No | 215922 | |
著者(漢字) | 藤原,章雄 | |
著者(英字) | Fujiwara,Akio | |
著者(カナ) | フジワラ,アキオ | |
標題(和) | マルチメディア森林研究情報基盤「サイバーフォレスト」の概念構築と有効性の実証的研究 | |
標題(洋) | ||
報告番号 | 215922 | |
報告番号 | 乙15922 | |
学位授与日 | 2004.03.01 | |
学位種別 | 論文博士 | |
学位種類 | 博士(農学) | |
学位記番号 | 第15922号 | |
研究科 | ||
専攻 | ||
論文審査委員 | ||
内容要旨 | 情報技術の急速な進歩により、情報システムの扱える情報にあらたにマルチメディアと呼ばれる映像、音響データが加わり、さらに複数のメディアで表現される情報を組み合わせることにより従来では通信し、表現することができなかったような、人間の感性に働きかける情報である感性情報を扱うことができるようになってきた。従来から森林情報には、現地の複雑な空間構造と複雑な構成要素, 現地で感覚的に把握する森林の様々な属性なとの多くの情報を記録する技術が欠けており、森林情報システムから対象の森林について多くの情報を得てもなお現地に赴いて五感で森林そのものを探索することが重要視されている。ここに近年進歩したマルチメディア技術を応用することで, いままで, 情報システムでは扱ってこなかった感性情報を取り扱うシステムを作り上げることの有効性があると考えられる。 本研究で新たに構築する森林情報基盤のあり方を示した概念「サイバーフォレスト」は、従来の森林情報システムで取り扱ってきた文字、数値を中心とした記述, 測定したデータをもとにした森林情報だけでなく, マルチメディアを活用して現地で五感によって直接得る感性情報を取り扱う情報基盤である。マルチメディアを活用することで感性情報をも収集し管理・利用する事によって, サイバーフォレストには既存の情報システムにはないサイバースペースの持つコミュニケーション支援機能を有する。従来の文字, 数値の情報に加えてマルチメディアデータをも扱うことでさらに多様で大量の情報を取り扱うことになるが, このサイバースペースのもつコミュニケーション支援機能により効率よく人間が情報探索, 活用ができるとかんがえられる(図I-1)。 本研究では, 著者の構築した概念「サイバーフォレスト」が多様で大量の情報を収集し管理・利用し異なる分野・組織の間で相互に情報を利用することにおける有効性について実証的な試験をもとに明らかにすることを目的とする。 以下の構成で本研究を行った。 まず第2章で, 新しい森林情報基盤のあり方を示す概念「サイバーフォレスト」を構築した。そして以降の章で, サイバーフォレストを構成するおのおのの要素技術について, 実際の森林情報を用いて応用試験を行い実行可能性や, サイバーフォレストの考え方の妥当性を評価した。 第3章では, サイバーフォレストを構築する要素技術のうちの情報システムのネットワーク部分を担うシステムとしてWorld Wide Webを取り上げ, 実際にシステムを立ち上げ, 実際の森林情報を用いて運用試験を行った。情報システムへのデータの入力と運用とその効果について得られた結果を考察した。 第4章ではサイバーフォレストを構築する要素技術のうち感性情報のデータコレクション技術を担うシステムとして森林映像記録ロボットカメラシステムを開発し, 実際にシステムを森林内で稼動させ, 長期連続の運用試験を行った。森林映像記録ロボットカメラシステムの開発と実用稼動を行い, 実際の森林の記録を長期連続して取得蓄積することで, サイバーフォレストの特徴である映像と音響データの取得と蓄積および公開の実証的な検証が可能となった。 サイバーフォレストでは, 取得蓄積した映像と音響データによって知識情報と感性情報の両方を含む多岐にわたる森林情報の直接的な記録をねらっているのだが, その実用的な効果を評価するために, 第5章では, 実際に森林映像記録ロボットカメラによって取得蓄積した映像と音響データから, ブナのフェノロジー観察に関するデータの抽出と従来方法の観察との比較, 音による環境モニタリングに関するデータの抽出と評価を行った。 本研究の結論は以下の通りである。 新しい森林情報基盤のあり方を示す概念「サイバーフォレスト」を構築した。 具体的には、サイバーフォレストとは, サイバースペースの概念に含まれるコミュニケーション支援機能を持つ情報システム上に構築され, 感性情報も含めた森林情報をマルチメディア技術を活用して記録, デジタル化し, あらゆる人々がすべての情報を効率よく探索し活用できるようにインターネット上の情報システムを活用してネットワーク化された森林情報である。 サイバーフォレストを構築するためのデータコレクション層の要素技術として, 実用化の進んでいるマルチメディア技術で扱うことのできる映像, 音響データを記録蓄積する技術の開発が必要であることを指摘した。 サイバーフォレストに森林情報を搭載しネットワークで公開するネットワーク層の要素技術としてのWorld Wide Webの応用可能性について, 実際にシステムを運用する実証試験を行い有効であることを示した。ネットワークが十分に整備されていない地方からの利用でも, 情報の搭載から公開までWorld Wide Webを有効に活用できる技術の応用について実際に運用試験を行い実用可能であることを明らかにした。 映像・音響情報を記録蓄積するための現地デジタル化技術のとして森林映像記録ロボットカメラシステムを開発した。長期運用に成功するいたった技術開発について明らかにした。 森林映像記録ロボットカメラシステムを, 実際に長期連続運用しサイバーフォレスト概念の妥当性を実証するための映像・音響記録を蓄積するとともに, ロボットカメラシステムの長期連続運用に関する実用化の技術的知見を得た。 ロボットカメラシステムによって実際に記録蓄積した映像・音響データによって, 記録された情報をブナのフェノロジー観察という側面と, 音による環境モニタリングという側面の2つの側面に関して分析を行い, 従来方法では記録が困難な, 継続した記録情報が得られることを明らかにした。また, 記録された過去の映像・音響データから, 新たに分析テーマを決めて情報を抽出することにより記録時には想定できなかったような調査項目に関しても過去にさかのぼって連続データを解析できるという利点も明らかになった。 | |
審査要旨 | 情報技術の急速な進歩により,情報システムの扱える情報にあらたにマルチメディアと呼ばれる映像,音響データが加わり,さらに複数のメディアで表現される情報を組み合わせることにより従来では通信し,表現することができなかったような,人間の感性に働きかける情報である感性情報を扱うことができるようになってきた。従来から森林情報には,現地の複雑な空間構造と複雑な構成要素,現地で感覚的に把握する森林の様々な属性などの多くの情報を記録する技術が欠けており,森林情報システムから対象の森林について多くの情報を得てもなお現地に赴いて五感で森林そのものを探索することが重要視されている。ここに近年進歩したマルチメディア技術を応用することで,いままで,情報システムでは扱ってこなかった感性情報を取り扱うシステムを作り上げることの有効性があると考えられる。 本研究で新たに構築する森林情報基盤のあり方を示した概念「サイバーフォレスト」は,従来の森林情報システムで取り扱ってきた文字,数値を中心とした記述,測定したデータをもとにした森林情報だけでなく, マルチメディアを活用して現地で五感によって直接得る感性情報を取り扱う情報基盤である。マルチメディアを活用することで感性情報をも収集し管理・利用する事によって,サイバーフォレストには既存の情報システムにはないサイバースペースの持つコミュニケーション支援機能を有する。従来の文字,数値の情報に加えてマルチメディアデータをも扱うことでさらに多様で大量の情報を取り扱うことになるが,このサイバースペースのもつコミュニケーション支援機能により効率よく人間が情報探索,活用ができるとかんがえられる。本研究では,著者の構築した概念「サイバーフォレスト」が多様で大量の情報を収集し管理・利用し異なる分野・組織の間で相互に情報を利用することにおける有効性について実証的な試験をもとに明らかにすることを目的とした。 サイバーフォレストとは,サイバースペースの概念に含まれるコミュニケーション支援機能を持つ情報システム上に構築され,感性情報も含めた森林情報をマルチメディア技術を活用して記録,デジタル化し,あらゆる人々がすべての情報を効率よく探索し活用できるようにインターネット上の情報システムを活用してネットワーク化された森林情報である。サイバーフォレストを構築するためのデータコレクション層の要素技術として,実用化の進んでいるマルチメディア技術で扱うことのできる映像,音響データを記録蓄積する技術の開発が必要であることを指摘した。サイバーフォレストに森林情報を搭載しネットワークで公開するネットワーク層の要素技術としてのWorld Wide Webの応用可能性について,実際にシステムを運用する実証試験を行い有効であることを示した。ネットワークが十分に整備されていない地方からの利用でも,情報の搭載から公開までWorld Wide Webを有効に活用できる技術の応用について実際に運用試験を行い実用可能であることを明らかにした。映像・音響情報を記録蓄積するための現地デジタル化技術として森林映像記録ロボットカメラシステムを開発した。長期運用に成功するにいたった技術開発について明らかにした。森林映像記録ロボットカメラシステムを,実際に長期連続運用しサイバーフォレスト概念の妥当性を実証するための映像・音響記録を蓄積するとともに,ロボットカメラシステムの長期連続運用に関する実用化の技術的知見を得た。ロボットカメラシステムによって実際に記録蓄積した映像・音響データによって,記録された情報をブナのフェノロジー観察という側面と,音による環境モニタリングという側面の2つの側面に関して分析を行い,従来方法では記録が困難な,継続した記録情報が得られることを明らかにした。また,記録された過去の映像・音響データから,新たに分析テーマを決めて情報を抽出することにより記録時には想定できなかったような調査項目に関しても過去にさかのぼって連続データを解析できるという利点も明らかになった。 以上のように本論は,マルチメディア技術を応用し,従来の森林情報に加え今までの森林情報システムでは取り扱ってこなかった感性情報も対象とする森林研究情報基盤「サイバーフォレスト」の概念を構築し,その実現のためのシステム開発と実証試験によって有効性を明らかにしたもので,今後の森林情報システムのあり方に対して有効な示唆を与えることが期待される。よって審査員一同は本論が博士(農学)の学位論文として価値あるものと認めた。 | |
UTokyo Repositoryリンク | http://hdl.handle.net/2261/40222 |