No | 215927 | |
著者(漢字) | ||
著者(英字) | Sukartaatmadja,Sukandi | |
著者(カナ) | スカルタアマジャ,スカンディ | |
標題(和) | インドネシアの土壌保全に対する有機物使用の効果 | |
標題(洋) | Effect of organic matter for soil conservation in Indonesia | |
報告番号 | 215927 | |
報告番号 | 乙15927 | |
学位授与日 | 2004.03.01 | |
学位種別 | 論文博士 | |
学位種類 | 博士(農学) | |
学位記番号 | 第15927号 | |
研究科 | ||
専攻 | ||
論文審査委員 | ||
内容要旨 | 農業地帯における急傾斜地および不十分な土壌管理下にある農地においては、激しい降雨は重大な土壌浸食と水質汚染をもたらしている。本論の目的は土壌保全に関して、土壌浸食および流失に対する、家畜糞尿、ラテックス、ブロトン等有機物使用の効果を明らかにすることである。 土壌浸食と流失における降雨強度の効果 室内実験は、奥行き22m×幅2mのプロットで、傾斜度を9%に固定して行った。室内実験においては降雨シミュレーターを使用した。実験の結果、土壌浸食は3.14t/ha、流失は33.20m3/haである。EI30(30分降雨強度の最大値に対応する降雨エネルギー)は土壌浸食に対して明らかな正の相関を持つものである。 土壌浸食と流失に対する有機物投与量の効果 室内降雨実験においては家畜糞尿、天然ゴムラテックス、ブロトン(さとうきび生産廃棄物)を使用した。その結果、牛糞肥料30t/ha、鶏糞肥料10t/ha、ラテックス0.2t/ha、ブロトン40t/haの混成投与において土壌浸食と流失の低減に最も効果的であるとの結果を得た。 ピーナッツとグリーンピース栽培に対する土壌浸食と流失における有機物使用効果 野外圃場実験は、小区画において行った。ピーナッツとグリーンピース栽培に関する圃場実験においては、鶏糞、牛糞および羊糞肥料を使用した。鶏糞肥料の使用は、土壌の乾燥密度を減少させると同時に土壌の間隙率と団粒安定指数を増加させる。鶏糞、牛糞、羊糞肥料使用のピーナッツとグリーンピース栽培は土壌浸食と流失を減少させる。 土壌保全に対する有機物使用による土壌浸食の予測 土壌浸食予測の地域は西ジャワ県ボゴール地域のチサデイン水源上流地域に位置し、総面積は93292.0haである。予測にはUniversal Soil Loss Equation (USLE) を使用した。シミュレーションの方法は土壌保全に対する投与肥料と共に記述された。土地利用と投与肥料の変化は土地の勾配と共に実際の土壌浸食の変化をもたらしている。 | |
審査要旨 | インドネシアの農業地帯における急傾斜地および不十分な土壌管理下にある農地においては、激しい降雨は重大な土壌浸食と水質汚染をもたらしている。本論文の目的は、インドネシアにおける土壌保全に関して、土壌浸食および流失に対する家畜糞尿、ラテックス、ブロトン等有機物使用の効果を明らかにすることである。具体には、以下の4つの課題について考究している。 土壌浸食と流失における降雨強度の影響 野外圃場実験および室内降雨実験によって、降雨強度と土壌浸食および流出との関係を求めている。野外圃場実験は、奥行き22m×幅2mのプロットで、傾斜度を9%に固定して実施した。室内降雨実験においては、降雨シミュレーターを使用した。野外圃場実験の結果から、I30(30分降雨強度の最大値)と土壌浸食との間には強い正の相関(R2=0.93)があることを明らかにしている。また、室内降雨実験の結果から、EI30(30分降雨強度の最大値に対応する降雨エネルギー)は土壌浸食に対して明らかな正の相関(R2=0.97)を持つものであることを明らかにしている。 土壌浸食と流失に対する有機物施用量の効果 室内降雨実験においては家畜(牛、鶏)糞尿、天然ゴムラテックス、ブロトン(さとうきび生産廃棄物)を使用した。その結果、牛糞の施用では施用量の増加と浸食土壌量の減少とは強い関係が見られること、鶏糞施用では施用の効果には限界が見られ、10t/haの投与において最も高い効果がみられること、ラテックスおよびブロトンの場合にも、それぞれ0.2t/ha、40t/haの投与において土壌浸食の低減に最も効果的であるとの結果を得ている。 ピーナッツとグリーンピース栽培に対する土壌浸食と流失における有機物施用効果 ピーナッツとグリーンピース栽培に関する野外圃場実験においては、鶏糞、牛糞および羊糞肥料を使用した。鶏糞肥料の使用は、土壌の乾燥密度を減少させると同時に土壌の間隙率と団粒安定指数を増加させることを明らかにしている。また、ピーナッツとグリーンピース栽培においては、鶏糞>牛糞>羊糞の順で土壌浸食と流失を減少させる効果が大きいことを明らかにしている。 土壌保全に対する有機物施用による土壌浸食の予測 土壌浸食についての予測対象地域は西ジャワ県ボゴール地域のチサデナ流域に位置し、総面積は93,292.0haである。予測にはUniversal Soil Loss Equation (USLE) を使用した。シミュレーションの方法は土壌保全に対する施用有機物ごと記述されている。土地利用と施用有機物の変化させることによって、土地の傾斜に対応して、実際の土壌浸食の変化度合いを地図上で把握できるようにしている。適切な有機物施用と土地利用の下では、土壌浸食危険度の最も高い地域の割合を現状の19.4%から1.4%に減じさせることを明らかにしている。 以上のように、本論文は、インドネシアにおける土壌保全に関して、降雨強度と土壌浸食および流失との関係を明らかにし、土壌浸食および流失を減少させることにおいて有機物施用の有効性を明らかにすると共に、実際の流域にシミュレーションモデルを適用して、土地利用の変更ならびに有機物施用の効果を予測し評価したものであり、学術上、応用上貢献するところが少なくない。よって、審査委員一同は、本論文が博士(農学)の学位論文として価値あるものと認めた。 | |
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