学位論文要旨



No 214632
著者(漢字) 黒坂,五馬
著者(英字)
著者(カナ) クロサカ,イツマ
標題(和) 美術館・博物館における使用建築材料が収蔵美術品におよぼす有害性とその防止対策に関する研究 : 特にセメントコンクリートから発生するアンモニアを中心にして
標題(洋)
報告番号 214632
報告番号 乙14632
学位授与日 2000.03.16
学位種別 論文博士
学位種類 博士(工学)
学位記番号 第14632号
研究科 工学系研究科
専攻 建築学専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 教授 友澤,史紀
 東京大学 教授 菅原,進一
 東京大学 教授 鎌田,元康
 東京大学 教授 長澤,泰
 東京大学 助教授 岸本,昭
内容要旨

 コンクリートから発生するアンモニア(NH3)を中心に建築材料が平常時に他の物質に与える影響の一つとして、鉄筋コンクリート造美術館構成材から内蔵美術品に損傷を与える有害物質の放出を追求し、その原因及びそれに対する対策を検討したものである。従来の建材の研究は、自身の物理的力学的性質に主眼が置かれ、材料が他に与える影響は一部火災時に留まり平常時はデザイン的感覚面以外は余りされていない。しかし、此等の研究により建築物も多大な発展をし、多くのRC造建築物が建設され、美術館・博物館も例外でない。が此の建築物で木造時になかった内蔵美術品に変色等が見られ、特に建造初期に著しく、やむなく「枯らし」と称す数年の未使用期間を設けている。本来、内蔵物を外敵から守るべきが逆って危害を加える皮肉な現象である。此は、新コンクリートが暫時水分放出による室内の多湿化、しかもコンクリートの放出物は水分以外には余りないとされていたことによる。しかし当研究で水分以外に有害物を放出し、他の一般内装材料等も、収蔵美術品に悪影響を与えることが判明したので、その概要とそれを前提、かつ此等のみの観点からであるが美術館・博物館の設計に際する留意点を述べた。展示・収蔵・保存という美術館・博物館の重要機能の一つである文化財保存の科学は、文化財自身の構造材質を把握し内外的条件による変化を検討する必要があるが、此までの研究は温湿度面に目が向き、建材が文化財に与える影響までトータルに研究した収蔵設備の規範資料は極めて少ない。従って本研究に直接該当する文献は国内外を通じ殆ど無く、多少の類似国内文献は的外れで余り参考とならない。相対的に互いに関連性をもつ研究をし、収蔵条件を中心とした美術館・博物館設計の規範となる資料を作成すべきである。

 第1章は、序論で研究の目的と背景及び内容と範囲を述べた。

 第2章は、既往の研究をまとめた。

 第3章は、まず実現象として建材が美術品に与える悪影響の有無を実験により確認、即ち美術材の洋画材画用液、顔料、動・植物性繊維材及び化学繊維材、金属材に対し建材のコンクリート、木材、内装材、接着剤等が与える色彩、光沢、引張強度、伸縮の変化を検討の結果、多くの建材は程度差はあるが美術品に悪影響を与えた。就中、画用液の代表的材料のあまに油のコンクリートによる変色は特に顕著であるので此を中心に実験、考察をした。あまに油変色の化学反応機構を赤外線分光分析・X線回折分析及び化学分析等の検討では自身の乾燥、周辺の空気成分、光、水分、温度による影響も左程なく、コンクリートの存在により生ずる現象で、しかもコンクリートからの塵、蒸気、ガス又はその混合物により、あまに油を変色させる成分は硫黄、塩素、窒素の何れかにあると判明した。

 第4章は、コンクリートからの空中遊離物質の状態はコンクリートの飛散粒子、又は気体或いは他物か、物理的、化学的、生物的見地より検討し、一因は微生物の作用ではなく非粒子状でガス状に近く、水溶性のアルカリ性、非結晶性の物質によることが判明した。

 第5章は、この性状を持つ物質はNH3と考えたが、念のため検知管であまに油を変色させたH2S、SO2、Cl2、HClを捕集したが、NH3以外は捕集出来なかった。但し、SO2はNH3に干渉され定量捕集は不確実であるが、実験中に生じた沈澱物のX線分析では、2HgSO4・3NH3か又は此の類似物で、一概には存在を否定できない。NH3に比し絶対量は少なく、更に低濃度ではあまに油の変色能力は微力故に変色主物質はやはりNH3であると言える。依って、以後コンクリートから空中遊離するNH3に関し検討した。

 第6章は、NH3の適正捕集分析法としてインドフェノール法を主に、他法のネスラー法、イオン計法と比較又は組み合わせでNH3であることを確認し、更にその発生状態、機構、原因を検討した。発生量はコンクリートの体積に比例、高温多湿時に増加するが経時と共に減少する。例えば、天然川骨材コンクリートで最大放出量は約4l/m3・dayであり、此等の関係は大凡次の通りである。y=1.81×10-6×t-0.57×h4.22×1.03T

 y:アンモニア発生量(mg/m3・day)、t:材令(月)、h:含水率(%)、T:温度(℃)

 NH3発生機構はコンクリートの主成分にNH3を生成する窒素物は存在しないので、コンクリートの構成材別に発生量を検討、発生機構の解明を試み材料の組成分・性状・形状・製造・経時等による発生変化を調べた。水はあまに油を僅かに退色させるのみでNH3含有量は飲料水に約0.4ppmと市販精製水の5倍近く、更に工業用水は、より多量の含有と思われるが、この量では水単体で直接の発生源とは考えにくい。セメントはクリンカー<普通ポルト<早強セメント<高炉セメントとなり、普通ポルトランドセメントはメーカーにより約2倍の違い、高炉セメントは他に比し著しく多量の40倍以上で高炉水滓の含有量に比例する。骨材は骨材単体、骨材と水、骨材とセメントの組み合せのみではNH3は加害する程は発生せず、3材を混合して始めて発生する。骨材の種類、産地、製造方法により発生量・速度・時期が夫々異なり、発生から約10年の推定総発生量は、天然川砂約28ml/kg、高炉スラグ骨材約38ml/kgとスラグ骨材が少々多く発生し、セメントに比し、7〜9倍である。更に粗骨材より細骨材が多量に発生し天然川骨材が約10倍、高炉スラグ骨材は多いもので100倍以上にも達する。発生状態は初期多量に発生し漸時減少するがその現象は川砂が比較的急激であるのにスラグ骨材は緩慢で材令1年後では完全に逆転する。添加剤・混和剤のセメント製造過程中に少量混入する粉砕助剤・風化防止剤としてアミン類、施行時に混入する混和剤は僅かの影響であって主因と認められない。コンクリートのNH3発生量を構成材夫々の単位量当りに比較すると、水<セメント<骨材と、骨材の影響が強く、更に混合使用量からこの影響力は一層大きく殆ど骨材により決まる。

 コンクリートの主成分に含窒素物はない事と前記発生状態から主に骨材から発生すると考えられることで、コンクリート構成主材別に機構に果たす作用を考察すると、調合水は自身の含有NH3は少量にも拘わらずコンクリートの含水量に比例し発生する事は他物質をNH3に化学反応させるに要する。セメントは混合物、特に高炉水滓スラグの混入量に比例し発生量が増加する。それは後述の水滓スラグと同様理由で多量のNH3となり得る窒素を含有するためである。クリンカー自体もスラグと類似製造工程であるので、キルン中で窒素を多少含有すると推測される。しかしコンクリートとしてのセメントは自身の発生よりもNH3関連物質からNH3を遊離させる強アルカリ性環境を提供する作用が主である。骨材は、セメントの主成分のCaO、更に強アルカリ性のNaOHを添加すると、アルカリ度に比例して発生する。即ち骨材の或る種の成分に対して強アルカリ性が化学反応を起こしNH3を発生させる。

 骨材への窒素含有物の侵入機構を検討すれば、天然川骨材のNH3発生量は骨材表面積に比例することから骨材表面に付着した天然の含窒有機物がセメントと混合されると強アルカリ性下でNH3となり遊離すると考えられる。ちなみに天然で窒素分を含む有機物(植物根や昆虫死骸等)の腐食土にCaOを加えるとNH3が検出され、しかもあまに油もNH3による特有の茶褐色化する。一方、スラグ骨材では、骨材表面積より体積に比例するので骨材内部に含有されていると推測されるが、スラグ原料の鉄鉱石には窒素は存在しないので如何なる機会に包含するか考察した。「セメント及びスラグ成分と類似しているガラスは製造過程で高温時の還元性雰囲気内では空気中の窒素及び窒素化合物を溶解する」「溶融スラグ中の窒素は炭素共存のような強還元性雰囲気のもとで溶解する」「ガラスに溶解した窒素量は還元性雰囲気で酸化性雰囲気の10倍以上、強還元性雰囲気では実に2250倍も存在する」との文献から製造工程、即ち炉内で空中の窒素を吸収すると考え、相違した炉内雰囲気で製作したスラグ骨材のNH3発生量を検討した。炭素不使用電気炉酸化期スラグと同還元期スラグでは後者は多く発生し、又炭素を使用する高炉スラグは更に多量発生することから炉内でNH3源である含窒素物を含有すると考える。次に、冷却法の相異による発生量を検討すると、溶融スラグのうち、粗骨材は炉外で空中放置の徐冷のため不純物は結晶過程で排除し余り残存しないが、細骨材となるスラグは水急冷するため不純物を排除する間もなくガラス質化し既に含有している窒素を束縛し後にNH3となって発生すると考える。そこで、同一炉から製造した徐冷ど急冷のスラグ骨材を人工的に粒度調整し、同表面積・同体積で比較すると、後者は約3〜18倍多い。「異冷却スラグの骨材粒子状態は、徐冷骨材は結晶質で、急冷骨材は多孔質のガラス状であり、水を冷却媒体とした場合多量の発泡がみられる」「水急冷(細骨材)の気孔生成に水が関与し、その気孔はH2とN2が全ガス量の90%を占める」という文献から、溶融スラグ中の窒素を急冷により粒子内に束縛し、気孔中でN2+3H2→2NH3の反応を起こし発生すると思われる。第7章は、これまでにコンクリートがNH3を遊離し、美術品に悪影響を及ぼす事を実験により究明したので実在文化財保存建造物からNH3吸収・あまに油変色測定をしところ、夫々ほぼ予想通りの結果を得た。

 第8章は、此迄の検討で、この防護対策を考える事は少々早計の感あれど敢えて試た。現状ではある程度の規模の美術館・博物館は、多少のコンクリート使用はあり得るので、これを前提とした対策は、コンクリートのNH3放出を積極的に無くす材質改善は理論上可能でも現段階では実用化は困難であるから消極的であるが既製材でもその組合せや施工法等による多少の影響緩和はできる。同種材料でもNH3発生量は夫々異り、選択で約7〜8倍の開きとなる。更に施工時の減少を計ると天然川骨材はNH3発生原因物が骨材表層部付着含窒有機不純物で、それが強アルカリ性物質によりNH3を発生させるので、この消失を考えコンクリート打設前に骨材を水又はアルカリ溶液で浸漬洗浄すると残留NH3量は水で約40%減、Ca系で約60〜70%減、Na系で約80%減となる。更に打設時に少量添加すると効果的であるがNa系はコンクリート強度を低減させるのでCa系のCaOHが良好である。更にNH3発生は温湿度に比例するので蒸気養生で低減可能だが、この方法は設計計画、施行法が制約されるので工夫を要す。次に、空気調和機械設備による方法を検討すると、コンクリートの発生NH3を吸収し得るフィルターは現状では低濃度に対してまで有効なものはない。発生NH3は、低濃度ではあるが美術品に無害となる濃度は更に低く、あまに油に対し0.03ppm以下に保つ必要がある。これに対し風力に依る美術品の物理的破壊や温湿度に無影響な風速は1m/sec以下であるので強換気は行えず機械的な防護対策は困難である。よって事後対策でなく事前の建築計画とも相俟って影響軽減を計るべきである。コンクリートのNH3発生は前記の方法で軽減しても、ある程度の発生は避けられないので、NH3の美術品への防触のため2層の夫々異材質による内壁を設け、この間を別系統空調を行う事で多少緩和されるが、総体的には左程の効果はないので更に根本的な設計による必要がある。まず配置計画に関係室壁の温・湿度の上昇防止のため付近の池・噴水と水辺及び南・西向、最高階・地下階の配置を避け或いはこれらの方向に植栽を行い更に構造的にも断熱・断水・通気性材による外壁仕上げと、壁材よりの放出NH3の外部放出を計り内部放出の軽減と室内気積の大容量化、入隅部の不設、往・梁等の大容積材の隠蔽等の工夫を要す。

 第9章では、結論として今後の展望を述べた。昨今の美術館・博物館の建設は年間に約100件近くであった。此に際し文化庁はコンクリート躯体が放出する有害物除去対策として数年の「枯らし」や竣工から開館までの強制機械換気を指導しているが、難問点が多く且つ不十分である。例えば、平均的収蔵庫でコンクリートの発生NH3があまに油に対し安全濃度となるには約50年程度を要する。当研究では、コンクリートが放出する有害物質の一つをNH3と突き止め、建築物が美術品に与える影響を究明し、その対策をも考えた。此等のデーターを基に良き美術館建設を計らなければならない。

審査要旨

 本論文は、「美術館・博物館における使用建築材料が収蔵美術品におよぼす有害性とその防止対策に関する研究-特にセメントコンクリートから発生するアンモニアを中心として-」と題し、美術館・博物館等に収蔵される油絵その他の美術品に生じる変色等の被害の原因がコンクリートから室内空気中に放出される微量のアンモニアによることを初めて発見したもので、その検出と実験による証明、発生原因の解明、その被害の防止策および建築設計・施工時における留意事項の提案を述べている。

 鉄筋コンクリート造の美術館・博物館等が多く建築されるようになって以来、収蔵物である貴重な美術品・文化財等に変色などの被害がみられるようになり、特に建造初期に被害が著しいため、やむな「枯らし」と呼ぶ数年にわたる建物未使用期間を設けるなどの対策が講じられてきた。しかしこのことは美術品・文化財の展示のみでなく収蔵・保存という美術館・博物館の重要な機能を損なうばかりでなく、折角建造した建物が数年間使用できないという社会的損失も大きい。これは文化財保存科学の分野でも重大な課題であったが、原因を特定出来ず、有効な対策が立てられない状況であった。これに対して、著者はこれら建築物に使用される建築材料の影響を疑い、数多くの建築材料の影響を実験的に丹念に調査し、ついにこの変色の主原因がこれら建築物の主要材料であるコンクリートから放出されるごく微量のアンモニアによることを発見した。このことは当初、なかなか信じがたいことであったが、コンクリートを構成する各種材料がアンモニア放出量に及ぼす影響等を詳細に調査してこのことを証明し、またこれらの研究を通じて美術館・博物館等の設計・施工において配慮すべきアンモニアによる美術品等の被害防止指針を提案している。

 最近、各種建築材料による室内空気汚染とその人体への影響が論議されているが、本来外的作用から内部の人間・生命体や収蔵物を保護すべき建築材料がそれらに害を与え得ることを対象にした研究の嚆矢をなすものといえよう。

 論文は、9章で構成されている。

 第1章「序論」では、研究の目的、背景および内容、範囲を述べている。

 第2章「既往の研究に関する文献研究」では、建築分野でこのような目的の研究は研究開始当時皆無に等しかったこと、文化財保存科学の分野においても文化財自体の変質・老化現象を対象にした研究が多く、建築材料の影響についての研究はほとんどなかったこと、ただし新築のコンクリート造建物で美術品が被害を受けることは知られており、その原因究明の試みが温湿度の影響を中心になされていたことなどを述べている。

 第3章「建築材料が美術品に与える影響に関する予備的検討」では、建築に使用される数多くの無機、有機系材料、木材、コンクリートなどの材料および疑わしい各種化学薬品、活性気体、さらには光・水分・温度などの物理的要因が、画用液、顔料、動植物繊維、化学繊維、金属材料など多種多様の美術品材料の変質、変色などに及ぼす影響をスクリーニングテストし、これらの影響の有無を明らかにしたが、中でも画用液の代表的材料であるあまに油がコンクリートと共存した場合の変色現象が顕著であることを発見した。

 第4章「あまに油の変色に関与するコンクリートからの空中遊離物質の検出に関する研究」では、3章で発見した現象について化学的、物理的、生物的手法により原因追及を行い、その原因がコンクリートから放出される極微量の水溶性のアルカリ性気体状物質であることを突き止めた。

 第5章「あまに油の変色に関与するコンクリートからの空中遊離気体状物質の同定」では、上記気体状物質はアンモニアであると推定されたが、3章においてあまに油を変色させたその他の物質も含めて、微量放出気体を検知管や化学分析手法によって同定した結果、アンモニアであることを確認している。

 第6章「コンクリートから空中遊離されるアンモニアに関する研究」では、上記の確認をさらに確証するために、数種類のアンモニア検出方法を用いて検証し、またその発生機構、各種のコンクリート構成材料の影響等を詳細に分析した。その結果、アンモニアの原料物質は、天然砂利・砂などに含まれる含窒素有機物であったり、セメント原料、混合材、骨材などとして用いられる高炉スラグであることを突き止めた。中でも高炉スラグは製鉄プロセスの中で空中の窒素や窒素化合物を溶解固定し、コンクリートの高アルカリ性雰囲気中でこれをアンモニアとして遊離するため多量のアンモニアを発生させる原因物質であることを明らかにした。また、これらの実験や測定を通じ、コンクリートが発生するアンモニア量の経時変化、コンクリートの含水率や温度の影響なども明らかにしている。

 第7章「コンクリート造文化財保存関係施設におけるアンモニア発生およびあまに油片変色の実態調査」では、実際のコンクリート造建物において実際にアンモニアが発生し、さらにあまに油を変色させる現象が起こり得るかを実証するために、実在建物(寺院収蔵庫)で竣工後3年間にわたりアンモニアガス発生量を測定し、また九州・中国地方の4美術館・博物館においてあまに油片を約10週間収蔵庫内各位置に暴露して、その変色状況、収蔵庫の平面的配置の影響(方位、すなわち日射によるコンクリート外壁の温度上昇の影響)などを実証した。

 第8章「建築材料が美術品におよぼす悪影響の防止対策」では、以上の研究の成果から、コンクリート造美術館、博物館などの設計および施工にあたり、アンモニア放出量の少ない材料選定、二重壁構造と機械換気の組合せ、建築計画的対策などアンモニアによる美術品等の損傷を防止する有効な手段について具体的な提案を行っている。

 第9章「総括」では、研究を総括し、得られた成果をまとめている。

 以上を要するに、本研究はそれまで全く原因が不明であった美術館等館内における美術品(特に絵画)の変色現象の原因がコンクリートから放出されるごく微量のアンモニアガスであることを緻密な検証を積み重ねることによって発見し、その発生原因と発生機構を明らかにして貴重な文化財等を損傷から保護する建築的方策を提示し、美術品収蔵施設等の設計・建設に必須の指針を示したもので、建築学の発展に大きく寄与するものである。

 よって本論文は、博士(工学)の学位請求論文として合格と認められる。

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