学位論文要旨



No 214768
著者(漢字) 間藤,卓
著者(英字)
著者(カナ) マトウ,タカシ
標題(和) 全身性エリテマトーデスにおけるT細胞クローナリティーの検討
標題(洋)
報告番号 214768
報告番号 乙14768
学位授与日 2000.07.19
学位種別 論文博士
学位種類 博士(医学)
学位記番号 第14768号
研究科
専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 教授 柴田,洋一
 東京大学 助教授 平井,久丸
 東京大学 教授 前川,和彦
 東京大学 教授 中原,一彦
 東京大学 助教授 土屋,尚之
内容要旨 要旨を表示する

要旨

 全身性エリテマトーデスの病態を形成するにあたり、T細胞の活性化が重要な役割を果たすのでないかと考えられている。このことを検証するために、RT-PCR(reverse transcription PCR)法とSSCP(single strand conformation polymorphism)法を組み合わせたT細胞クローナリティーの検出法を用い、SLE患者の末梢血および病巣に集積するT細胞の解析を行った。

 その結果、非活動期の長く続いた寛解状態のSLE患者末梢血においては、T細胞クローンの集積は殆ど認められなかった。一方、増悪期のSLE患者の末梢血においては、著明なクローンの集積が多数観察されたが、T細胞クローンのTCR(T cell receptor)Vβ鎖の検出頻度に偏りは認められなかった。さらに、このT細胞クローンの集積は、病態が改善するにつれて減少を示し、クローン数と病勢には高い相関が示された。くわえて、ループス漿膜炎を呈した患者の胸水および心嚢液からは、さらに多くのT細胞クローンが検出された。検出された多くのクローンは、隔たった病巣部位に共通して存在しており、さらにその一部は末梢血にも認められた。

 今回観察し得た、(1)T細胞クローンの集積度が、SLEの活動度とよく相関すること、(2)一部のT細胞クローンが、SLEの病変部位に共通に集積している、の事実は、SLEの病態の形成にT細胞クローンが関与している可能性を強く示唆するものと考えられた。

審査要旨 要旨を表示する

 本研究は、全身性エリテマトーデスの病態を形成するにあたり、T細胞の活性化が重要な役割を果たすのでないかとの仮説に基づき、このことを検証するために、RT-PCR(reverse transcription PCR)法とSSCP(single strand conformation polymorphism)法を組み合わせたT細胞クローナリティーの検出法を用い、SLE患者の末梢血および病巣に集積するT細胞の解析を行い、以下の結果を得ている。

 1.非活動期の長く続いた寛解状態のSLE患者末梢血においては、T細胞クローンの集積は殆ど認められなかった。

 2.一方、増悪期のSLE患者の末梢血においては、著明なクローンの集積が多数観察されたが、T細胞クローンのTCR(T cell receptor)Vβ鎖の検出頻度に偏りは認められなかった。

 3.このT細胞クローンの集積は、病態が改善するにつれて減少を示し、クローン数と病勢には高い相関が示された。

 4.ループス漿膜炎を呈した患者の胸水および心嚢液からは、さらに多くのT細胞クローンが検出された。検出された多くのクローンは、隔たった病巣部位に共通して存在しており、さらにその一部は末梢血にも認められた。

 以上、本論文は、T細胞クローンの集積度が、SLEの活動度とよく相関すること、および、一部のT細胞クローンが、SLEの病変部位に共通に集積していることを、明らかにしており、SLEの病態の形成に対するT細胞クローンの関与を解明するにあたり、重要な貢献をなすと考えられ、学位の授与に値すると考えられる。

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