本研究はわが国における少子化の原因のひとつである有配偶出生率の低下に関わる要因を探るために、夫婦の持つ子ども数の差にどのような要因が関連しているかを明らかにすることを目的に、愛知県A保健所管内のT市に在住し三歳児健診に来所した母親622名を対象に自記式質問紙を用いて調査を行ったものであり、下記の結果を得ている。 1.現在の子ども数が一人群と三人以上群の比較結果では、両群の夫婦の婚姻年齢は等しいにも拘わらず、現在の子ども数の多い群は第1子の出産時の夫婦の年齢は若く、理想と予定の子ども数も多くなっていた。また、住居では平均居室数が多くなっていたが、子ども専用部屋を割り当てている割合は低くなっていた。年収では、一人群では400〜500万未満が最も多いのに対して、三人以上群では500〜600万未満が最も多くなっていた。 一人群の中で、理想よりも予定の子ども数が少なくなる理由で最も多いのは「育児や教育に費用がかかる」であった。 2.現在の子ども数が一人群と二人群との比較では、理想と予定の子ども数は二人群に多くなっていた。また、専業主婦の割合と夫の所定労働時間が40時間の割合は二人群に多くなっていた。 3.一人群と三人以上群、および一人群と二人群を基準変数とし、理想の子ども数、第1子出生年齢、第1子妊娠・分娩時の異常の有無、現在の妻の年齢、夫の超過勤務、妻の最終学歴、年収、家族構成、居室数の9項目を説明変数に用いて多重ロジスティックモデルによる解析を行った。その結果、一人群と三人以上群の差に対する関連要因として、理想の子ども数、第1子出生年齢、現在の妻の年齢、居室数の4因子が有意であり、一人群と二人群の差に及ぼす関連要因として、理想の子ども数、第1子出生年齢、現在の妻の年齢、家族構成の4因子が有意であった。 4.第1子の妊娠・分娩における看護職の関わりについて、良い印象を持っていた人が全体の約7割を占めていた。また、第1子妊娠・分娩において異常のあった群は出産意向が消極的な傾向があり、異常の種類では切迫流・早産、帝王切開が上位を占めていた。 以上、本論文は一人と二人、一人と三人以上の子ども数の差に、理想の子ども数、妻の第1子出生年齢、現在の妻の年齢、住居などの要因が関連していること、また、第1子妊娠・分娩体験がその後の出産意向に及ぼす影響についても示唆している。本研究は完結子ども数についての調査ではないという限界はあるが、これまで指摘されていた要因の確認とともに、新たな知見を追加しており、少子化の原因究明と対策に貢献すると考えられ、学位の授与に値するものと考えられる。 |