No | 216557 | |
著者(漢字) | 山本,尚利 | |
著者(英字) | ||
著者(カナ) | ヤマモト,ヒサトシ | |
標題(和) | 技術経営方法論の体系化 | |
標題(洋) | ||
報告番号 | 216557 | |
報告番号 | 乙16557 | |
学位授与日 | 2006.06.15 | |
学位種別 | 論文博士 | |
学位種類 | 博士(工学) | |
学位記番号 | 第16557号 | |
研究科 | 工学系研究科 | |
専攻 | 環境海洋工学専攻 | |
論文審査委員 | ||
内容要旨 | 筆者は1986年にSRIインターナショナル(スタンフォード大学からスピンオフした国際シンクタンク)に所属して以来、今日まで20年近く技術経営(MOT:Management of Technology)を専門としてきた。本論文は、その過去から現在に至る技術経営研究の集大成である。 論文の目的: 本論文の目的は、SRIの開発した技術経営方法論を筆者が20年間に渡って、改良し、発展させてきたものを体系化し、今後の日本における技術経営論の体系化研究の礎(いしずえ)とすることである。 論文のフォーカスエリア: 技術経営は工学と経営学の融合分野であり、極めて広範囲の概念である。本論文では、1960年代よりSRI(1970年までスタンフォード大学付属研究所)にて開発されてきた技術経営の方法論(メソドロジー)を筆者がさらに発展させ、筆者独自の技術経営論として、その体系化を試みたものである。 論文の構成と要旨: 本論文の構成と要旨は以下のとおりである。 序章:研究の目的とフレームワーク 本論文の研究目的とフレームワークを明示している。本論文で詳述する4つの技術経営方法論、(1)技術経営ベンチマーキング、(2)シナリオ・プラニング、(3)技術評価法(デシジョンアナリシス含む)および(4)技術ナレッジマネジメントが技術経営論全体でどのような位置づけとなるかを示している。また本論文は、筆者が1991年より93年にかけて著した技術経営論の三部作、『テクノロジーマネジメント』、『中長期技術戦略プランニング・ガイド』、『技術投資評価法』を参考論文にして、90年代半ばから21世紀初頭にかけて、さらに発展させた研究内容となっている。 2章:技術経営論の先行研究レビュー 過去、技術経営論という専門領域は日本に明確には存在せず、技術経営方法論に関して豊富な先行研究が存在するとは言えない。そこで、2章では、日本および米国などで、技術経営方法論に限らず、技術経営全般に関してどのような取り組みが行われてきたかを包括的にレビューしている。 3章 技術経営概論 筆者は、日本企業(石川島播磨重工業)に16年、米国のSRIに16年半所属していたので、企業の技術経営に関して、日米両方の視点を備えている。3章では、日米両方の視点から、技術経営とは何か、また、その課題は何かについて包括的に議論している。そして、本論文の主題である技術経営方法論について筆者の考え方を論じている。 4章 技術経営方法論その1:技術経営ベンチマーキングの体系化 SRIが90年代初頭から半ばにかけて実施した、日米欧の技術経営国際調査と日米欧のMOT専門家のアドバイスに基づき開発した技術経営ベンチマーキング手法に関して論じている。なお、筆者はSRIの技術経営国際調査および技術経営ベンチマーク手法の開発に関与した。4章では、その開発成果に基づいて、技術経営関係者向けに技術経営ベンチマーキングを技術経営方法論のひとつとして筆者が独自に体系化している。 5章 技術経営方法論その2:技術戦略シナリオ・プラニングの体系化 5章では、SRIが1960年代から80年代にかけて開発したシナリオ・プラニング手法の、技術戦略や新製品コンセプト創造などへの応用事例について論じている。筆者はSRIの技術経営コンサルタントとして、上記のシナリオ・プラニング手法を日本企業向けコンサルティング・プロジェクトにて応用してきたが、5章では、その経験を通じて得た技術戦略ノウハウに基づいて、技術戦略シナリオ・プラニングを技術経営関係者向けの技術経営方法論のひとつとして体系化している。 6章 技術経営方法論その3:技術評価法の体系化 6章は、SRIが技術経営コンサルティングに応用していた技術評価法および、技術投資の際に求められるデシジョン・アナリシス(戦略意思決定)の手法について論じている。 6章も5章と同様に、筆者の技術経営コンサルティング経験から得られた技術投資評価ノウハウに基づいて、技術評価法を技術経営関係者向けの技術経営方法論のひとつとして体系化している。 なお6章ではSRIの技術評価法をさらに発展させた、技術評価のコンピュータ支援システムについても合わせて論じている。この技術評価システムは将来の技術経営方法論の研究テーマへの礎(いしずえ)となることが期待される。 7章 技術経営方法論その4:技術ナレッジマネジメントの体系化 7章は、筆者が90年代後半から2000年代初頭にかけて試みた技術経営とナレッジマネジメントの統合化コンセプト、すなわち技術ナレッジマネジメント(TKM)について論じている。インターネット・インフラの整備に伴い、技術経営実践の現場における知的生産性を大幅に上昇させることができるようになった。7章では、TKMのあるべき姿を提起している。なお、TKMは、インターネットの普及とともに生まれた先進的技術経営方法論として位置づけられる。 終章 技術経営方法論の発展性 最終章では、本論文において取り上げた4つの主要な技術経営方法論を礎(いしずえ)にして、今後の技術経営論の研究の発展性と、その方向性について示唆を与えている。 具体的には、技術経営方法論をいかに新事業創造に応用していくかについて、事業戦略の観点から問題提起している。その秘訣は、技術経営方法論に、技術要素のみならず、非技術要素(経営、政治、経済、社会、文化、歴史など)を織り込むことであると結論している。そして非技術要素を考慮した日本発の新しい技術経営体系を構築すべきと提言している。 以上 | |
審査要旨 | 本研究は技術経営の諸知識と技術を体系化したものである。 序章では、本論文の研究目的とフレームワークを明示している。本論文で詳述する4つの技術経営方法論、(1)技術経営ベンチマーキング、(2)シナリオ・プラニング、(3)技術評価法(デシジョンアナリシス含む)および(4)技術ナレッジマネジメントが技術経営論全体でどのような位置づけとなるかを示している。 過去、技術経営論という専門領域は日本に明確には存在せず、技術経営方法論に関して豊富な先行研究が存在するとは言えない。そこで、2章では、日本および米国などで、技術経営方法論に限らず、技術経営全般に関してどのような取り組みが行われてきたかを包括的にレビューしている。 3章では、日米両方の視点から、技術経営とは何か、また、その課題は何かについて包括的に議論している。そして、本論文の主題である技術経営方法論について筆者の考え方を論じている。 4章では、日米欧の技術経営国際調査と日米欧のMOT(技術経営)専門家のアドバイスに基づき開発した技術経営ベンチマーキング手法に関して論じている。また、その開発成果に基づいて、技術経営関係者向けに技術経営ベンチマーキングを技術経営方法論のひとつとして筆者が独自に体系化している。 5章では、1960年代から80年代にかけて開発したシナリオ・プラニング手法の、技術戦略や新製品コンセプト創造などへの応用事例について論じている。筆者の日本企業向けコンサルティング・プロジェクトにて応用してきたが、経験を通じて得た技術戦略ノウハウに基づいて、技術戦略シナリオ・プラニングを技術経営関係者向けの技術経営方法論のひとつとして体系化している。 6章では、技術経営コンサルティングに応用していた技術評価法および、技術投資の際に求められるデシジョン・アナリシス(戦略意思決定)の手法について論じている。6章も5章と同様に、筆者の技術経営コンサルティング経験から得られた技術投資評価ノウハウに基づいて、技術評価法を技術経営関係者向けの技術経営方法論のひとつとして体系化している。なお6章ではSRI(Stanford Research Institute)の技術評価法をさらに発展させた、技術評価のコンピュータ支援システムについても合わせて論じている。この技術評価システムは将来の技術経営方法論の研究テーマへの礎(いしずえ)となることが期待される。 7章では、筆者が90年代後半から2000年代初頭にかけて試みた技術経営とナレッジマネジメントの統合化コンセプト、すなわち技術ナレッジマネジメント(TKM)について論じている。インターネット・インフラの整備に伴い、技術経営実践の現場における知的生産性を大幅に上昇させることができるようになった。7章では、TKMのあるべき姿を提起している。なお、TKMは、インターネットの普及とともに生まれた先進的技術経営方法論として位置づけられる。 最終章では、本論文において取り上げた4つの主要な技術経営方法論を基本軸にすえて、今後の技術経営論の研究の発展性と、その方向性について示唆を与えている。 具体的には、技術経営方法論をいかに新事業創造に応用していくかについて、事業戦略の観点から問題提起している。その秘訣は、技術経営方法論に、技術要素のみならず、非技術要素(経営、政治、経済、社会、文化、歴史など)を織り込むことであると結論している。そして非技術要素を考慮した日本発の新しい技術経営体系を構築すべきであると提言している。 本研究は過去20年近くにわたって進展し、なおかつ今後の進歩が期待される技術経営を具体化し応用を試みるとともに体系化したものである。本研究によって多様な方向性がありうる技術経営の本筋が明らかにされ体系化されたため、今後の研究と普及に資することが大であると認められる。 よって本論文は博士(工学)の学位請求論文として合格と認められる。 | |
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