No | 214873 | |
著者(漢字) | 権太,浩一 | |
著者(英字) | ||
著者(カナ) | ゴンダ,コウイチ | |
標題(和) | アデノウイルスベクターを用いた Bone Morphogenetic Protein-2(BMP・2)遺伝子導入法によるラット骨格筋阻血変性モデルにおける異所性骨化の誘導に関する実験 | |
標題(洋) | ||
報告番号 | 214873 | |
報告番号 | 乙14873 | |
学位授与日 | 2000.12.20 | |
学位種別 | 論文博士 | |
学位種類 | 博士(医学) | |
学位記番号 | 第14873号 | |
研究科 | ||
専攻 | ||
論文審査委員 | ||
内容要旨 | 生体内遺伝子導入技術は、疾患に対する組換え治療蛋白を効率的に体内で産生させることができる、有望な薬剤投与システムである。著者は、本技術を用いて、強力な骨誘導作用を持つ増殖因子である骨形成蛋白-2(Bone Morphogenetic Protein-2;BMP-2)を生体内で高発現させることによって、骨欠損の治療目的に足る十分な量の骨を誘導することができるのではないかという仮説を立てた。本仮説を検証するために、まず、ヒトBMP-2遺伝子をコードする非増殖型アデノウイルスベクターを作製し、これを成獣ラットの下腿ひらめ筋にウイルス液を直接注入することによってBMP-2遺伝子を導入した。BMP-2遺伝子のひらめ筋内における過剰発現は、RT-PCR法によって確認されたものの、本導入法によって標的筋内あるいはその周囲に骨形成は全く生じなかった。そこで次に、骨前駆細胞を局所に誘導するために、BMP-2遺伝子導入と同時に、筋を同所性に遊離移植し血流遮断することにより阻血変性を生じさせたところ、筋全長にわたって著明な骨化が生じた。一方、筋の血流遮断操作のみ、あるいは血流遮断操作とリポーター遺伝子LacZ導入の組合せでは、全く骨化は起こらなかった。この、血流遮断されたひらめ筋にBMP-2遺伝子を導入することによって生じた骨化の過程は、軟X線写真上のひらめ筋相当部位における不透過像の形成、および組織切片におけるvon Kossa染色によって確認された。また、骨格筋の遊離移植後には阻血変性に引き続いて筋線維の再生が起こるが、移植筋に導入されたBMP-2遺伝子は、阻血変性に伴う筋線維の再生を抑制した。さらに、血流遮断を受けたひらめ筋におけるBMP受容体の発現を免疫組織化学的に検索したところ、BMPタイプ1受容体A発現細胞の増加が認められ、本モデルにおける筋の骨化に対する同受容体の動態の関与が示唆された。結論として、遊離移植による血流遮断後の骨格筋にBMP-2遺伝子を過剰発現させることによって、広い範囲にわたって異所性骨化を起こすことができることが示された。 | |
審査要旨 | 本研究は、骨誘導因子Bone Morphogenetic Protein-2(BMP-2)を生体内で作用させることで骨欠損の治療目的に足る十分な量の骨を誘導するという目的で、BMP-2遺伝子をラット生体内で骨格筋(後肢ひらめ筋)に過剰発現させる実験モデルを作製し、解析を行なったものであり、下記の結果を得ている。 1.非増殖型アデノウイルスベクターを用いたラット骨格筋への遺伝子導入系が、生体内で効率的に遺伝子の過剰発現を引き起こすことが示された。また、本法で遺伝子が導入される標的細胞は、筋衛星細胞やそれに由来する筋管細胞・再生筋線維であることが示された。 2. 骨誘導因子BMP-2の投与システムとして、非増殖型アデノウイルスベクターによるBMP-2遺伝子導入系が、生体内で効率的に骨誘導を起こしうること、また、この誘導骨には骨髄形成も伴い、遺伝子導入後1年を経ても存続していることが示された。 3. 2.の骨誘導作用は、遺伝子導入の標的筋肉が移植され血行遮断された場合に限り認められ、標的筋肉が移植されない場合には骨誘導が起こらなかった。標的骨格筋の移植に伴って、BMP受容体タイプIAの発現細胞が増加し、血流遮断後の筋における骨化現象への関与が示唆された。これら受容体発現細胞の由来は、少なくとも一部は筋衛星細胞であることが示された。 以上、本論文はラット後肢ひらめ筋において、BMP-2遺伝子導入法による異所性のBMP-2過剰発現により、新生骨を効率的に誘導する方法論についての条件を検討し、明らかにしたものであり、遺伝子治療による骨誘導法の開発に重要な貢献をなすと考えられ、学位の授与に値するものと考えられる。 | |
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