学位論文要旨



No 214553
著者(漢字) 宮澤,敬治
著者(英字)
著者(カナ) ミヤザワ,ケイジ
標題(和) 慢性関節リウマチ滑膜細胞のIL-6産生機序の解析
標題(洋) Mechanisms of interleukin-6 synthesis by human rheumatoid synoviocytes
報告番号 214553
報告番号 乙14553
学位授与日 2000.02.09
学位種別 論文博士
学位種類 博士(薬学)
学位記番号 第14553号
研究科
専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 教授 松木,則夫
 東京大学 教授 首藤,紘一
 東京大学 教授 堅田,利明
 東京大学 助教授 仁科,博史
 東京大学 助教授 西山,信好
内容要旨 緒言

 慢性関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)は、再燃と緩解を繰り返す多発性関節炎である。RAの主病変部位は滑膜組織であり、肉眼的には滑膜が繊毛状に増殖し、肉芽組織(パンヌス)を形成し、これにより軟骨や骨を侵食破壊する。このような活動性の滑膜中には、単球/マクロファージ様滑膜細胞やリンパ球が浸潤し、線維芽細胞様滑膜細胞が増殖している。これらの活性化された細胞は、Interleukin-1(IL-1)、TNF-、およびIL-6を産生し、RAの病理生理的な特徴と深く関係している。IL-6は、多機能サイトカインであり種々のターゲット細胞の効果を仲介する。RAの免疫学的異常は、polyclonal plasmacytosis、自己抗体の産生、急性タンパク質の上昇、末梢血の血小板数の上昇が挙げられるが、これらの臨床症状のすべてがIL-6の生物学的作用と関連している。実際に、IL-6濃度が滑液や血清中で増加している。近年、抗TNF-抗体、抗IL-6抗体の投与で、明らかな臨床効果が報告されている。この事実は、炎症性サイトカインの産生異常病として把握することが可能であることを示唆している。そこで、パンヌス形成や軟骨破壊に直接寄与する線維芽細胞様滑膜細胞のサイトカインIL-6産生に着目し、以下の解析を行った。

第一章慢性関節リウマチ(RA)滑膜細胞の自律的IL-6遺伝子転写亢進

 まず、RA患者由来の滑膜細胞におけるIL-6の産生が無刺激下でも対照に用いた変形関節炎患者由来に比べて著しく亢進していることを明らかにした。しかし、混入している細胞の影響も考えられたので、クローン化をして検討した結果、線維芽細胞様滑膜細胞のシングルセルレベルでもIL-6高産生能を維持しているクローンがあった。また、このクローン自身が産生するサイトカインの影響も考えられたので、TNF-およびIL-1中和抗体を添加して検討した結果、IL-6産生能に変化がなかった。従って、この滑膜細胞のIL-6産生は自律的に亢進しているためと考えられた。次に、このIL-6産生亢進の分子生物学的メカニズム明らかにするために、nuclear run-on assayを行った結果、IL-6を高産生するクローンではIL-6遺伝子の転写レベルが著しく亢進していることが明らかになった。さらに、IL-6プロモータ領域のどのエレメントが重要かを同定するため、核内因子についてゲルシフト法を用いて検討した。その結果、IL-6高産生性クローンではIL-6Bエレメントに対するp50とp65のNF-BサブユニットおよびEpstein-Barr virus C-promoter binding factor 1(CBF1)の結合が有意に亢進していることが明らかになった。従って、滑膜細胞における自律的なIL-6産生は、持続的なNF-BとCBF1の活性化によることが示唆された。

第二章RA線維芽細胞様滑膜細胞のSV40 T antigenによる不死化細胞株の樹立とその特徴

 RA患者由来の線維芽細胞様滑膜細胞の特徴を半永久的に維持した細胞株の樹立を行うため、初代培養細胞をSV40 T antigenでトランスフェクションし、その継代培養を一年以上継続した。その結果、crisisを克服して150 population doublingsを通過し、初めて不死化RA線維芽細胞様滑膜細胞MH7Aの樹立に成功した。まず、この細胞株の増殖能に関する特徴を明らかにするため、血清に対する作用について検討した結果、MH7A細胞は、対照に用いた親株に比べて高密度まで増殖することが明らかになった。また、SV40 T antigenそしてp53およびRBの発現について免疫組織染色法により検討した結果、これらはいずれも核内で高レベルに発現していることが明らかになった。従ってこの増殖能の促進は、p53およびRBがSV40 T antigenヘトラップされるという既知の現象で、少なくとも一部は説明できることが示唆された。さらに、増殖に関与するp42/p44 MAP kinaseについて検討した結果、無刺激下で持続的に活性化されていることが明らかになった。その理由として、SV40 small t antigenの関与の可能性が考えられたため、ウエスタンブロッティングで検討した結果、持続的に発現していることが明らかになった。従って、SV40 small t antigenとプロテインホスファターゼPP2Aが相互作用するため、p42/p44 MAP kinaseが持続的に活性化されていると考えられた。次に、表面抗原の特徴を明らかにする目的で、FACScanにより検討した結果、IL-1レセプター(IL-1R)、ICAM-1、CD16、CD40、CD80、そしてCD95が発現されていることが明らかになった。そこで、IL-1Rが機能的に維持されているかを調べるために、IL-1刺激によるICAM-1発現能およびIL-6およびstromelysin-1産生能を検討した結果、親株と同様にこれらの反応性が維持されていることが明らかになった。従って、MH7A細胞株がRA線維芽細胞様滑膜細胞のIL-1シグナルトランスダクションの研究に有用であることが示唆された。

第三章RA線維芽細胞様滑膜細胞のIL-1刺激IL-6産生における転写因子の役割

 RA線維芽細胞様滑膜細胞におけるIL-6遺伝子の転写制御メカニズムを明らかにする目的で、不死化RA線維芽細胞様滑膜細胞株MH7Aを用い、生理学的に重要なIL-1による刺激によりIL-6プロモーターがどのように制御されているかについて検討した。まず、IL-6プロモーターのdeletion analysisによる転写活性を検討した結果、IL-6プロモーターが2つの正のエレメント(-159 to -142 bpおよび-77 to -59 bp)により制御されていることが明らかになった。これらのエレメントに結合する核内因子を同定するため、ゲルシフト法により検討した結果、-159 to -142 bp部位にCCAAT/enhancer binding protein-(C/EBP)が持続的に結合していることが明らかになった。さらに、-77 to -59 bpに相当するプローブは3つのポジティブバンドを与えたため、特異的抗体を用いて検討した結果、そのうち2つの泳動度の遅いバンドはIL-1により誘導され、NF-B p50/p65のヘテロダイマーとp65/p65のホモダイマーから構成されていることが明らかになった。また、泳動度の早いバンドは持続的に発現しており、CBF1と同定された。さらに、この転写因子の機能を明らかにする目的で、IL-6プロモーターへの変異導入により解析した結果、C/EBP結合エレメントの変異ではIL-1に対する反応性は維持されていたが、転写活性が46%低下した。それに対して、NF-BおよびCBF1エレメントの変異ではIL-1に対する反応性が無くなり転写活性が低下した。従って、C/EBP結合エレメントは主にIL-6プロモーターの基本転写活性を制御しているのに対し、NF-BおよびCBF1結合エレメントはIL-1によるIL-6プロモーターの誘導活性に関与していることが示唆された。対照に用いた変形関節炎(OA)滑膜細胞ついて検討した結果、IL-1刺激IL-6プロモーター活性がCBF1結合エレメントの変異において影響が無かったことから、OA滑膜細胞ではCBF1がIL-6転写活性に関与していないことが示唆された。

第四章ヒト線維芽細胞様滑膜細胞におけるp38 MAP kinaseによるIL-1刺激IL-6遺伝子発現の制御

 ヒト線維芽細胞様滑膜細胞において、p38 MAP kinase特異的阻害剤SB203580が濃度依存的にIL-1刺激IL-6産生を抑制することを明らかにした。まず、このIL-1による滑膜細胞内でのp38 MAP kinase作用を明らかにする目的で、免疫沈降法およびウエスタンブロッティング等を行い検討した結果、p38 MAP kinaseのタンパク質は恒常的に発現されており、IL-1刺激でp38 MAP kinaseの基質の一つである転写因子ATF2を時間依存的にリン酸化した。従って、IL-1刺激で細胞内においてp38 MAP kinaseが活性化されることが明らかになった。さらに、この活性化がSB203580によって細胞内で抑制されるかどうかを明らかにするため、p38 MAP kinaseの基質となるMAPKAP kinase-2の細胞内における活性化を検討したところ、SB203580は濃度依存的にこれを抑制した。従って、SB203580は滑膜細胞内で確かにIL-1刺激p38 MAP kinaseの活性化を抑制することが示された。さて、SB203580にょるIL-1刺激IL-6産生抑制の分子生物学的機序を明らかにするため、ノーザンブロッティングによりIL-6 mRNA発現について検討した結果、SB203580のIL-6産生抑制率と同程度のIL-6 mRNAを濃度依存的に抑制した。従って、そのメカニズムはSB203580のIL-6遺伝子転写抑制あるいはmRNAの安定性低下作用によるものと考えられる。そこでこの作用機序を明らかにするため、まずnuclear run-on assayを行って検討した。その結果、SB203580はIL-6転写速度には影響を与えなかったため、mRNAの安定性に作用していると考えられた。実際に、RNAの合成阻害剤であるアクチノマイシンDを用いて検討した結果、IL-6 mRNAの安定性がSB203580により有意に低下した。従って、SB203580によるIL-6 mRNA発現抑制作用は、SB203580がIL-6遺伝子転写速度に影響を与えた結果ではなく、IL-6 mRNAの安定性を低下させるためであることが示唆された。最後に、タンパク質産生阻害剤に対する作用を検討した結果、シクロヘキシミドの存在下ではSB203580のIL-6 mRNAの発現抑制作用が消失した。従って、SB203580のIL-6 mRNAの安定性低下作用はタンパク質産生を介することが示唆された。

総括

 本研究において慢性関節リウマチ滑膜細胞のIL-6産生機序を検討した結果、IL-6遺伝子転写にはNF-BとCBF1が、IL-6 mRNAの安定化にはp38 MAP kinaseがそれぞれ重要な役割を演じていることを明らかにした。今後はこれらの新薬開発ターゲット分子としての妥当性についてさらに研究を進めたい。

審査要旨

 慢性関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)は、再燃と緩解を繰り返す多発性関節炎である。主病変部位は滑膜組織であり、滑膜が繊毛状に増殖して肉芽組織(パンヌス)を形成し、軟骨や骨を侵食破壊する。滑膜中には、単球/マクロファージ様滑膜細胞やリンパ球が浸潤し、線維芽細胞様滑膜細胞が増殖している。これらの活性化された細胞は、Interleukin-1(IL-1)、TNF-、およびIL-6を産生し、RAの病理生理的な特徴と深く関係している。RAの免疫学的異常は、polyclonal plasmacytosis、自己抗体の産生、急性タンパク質の上昇、末梢血の血小板数の上昇が挙げられるが、これらの臨床症状は全てIL-6の生物学的作用と関連しており、実際にIL-6濃度が滑液や血清中で増加している。近年、抗TNF-抗体、抗IL-6抗体の投与で、明らかな臨床効果が報告されている。これらの事実は、RAが炎症性サイトカインの産生異常病として把握することが可能であることを示唆している。そこで、パンヌス形成や軟骨破壊に直接寄与する線維芽細胞様滑膜細胞のサイトカインIL-6産生に着目し、以下の解析を行った。

 まず、RA患者由来の滑膜細胞におけるIL-6の産生が無刺激下でも対照に用いた変形関節炎患者由来に比べて著しく亢進していることを明らかにした。しかし、混入している細胞の影響も考えられたので、クローン化をして検討した結果、線維芽細胞様滑膜細胞の単一細胞レベルでもIL-6高産生能を維持しているクローンがあった。また、このクローン自身が産生するサイトカインの影響も考えられたので、TNF-およびIL-1中和抗体を添加して検討した結果、IL-6産生能に変化がなかった。従って、この滑膜細胞のIL-6産生は自律的に亢進しているためと考えられた。次に、このIL-6産生亢進の分子生物学的メカニズム明らかにするために、nuclear run-on assayを行った結果、IL-6を高産生するクローンではIL-6遺伝子の転写レベルが著しく亢進していることが明らかになった。さらに、IL-6プロモータ領域のどのエレメントが重要かを同定するため、核内因子についてゲルシフト法を用いて検討した。その結果、IL-6高産生性クローンではIL-6Bエレメントに対するp50とp65のNF-BサブユニットおよびEpstein-Barr virus C-promoter binding factor 1(CBF1)の結合が有意に亢進していることが明らかになった。従って、滑膜細胞における自律的なIL-6産生は、持続的なNF-BとCBF1の活性化によることが示唆された。

 RA患者由来の線維芽細胞様滑膜細胞の特徴を半永久的に維持した細胞株の樹立を行うため、初代培養細胞をSV40 T antigenでトランスフェクションし、その継代培養を一年以上継続した。その結果、crisisを克服して150 population doublingsを通過し、初めて不死化RA線維芽細胞様滑膜細胞MH7Aの樹立に成功した。まず、この細胞株の増殖能に関する特徴を明らかにするため、血清に対する作用について検討した結果、MH7A細胞は、対照に用いた親株に比べて高密度まで増殖することが明らかになった。また、SV40 T antigenそしてp53およびRBの発現について免疫組織染色法により検討した結果、これらはいずれも核内で高レベルに発現していることが明らかになった。従ってこの増殖能の促進は、p53およびRBがSV40 T antigenヘトラップされるという既知の現象で、少なくとも一部は説明できることが示唆された。さらに、増殖に関与するp42/p44 MAP kinaseについて検討したと結果、無刺激下で持続的に活性化されていることが明らかになった。その理由として、SV40 small t antigenの関与の可能性が考えられたため、ウエスタンブロッティングで検討した結果、持続的に発現していることが明らかになった。従って、SV40 small t antigenとプロテインホスファターゼPP2Aが相互作用するため、p42/p44 MAP kinaseが持続的に活性化されていると考えられた。次に、表面抗原の特徴を明らかにする目的で、FACScanにより検討した結果、IL-1レセプター(IL-1R)、ICAM-1、CD16、CD40、CD80、そしてCD95が発現されていることが明らかになった。そこで、IL-1Rが機能的に維持されているかを調べるために、IL-1刺激によるICAM-1発現能およびIL-6およびstromelysin-1産生能を検討した結果、親株と同様にこれらの反応性が維持されていることが明らかになった。従って、MH7A細胞株がRA線維芽細胞様滑膜細胞のIL-1シグナルトランスダクションの研究に有用であることが示唆された。

 RA線維芽細胞様滑膜細胞におけるIL-6遺伝子の転写制御メカニズムを明らかにする目的で、不死化RA線維芽細胞様滑膜細胞株MH7Aを用い、生理学的に重要なIL-1bによる刺激によりIL-6プロモーターがどのように制御されているかについて検討した。まず、IL-6プロモーターのdeletion analysisによる転写活性を検討した結果、IL-6プロモーターが2つの正のエレメント(-159 to -142 bpおよび-77 to -59 bp)により制御されていることが明らかになった。これらのエレメントに結合する核内因子を同定するため、ゲルシフト法により検討した結果、-159 to -142 bp部位にCCAAT/enhancer binding protein-(C/EBP)が持続的に結合していることが明らかになった。さらに、-77 to -59 bpに相当するプローブは3つのポジティブバンドを与えたため、特異的抗体を用いて検討した結果、そのうち2つの泳動度の遅いバンドはIL-1により誘導され、NF-B p50/p65のヘテロダイマーとp65/p65のホモダイマーから構成されていることが明らかになった。また、泳動度の早いバンドは持続的に発現しており、CBF1と同定された。さらに、この転写因子の機能を明らかにする目的で、IL-6プロモーターへの変異導入により解析した結果、C/EBP結合エレメントの変異ではIL-1に対する反応性は維持されていたが、転写活性が46%低下した。それに対して、NF-BおよびCBF1エレメントの変異ではIL-1に対する反応性が無くなり転写活性が低下した。従って、C/EBP結合エレメントは主にIL-6プロモーターの基本転写活性を制御しているのに対し、NF-BおよびCBE1結合エレメントはIL-1によるIL-6プロモーターの誘導活性に関与していることが示唆された。対照に用いた変形関節炎(OA)滑膜細胞ついて検討した結果、IL-1刺激IL-6プロモーター活性がCBF1結合エレメントの変異において影響が無かったことから、OA滑膜細胞ではCBF1がIL-6転写活性に関与していないことが示唆された。

 ヒト線維芽細胞様滑膜細胞において、p38 MAP kinase特異的阻害剤SB203580が濃度依存的にIL-1刺激IL-6産生を抑制することを明らかにした。まず、このIL-1による滑膜細胞内でのp38 MAP kinase作用を明らかにする目的で、免疫沈降法およびウエスタンブロッティング等を行い検討した結果、p38 MAP kinaseのタンパク質は恒常的に発現されており、IL-1刺激でp38 MAP kinaseの基質の一つである転写因子ATF2を時間依存的にリン酸化した。従って、IL-1b刺激で細胞内においてp38 MAP kinaseが活性化されることが明らかになった。さらに、この活性化がSB203580によって細胞内で抑制されるかどうかを明らかにするため、p38 MAP kinaseの基質となるMAPKAP kinase-2の細胞内における活性化を検討したところ、SB203580は濃度依存的にこれを抑制した。従って、SB203580は滑膜細胞内で確かにIL-1刺激p38 MAP kinaseの活性化を抑制することが示された。さて、SB203580によるIL-1刺激IL-6産生抑制の分子生物学的機序を明らかにするため、ノーザンブロッティングによりIL-6 mRNA発現について検討した結果、SB203580のIL-6産生抑制率と同程度のIL-6 mRNAを濃度依存的に抑制した。従って、そのメカニズムはSB203580のIL-6遺伝子転写抑制あるいはmRNAの安定性低下作用によるものと考えられる。そこでこの作用機序を明らかにするため、まずnuclear run-on assayを行って検討した。その結果、SB203580はIL-6転写速度には影響を与えなかったため、mRNAの安定性に作用していると考えられた。実際に、RNAの合成阻害剤であるアクチノマイシンDを用いて検討した結果、IL-6 mRNAの安定性がSB203580により有意に低下した。従って、SB203580によるIL-6 mRNA発現抑制作用は、SB203580がIL-6遺伝子転写速度に影響を与えた結果ではなく、IL-6 mRNAの安定性を低下させるためであることが示唆された。最後に、タンパク質産生阻害剤に対する作用を検討した結果、シクロヘキシミドの存在下ではSB203580のIL-6 mRNAの発現抑制作用が消失した。従って、SB203580のIL-6 mRNAの安定性低下作用はタンパク質産生を介することが示唆された。

 以上、本研究において慢性関節リウマチ滑膜細胞のIL-6産生機序を検討した結果、IL-6遺伝子転写にはNF-BとCBF1が、IL-6 mRNAの安定化にはp38 MAP kinaseがそれぞれ重要な役割を演じていることを明らかにした。これらの知見はRA病態の理解を深めただけでなく、新しいRA治療薬の開発ストラテジーを提供するものであり、博士(薬学)の授与に値するものと判断した。

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