学位論文要旨



No 216586
著者(漢字) 田原,晴信
著者(英字)
著者(カナ) タハラ,ハルノブ
標題(和) 腎組織移行過程に関わる薬物トランスポーターの種差に関する解析
標題(洋)
報告番号 216586
報告番号 乙16586
学位授与日 2006.09.13
学位種別 論文博士
学位種類 博士(薬学)
学位記番号 第16586号
研究科
専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 教授 杉山,雄一
 東京大学 教授 松木,則夫
 東京大学 助教授 青木,淳賢
 東京大学 助教授 楠原,洋之
 東京大学 講師 樋坂,章博
内容要旨 要旨を表示する

 医薬品の研究開発において、ヒトにおける薬理作用・動態特性・安全性を予測するために、マウス・ラット・イヌ・サルなどの動物種が使用されている。動物実験からヒトへの有効性を外挿するためには、実験動物とヒト間の薬物動態学的因子(代謝酵素、トランスポーターなど)と薬理学的因子(受容体、酵素など)の種差を考慮することが必要である。特に、前者の支配要因として、血中の蛋白結合、代謝・排泄過程に関する種差の解析が行われてきた。実験動物で得られた動態パラメータをヒトへ外挿する方法論の一つとして、アロメトリー式を用いた予測法が試みられてきた。この方法は各動物の個体あたりのクリアランス(CL)値がアロメトリー式で表せるという経験則に基づいている。腎CLを記述するためのアロメトリー式の指数項は、ネフロン数と体重の関係より得られる指数項と近似していることから、腎CLの種差は主にネフロン数の違いを反映しており、尿細管あたりの排泄能力において種差は小さいものと考えられてきた。しかし、あくまでこの予測法は経験則であり、例外の存在を否定することは困難である。H2受容体拮抗薬であるfamotidineは、主に尿細管分泌により尿中へ排泄される弱塩基性の薬物で、ヒトではprobenecidの併用投与によりfamotidineの血漿中濃度の上昇および腎CLの低下が生じる。しかし、ラットではこの薬物間相互作用を再現することができず、famotidineの腎尿細管分泌において、probenecidの感受性トランスポーターの寄与率に種差が存在することを示唆している。

 医薬品の探索研究において、ヒト体内動態の優れた化合物を選択することが一つの使命であり、ヒト体内動態および相互作用を予測することが重要となる。そのためには、in vitroでトランスポーターの基質選択性の種差を把握し、適切な実験動物を用いて相互作用試験を検証することが、より精度の高いヒト薬物間相互作用の予測に繋がるものと考えられる。そこで、腎臓の近位尿細管側底膜に発現する有機アニオントランスポーター(OATs)の種差に関する知見を得て、さらにヒトと類似した輸送特性を示す動物種としてサルに着目し、その輸送特性を明らかにすることを目的として研究を行った。

 第一章では腎取り込み関与するOAT1、OAT3の輸送特性のヒトおよびラット間の種差を明らかにするために、代表的な基質の輸送特性を比較した。第二章ではH2受容体拮抗薬とprobenecidとの薬物間相互作用の種差のメカニズムを明らかにするために、OATsおよびOCTs安定発現細胞を用いてH2受容体拮抗薬の輸送特性の種差を明らかにした。その結果からH2受容体拮抗薬とprobenecidとの薬物間相互作用の種差の要因として、OAT3の輸送活性およびOCT1の発現分布の種差によることが示唆された。そこで、第三章ではサルの有用性を示すために、サルOATsの輸送特性およびサルOCTsの発現分布を評価し、さらにサルにおけるH2受容体拮抗薬とprobenecidとの薬物間相互作用を評価し、その妥当性を検証した。

1、ラット・ヒト間での有機アニオントランスポーター機能の比較

 OAT1およびOAT3は近位尿細管の側底膜に局在し、薬物の尿細管分泌において血液から近位尿再管への取り込み過程に関与している。OATsの輸送特性の種差を明らかにするために、OAT1およびOAT3の基質選択性および輸送活性をヒトとラット間で比較した。

 OAT1およびOAT3の代表的な基質の取り込みにおける濃度依存性を調べた結果、いずれも飽和性の取り込みが認められた。これら化合物のKm値をラットとヒト間で比較した結果、OAT1およびOAT3いずれも同程度の値であった(図1A)。輸送活性をラットとヒト間で比較するために、OAT1ではPAHを、OAT3ではPCGの輸送活性を基準とした時の相対輸送活性を算出した。OAT1の相対輸送活性はラットおよびヒト間で良好な相関性が認められたが、OAT3では相関性が低く、OAT3を介した輸送活性に種差が認められた(図1B)。

2、H2受容体拮抗薬とprobenecidとの薬物間相互作用における種差のメカニズム解析〜OATs/OCTs発現細胞におけるH2受容体拮抗薬の輸送およびprobenecidの阻害作用〜

 H2受容体拮抗薬とprobenecidとの薬物間相互作用の種差のメカニズムを解明するために、ヒトおよびラットOATs/OCTs安定発現細胞を用いて、H2受容体拮抗薬の輸送特性およびprobenecidの阻害作用について検討した。

 hOAT3発現細胞における相対輸送活性はcimetidine(1)>famotidine(0.37)、ranitidine(0.24)であり、rOat3発現細胞ではranitidine(1.9)>cimetidine(1)>>famotidine(0.13)の序列であった。OAT3を介したH2受容体拮抗薬の輸送活性にも種差が認められ、OAT3を介したfamotidineの輸送活性がラットで低いことが示された。rOct1発現細胞における相対輸送活性はcimetidine(1)、famotidine(0.75)、ranitidine(0.87)と同程度であったが、r/hOCT2発現細胞ではcimetidine(1)比べ、ranitidine(0.02/0.14)およfamotidine(0.09/0.12)の輸送活性は非常に低かった。H2受容体拮抗薬の取り込みに対するprobenecidの阻害作用について検討した結果、r/hOCT2およびrOct1を介したcimetidineおよびfamotidineの取り込みはprobenecidにより阻害されなかったが、OAT3を介した取り込みは強く阻害され、probenecidのKi値は3-6μMであった。

 以上の結果から、famotidineとprobenecidの薬物間相互作用の種差は、OAT3を介した輸送特性に種差が認められること、ヒト腎臓にOCT1が発現していないことに起因すると考えられた(図2)。ヒトで薬物間相互作用が生じた時のprobenecidの血漿中非結合型濃度(20-50μM)は、probenecidのhOAT3に対するKi値を上回っていることから、famotidineの腎分泌CLの低下はhOAT3の阻害作用の結果であることが示された。

3、サルを用いたH2受容体拮抗薬とprobenecidの薬物間相互作用試験(in vitro-in vivo評価)

 ラットに代わる実験動物としてサルが適していると考えられるが、サルの薬物トランスポーターの多くは未解明である。本研究ではサル腎臓よりmkOAT1およびmkOAT3をクローニングし、それらの輸送特性の種差を検討すると共に、カニクイザルを用いたH2受容体拮抗薬とprobenecidとの薬物相互作用試験を行い、サルの有用性をin vitroおよびin vivoから検証した。

 サル腎臓よりPCR法によりクローニングしたmkOAT1およびmkOAT3のアミノ酸配列は、ヒトと比べて97および96%と高い相同性を示した。Western blot法および免疫染色法により、ヒトと同様にmkOAT1およびmkOAT3の腎臓への発現および近位尿細管の側底膜への局在が認められた。mkOAT1およびmkOAT3の安定発現細胞を用いて、OATsの代表的な基質の輸送活性をhOATsと比較した結果、OAT1およびOAT3いずれにおいても良好な相関性が認められた。mkOAT3発現細胞を用いてH2受容体拮抗薬の輸送活性を比較した結果、相対輸送活性はcimetidine(1)>famotidine(0.32)、ranitidine(0.33)の序列であり、hOAT3の序列と一致した。CimetidineおよびfamotidineのmkOAT3を介した取り込みはprobenecidにより強く阻害され、Ki値は3-6μMとhOAT3と同程度であった。次に種差の要因であるOCT1の組織分布について検討した結果、ヒトと同様にmkOCT1は主に肝臓に、mkOCT2は腎臓に発現していることが示された。

 以上のin vitroデータを基に、カニクザルを用いたH2受容体拮抗薬とprobenecidの薬物間相互作用試験を実施した。カニクイザルにfamotidineを静注後の血漿中曝露は、probenecidの併用投与により約2倍、腎CLおよび腎分泌CLは約1/3および1/10に低下した(図3)。一方、cimetidineの血漿中動態はprobenecidの併用投与によっても変化しなかった(図3)。この時のprobenecidの血漿中非結合型濃度は10-36μMであり、mkOAT3に対するKi値(3-6μM)を上回っていることから、famotidineの分泌CLの低下は、mkOAT3の阻害作用によることが示唆され、逆にcimetidineではヒトと同様にOCT2を介した腎排泄が示唆された。いずれの薬物も臨床で認められた薬物相互作用をサルで反映する結果であった。以上の結果から、ヒト腎排泄における薬物間相互作用を予測する上で、サルが良いモデル動物となることがin vitroとin vivo試験から検証することができた。

結論

 ヒト腎排泄における薬物間相互作用を動物で検証・予測する上で、特にOAT3により腎臓内に取り込まれる医薬品の場合、ラットでは予測精度が低いことから、サルなどヒトと類似の基質選択性を示す動物種の利用が必要と考えられた。

図1 代表的なOAT1およびOAT3基質のkm(A)および相対輸送活性(B)のヒトとラットの比較

種間でOATsタンパク質の発現レベルを補正するために、OAT1ではPAHの輸送活性を、OAT3ではPCGの輸送活性を基準とした時の各化合物の相対輸送活性をヒトとラットで比較した。実線は1対1の対応を示している。a)Hasegawa et al.,(2003)、b)Deguchi et al,,(2004)。

図2 famotidineおよびcimetidineの近位尿細管細胞への取り込み機構の模式図

Famotidineはヒト腎臓において主にOAT3を介して取り込まれるのに対して、ラット腎臓では主にOct1を介して取り込まれる。一方、cimetidineはヒトおよびラット腎臓では主にOCT2を介して取り込まれる。

図3 カニクイザルにcimetidineおよびfamotidineを静脈内投与後の血漿中濃度推移およびprobenecidの血漿中濃度推移

雄性カニクイザルにfamotidineを0.3mg/kgおよびcimetidineを4mg/kg静脈内投与した(○;probenecid未処置群)。一ヶ月間休薬した後、同じカニクイザルにprobenecidを15mg/kg経口投与し、famotidineおよびcimetidineを静注時に再度probenecidを7.5mg/kg経口投与した(●;probenecid処置群)。各シンボルは平均値±標準偏差(n=4)を、実線は実測値を結んだラインを示している。

審査要旨 要旨を表示する

 医薬品の研究開発において、ヒトにおける薬理作用・動態特性・安全性を予測するためにマウス・ラット・イヌ・サルなどの動物種が使用されている。動物実験からヒトの有効性を外挿するためには、実験動物とヒト間の薬物動態学的因子(代謝酵素、トランスポーターなど)と薬理学的因子(受容体、酵素など)の種差を考慮する必要がある。従来から薬物動態学的因子として、血中の蛋白結合、代謝・排泄過程に関する種差の解析が行われており、実験動物で得られた動態パラメータをヒトへ外挿する方法論の一つとして、アロメトリー式を用いた予測法が用いられている。この方法は各動物の個体あたりのクリアランス(CL)値がアロメトリー式で表せるという経験則に基づいている。腎CLを記述するためのアロメトリー式の指数項は、ネフロン数と体重の関係より得られる指数項と近似しているため、腎CLの種差は主にネフロン数の違いを反映しており、尿細管あたりの排泄能力において種差は小さいものと考えられてきた。しかし、あくまでこの予測法は経験則であり、例外の存在を否定することは困難である。H2受容体拮抗薬であるfamotidineは、主に尿細管分泌により尿中へ排泄される弱塩基性の薬物で、ヒトではprobenecidの併用投与によりfamotidineの血漿中濃度の上昇および腎CLの低下が生じる。しかし、ラットではこの薬物間相互作用を再現することが出来ず、famotidineの腎尿細管分泌においてprobenecid感受性トランスポーターの寄与率に種差の存在が示唆されていた。医薬品の探索研究において、ヒト体内動態の優れた化合物を選択することは一つの使命であり、ヒト体内動態および薬物間相互作用を予測することが重要となる。そのためには、in vitroでトランスポーターの基質選択性の種差を把握し、適切な実験動物を用いて相互作用試験を検証することが、より精度の高いヒト薬物間相互作用の予測に繋がるものと考えられる。そこで、腎臓の近位尿細管側底膜に発現する有機アニオントランスポーター(OATs)の種差に関する知見を得て、さらにヒトと類似した輸送特性を示す動物種としてサルに着目し、その輸送特性を明らかにすることを目的として研究が行われた。

 第一章では腎取り込み関与するOAT1、OAT3の輸送特性のヒトおよびラット間の種差を明らかにするために、代表的な基質の輸送特性を比較している。第二章ではH2受容体拮抗薬とprobenecidとの薬物間相互作用の種差のメカニズムを明らかにするために、OATsおよびOCTs安定発現細胞を用いてH2受容体拮抗薬の輸送特性の種差を明らかにした。その結果に基づいて、H2受容体拮抗薬とprobenecidとの薬物間相互作用の種差の要因として、OAT3の輸送活性およびOCT1の発現分布の種差によることが示唆された。そこで、第三章ではサルの有用性を示すために、サルOATsの輸送特性およびサルOCTsの発現分布を評価し、さらにサルにおけるH2受容体拮抗薬とprobenecidとの薬物間相互作用を評価し、その妥当性を検証している。

1、ラット・ヒト間での有機アニオントランスポーター機能の比較

 OAT1およびOAT3は近位尿細管の側底膜に局在し、薬物の尿細管分泌において血液から近位尿再管への取り込み過程に関与している。OATsの輸送特性の種差を明らかにするために、ヒトとラットOAT1およびOAT3の基質選択性および輸送活性の比較が行なわれた。OAT1およびOAT3の代表的な基質の取り込みにおける濃度依存性を調べた結果、いずれも飽和性の取り込みが認められた。これら化合物のKm値をラットとヒト間で比較した結果、OAT1およびOAT3いずれも同程度の値であった。更に、輸送活性をラットとヒト間で比較すると、OAT1では良好な相関性が認められたのに対してOAT3では相関性が低く、OAT3を介した輸送活性に種差が認められた。

2、H2受容体拮抗薬とprobenecidとの薬物間相互作用における種差のメカニズム解析〜0ATs/OCTs発現細胞におけるH2受容体拮抗薬の輸送およびprobenecidの阻害作用〜

 H2受容体拮抗薬とprobenecidとの薬物間相互作用の種差のメカニズムを解明するために、ヒトおよびラットOATs/OCTs安定発現細胞を用いて、H2受容体拮抗薬の輸送特性およびprobenecidの阻害作用が検討された。

 hOAT3発現細胞における相対輸送活性はcimetidine(1)>famotidine(0.37)ranitidine(0.24)であり、rOat3発現細胞ではranitidine(1.9)>cimetidine(1)>>famotidine(0.13)の序列であった。OAT3を介したH2受容体拮抗薬の輸送活性にも種差が認められ、OAT3を介したfamotidineの輸送活性がラットで低いことが示された。rOct1発現細胞における相対輸送活性はcimetidine(1)、famotidine(0.75)、ranitidine(0.87)と同程度であったが、r/hOCT2発現細胞ではcimetidine(1)比べ、ranitidine(0.02/0.14)およびfamotidine(0.09/0.12)の輸送活性は非常に低かった。H2受容体拮抗薬の取り込みに対するprobenecidの阻害作用について検討した結果、r/hOCT2およびrOct1を介したcimetidineおよびfamotidineの取り込みはprobenecidにより阻害されなかったが、OAT3を介した取り込みは強く阻害され、probenecidのKi値は3-6μMであった。

 以上の結果から、famotidineとprobenecidの薬物間相互作用の種差は、OAT3を介した輸送特性に種差が認められること、ヒト腎臓にOCT1が発現していないことに起因するものと考えられた。ヒトで薬物間相互作用が生じた時のprobenecidの血漿中非結合型濃度(20-50μM)は、probenecidのhOAT3に対するKi値を上回っていることから、famotidineの腎分泌CLの低下はhOAT3の阻害作用に基づくことが示唆された。

3、サルを用いたH2受容体拮抗薬とprobenecidの薬物間相互作用試験(in vitro-in vivo評価)

 ラットに代わる実験動物としてサルが適していると考えられるが、サルの薬物トランスポーターの多くは未解明である。本研究ではサル腎臓よりmkOAT1およびmkOAT3をクローニングし、それらの輸送特性の種差を検討すると共に、カニクイザルを用いたH2受容体拮抗薬とprobenecidとの薬物相互作用試験が行なわれ、サルの有用性をin vitroおよびin vivoから検証している。

 サル腎臓よりPCR法によりクローニングしたmkOAT1およびmkOAT3のアミノ酸配列は、ヒトと比べて97および96%と高い相同性を示した。Western blot法および免疫染色法により、ヒトと同様にmkOAT1およびmkOAT3の腎臓への発現および近位尿細管の側底膜への局在が認められた。mkOAT1およびmkOAT3の安定発現細胞を用いて、OATsの代表的な基質の輸送活性をhOATsと比較した結果、OAT1およびOAT3いずれにおいても良好な相関性が認められた。mkOAT3発現細胞を用いてH2受容体拮抗薬の輸送活性を比較した結果、相対輸送活性はcimetidine(1)>famotidine(0.32)、ranitidine(0.33)の序列であり、hOAT3の序列と一致した。CimetidineおよびfamotidineのmkOAT3を介した取り込みはprobenecidにより強く阻害され、Ki値は3-6μMとhOAT3と同程度であった。次に種差の要因であるOCT1の組織分布について検討した結果、ヒトと同様にmkOCT1は主に肝臓に、mkOCT2は腎臓に発現していることが示された。

 以上のin vitroデータに基づいて、カニクザルを用いたH2受容体拮抗薬とprobenecidとの薬物間相互作用試験を実施した。カニクイザルにfamotidineを静注後の血漿中曝露は、probenecidの併用投与により約2倍に、腎CLおよび腎分泌CLは約1/3および1/10に低下した。一方、cimetidineの血漿中動態はprobenecidの併用投与によっても変化しなかった。この時のprobenecidの血漿中非結合型濃度は10-36μMであり、mkOAT3に対するKi値(3-6μM)を上回っていることから、famotidineの分泌CLの低下は、mkOAT3の阻害作用によることが示唆され、逆にcimetidineではヒトと同様にOCT2を介した腎排泄が示唆された。いずれの薬物も臨床で認められた薬物相互作用をサルで反映する結果であった。以上の結果から、ヒト腎排泄における薬物間相互作用を予測する上で、サルが良いモデル動物となることがin vitroとin vivo試験から検証することができた。

 本研究は、H2受容体拮抗薬とprobenecidとの薬物間相互作用の種差の機構解明を通じて、一般に種差が小さいと考えられている腎トランスポーターについても、より高い精度の予測を行うためには、ラットに加えてヒトと類似の基質選択性を示すサルが有用であることを実証した。本研究は薬物動態領域の研究発展ならびにより安全な医薬品の創製に大きく貢献するものであり、博士(薬学)の学位を授与するに値するものと認めた。

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