学位論文要旨



No 213955
著者(漢字) 尹,浩信
著者(英字)
著者(カナ) イン,ヒロノブ
標題(和) ヒト2(I)コラーゲン遺伝子の転写制御における転写因子Sp3の機能
標題(洋)
報告番号 213955
報告番号 乙13955
学位授与日 1998.09.09
学位種別 論文博士
学位種類 博士(医学)
学位記番号 第13955号
研究科
専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 教授 加我,君孝
 東京大学 助教授 須佐美,隆史
 東京大学 助教授 金井,芳之
 東京大学 助教授 森田,寛
 東京大学 講師 織田,弘美
内容要旨

 転写因子Sp3は、遍在性の転写因子であり、Sp1ファミリーに属するが、Sp1とは異なりしばしば転写抑制因子として機能する。本研究では、ヒト2(I)コラーゲン遺伝子の転写調節におけるSp3の機能について検討した。Sp1とSp3はこの遺伝子のプロモーター領域の-303bpから-271bp領域、-128bpから-123bp領域の2つの転写活性化領域および転写抑制領域である-164bpから-159bpに特異的に結合した。Drosophila細胞を用いたSp1とSp3の機能の解析の結果、これらの転写因子はヒト2(I)コラーゲン遺伝子のプロモーター活性を同程度活性化し、両者を同時に発現した場合プロモーター活性に相加的影響を与えた。さらにin vitro transcription assayにてSp1とSp3は互いに独立してコラーゲン遺伝子の転写を支持していることが示された。しかしながら、Sp1とSp3の両者の活性がその特異的抗体によって阻害されたとき、コラーゲン遺伝子のin vitroの転写はほぼ完全に消失することが示された。この研究の結果は、Sp3はSp1同様ヒト2(I)コラーゲン遺伝子プロモーターの活性化因子で、ヒト2(I)コラーゲン遺伝子の転写活性は両転写因子によることを示している。

審査要旨

 I型コラーゲンの過剰な沈着は汎発性強皮症をはじめとする多くの線維化を伴う疾患で特徴的であり、コラーゲン遺伝子の転写活性が亢進していることによるものと考えられている。本研究はI型コラーゲンの転写制御を明らかにするためそのプロモーター領域を解析したものであり、下記の結果を得ている。

 1.遍在性の転写因子Sp1およびSp3はヒト2(I)コラーゲン遺伝子のプロモーター領域の-303bpから-271bp領域、-128bpから-123bp領域の2つの転写活性化領域および転写抑制領域である-164bpから-159bpに特異的に結合することがDNA mobility shift assayにて明らかにされた。

 2.Drosophila細胞を用いたCATアッセイによるSp1とSp3の機能の解析の結果、両転写因子はヒト2(I)コラーゲン遺伝子のプロモーター活性を同程度活性化し、両者を同時に発現した場合プロモーター活性に相加的影響を与えた。

 3.in vitro transcription assayにて転写因子Sp1とSp3は互いに独立してコラーゲン遺伝子を支持していることが示された。さらに、Sp1とSp3の両者の活性が特異的抗体によって同時に阻害された場合、ヒト2(I)コラーゲン遺伝子のin vitroの転写はほぼ完全に消失することが示された。

 本研究の結果より、転写因子Sp3はSp1同様ヒト2(I)コラーゲン遺伝子プロモーター活性の転写活性化因子で、ヒト2(I)コラーゲン遺伝子の転写活性は両転写因子によることが明かとなった。

 以上、本論文はヒトI型コラーゲン遺伝子を制御する転写因子としてSp1およびSp3の存在およびその機能を明らかにした。本研究は、未だ明かとなっていない皮膚あるいは内臓諸臓器の線維化の分子生物学的機序の解明に重要な貢献をなすと考えられ、学位の授与に値するものと考えられる。

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