学位論文要旨



No 217366
著者(漢字) 土田,洋
著者(英字)
著者(カナ) ツチダ,ヒロシ
標題(和) 新規トリプル型neurokinin受容体拮抗剤CS-003の薬効薬理作用に関する研究
標題(洋)
報告番号 217366
報告番号 乙17366
学位授与日 2010.06.09
学位種別 論文博士
学位種類 博士(薬学)
学位記番号 第17366号
研究科
専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 教授 新井,洋由
 東京大学 教授 長野,哲雄
 東京大学 教授 松木,則夫
 東京大学 教授 入村,達郎
 東京大学 准教授 有田,誠
内容要旨 要旨を表示する

Neurokinin(NK、tachykinin)は神経ペプチドで、主に知覚神経C線維から放出される神経伝達物質である。知覚神経C線維は求心性に情報を伝達するが、いわゆる軸索反射と呼ばれる反応により、末梢組織にも神経伝達物質を放出し、全身性に様々な作用を呼び起こす。これまでのところ、知覚神経C線維はカプサイシンや機械的および化学的な刺激以外にも、炎症に起因するhistamineやbradykininなどによっても活性化され、末梢組織に放出されたNKにより炎症が増悪する神経原性炎症が様々な病態に関わっていることが報告されている。

NKの中で特にsubstance P(SP)、neurokinin A(NKA)、neurokinin B(NKB)に対する研究が進んでいるが、いずれもC末端にPhe/Gly/Leu/Metを含む共通モチーフを持つ約10アミノ酸からなるペプチドである。NK受容体は三つのサブタイプNK1、NK2、NK3が報告されている。これら受容体はGタンパク共役型受容体で、phospholipase Cの活性化を介して細胞内シグナルを伝達する。SPはNK1受容体に対して最も強い親和性を示し、NKAはNK2受容体、NKBはNK3受容体に対して最も強い親和性を示すが、各リガンドは他の受容体サブタイプに対してもフルアゴニストとして作用する。

NK受容体は全身性に発現して様々な生理作用に関わっているが、特に呼吸器では上皮・血管内皮・気道平滑筋・分泌腺・炎症細胞などに広く分布しており、気道収縮・粘液分泌・咳など様々な生理作用に関与することが報告されている。これらの作用は、特定の1つの受容体サブタイプだけではなく、三種類の様々な受容体サブタイプを介して誘発されており、このことから我々は、1つの受容体サブタイプだけを抑えるサブタイプ選択的NK受容体拮抗剤よりも三種類全ての受容体サブタイプを阻害するトリプル型NK受容体拮抗剤の方が強い薬効が期待できると考え、新規トリプル型NK受容体拮抗剤CS-003を合成した。

1.CS-003の薬理学的プロファイルの解析

(1)In vitro

CS-003はモルフォリン骨格にスピロ環およびトリメトキシベンゾイル基を配した化学構造をした分子量710.11の低分子化合物で、ヒトNK1、NK2、NK3受容体に対してそれぞれ2.3、0.54、0.74nMのKi値を示し、モルモットNK受容体に対してもヒトと同様に強い親和性を示した。

CS-003の細胞における受容体拮抗活性はヒトNK受容体発現細胞を用いて評価した。ヒトNK受容体発現細胞を各リガンドで刺激することによりリガンド濃度依存的にinositol phosphate産生(IP)が認められ、CS-003はIP産生量を濃度依存的に抑制した。

(2)In vivo

CS-003のin vivoでの活性についてはモルモットを用いて検討した。NK1受容体拮抗活性はSPで誘発した気道血管透過性の亢進、NK2受容体拮抗活性はNKAで誘発した気道収縮、NK3受容体拮抗活性はNKBで誘発した気道収縮を指標に評価した。CS-003静脈内投与により、各気道反応は用量依存的に抑制され、NK1、NK2、NK3受容体拮抗活性ID50値はそれぞれ0.13、0.040、0.063mg/kgであった。また、CS-003経口投与でも用量依存的な抑制作用が認められ、ID50値はそれぞれ3.6、1,3、0.89mg/kgであった。

2.CS-003の呼吸器疾患モデルにおける薬効

(1)カプサイシン誘発気道収縮モデル

唐辛子の成分であるカプサイシンは知覚神経を刺激することによりモルモットにおいて気道収縮を誘発する。このカプサイシンにより誘発された気道収縮は、充分な用量のNK2選択的拮抗剤SR48968により59%有意に抑制されたが、NK1選択的拮抗剤FK888およびNK3選択的拮抗剤SB223956では抑制されなかった。CS-003静脈内投与はこの気道収縮を用量依存的に抑制して、ID50値は0.27mg/kgであった。また、CS-003は最高用量の1.0mg/kgでは85%の抑制作用を示し、充分な用量を投与したNK受容体サブタイプ選択的拮抗剤よりも高い抑制率を示した。この結果は、複数のNK受容体サブタイプを阻害するトリプル型NK受容体拮抗剤CS-003の受容体サブタイプ選択的拮抗剤に対する優位性を指示する結果である。

(2)アレルギー性鼻炎モデル

アレルギー性鼻炎では、肥満細胞や好酸球を主体とした炎症が認められ、これら炎症細胞から放出された化学メディエーターは血管などに作用することにより、鼻閉を誘発することが報告されている。また、histamineやleukotrieneなどの化学メディエーターは知覚神経を刺激することによりNKを放出させることも報告されており、鼻閉に対してはNK1受容体選択的拮抗剤あるいはNK2受容体選択的拮抗剤が薬効を示すことが既に報告されているが、その抑制作用は完全ではなく、三種類全てのNK受容体サブタイプを阻害した場合の薬効は報告されていない。

抗原を用いて作製したモルモットアレルギー性鼻炎モデルにおいて、経口投与したCS-003は鼻閉の即時反応および遅発反応をともに用量依存的に抑制し、広範な抗炎症作用を示すステロイドと同様にほぼ完全に鼻閉反応を抑制した。

(3)アレルギー性喘息モデル

アレルギー性の気管支喘息ではアレルギー性鼻炎と同じように好酸球主体の炎症が認められている。最も重要な症状である喘息発作の原因、気道過敏性の亢進に関してはメカニズムが完全にはわかっていないが、慢性的な炎症による気道リモデリング(気道壁の肥厚、分泌細胞の増加)などの関与が報告されており、抗炎症薬としてステロイドやロイコトリエン受容体拮抗薬が処方されている。NKに関しては、受容体サブタイプ選択的拮抗剤を用いた動物での検討により、三種類の受容体サブタイプが全て気道過敏性の亢進に関与していると報告されている。

単回抗原吸入させた急性的病態、および3回にわたり抗原吸入させた慢性的病態のモルモットアレルギー性喘息モデルを作製して薬剤評価した結果、CS-003経口投与では急性的および慢性的な両モデルでともに有意な気道過敏性亢進抑制作用を示した。一方、leukotriene拮抗薬montelukastは急性的病態では気道過敏性の亢進を有意に抑制したが、慢性的病態では抑制しなかった。このことから、臨床病態をより反映していると考えられる慢性的な喘息病態モデルではleukotrieneよりもNKの関与が大きくなっていることが明らかとなった。

(4)咳モデル

呼吸器科を訪れる患者が最も多く訴える症状は咳嗽であり、患者のQOLを著しく低下させる。CS-003およびNK受容体サブタイプ選択的拮抗剤をモルモットクエン酸誘発咳モデルで評価した結果、選択的拮抗剤ではNK2拮抗剤SR48968が最大薬効を示したが、CS-003はSR48968の抑制率を上回る77%抑制という強い鎮咳作用を示した。また、カプサイシン誘発咳モデルでも評価した結果、CS-003は中枢性鎮咳薬codeineを上回る72%抑制という非常に強い鎮咳作用を示した。CS-003は複数の受容体サブタイプを抑制することで非常に強い鎮咳作用を示すと考えられる。

(5)タバコ煙誘発肺炎症

呼吸器では喫煙により発症リスクが上昇する疾患が多数報告されている。タバコ主流煙は知覚神経を刺激することが報告されており、動物でのNK受容体拮抗剤を用いた検討から、タバコ主流煙誘発気道反応への各NK受容体の関与が報告されているが、トリプル型NK受容体拮抗剤による抑制作用については報告されていない。CS-003はモルモットにおけるタバコ煙誘発気道収縮および気道血管透過性亢進だけでなく、新たに気道粘液分泌を抑制することを明らかにした。

3.まとめ

新たに合成されたトリプル型NI(受容体拮抗剤CS-003はモルモットにおいて、気道収縮・鼻炎・喘息・咳・喀痰分泌に非常に強い薬効を示した。これらの結果の内、カプサイシン誘発気道収縮およびクエン酸誘発咳においては、全てのNK受容体サブタイプ選択的拮抗剤よりも強い抑制作用を示したことから、CS-003は複数のNK受容体サブタイプを阻害することの治療薬としての有用性を明らかにした。また、CS-003はアレルギー性鼻炎においては経ロステロイドと同等の鼻閉抑制作用を示し、アレルギー性喘息モデルではleukotriene拮抗薬よりも強い気道過敏性改善作用を示し、更にカプサイシン誘発咳においては中枢性鎮咳薬codeineよりも強い鎮咳作用を示した。様々な呼吸器疾患の原因とも考えられるタバコ煙で誘発した気道反応に対してもCS-003は薬効を示した。

本研究成果はNKの呼吸器病態における重要性を強く支持するものであり、NK受容体は様々な呼吸器疾患の創薬標的として有望であることから、呼吸器疾患を対象としてCS-003経口剤の臨床試験が開始されたが、副作用により中止された。臨床開発の面では、呼吸器疾患においては吸入剤への剤形変更が考えられるが、NK受容体は全身性に発現していることから、呼吸器疾患以外にも様々な疾患に対するNKの重要性を明らかに出来る点でCS-003は非常に有用な化合物である。

急性的病態における気道過敏性

慢性的病態における気道過敏性

モルモットクエン酸誘発咳モデル

NK1拮抗剤:FK888

NK2拮抗剤:SR48968

NK3拮抗剤:SB223956

審査要旨 要旨を表示する

ニューロキニンはカプサイシン感受性の知覚神経C線維から主に放出される神経ペプチドである。主なニューロキニンとして、サブスタンスP、ニューロキニンA、ニューロキニンBがある。共通している点は、Phe/Gly/Leu/Metを含むモチーフを持つ約10アミノ酸からなるペプチドで、受容体には三つのサブタイプ(NK1、NK2、NK3)がある。サブスタンスPはNK1受容体に対して最も強い親和性を示し、ニューロキニンAはNK2受容体、NKBはNK3受容体に対して最も強い親和性を示すが、各リガンドは他の受容体サブタイプに対してもフルアゴニストとして作用する。

知覚神経C線維は求心性に情報を伝達するが、いわゆる軸索反射と呼ばれる反応により、末梢組織にも神経伝達物質を放出し、全身性に様々な作用を呼び起こす。これまでのところ、知覚神経C線維は炎症に起因するヒスタミンやブラジキニンなどの化学伝達物質によっても活性化され、末梢組織に放出されたニューロキニンにより炎症が増悪する神経原性炎症が様々な病態に関わっていることが報告されている。

ニューロキニン受容体は全身性に発現して様々な生理作用に関わっているが、特に呼吸器では上皮細胞・血管内皮細胞・気道平滑筋・分泌腺・炎症細胞などに広く分布しており、気道収縮・粘液分泌・咳など様々な生理作用に関与することが報告されている。これらの作用は、特定の1つの受容体サブタイプだけではなく、3種類の様々な受容体サブタイプの関与が考えられており、3種類の受容体サブタイプ全てを阻害することで呼吸器病態を強く抑制できる可能性がある。

これまでに報告されている動物および臨床でのニューロキニン受容体拮抗剤の作用やニューロキニン受容体の発現情報から、ニューロキニン受容体が呼吸器疾患に深く関わっている可能性が示唆されており、また、リガンドと受容体が必ずしも1対1の関係にない3種類の受容体サブタイプが存在することから、土田は3種類全ての受容体を阻害するトリプル型ニューロキニン受容体拮抗剤の開発を目指した。具体的には、新規トリプル型ニューロキニン受容体拮抗剤CS-003の薬理学的プロファイルを解析し、モルモット各種呼吸器疾患モデルにおけるCS-003の薬効を評価することによリニューロキニン受容体の機能を明らかにすることを目的とした。。

CS-003はモルフォリン骨格にスピロ環およびトリメトキシベンゾイル基を配した化学構造をした分子量710.11の低分子化合物で、ヒトNK1、NK2、NK3受容体に対してそれぞれ2.3、0.54、0.74nMのKi値を示し、モルモットニューロキニン受容体に対してもヒトと同様に高い親和性を示した。これまでに報告されているニューロキニン受容体サブタイプ選択的拮抗剤FK888、SR48968、SB223956のKi値は、ヒトNK1、NK2、NK3に対してそれぞれ0.15、0.32、5.3nMであり、各化合物の選択性が確認された。また土田は、CS-003はヒトと比較してマウスおよびラットNK受容体に対しては結合親和性が約1000倍低いことを明らかにした。

CS-003のニューロキニン受容体以外の受容体に対する結合親和性は、イオンチャネルやトランスポーターを含む100以上の分子で調べたが、10μMでリガンドー受容体結合を抑制率50%以上で阻害したのは、ラットL type calcium channelおよびラットsodium channel site2のみであった事から、CS-003は特異的な新規トリプル型ニューロキニン受容体拮抗剤であることを強く示唆した。

土田は、CS-003の細胞に対する活性をヒトニューロキニン受容体発現細胞を用いて評価し、CS-003は単剤で全てのニューロキニン受容体に対して競合的拮抗作用を示すことを明らかにした。CS-003のin vivoでの活性については、NK1受容体拮抗活性はサブスタンスPで誘発した気道血管透過性の亢進、NK2受容体拮抗活性はニューロキニンAで誘発した気道収縮、NK3受容体拮抗活性はニューロキニンBで誘発した気道収縮を指標に評価した。その結果、CS-003静脈内投与により、各気道反応は用量依存的に抑制され、NK1、NK2、NK3受容体拮抗活性ID50値はそれぞれ0.13、0.040、0.063mg/kgであること、また、CS-003経口投与でも用量依存的な抑制作用を認め、ID50値はそれぞれ3.6、1.3、0.89mg/kgであることを示した。

次に土田は、CS-003を用いて、受容体サブタイプ選択的拮抗剤に対するトリプル型受容体拮抗剤の優位性についてモルモットを用いて検討した。知覚神経C線維を刺激することにより内因性のニューロキニンを放出させるカプサイシンはモルモットに暴露することで気道内圧の上昇つまり気道収縮を誘発できる。このカプサイシンにより誘発された気道収縮は、充分な用量のNK2受容体選択的拮抗剤SR48968により有意に抑制されたが、NK1受容体選択的拮抗剤FK888およびNK3受容体選択的拮抗剤SB223956では部分的にしか抑制しなかった。一方、CS-003静脈内投与はこの気道収縮を用量依存的に抑制して、ID50値は0.27mg/kg。CS-003は最高用量の1.0mg/kgでは85.0%の抑制作用を示し、充分な用量を投与したNK1、NK2、NK3受容体のそれぞれの選択的拮抗剤よりも高い抑制率を示した。これらの結果から土田は、カプサイシン誘発気道収縮は全てのニューロキニン受容体を阻害することで、サブタイプ選択ニューロキニン受容体拮抗剤よりも強く抑制されることを明らかにした。

次に土田は、トリプル型ニューロキニン受容体拮抗剤CS-003により、3種類全てのニューロキニン受容体を阻害することによる薬効を各種呼吸器疾患モデルで評価した。

アレルギー性鼻炎では、肥満細胞や好酸球を主体とした炎症が認められ、これら炎症細胞から放出されたヒスタミンやロイコトリエンなどの化学伝達物質は血管などに作用することにより、鼻閉症状を誘発することが報告されている。鼻閉は、主に肥満細胞の脱顆粒を介したヒスタミンによる即時反応、および主に好酸球などの新たな炎症細胞浸潤による遅発反応が報告されているが、NK1受容体選択的拮抗剤は即時反応を部分的に抑制し、NK2受容体選択的拮抗剤は遅発反応のみをほぼ完全に抑制することが既に報告されている。土田は、抗原を用いてモルモットアレルギー性鼻炎モデルを作製し、ニューロキニン受容体サブタイプを全て阻害することによる鼻閉症状の即時反応および遅発反応に対する抑制効果`をステロイドであるデキサメタゾンと比較した。その結果、経口投与したCS-003はどちらの反応も用量依存的に抑制し、広範な抗炎症作用を示すステロイドと同様に強い薬効を示した。この結果により土田は、NK1、NK2、NK3受容体全てを阻害することで、鼻閉に対して対照薬に匹敵する強い薬効が現れることを示し、特に即時反応においてはNK1受容体以外のニューロキニン受容体の関与を示した。

アレルギー性の気管支喘息ではアレルギー性鼻炎と同じように好酸球主体の炎症が認められている。最も重要な症状である喘息発作の原因、気道過敏性の亢進に関してはメカニズムが完全にはわかっていないが、慢性的な炎症による気道リモデリングなどの関与が報告されており、抗炎症薬としてステロイドやロイコトリエン受容体拮抗薬が処方されている。土田は、CS-003の急性的および慢性的喘息病態における作用を検討することにより、ニューロキニン受容体サブタイプを全て阻害することで発現する薬効を、ロイコトリエン受容体拮抗剤montelukastと比較した。その結果、急性的病態ではCS-003およびmontelukastは気道過敏性の亢進をともに有意に抑制したのに対し、慢性的病態ではCS-003のみが有意な抑制を示した。これらの結果から土田は、臨床病態をより反映していると考えられる慢性的な喘息病態モデルではロイコトリエンではなくニューロキニンが強く関与し、トリプル型ニューロキニン拮抗剤が強い薬効を示すことを明らかにした。

呼吸器科を訪れる患者が最も多く訴える症状はセキ(咳)であり、患者のQOLを著しく低下させる。これまでにサブタイプ選択的ニューロキニン受容体拮抗剤のセキ抑制作用が報告されているが、全てのニューロキニン受容体を阻害した時の薬効は報告されていないことから、土田はトリプル型ニューロキニン受容体拮抗剤の鎮咳作用をサブタイプ選択的ニューロキニン受容体拮抗剤と比較した。その結果、CS-003は用量依存的にセキを抑制し、1.0mg/kgでは77.0%抑制したことから、全てのNK受容体を抑えることにより、選択的NK受容体拮抗剤よりも強い薬効を示すことが明らかとなった。

以上、本研究結果から土田は、新規トリプル型ニューロキニン受容体拮抗剤CS-003が単剤で全てのニューロキニン受容体をin vitroおよびin vivoで強く阻害し、モルモット呼吸器疾患モデルでも強い薬効が発現することを示した。またこのことから、複数個のニューロキニン受容体サブタイプが病態形成に関与していることを明らかにした。ニューロキニン受容体は全身性に発現しており、様々な生理現象に関わっていることが報告されている。中枢に関わる疾患はもちろん、中枢以外でも皮膚に発現するニューロキニン受容体が関与する痒み症状や、腸管に発現するニューロキニン受容体が関与する過敏性大腸炎が特に注目されており、トリプル型ニューロキニン受容体拮抗剤がこれらの疾患に有効であることを示した本研究は、博士(薬学)に充分値するものと判断した。

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