本論文は、「マイクロアクチュエータの研究及びそのデータ・ストレージ装置への応用」と題し、半導体微細加工に基づくマイクロマシニング技術を改良して高性能のマイクロアクチュエータを実現した結果と、それをデータ・ストレージ装置のさらなる小型化と記録密度の向上に応用することを検討した成果をまとめたものであり、6章から構成されている。 第1章は「序論」であり、本研究の背景であるマイクロマシン技術とストレージ・デバイスの動向について説明した後、本研究の目的であるマイクロマシン応用ハード・デスク装置(マイクロハードディスク)の概念と研究課題、および関連の研究について述べている。 第2章は「サブミクロンギャップを持つ静電マイクロ・アクチュエータ」と題し、新たに考案した酸化マイクロマシニングやポストリリースポジショニング法によりm以下の静電ギャップを持つアクチュエータを製作した結果と、それをマイクロハードディスクのシーク用アクチュエータに応用する検討の結果について述べている。 第3章は「オーバーハング構造を持つ横方向トンネル電流制御ユニット」と題し、従来のマイクロトンネル電流制御ユニットを拡張し、電界研磨で尖らせた探針の先端を基板貫通孔の縁から突き出した構造とする際、ドライエッチングを用いることで歩留まりを格段に向上することに成功し、それをマイクロハードディスクのAFM/STM記録用アクチュエータに応用する検討の結果について述べている。 第4章は「マイクロ回転モータ」と題し、直径100m程度の金属製マイクロモータの作製と動作実験について述べている。ニードルベアリング構造やダイヤモンド状炭素膜の適用により摩擦を軽減した結果、駆動電圧を低下し、寿命を向上することができた。さらに、マイクロモータをマイクロハードディスクのディスク回転用アクチュエータに応用することを検討している。 第5章は「トラッキングサーボ用マイクロアクチュエータ」と題し、以上の章のデバイスより近い将来に実現の期待されるの応用として、現在のハードディスク装置のトラッキング精度向上のためにマイクロアクチュエータを用いる研究について述べている。サスペンションとスライダーの間に挿入して、スライダーを高速かつ高精度に位置決めするアクチュエータを開発し、その動作とトラッキング性能の向上を確かめている。 第6章は「結論」であり、本研究の成果を要約し、マイクロハードディスクの実現に至る開発の道筋の中で位置づけることで、今後の展望を与えている。 以上これを要するに、本論文は半導体微細加工技術を利用したマイクロアクチュエータの設計、製造、評価について研究し、それのデータストレージ装置の超小型化と記録密度の向上への応用を検討したもので、電気工学上貢献するところが大きい。 よって、本論文は東京大学工学系研究科情報工学専攻における博士(工学)の論文審査に合格と認められる。 |