3.検討項目と結果(1)Vitality Indexの指標特性に関する予備的検討 a.Vitality IndexとBarthel Indexの同時施行における各指標の得点分布
療養型病床群入院患者に同時に実施したVitality IndexとBarthal Indexの得点分布は、Barthal Indexの得点分布は0点から3点の低得点患者と10点の高得点患者の2峰性の分布特性を示した。
b.Geriatric Depression Scale施行時におけるコミュニケーション障害合併率
実施可能例においては30%のコミュニケーション障害が合併し、実施不可能例においては48%のコミュニケーション障害の合併率を認めた。
c.測定可能率
Geriatric Depression Scale(GDS)の測定可能率は30%介助手段を工夫しても「回答不能」。6%は病態が悪く、検査自体「不能」であった。観察法であるVitality Indexは全例評価が可能であった。
d.測定に要する時間
Vitality Index測定に要した時間(秒)を職能別に測定した結果、全体の平均時間は75±3.9秒(1分15秒)であった。
(2)信頼性に対する検討 a.再現性:
再テスト法により1週間の間隔を置いて2回の評価を実施した総得点の間には有意な相関(R=0.98 P<0.01)を認めた。
b.内的整合性:
多施設集計の結果Cronbachの係数は0.88であった。
c.評価者間信頼性:
変動係数Interrater coefficient of variance(CV)の平均は13.8%であった。Intraclass Corelation Coefficient(ICC)の平均値は0.79で評価者間の信頼性には問題はないと考えた。
(3)妥当性についての検討 a.Geriatric Depression Scale(GDS)との関連
GDSとVitality Indexとの得点間には負の有意な相関(R=0.70,P<0.01)が得られた。
b.The Philadelphia Geriatric Center Morale Scaleとの関連
主観的幸福度を測定するMorale Scaleの得点とVitality Indexの得点には有意な相関は認めなかった。
(4)指標特性の検討 a.Vitality Indexの機能項目別の分布
各機能項目別との関係をみると、0点時のVitality Index総得点の平均値と2点の時のVitality Index総得点の平均値との差の最大値は「意志疎通」項目の7.25点で最小値は「排泄」項目の4.18点で項目毎の差点平均は5.9点であった。
b.Vitality Indexの各得点における介護保険における要介護度頻度
Vitality Indexの得点の低い患者から高得点患者に得点分布に従って、介護度は軽くなる傾向を示した。
c.要介護度分類(介護保険)とVitality Indexとの関連。
要介護度分類とVitality Indexとの得点との関係では要介護度5と4(P<0.05)、要介護度4と3に有意な関係(P<0.05)が得られた。
d.病院でのVitality Indexの得点分布の特徴
亜急性期入院患者の病棟では30%以上の患者がVitality Indexの10点満点であった。これはシーリング効果が反映していると考えられた。
慢性期患者を主体とする療養型病床群のVitality Indexの患者得点分布は、Vitality Indexの最多頻度患者群が10点前後にある低得点から高得点へ逓増型の分布であるのに対し、ADLの分布は低得点患者頻度群と高得点頻度患者群の2峰性の分布を呈した。
e.病棟別のVitality Indexの得点分布の特徴
デイケア・訪問看護の外来患者を基本にした場合にVitality Indexの患者得点分布は10点満点が最っとも多く、介護度が重くなるに従い患者の最多頻度得点は低得点側に移行し、最重度の介護を要する病棟では最多得点患者は5点台に集積していた。
(5)指標の有用性に関する検討 a.療養環境の変化によるVitality Indexの変化
変化の前後ではVitality Indexは有意に(P<0.01)0.85点改善した。
b.集団リハビリテーション前後におけるVitality Index変化
前後の評価でVitality Indexでは正の相関(P<0.05)、SDSでは有意な負の相関(P<0.05)を認めた。他の西村式ADL、西村式精神状態尺度、HDS-R、Mini-Mental state、MENFIS、Barthel Index、The Philadelphia Geriatric Center Morale Scaleでの前後の評価では有意な相関は認めなかった。