学位論文要旨



No 215447
著者(漢字) 福間,康夫
著者(英字)
著者(カナ) フクマ,ヤスオ
標題(和) 制御用アプリケーションソフトウェアの開発支援システムに関する研究
標題(洋)
報告番号 215447
報告番号 乙15447
学位授与日 2002.09.19
学位種別 論文博士
学位種類 博士(工学)
学位記番号 第15447号
研究科 工学系研究科
専攻 情報工学専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 教授 武市,正人
 東京大学 教授 田中,英彦
 東京大学 教授 井上,博允
 東京大学 教授 玉井,哲雄
 東京大学 教授 吉田,真
内容要旨 要旨を表示する

 本論文は、「制御用アプリケーションソフトウエアの開発支援システムに関する研究」と題し、制御用アプリケーションソフトウエア開発をシステムで支援することに関し、設計プロセスおよび製作・テストプロセスについて論じている。設計プロセスについては,仕様のモデル化をはかることにより,モデルを基に仕様の構造的分析・管理,ドキュメントの製作支援,およびその他の支援をコンピュータに行わせることを論じ,また、製作・テストプロセスについては、ターゲットとなる個々の制御用コンピュータの仕様によらない共通的なアプリケーションソフトウエアのインターフェイスおよびプログラミング言語をもうけることにより,プログラムの再利用,テスト環境の高度化,およびオペレーションの統一化を図ることを論じたものである。

 第1章「研究の要件分析」では、研究の対象を明確にした上で研究の焦点を定め、開発支援のための要件を分析している。具体的には,仕様管理、ドキュメント製作支援、製作環境統一、およびテスト支援高度化のための要件を分析抽出している。

 第2章「仕様管理方法」では、まず,仕様コンポーネントなる概念を提案し、仕様コンポーネントは更に詳細な仕様コンポーネントと詳細な仕様コンポーネント間の関係にブレークダウンされるとし、仕様コンポーネントの定義,種類,性質を論じている。つぎに、ブレークダウンされる仕様コンポーネントを管理する仕様管理モデルに関し、その記述方式を提案している。

 第3章「ドキュメント情報管理モデル」では、まず、テキスト枠,図形枠、テーブル枠などのドキュメントコンポーネントが構造的に管理される構造化ドキュメントをベースに各種の仕様記述フォーマットを決め,それらのフォーマットに仕様を記述することを提案している。つぎに,ドキュメントコンポーネントと仕様コンポーネントとの相互マッピングのロジックを用意することにより、記述された仕様コンポーネントをドキュメントから抽出したり、仕様コンポーネントをドキュメント上に書き出したりできることを論じている。

 第4章「製作環境の統一による再利用」では、アプリケーションソフトウエアを個々のコンピュータの仕様によらないで再利用できるようにするには、どのような仕様を標準化したら良いかを分析している。つぎに、具体的な標準環境の構築方法を提案するとともに、そのような標準環境を備えたホストコンピュータとターゲットコンピュータの間における、アプリケーションソフトウエアの再利用の態様を論じている。

 第5章「テスト支援環境の高度化」では、総合シミュレーションテスト環境に求められるべきシステム構造上の要件を述べ、つぎに,特に、総合シミュレーションテストを効率的に行うために必要な、外部シミュレータ機能およびシミュレーション管理機能について論じている。

 第6章「総合支援システム」では、第2章から第5章で論じられた内容を踏まえて、アプリケーションソフトウエア開発を設計から製作・テストまで統合的に支援するシステムは、設計プロセスに関しては、仕様管理モデルを中核に据え、仕様の分析管理,ドキュメントの再利用による自動生成、設計プロセスの管理などを行うべきことを論じている。製作・テストプロセスに関しては、標準環境下で単体テスト,組合せテスト,および総合シミュレーションテストの支援環境を構築することを論じている。

 第7章「適用事例」では、ある製鉄会社において上記研究結果を基に開発した、開発支援システムに関して述べている。まず、第7.1節「事例における適用対象の概況」では、該製鉄会社における制御用アプリケーションソフトウエアの開発業務の概況を述べている。つぎに,第7.2節「開発した支援システム」では、開発したシステムの機能構成、機器構成、およびオペレーション構成について述べ、特に機能構成については、まず、設計支援機能としてドキュメントの製作・再利用・印刷・保管支援機能、および設計情報の分析・管理・再利用支援機能に関して述べ、つぎに、プログラム製作及びテスト支援機能として標準化環境、および単体テストおよび組合せテスト支援機能について述べている。第7.3節「適用結果」では、開発支援システムの実業務へ適用の状況を述べるとともに、その適用実績を評価している。

 さいごに、第8章「技術的知見」では、上記研究過程およびその成果の実務への適用過程を通して得られた技術的知見を3項目挙げて論じている。

審査要旨 要旨を表示する

 本論文は、「制御用アプリケーションソフトウエアの開発支援システムに関する研究」と題し、制御用アプリケーションソフトウエアの開発支援に関して、設計プロセスおよび製作・テストプロセスについて論じたものである。設計プロセスについては、仕様のモデル化により、モデルを基に仕様の構造的分析・管理、ドキュメントの製作支援、およびその他の支援をコンピュータで行う方法を述べている。また、製作・テストプロセスについては、ターゲットとなる個々の制御用コンピュータの仕様によらない共通的なアプリケーションソフトウエアのインターフェイスおよびプログラミング言語を設けてプログラムの再利用、テスト環境の高度化、およびオペレーションを統一的に扱う実践的手法を扱っている。

 第1章「研究の要件分析」では、研究の対象を明確にした上で研究の焦点を定め、開発支援のための要件を分析し、具体的に、仕様管理、ドキュメント製作支援、製作環境統一、およびテスト支援高度化のための要件を分析抽出している。

 第2章「仕様管理方法」では、まず、仕様コンポーネントの概念を提案し、仕様コンポーネントがさらに詳細な仕様コンポーネントとこれらの関係にブレークダウンされることを示している。これらの仕様コンポーネントの定義、種類、性質を論じ、ブレークダウンされる仕様コンポーネントを管理する仕様管理モデルに関して、その記述方式を提案している。

 第3章「ドキュメント情報管理モデル」では、まず、テキスト枠、図形枠、テーブル枠などのドキュメントコンポーネントが構造的に管理される構造化ドキュメントをベースに各種の仕様記述フォーマットを決め、それらのフォーマットによる仕様記述法を提案している。次いで、ドキュメントコンポーネントと仕様コンポーネントとの相互マッピングのロジックを用意することにより、記述された仕様コンポーネントをドキュメントから抽出し、仕様コンポーネントをドキュメント上に書き出す方法を提示している。

 第4章「製作環境の統一による再利用」では、アプリケーションソフトウエアを個々のコンピュータの仕様によらないで再利用できるようにするための仕様の標準化について分析している。具体的な標準環境の構築方法を提案するとともに、そのような標準環境を備えたホストコンピュータとターゲットコンピュータの間におけるアプリケーションソフトウエアの再利用の態様を論じている。

 第5章「テスト支援環境の高度化」では、総合シミュレーションテスト環境に求められるべきシステム構造上の要件を述べ、これを効率的に行うために必要な外部シミュレータ機能およびシミュレーション管理機能について論じている。

 第6章「総合支援システム」では、第2章から第5章で論じた内容を踏まえて、アプリケーションソフトウエア開発を設計から製作・テストまでの統合的支援システムは、設計プロセスに関して仕様管理モデルを中核に据え、仕様の分析管理、ドキュメントの再利用による自動生成、設計プロセスの管理などを行うべきであると主張している。また、製作・テストプロセスに関して、標準環境下で単体テスト、組合せテスト、および総合シミュレーションテストの支援環境の構築法を論じている。

 第7章「適用事例」では、ある製鉄会社において上記研究結果を基に開発した、開発支援システムを扱っている。まず、製鉄会社における制御用アプリケーションソフトウエアの開発業務の概況を示し、開発したシステムの機能構成、機器構成、およびオペレーション構成を示し、開発支援システムの実業務へ適用の状況を述べるとともに、その適用実績を評価している。

 第8章「技術的知見」では、上記研究過程およびその成果の実務への適用過程を通して得られた技術的知見を論じている。

 以上、これを要するに、本研究は制御用アプリケーションソフトウエアの開発支援システム関する具体的な成果をもとに、それに基づく実践的な評価を与えたものであり、情報工学の研究に貢献するところ大である。よって本論文は博士(工学)の論文として合格と認められる。

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