学位論文要旨



No 216818
著者(漢字) 金,相美
著者(英字)
著者(カナ) キム,サンミ
標題(和) 社会関係資本としての縁故主義的ネットワークとサイバーコミュニティに関する一考察 : 韓国社会を事例に
標題(洋)
報告番号 216818
報告番号 乙16818
学位授与日 2007.08.24
学位種別 論文博士
学位種類 博士(社会情報学)
学位記番号 第16818号
研究科
専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 教授 橋元,良明
 東京大学 教授 姜,尚中
 東京大学 准教授 林,香里
 東京大学 准教授 石崎,雅人
 東京経済大学 教授 吉井,博明
内容要旨 要旨を表示する

1.問題意識の背景

○縁故主義の存在

韓国においては、人間関係や組織維持の伝統的な支配原理である「縁故主義」的な閉鎖的関係性が存在する。もともと韓国における「縁故関係」は、韓国の伝統的人間関係の原理として親族・血族を重視する儒教精神の伝統と深く関係している。20世紀半ば、植民地支配から朝鮮戦争を経て、「漢江の奇跡」と呼ばれるほどに急激に進行した近代化プロセスは、こういった伝統的習慣をより強化させる動因であったという指摘がある(Song,Ho-Gun[2002];Kim,Yong-Hak [2003])。伝統的習慣の強化は、上記に述べた近代化を率いた政治・経済エリートにおいては、縁故関係をベースにしたさまざまな取引として現れた。韓国の近代化過程は、経済的豊かさは確保されつつあったものの、公的制度の整備といった面においては不完全であったため、人々は公的機関に期待をするより、代替ツールとしての私的つながりを重視し、さまざまな援助を与えあう社会構造が形成されるようになったと指摘されている(Song,Ho-Gun[2002])。一般市民のレベルにおいては、縁故関係は、一般的効用として、親密な人間関係にもとづいた情緒的基盤と安定感を与える(Hofstede,1983)と同時に、実際に社会生活を営むうえで支援を期待できる人々の集合として機能するようになる。

○サイバーコミュニティの影響力

韓国におけるサイバーコミュニティは1990年代半ばに普及し初め、他の文化圏と比べても異常と言うほどの普及率を示している。特に、韓国のサイバーコミュニティは人間関係形成・拡大のために機能し、日本におけるサイバーコミュニティが情報交流のために利用されていることと大きな相違を見せている。このような機能をもつサイバーコミュニティの影響力において、(1)サイバー上でネットワークによって結ばれた「水平的分散力」という利点が活かされ、近未来の情報化社会においては、韓国社会にはびこる「縁故主義」という特徴的な問題が徐々に解消されることが期待(情報縁補完説)と(2)サイバーコミュニティにおいて、学縁関係の同窓会サイトが非常に盛んであることに注目し、サイバーコミュニティ参加行動は、縁故主義的関係といった習慣の反映であり、さらにはそれらを再生産しているツールである(縁故強化説)という二つの意見が存在する。

2.本稿の目的

本論の目的は、サイバーコミュニティの社会的機能を明らかにし、サイバーコミュニティへの参加が縁故主義に対する影響力を実証的アプローチによって検証することである。次の図1は、サイバーコミュニティへの参加の影響力に関する縁故強化説と情報縁補完説が支持されるための仮説を示したものである。

3.各章のまとめ及び結論

本論文は次の第七章で構成され、大きく、社会関係資本に関する部分(第一章)、縁故主義・縁故主義的行動に関する部分(第二章~第四章)、サイバーコミュニティの機能に関する部分(第五章~第七章)の三つの内容によって構成されている。主な内容は以下のとおりである。

第一章においては、本論における重要な分析概念である社会関係資本についてその概念に関する歴史的変遷及びそれらの構成要素について考察を行った。本論が理論の枠組みとして採用している社会関係資本の視点は、社会関係資本論の「利用可能資源説」を参照し、社会生活を営む上で重要な社会関係資本として縁故主義的ネットワークが私的財として機能することを設定している。また、韓国の社会関係資本の場合、擬似家族的集団に対する「ウリ意識」に基づく信頼関係が形成されているため、Putnamが提示した「結束ネットワーク型関係資本 (Bonding)」が排他的に機能する場合が多く、このことが「橋渡しネットワーク型関係資本(Bridging)」の醸成を妨げていることについて指摘した。

第二章においては、韓国における「縁故主義」がいかなる歴史的プロセスをもって発展してきたのかについて考察を行った。韓国における縁故主義に関する議論は大きく二次元に分けて捉えることができる。一つは、政治・経済エリートによって進行された近代化過程において縁故主義が血縁による通婚を通じて政経癒着、特定地域差別による地域主義としての地縁の発展、軍事クーデタによる陸軍士官学校の学縁が集権する過程である。もう一つは、一般市民側における縁故主義の具現に注目した議論がある。第二章においては前者に焦点を絞り考察を行った。不景気といわれている韓国において、日本でもよく知られているような教育熱が存在し続けることの背景には、良い「学歴」をもつことが社会生活を営む上で重要な「学縁」というネットワークを獲得するためでもあることについて指摘した。韓国の学縁は、極めて閉鎖的で情実人事の様相も著しい英国の例と比べれば相対的にはマイルドなものであるにもかかわらず、社会問題視される傾向が強く、その理由の一つとして、「平等化心理」を取り上げ、この心理の背景に良いとされる学縁を持っているエリート層の社会的道徳の不在という問題があることについて考察した。

第三章においては、韓国の一般市民の日常生活において、縁故主義が如何に定着し、縁故主義に立脚した行動がどのような社会心理学的メカニズムを持っているのかについて検討した。そのために、本章では韓国人の縁故主義的関係の形成・共同体への参加に関する実証的研究成果を紹介・考察した。第二章で述べた「縁故主義」を通した少数の政治経済のエリート層による縁故を中心にしたやり取りは、その道具的利用価値の重要性を社会全般に行きわたらせ、組織原理・対人関係形成の原理として定着していくことになる。韓国人にとって、「縁故主義」とは、克服されなければならない社会悪として否定的に理解されていると同時に、日常生活を営むうえで現実的利益を得るための戦略的かつ理性的行動として、実際には縁故主義的関係をむすぶといった行動レベルで顕著になるという、態度と行動の二重的構図を持っている。また、韓国におけるサイバーコミュニティが盛んに普及し始め爆発的な利用率を示していた時期は実世界における縁故主義が強化される時期である指摘がある。本章では、IMF経済危機など社会不安にさらされている一般市民が、頼れるはずの社会集団及び社会制度への不信感を増幅させるなかで、どのような形で伝統性への回復を図っていたのか、について実証的データを用い考察を行った。

第四章においては、実生活における縁故関係の重要性に対する評価及び実用性への評価、縁故関係の参加状況などについて、橋元・金ほか[2005]の日韓比較調査の分析結果をもとにその内容を紹介した。同時に、韓国における1989年度の調査結果と照らし合わせながら、それらの変化の要因について検討を行った。調査の分析結果、韓国の方が日本より縁故主義が成功の帰属要因として重視される社会であることが示唆された。特に、「学縁」に関しては、韓国の場合32.0%の人が重要性を認識しているのに対し、日本の場合は7.1%に過ぎず、同じように学歴社会と呼ばれているものの、両国における成功要因としての学縁に関する評価に温度差が見られた。「縁故関係」の実用性に関する認識に関して分析した結果、韓国は日本に比べ、社会での成功の要件として、縁故の重要性が非常に高く評価されていることが示唆された。韓国における縁故主義は、生活文化の一部として定着しているため、近い将来のうちには簡単には弱まりにくいという指摘があったが(Mun,Suk-Nam [1990])、地縁・学縁関係の共同体への参加に関する経年変化を分析した結果、両者における参加の度合いに大きな相違が存在していることが示された。学縁関係の集まりへの参加率に関しては、1990年度より2005年度の方が高い数値を示しており、時代の変化にかかわらず重要性が衰退していない。一方、地縁関係の集まりへの参加率は、弱まる傾向が見られ、地縁関係の重要性及び活用性は次第に衰退しつつあることがうかがえた。しかし、地縁に関する有効性は選挙といった政治過程においてこそ顕著になる傾向があり、参加率への低下をもってその影響力が弱まっているとは断言できない。

第五章においては、サイバーコミュニティへの参加行動の日韓比較を行った。その結果、日本より韓国の方がサイバーコミュニティへの参加が活発であり、アクセス・書きこみ頻度が高いことを明らかにした。また、種類別で見れば、日本の方は情報交換、韓国の方は対人関係維持・形成を動機としてサイバーコミュニティを活用している傾向が示された。特に、韓国の場合、同窓関係のサイバーコミュニティへの参加率が最も高い。Kim,Yong-Hak[2003]は、韓国におけるサイバーコミュニティに縁故を基本単位としたものが多いこと、さらに、韓国社会で影響力が大きいと知られているエリート大学ほどサイバーコミュニティ上での活動が活発であることを取り上げ、サイバーコミュニティへの参加が縁故主義を強化するツールであることを提唱した。しかし、Kim,Yong-Hakの調査では、学縁関係のサイバーコミュニティにおける活動内容が看過されていたため、「人的資本(ここでは、偏差値)」がそのまま「社会関係資本」の生成につながっているという主張には飛躍があった。彼の研究によって言えることは、「名門大学出身者」は、「非名門大学出身者」と比べ、サイバーコミュニティでの既存のソーシャル・ネットワークである学縁ネットワークに積極的な活動をしているということであり、この行動が縁故主義によるものかどうかを明らかにしたわけではない。

第六章においては、サイバーコミュニティの社会的機能に関する本格的な考察を行った。まず、サイバーコミュニティを(1)「関係重視型サイバーコミュニティ」及び(2)「情報交換型サイバーコミュニティ」に分類し、それぞれの「縁故維持機能」と「情報縁形成機能」について考察した。(1)の場合、既存の人間関係の大半を占めている縁故関係の維持・深化機能を果たしている。(2)の場合、上記の(1)の縁故主義的関係より広い範囲にわたって似た趣味・関心事を共有する人々の情報交流を通じた横断的な関係構築の機能を果たしていることについて調査の結果を元に考察した。

第七章においては、サイバーコミュニティへの参加が「縁故主義」をより強化するという縁故強化説と弱体化する影響力として働くという情報縁補完説それぞれが支持されるための4つの仮説を設定し、それぞれについて実証的検証を行った。その結果、仮説(1)は成立したものの、(2)~(4)は成立せず、サイバーコミュニティに関しては縁故強化説も情報縁補完説も支持されず、インターネット自体の影響力は限定的であることが示された

4.今後の展望

アジアにおける社会関係資本論の再考察

本稿では、社会不安が公的領域への不信感を引き起こし、このことが縁故関係のような私的領域への依存をもたらすといった韓国社会における縁故主義の維持・拡散のメカニズムについて紹介した。しかし、この議論は実証的根拠が不足のまま議論が進められていると思われる。このことに関しては、社会関係資本の構成要素である信頼に関する後続研究において解明される必要があると思われる。

情報縁の社会的帰結:パネル調査の必要性

本論は、既存の人間関係の根源になる縁故関係に焦点を絞り議論を進めてきたため、サイバーコミュニティへの参加によって新たに形成された情報縁の機能についてはあまり注目することができなかった。韓国のサイバーコミュニティは、オフ会が盛んに行われることから、サイバー上で初めて知り合った人々がその後のやり取りを通じて親密化が進み、現実世界における対人関係に変化を及ぼすことが予想される。本論におけるサイバーコミュニティの縁故主義に対する影響の情報縁補完説の論者は、こういった情報縁が縁故主義を瓦解できるとしたが、本稿の調査結果の限りでは否定される結果となった。しかし、我々の調査は一過性のものであり、情報縁の機能に関しては一定の時間をおいた継時的調査によって明らかにする必要があると思われる。

図1 サイバーコミュニティと縁故主義に関する縁故強化説及び情報縁補完説の検証のための仮説

図2 サイバーコミュニティと縁故主義に関する縁故強化説及び情報縁補完説に関する仮説検証の結果

審査要旨 要旨を表示する

本論文は、社会心理学的観点から、韓国社会でしばしば議論される縁故主義が、インターネット上のサイバーコミュニティへの参加とどのような関連をもつかについて実証的検証を試みたものである。サイバーコミュニティへの参加が縁故主義に及ぼす影響については、先行研究において、大きく「縁故強化仮説」と「情報縁補完仮説」の二つの議論が存在する。前者は、サイバーコミュニティがむしろ既存の縁故関係を強化するツールとして機能するという仮説であり、後者はサイバーコミュニティが現実世界において不足している社会関係資本を補完し、縁故主義を解体する方向に機能するという議論である。論文では、社会関係資本の概念について整理した上で、韓国社会の近代化過程における縁故主義の形成・変容・実態について考察し、一方で、韓国におけるインターネットの利用実態およびサイバーコミュニティの機能を論じ、日韓比較調査をもとに、縁故主義とサイバーコミュニティの関係を実証的に検証した。分析の結果、サイバーコミュニティの縁故主義に及ぼす影響は限定的であることが明らかにされている。

本論は以下の七章から構成されている。

第一章では、本論の重要な分析概念である社会関係資本について、その概念に関する歴史的変遷およびそれらの構成要素等について考察がなされている。本論では、社会関係資本を個人間や組織間のネットワークに埋め込まれた資源としてみなし、とくに韓国社会において強固な「結束型社会関係資本」の特性について詳細に分析している。また、韓国の「橋渡し型関係資本」については、互恵性による自発的動機の確保が難しく、その実態についても従来の研究では十分解明・理論化されていないことが指摘されている。第二章においては、韓国における「縁故主義」がいかなる歴史的プロセスをもって発展してきたのかについて考察がなされている。韓国における縁故主義に関する議論は大きく二側面に分けて捉えることができる。一つは、主に政治・経済的エリートによって進められた近代化過程において、血縁による通婚とそれによる政経癒着、特定地域差別をも含む地域主義としての地縁の発展、主に陸軍士官学校出身者による学縁の形成、という側面で進行した縁故主義の展開である。もう一つは、一般市民側における生活上の実利的側面を多分に含んだ縁故主義の形成である。本論文の二章では、主に前者を中心に考察が展開されている。第三章においては、韓国の一般市民の日常生活において、縁故主義がいかに定着し、縁故主義に立脚した行動がどのような社会心理学的メカニズムを持っているのかについて論じられている。第二章で論じられた、「縁故主義」を介した少数の政治経済エリート層による社会システムの形成は、その道具的利用価値の重要性を社会全般に行きわたらせ、組織原理・対人関係形成の原理として一般市民にも定着していくことになる。本章ではまた、地縁・血縁・学縁の複合体である縁故の中でも、韓国の現代社会において地位獲得・上昇にとって極めて重要な要素であり、同時に社会的に頻繁にその問題性が議論され続けている学縁について、とくに焦点を絞り、議論を進める必然性についても記述している。第四章においては、日韓比較調査の分析結果をもとに、実生活における縁故関係の重要性・実用性への評価、縁故関係への実態的かかわり等について分析されている。また、韓国における先行的調査結果と照らし合わせながら、それらの時代的変遷が議論されている。

以下の第五章から七章では、論文提出者が関与した日韓比較調査に基づき、縁故主義とサイバーコミュニティの機能に関して実証的考察がなされている。まず、第五章においては、サイバーコミュニティへの参加行動の日韓の比較分析がなされている。その結果、日本より韓国の方がサイバーコミュニティへの参加が活発であり、アクセス・書きこみ頻度等が高いことが明らかにされた。コミュニティの種類別で見れば、日本は情報交換型コミュニティの利用が活発であり、一方、韓国では主に対人関係維持・形成を動機としてサイバーコミュニティを活用している傾向が示された。とくに、韓国の場合、学縁関係のサイバーコミュニティへの参加率が最も高い。この章では、さらに、韓国社会で影響力が大きい名門大学出身者ほどサイバーコミュニティ上での活動が活発であることを指摘し、サイバーコミュニティへの参加が縁故主義を強化するツールであることを主張するKim,Yong-Hak氏の研究成果を詳細に紹介しつつ、「縁故強化仮説」の理論的検討がおこなわれている。第六章においては、サイバーコミュニティの社会的機能に焦点を充てた考察がなされている。サイバーコミュニティを(1)関係重視型サイバーコミュニティと(2)情報交換型サイバーコミュニティに分類し、それぞれの「縁故維持機能」と「情報縁形成機能」について論じている。また、日韓におけるサイバーコミュニティへの参加行動の特徴およびその機能の相違について比較分析がなされている。第七章においては、サイバーコミュニティへの参加による「縁故強化仮説」および「情報縁補完仮説」を実証的に検証するため4つの仮説を設定し、それぞれについて社会統計学的検証が行われた。単相関分析では、一部において有意な相関関係がみられるものの、多変量解析手法を用いた分析によれば、「学縁の有効性感覚」においても、「情報縁への積極的参与」においても、名門大学出身かそうでないかによる学歴による効果は消失し、サイバーコミュニティに関しては縁故強化仮説も情報縁補完仮説も積極的に支持されず、インターネット自体の影響力は限定的であることが明らかにされている。

韓国は、世界的に見てもインターネットの普及において先進的であり、とくに電子掲示板等を通した情報発信行動が活発であり、サイバーコミュニティへの参加度も高い。そのような状況で、政治的世論形成や社会関係の再編に関するインターネットの影響がネット普及の初期から盛んに議論されてきた。一方で、縁故主義、とくに学縁に対する弊害が、市民レベルはもとより政府レベルでもたびたび問題視され、マスメディア上でもネット上でも活発な議論が展開されてきた。そうした中で、サイバーコミュニティは、旧弊然とした縁故関係による呪縛から解放するものとして過剰な期待がかけられ、また他方では、実態として縁故主義を助長するものとして非難されてもきた。しかし、こうしたサイバーコミュニティの機能・影響については、一時的な現象観察による表層的議論が多く、韓国でも十分な実証的分析がなされてこなかったという実状がある。本論文は、韓国における縁故主義について、歴史的生成・発展過程、縁故主義的行動の実態・意識等を検討する一方、調査に基づき、サイバーコミュニティの実態的機能や参加状況と、社会的ネットワークの変化との関係等を実証的に検証し、社会統計学的分析から、縁故主義とサイバーコミュニティへの参加とには、有意な関連が存在するとは言えないことを明らかにした。本論文は、韓国社会にとって宿痾ともいえる縁故主義、過剰評価されがちなネットの影響力、という重要かつ時宜を得た論点を取り上げ、その両者の関連を理論・実証の両面から考察したという点において、この種の研究の分野に新たな地平を切り開いたものとして高く評価できる。

調査技法的制約もあり社会関係資本に関する実態の把握が十二分でないこと、調査という側面においても継時的変化を追うべきこと、縁故主義をめぐる普遍性の考察、等、今後、分析を深めるべき課題も多々残しているものの、本論文で示した成果と研究手法をさらに発展させるならば、当該研究領域において多大な功績を残すことになろう。そのために必要な視座と学識は、本論においてすでに十分披瀝されている。

よって、本審査委員会は、本論文が博士(社会情報学)の学位を授与するにふさわしい水準に達しているものと判断する。

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