3.結果 対象者数は1群23人、2群23人、3群23人、4群22人の計91人であった。
(1)介入前の行動声かけの回数は1群で21回、他の群で14〜16回、介入前の会話声かけの回数はいずれの群も13〜14回で、どちらの声かけについても群間で差はみられなかった。各群別に介入前後の声かけ回数を比較すると、1群と2群で介入後に行動声かけの回数が増加し、1群と3群で介入後に会話声かけの回数が増加したことから、サービスの介入が適切に実施されたことが確認された。
(2)介入前の対象者の状態は、高齢者用行動評価表の総合得点、及びADL、痴呆、問題行動の得点について群間で差がみられた。
(3)介入前後の対象者の状態に関して、行動声かけと会話声かけの2要因を級間変動要因、繰り返し測定を級内変動要因とする分散分析を行った。級内変動要因は、群間の状態の差を調整した上での状態変化に対する影響要因であり、この影響の強さを検討した。
高齢者用行動評価表の総合得点に関しては、行動声かけの影響により2群で悪化し、会話声かけの影響により3群で改善した。したがって、行動声かけは高齢者の総合的な状態を悪化させ、会話声かけは状態を改善させることが示された(図1)。
高齢者用行動評価表の下位尺度ごとに声かけの影響を検討した。ADLに関しては、どちらの声かけの影響もみられなかった。活動性に関しては、行動声かけと会話声かけの交互作用により3群で改善した。
対人関係に関しては、会話声かけの影響により3群で改善したことから、会話声かけは高齢者の人間関係の豊かさや他者とのコミュニケーション能力を改善させることが示された(図2)。
問題行動に関しては、会話声かけの影響により1群、3群で改善したことから、会話声かけは高齢者の問題行動の発生を抑制することが示された(図3)。
痴呆に関しては、行動声かけの影響により2群で悪化し、会話声かけの影響により3群で改善した。したがって、行動声かけは観察によって測定された高齢者の知的能力を悪化させ、会話声かけは痴呆の状態を改善させることが示された(図4)。
HDS-Rに関しては、どちらの声かけの影響もみられなかった。
図表