
本科については、細胞表面を重要な分類分類形質と採用し、さらに、特殊な細胞器官や特異的な形態を有する種を独立した属群とし再編成した。その結果、本科は下記の12属群に集約された。
Gymnodinium属群:細胞表面に条線、溝状、空胞状構造を有せず、細胞表面が円滑である。
Gyrodinium属群:細胞表面に条線構造を有する。
Cochlodinium属群:細胞表面が細かい無数の条線で覆われている。
Balechina属群:Kofoid and Swezy(1921)でGymnodinium属Pachydinium亜属に配置された種のうち、細胞表面に乳頭状の空胞を有する。
新属群:Kofoid and Swezy(1921)で、Pachydinium亜属に配置された種のうち、細胞の長軸に沿った平行な溝構造を有する。既存の属名を充当するのが困難であるので、正規な記載をする場合には新たな属を設立する必要がある。
Lepidodinium属群:Gymnodiniumに極めてよく似た細胞構造を有するが、細胞表面に特有な鱗片を有する。
Amphidinium属群:細胞が扁平で、上錐溝が下錐に位置し、横溝と縦溝とを連絡する。
Bernardinium属群:横溝が短く、周囲の1周以下で、縦溝とは始端部だけが連絡する。
Pavillardia属群:横溝および縦溝が発達しGymnodinium属群に似るが、細胞底端が触手状に伸長する。
Pheopolykrikos属群:通常2連鎖群体として出現しPolykrikosに似るが、核と横溝が同数存在する。
Torodinium属群:上錐に縦溝と横溝とが侵入し、側溝を有する。
3)Warnowiaceae科 よく発達した縦溝と横溝を有している点でGymnodiniaceae科に似るが、オセルス眼を有する点に特徴がある。
Erhthopsidinium属群:ピストンと、1個のオセルス眼を所有する。
Greuetdinium属群:ピストンと、複数のオセルス眼を所有する。
Warnowia属群:ピストンおよびネマトシストを有しない。
Nematodinium属群:ネマトシストを有し、ピストンを有しない。タエニオシストだけしか有しない種はWarnowia属群とする。