学位論文要旨



No 215696
著者(漢字) 菊地,たかね
著者(英字)
著者(カナ) キクチ,タカネ
標題(和) モノクローナル抗体を用いた Toxoplasma gondii 特異的酵素 Nucleoside triphosphate hydrolase(NTPase) の解析及びそのNTPaseを標的分子としたトキソプラズマ症の早期診断法の確立
標題(洋)
報告番号 215696
報告番号 乙15696
学位授与日 2003.05.21
学位種別 論文博士
学位種類 博士(医学)
学位記番号 第15696号
研究科
専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 教授 北,潔
 東京大学 教授 森,茂郎
 東京大学 教授 深山,正久
 東京大学 助教授 俣野,哲朗
 東京大学 講師 小島,俊行
内容要旨 要旨を表示する

序及び目的

トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii 以下 T. gondii)は細胞内寄生原虫で、日和見感染症を起こす病原体である。ヒトを含め広範な哺乳類及び鳥類が中間宿主となり、ヒトにとっては代表的な人獣共通感染症の一つである。トキソプラズマ感染の多くは、急性感染後、獲得免疫により原虫はcyst(嚢子)を形成し不顕性感染の経過を辿るが、妊婦が T. gondii の初感染を受けると、tachyzoite(増殖体)が増殖して虫血症(parasitemia)を起こし、これが胎盤を通過することにより胎児に移行し流産や死産の原因となる。あるいは、網脈絡膜炎または水頭症などの奇形を伴う先天性トキソプラズマ症児を分娩することになる。また近年、HIV感染患者や臓器移植患者等の免疫不全状態の患者では、トキソプラズマの不顕性感染が急性感染に移行し致死的なトキソプラズマ性髄膜脳炎などを起こし、これらの死亡原因となる新興再興感染症の1つとしても大きな問題となっている。

Nucleoside triphosphate hydrolase (NTPase)は、ジチオスレイトール等で還元されると、ATP、GTP、CTPなどのヌクレオシド三燐酸やADP、GDP等を基質として幅広く加水分解する。これまでにNTPaseの遺伝子はT. gondii RH株から同定されたNTP1〜NTP3の3種類が報告されており、そのうちNTP2は pseudogene である。NTP1およびNTP3の遺伝子はそれぞれアミノ酸レベルで97%の高い相同性を有している。NTPaseはT. gondiiのtachyzoite のステージには細胞の総タンパク量の3-4%にまで発現量が上昇し、T. gondii が増殖する急性感染期には循環抗原として分泌されることから、免疫診断法やワクチンの標的分子の候補として考えられている。そこで、著者は、本研究でこのNTPaseに着目し、第1部ではこのNTPaseに特異的に反応するモノクローナル抗体(6C6)を作製し、6C6に認識されるNTPase分子の性状および細胞内における局在そして6C6による侵入阻害能について調べた。さらに、エピトープマッピングにより6C6の認識するB細胞エピトープの解析を行った。第2部では、急性トキソプラズマ症の際にNTPaseが循環抗原として血液中に放出されることに着目し、トキソプラズマ症の早期診断法を開発する目的で、トキソプラズマ感染マウスを用いて、6C6による sandwich ELISA 法により血液中のNTPaseの動態について調べ、その有用性について検討した。

結果

抗 Toxoplasma gondii NTPase モノクローナル抗体(6C6)に認識されるNTPase分子の性状について

抗NTPaseモノクローナル抗体の性質

抗 Toxoplasama gondii NTPase モノクローナル抗体(6C6, IgG1)は次のようにして得た。T. gondii RH 株感染マウスの腹腔から回収した tachyzoite を超音波破砕し、10,000回転で遠心後その上清を抗NTPaseモノクローナル抗体IgAサブクラスを結合させたアフィニティーカラムで精製し、このアフィニティー精製NTPaseをBALB/cマウスに定法に従い免疫して作製した。6C6の性状は病原性の異なるRH、Fukaya、ME49、Beverley、Nakayamaの5株の T. gondii tachyzoite を用いたSDS・PAGEおよび Immunoblotting で解析した結果、全ての株で分子量63 kDaのタンパクを認識した。また、6C6の特異性について調べる目的で他の近縁の原虫の抗原を用いて同様な方法で調べた結果、他の原虫抗原と交差反応は認められなかったことから、この6C6は T. gondii NTPase を特異的に認識することが示された。

6C6による NTPase Isoform の認識

さらに、6C6を用いて NTPase を二次元電気泳動法で解析した結果、弱毒株のME49, Beverley, Nakayama の3株では等電点(pI)6.0の単一のスポットが検出されたが、強毒株であるRHではpI6.OとpI6.5の2つのスポットが検出された。また、弱毒株である Fukaya ではpI6.2とpI6.4の2つのスポットが6C6により認識された。以上の結果から、6C6はNTPaseの isoform を認識している可能性が示唆された。さらに、これらのスポットをゲルから切り出し、MALDI-TOF/MSで質量分析を行った結果、これらのスポットはいずれも T. gondii の NTPase であったことから、6C6はT. gondii強毒株および弱毒株でにおける NTPase の異なる isoform を認識すると確認された。

6C6によるNTPase酵素活性阻害

T. gondiiのNTPaseはジチオスレイトール等で還元された時に強い加水分解活性を示すことが特徴である。従って6C6がこの酵素活性に与える影響について in vitro で調べた。その結果、基質にATP、ADPを用いた時の酵素活性は、加えた抗体の濃度に依存して減少した。また、6C6の代わりに精製NTPaseで免疫したウサギのポリクローナル抗体およびIgAサブクラスのモノクローナル抗体を加えた時、この酵素活性阻害能は、基質がATPの場合には認められず、また、ADPが基質の場合でも40%程度であった。以上のことから、6C6は他の抗NTPase抗体に比較し、著しいNTPaseの酵素活性阻害能を有することが明らかになった。

6C6に認識されるB細胞エピトープマッピング

次に、データベースから得られたNTPaseのアミノ酸配列から作製した合成ペプチドを用いて、6C6が認識するB細胞エピトープについて解析した。その結果、628アミノ醸残基の251-265のLGEDPARCMIDEYGVのペプチドと最も強く反応し、その中でもIDEYGVが結合部位の中心であった。NTP1およびNTP3の遺伝子は、それぞれアミノ酸レベルで97%の高い相同性を有しており、この6C6に認識された251-265の部位は両者の共通部分であった。また、IgAサブクラスの抗体はN末に近い41-55のRINVGKTHLQTLRNL(NTP1)とRINVGKKHLQTLRNL(NTP3)と反応した。さらにこの部位の6残基ずつ合成したペプチドと反応させた結果、このIgAサブクラスの抗体の認識部位の中心はVGKKHLであった。また、この6残基のペプチドには6C6も高い結合を示したことから、これらのペプチド部位がNTPaseの活性発現において重要な部位であることが示唆された。

6C6により認識されるNTPaseの原虫内の局在

6C6と反応する NTPase 分子の原虫内における局在について、蛍光顕微鏡による観察を行ったところ、tachyzoite の細胞膜表面に特異蛍光が観察された。さらに詳細に解析するために6C6を用いて免疫電子顕微鏡で観察した結果、6C6が認識する NTPase は tachyzoite の Surface membrane に存在していることが確認された。

6C6による虫体の細胞侵入阻害

6C6が酵素活性阻害能や細胞表面のNTPaseを認識することから、6C6の感染阻害能について in vitro で調べた。6C6で37℃、5%CO2下で1時間処理された tachyzoite は、宿主細胞の Vero 細胞への侵入率が抗体濃度依存的に著しく低下した。これらのことから、6C6が tachyzoite の細胞表面のNTPaseに結合したことによって、tachyzoite の宿主細胞への侵入が阻害され、その結果宿主細胞への感染が抑制されていることが推測された。

T. gondii NTPaseを標的分子とした Avidin-Biotin sandwich ELISA(ABS-ELISA)法によるトキソプラズマ症の早期診断法の確立

抗NTPase抗体6C6を用いた Avidin-Biotin sandwich ELISA(ABS-ELISA)法の確立

急性トキソプラズマ症の早期診断法を開発する自的で6C6を capture 抗体に、また精製NTPaseを免疫したウサギから得たポリクローナル抗体を detector 抗体に用いたABS-ELISA法を開発し、このABS-ELISA法の特異性および感度について調べた。その結果、ABS-ELISA法は T. gondii 抗原に特異的に反応し、また、このABS-ELISA法のNTPaseの検出限界は0.5ng/mlであり、これは tachyzoite の虫体数に換算すると5 tachyzoites に相当することが明らかになった。In vivo におけるABS-ELISA法の感度を調べる目的で1x102個、1x104個、1x106個の T. gondii RH 株の tachyzoite をddYマウスの複腔内に接種した。その結果、1x102個の場合では感染後3日に11 ng/mlのNTPase、1x104個の場合では感染後3日で39 ng/mlのNTPase、そして1x106個を感染させた場合では感染3日目で約4.5μg/mlのNTPaseが血清中に検出され、接種した虫体数と血清中のNTPase量が比例することが推測された。その後、NTPase量は感染マウスが死亡する直前の5日目まで著しく増加した。

T. gondii 感染マウスにおける血中NTPaseの動態

トキソプラズマ症の急性感染モデルである重度免疫不全マウス(SCIDマウス)に、T. gondii ME49の cyst を20個経口感染させ血中NTPaseの動態について調べた。マウスは感染後12日目から死亡し始め、20日目までに急性感染で全例が死亡した。SCIDマウスにおける血中NTPaseの動態は、感染2日後に6.4ng/mlのNTPaseが検出されはじめ、4日目には30 ng/mlに増加し、6日目には10匹全てのマウスでNTPaseが検出され、その濃度も約50 ng/mlに達した。なお、抗 T. gondii 抗体は全てのマウスで検出されなかった。以上の結果から、SCIDのような重度の免疫不全マウスでは血中のNTPaseは感染初期から出現し死亡するまで上昇することが明らかになった。

一方、慢性トキソプラズマ感染モデルとして、ddYマウスに20個のT. gondii ME49の cyst を経口感染させ、血中NTPaseの動態について調べた。血中NTPaseは感染後3日目から検出され、7日目、14日目に顕著に検出されたが、その検出量は最高で25 ng/mlであった。その後血中NTPase量は慢性感染に移行するに従い徐々に減少し消失した。一方マウスの脳内における cyst の形成は、感染の14日後から認められ、この時期は抗T. gondii IgG抗体の上昇の時期と一致していた。その後、抗T. gondii IgG抗体価は実験終了まで高い値で維持されていたが、血中のNTPaseはほとんど検出されなかった。以上の結果から、NTPaseは感染初期の急性期において検出され、IgG抗体が上昇し、脳内に cyst が形成される慢性感染期には検出されないことが明らかになった。

Bioassay 法と parasitemia

血液中のNTPaseの動態と parasitemia との関係を調べる目的で、T. gondii 感染マウスの血液を正常ddYマウスに腹腔内接種しT. gondii感染の成立について調べた。その結果、NTPase陽性のME49株感染SCIDマウスおよびddYの血液中に、T. gondii の存在が示唆された。これらのことから、血液中のNTPaseは、血流中のT. gondiiから由来している可能性が示唆され、トキソプラズマ症の急性感染を診断する上での良い指標になることが示唆された。

考察

抗 T. gondii NTPase モノクローナル抗体6C6はNTPaseの酵素活性を阻害し、強毒株および弱毒株の異なる等電点のNTPaseの isoform を認識することができ、また、合成ペプチドを用いて行った6C6のエピトープ解析の結果から、6C6が認識する部位はNTPase isoform (NTP1, NTP3) のアミノ酸配例の共通部分であることが明らかになった。また、6C6は酵素活性に必要であると考えられるVGKを含む nucleotide binding site を認識していることから、この部分が酵素活性の発現において重要な部位であることも明らかとなった。また、6C6により認識されるNTPaseは tachyzoite の細胞膜に局在し、6C6で予め処理された tachyzoite は Vero 細胞などの宿主細胞に侵入できなくなることから、NTPaseは、T. gondii が宿主細胞に侵入する際に重要な役割を果たしている酵素であることが示唆された。これまで、このような性質の抗NTPaseモノクローナル抗体は報告されていなかった。Schistosoma mansonai のATPaseはT. gondii NTPaseと同じ apyrase family に分類されている酵素である。この酵素も細胞膜に局在しており、S. mansonai は虫体表面にこの酵素を出すことにより cytotoxic T cell や血小板から放出されるエフェクター因子のATPを分解して、これらの免疫細胞からエスケープしていることが考えられている。T. gondii の感染においても cytotoxic T cell や血小板が、宿主の感染防御のエフェクターメカニズムに関与していると報告されていることから、T. gondii のNTPaseも宿主の感染防御因子による攻撃から逃れるために細胞膜に局在して、周囲のATP等を分解している可能性があると考えられる。また、このような T. gondii の増殖、感染に重要な酵素であるNTPaseに対するモノクローナル抗体を用いて急性トキソプラズマ症の早期診断法の開発を試みた。その結果、急性T. gondii 感染マウスでNTPaseが容易に検出され、また、T. gondii 感染マウスにおいて血液中に検出されるNTPaseの動態と parasitemia の推移が一致していたことから、急性トキソプラズマ症の早期診断法として有用であることが示唆された。

審査要旨 要旨を表示する

本研究はトキソプラズマ原虫の増殖期虫体(tachyzoite)に特異的に存在する nucleoside triphosphate hydrolase (NTPase)に着目し、このNTPaseを特異的に認識するモノクローナル抗体(6C6)を作製し、6C6に認識されるNTPase分子の性状・細胞内局在および6C6によるトキソプラズマの宿主細胞への侵入阻害能からNTPaseの機能についての解明を試みたものである。また、NTPaseが急性トキソプラズマ症の際に、循環抗原として血液中に放出されることに着目し、得られた6C6抗体を用いた sandwich ELISA 法の開発を試み、急性トキソプラズマ症の早期診断法の開発を試みたものであり、下記の結果を得ている。

抗トキソプラズマNTPaseモノクローナル抗体(6C6)は、Immunoblotting 法により強毒株および弱毒株のトキソプラズマ原虫(RH、ME49、BeverIey、Fukaya、Nakayama)の分子量63kDaのタンパク質を認識した。さらに等電点二次元電気泳動および Immunoblotting 法で調べた結果、弱毒株のME49、Beverley、Nakayama では等電点(pI)6.0の単一のスポットが検出された。強毒株のRHではpI6.0と6.5の2スポットが検出され、弱毒株の Fukaya 株にもpI6.2と6.4の2スポットが検出された。これらの各スポットはMALDI-TOF MSによる質量分析の結果、いずれもトキソプラズマのNTPaseと同じアミノ酸配列を持つペプチドであったことから、6C6はトキソプラズマの強毒株および弱毒株のNTPaseの isoform を認識することが明らかになった。また6C6はATPおよびADPを基質とするNTPaseの酵素活性を抗体濃度依存的に阻害することも明らかになった。さらに、6C6のB細胞エピトープについて、NCBIのデータベースから合成ペプチドを作製して解析した結果、6C6の認識する部位はNTPase isoform (NTP1、NTP3)の623アミノ酸残基中の260-265番目のIDEYGVであり、しかもこの部位の配列はNTPaseと高い相同性を有するCD39や他の apyrase family の酵素には見られないトキソプラズマの NTPase に特異的な配列部位であることが明らかになった。なお、この配列部位は酵素活性に関与すると考えられる apyrase conserved region(ACR)3とACR4の中間に位置しており、この部位に6C6が結合することによりNTPaseの活性が阻害されことから、これらの配列がNTPaseの酵素活性発現に重要な部位であることが示された。また、6C6を用いた免疫電子顕微鏡による解析の結果、NTPaseは tachyzoite の細胞膜に局在していることを明らかにした。また感染マウス脳に形成された嚢子(cyst)にはNTPaseは発現していないことを免疫組織染色を用いた解析の結果明らかにした。NTPaseが tachyzoite の細胞膜に局在し、かつ6C6はNTPaseの酵素活性を阻害したことから、6C6で処理された tachyzoite の宿主細胞への侵入率を in vitro 調べた結果、6C6で処理された tachyzoite の Vero 細胞への侵入率は抗体濃度依存的に阻害された。この結果から、NTPaseが tachyzoite の宿主細胞侵入時に関与している分子であることが示唆された。

得られた6C6を capture 抗体に、また、精製NTPaseを免疫したウサギから得たポリクローナル抗体を detector 抗体に用いた Avidin Biotin Sandwich(ABS)-ELISA法を開発し、その特異性および感度について調べた。その結果、ABS-ELISA法はトキソプラズマ抗原に特異的に反応し、またNTPaseの検出限界は0.5ng/mlであり、これは計算上5 tachyzoites に相当することが明らかになった。In vivo におけるABS-ELISA法の感度を調べる目的で、1×102、1×104、1×106個のRH株 tachyzoite をマウスの腹腔に接種し血清中のNTPase量を測定した。その結果、感染後3日目において1×102個を感染させたマウス血清で11 ng/ml、1×104個の感染では39 ng/ml、1×106個の感染マウス血清中には4.5 μg/mlのNTPaseが検出され、接種した虫体数と血清中のNTPase量が比例することを明らかにした。トキソプラズマ症の急性感染モデルとして重度免疫不全のSCIDマウスにME49株の cyst を20個経口感染させ、血中のNTPaseの動態について調べた結果、感染2日目から6.4ng/mlのNTPaseが検出され、その後NTPase量は増加し急性感染でSCIDマウスが死亡するまで上昇していることを明らかにした。慢性感染モデルのddYマウスに同様にME49株の cyst を20個経口感染させた結果、血中NTPaseは感染3日目から検出され、その後7日目、14日目に顕著に検出される二峰性の動態を示した。この時期にはIgM抗体が検出されたが、脳内に cyst が形成され、また高IgG抗体価を示す感染21日目以降の慢性感染期にはNTPaseは検出されなくなることが明らかになった。血液中に検出されたNTPaseの動態と parasitemia との関係を調べる目的で、感染マウスの血液を正常ddYマウスの腹腔に接種し感染の成立について判定した。その結果、NTPase陽性のME49株感染SCIDマウスおよびddYマウスの血液中にトキソプラズマの存在が示唆されたことから、血液中のNTPaseは、血流中のトキソプラズマ原虫から由来していることが強く示唆され、ABS-ELISA法によるNTPaseの検出はトキソプラズマ症の急性感染を診断する上で良い指標となる結果を得た。

以上、本論文はトキソプラズマ原虫のNTPaseに対するモノクローナル抗体6C6を用いて、各株に存在する isoform、細胞内局在、NTPaseの酵素活性阻害と宿主細胞侵入阻害の関係について解析し、NTPaseはトキソプラズマ原虫病原性に関与する酵素であることが示唆された。このように、トキソプラズマ原虫のNTPaseの特異な性質が6C6抗体により初めて明らかになった。また、本研究より得られた6C6抗体を用い、急性期感染時におけるトキソプラズマ原虫のNTPaseの動態を調べることにより急性トキソプラズマ症の新たな診断法を開発した。これらのトキソプラズマ原虫NTPaseに関する新しい知見は、この分野の研究を大きく進展させ学位の授与に値するものと考えられる。

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