学位論文要旨



No 217550
著者(漢字) 吉富(鈴木),智美
著者(英字)
著者(カナ) ヨシトミ(スズキ),トモミ
標題(和) スギ花粉アレルゲン蛋白質Cry j 1およびCry j 2のマウスT細胞エピトープペプチドを用いた特異的免疫療法に関する研究
標題(洋)
報告番号 217550
報告番号 乙17550
学位授与日 2011.09.14
学位種別 論文博士
学位種類 博士(薬学)
学位記番号 第17550号
研究科
専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 教授 新井,洋由
 東京大学 教授 入村,達郎
 東京大学 教授 関水,和久
 東京大学 准教授 有田,誠
 東京大学 准教授 東,伸昭
内容要旨 要旨を表示する

【背景】

アレルギー性疾患は、外来性のアレルゲンに対しIgE抗体依存的な炎症反応が引き起こされる疾患で、ステロイドや抗ヒスタミン剤などの対症療法により治療される。一方、特異的免疫療法はアレルゲンを低濃度から漸増しながら皮下に投与することにより免疫応答を減弱させる治療法で、長期緩解・治癒が期待される治療法である。

アレルゲンによるアレルギー反応惹起においては、曝露されたアレルゲンが抗原提示細胞に貪食され、断片化されたペプチドがT細胞に抗原提示される、この時抗原提示細胞から産生されるIL-4によりナイーブT細胞はTh1,Th2細胞に分化してサイトカイン産生上昇、細胞増殖を誘導し、続いてB細胞によるIgE抗体産生上昇が誘導され、肥満細胞上に結合したIgE抗体を介してアレルギー反応が誘発される。一方、特異的免疫療法においては、高用量のアレルゲン投与により抗原提示細胞がIL-10を産生するため、ナイーブT細胞はCD4+CD25+T細胞、Tr1細胞、Th3細胞などのregulatory T細胞へ分化する。Regulatory T細胞はIL-10、TGF-βを産生し、すでに誘導されているTh1,Th2細胞のサイトカイン産生・細胞増殖、B細胞のIgE抗体産生を抑制し、結果的にアレルギー反応を抑制すると考えられている。つまり、アレルゲン特異的なregulatory T細胞の誘導は特異的免疫療法において重要な役割を果たしていると言える。

特異的免疫療法の改良法として、T細胞エピトープペプチドを用いた治療法が提唱されている。T細胞エピトープとは、アレルゲン分子の中で抗原提示細胞内で断片化され、MHC上に結合してT細胞に提示される部分ペプチドのことで、regulatory T細胞誘導による有効性に寄与していると考えられている。T細胞エピトープを用いた場合、肥満細胞上のIgE抗体が認識する抗原決定部位であるB細胞エピトープを含まないため、アレルゲンを用いた場合に懸念される全身性のアナフィラキシーショックを引き起こす可能性を回避できると考えられる。

スギ花粉症では、アレルゲンとしてCry j 1、Cry j 2の2つの蛋白質が同定されており、BALB/cマウスではCry j 1に1箇所、Cry j 2に2箇所、計3箇所のT細胞エピトープが存在する。

【目的】

スギ花粉症に対する新規ペプチド免疫療法剤を開発するため、スギ花粉アレルゲン蛋白質Cry j 1とCry j 2のマウスT細胞エピトープペプチドを用い、特異的免疫療法に関する基礎実験を実施した。(1)T細胞エピトープによる免疫寛容誘導がアレルギー性鼻炎の症状改善につながるかどうか(2)複数のT細胞エピトープを連結した1つのペプチドを作製し、個々のT細胞エピトープが活性を保持しているかどうか(3)T細胞エピトープの曝露方法の違い(口腔内あるいは腸管)によって、免疫寛容誘導効果に違いが認められるかどうかについて検討を行った。

【結果】

(1)アレルゲン特異的なT細胞応答の抑制が、実際にアレルギー反応の抑制に繋がるかについては検討がなされていなかった要因の1つとして、マウスのアレルギー性鼻炎モデルが十分に確立されていないことがあったため、スギ花粉アレルゲンを用いたモデル作製を検討した。Cryj 2を経鼻感作した後、Cry j 2で点鼻惹起したところ、即時相の反応として、くしゃみ回数、鼻粘膜の透過性(鼻水)、遅発相の反応として、ヒスタミンに対する過敏性(鼻過敏性)において対照群と比較した有意な上昇が認められた。

T細胞エピトープによる免疫寛容誘導として、T細胞応答の抑制を検討した。Cry j 2のT細胞エピトープP2-246-259を経口投与した後、Cryi 2を経鼻感作した。PBSを投与した対照群ではT細胞エピトープの濃度依存的にT細胞増殖反応が誘導されたのに対し、T細胞エピトープを経口投与した群では増殖反応が抑制された。従って、T細胞エピトープの経口投与により特異的T細胞の応答が抑制されることが示された。

続いて、鼻炎症状に対するT細胞エピトープの薬効評価を実施した。T細胞エピトープP2-246-259を経口投与した後、鼻炎症状を誘発し、鼻炎症状抑制効果を検討したところ、PBSを投与した陽性対照群と比較して、くしゃみ回数、鼻粘膜の透過性、ヒスタミンに対する過敏性において、それぞれ有意な抑制が認められた。

(2)アレルゲンに対する免疫寛容を誘導するためには複数のT細胞エピトープを投与する必要があると考えられる。T細胞エピトープの混合物については報告があったが、T細胞エピトープを連結した場合の個々のT細胞エピトープ活性については不明であったため、マウスのCry j 1、Cry j 2のT細胞エピトープ3箇所を連結した3TD-peptideを作製し、個々のT細胞エピトープの活性、即ちT細胞エピトープが抗原提示されてT細胞応答を誘導する免疫原性、およびT細胞エピトープ特異的な免疫寛容を誘導する免疫寛容原性を保持しているかについて検討した。

3TD-peptideのin vitro免疫原性について検討するため、マウスにCry j 1とCry j 2を免疫してアレルゲン特異的なT細胞を誘導し、摘出したリンパ節細胞に対する3TD-peptideのT細胞増殖反応誘導性を検討したところ、アレルゲン特異的T細胞は個々のT細胞エピトープに対して増殖反応を示し、3TD-peptideに対しては相加的な増殖反応を示した。また、マウスに個々のT細胞エピトープを免疫してそれぞれに特異的なT細胞を誘導し、摘出したリンパ節細胞に対する3TD-peptideのT細胞増殖反応誘導性を検討したところ、個々のT細胞エピトープ特異的T細胞はそれぞれのT細胞エピトープに対して増殖反応を示し、3TD-peptideに対しても同様の増殖反応を示した。以上の結果から、3TD-peptideはin vitroで抗原提示され、アレルゲン特異的T細胞あるいはT細胞エピトープ特異的T細胞に増殖反応を誘導する免疫原性を保持していることが示された。

3TD-peptideのin vivo免疫原性について検討するため、マウスに3TD-peptideを免疫し、摘出したリンパ節細胞に対する各T細胞エピトープペプチドのT細胞増殖反応誘導性を検討した。リンパ節細胞は各T細胞エピトープに対して増殖反応を示した。従って、3TD-peptideを構成する個々のT細胞エピトープはin vivoで抗原提示され、特異的T細胞を誘導する免疫原性を保持していることが明らかとなった。

3TD-peptideのin vivo免疫寛容原性について検討するため、3TD-peptideを経口投与した後Cry j 1、Cry j 2を感作し、各T細胞エピトープに対する免疫寛容原性を検討した。3TD-peptideの経口投与用量依存的に各T細胞エピトープに対する増殖反応は抑制され、Cryj 1、Cry j 2に対する増殖反応も抑制された。従って、3TD-peptideは免疫寛容原性も保持していることが示された。

(3)免疫寛容の誘導には粘膜免疫系への曝露が重要と考えられている。ゾンデを用いた胃内強制投与では、腸管粘膜に曝露されて免疫寛容が誘導されるが、口腔内粘膜に曝露させた場合の免疫寛容誘導については不明であった。口腔内へのT細胞エピトープ滴下により免疫寛容が誘導されるかについて検討を行った。P2-246-259を口腔内投与した後、Cry j 2を感作した。T細胞エピトープの投与用量依存的にP2-246-259に対する増殖反応が抑制され、口腔内投与でも免疫寛容が誘導されることが示された。

口腔内投与と胃内強制投与で免疫寛容誘導効果に違いが認められるかについて、治療的スケジュールで検討を行った。Cry j 2を感作した後、T細胞エピトープを口腔内投与あるいは胃内強制投与し、再びCry j 2を感作した、T細胞エピトープを投与した群では口腔内投与、胃内強制投与ともに、T細胞エピトープに対しても、Cry j 2に対しても増殖反応が抑制された。また、胃内強制投与よりも口腔内投与の方がより強く抑制することが示された。

【考察】

スギ花粉アレルゲンを用いたマウスアレルギー性鼻炎モデル、T細胞エピトープ口腔内投与による免疫寛容誘導モデルの構築に成功した。アレルギー性鼻炎モデルは、Cry j 2を用いた点、ヒトでの感作を模倣した経鼻感作で鼻炎症状を捉えた点、マウスでの鼻粘膜の血管透過性亢進を観察した点において初めての報告で、新規性の高いモデルを確立することができた。また、構築した鼻炎モデルを用い、マウスT細胞エピトープの経口投与が特異的T細胞応答を抑制するだけでなく、アレルギー性鼻炎症状を抑制することを見出した。一方、T細胞エピトープの口腔内投与による免疫寛容誘導モデルも初めての報告であり、アレルゲン感作後の治療的プロトコールにおいて口腔内投与の方が胃内強制投与よりも免疫寛容誘導効果が高いことを示し、口腔内粘膜への曝露の重要性を見出すことに成功した。両モデルとも、特異的免疫療法のメカニズム解明に有用なモデルの開発と考えられる。

また、マウスT細胞エピトープ連結ペプチドを作製し、連結ペプチドの個々のT細胞エピトープが抗原提示され、特異的T細胞反応を誘導する免疫原性を保持すること、連結ペプチドの個々のT細胞エピトープが免疫寛容原性を保持することが確認した。スギ花粉アレルゲンのヒトT細胞エピトープ連結ペプチドは、副作用を回避した効果的な治療薬となることが期待される。

審査要旨 要旨を表示する

アレルギー性疾患は、外来性のアレルゲンに対しIgE抗体依存的な炎症反応が引き起こされる疾患である。アレルゲンによるアレルギー反応惹起においては、アレルゲンが抗原提示細胞に貪食され、断片化されたペプチドがT細胞に抗原提示される。この時抗原提示細胞から産生されるIL-4によりナイーブT細胞はTh1,Th2細胞に分化し、Th1,Th2細胞によるサイトカイン産生上昇、細胞増殖、続いてB細胞によるIgE抗体産生上昇が誘導され、肥満細胞上に結合したIgE抗体を介してアレルギー反応が誘発される。

一方、特異的免疫療法は、アレルゲン蛋白質を非常に低濃度から漸増しながら皮下に投与することにより免疫応答を減弱させる治療法で、長期緩解・治癒が期待される治療法である。特異的免疫療法においては、高用量のアレルゲン投与により抗原提示細胞がIL-10を産生するため、ナイーブT細胞はCD4+CD25+T細胞、Tr1細胞、Th3細胞などのregulatory T細胞へ分化する。Regulatory T細胞はIL-10、TGF-βを産生し、すでに誘導されているTh1,Th2細胞のサイトカイン産生、増殖を抑制し、続いてB細胞のIgE抗体産生を抑制し、結果的にアレルギー反応を抑制すると考えられている。

特異的免疫療法の改良法として、T細胞エピトープペプチドを用いた治療法が提唱されている。T細胞手ピトープとは、アレルゲン分子の中で、抗原提示細胞内で断片化され、MHC上に結合してT細胞に提示される部分ペプチドのことである。T細胞エピトープを用いた場合、肥満細胞上のIgE抗体が認識する抗原決定部位であるB細胞エピトープを含まないため、アレルゲンを用いた場合に懸念される全身性のアナフィラキシーショックを引き起こす可能性を回避できると考えられる。スギ花粉症では、アレルゲンとしてCry j 1、Cry j 2の2つの蛋白ヒ質が同定されている。ヒトではCry j 1に3箇所、Cry j 2に4箇所、計7箇所のT細胞エピトープが存在し、BALB/cマウスではCry j 1に1箇所、Cry j 2に2箇所、計3箇所のT細胞エピトープが存在する。

マウスにアレルゲン或はT細胞エピトープペプチドを経口投与すると、アレルゲン免疫後、対照群のマウスでは免疫応答が誘導されるのに対し、投与群では免疫応答が抑制される現象を免疫寛容現象という。

本研究において吉富は、スギ花粉症に対する新規ペプチド免疫療法剤を開発するため、スギ花粉アレルゲン蛋白質Cry j 1とCry j 2のマウスT細胞エピトープペプチドを用い、特異的免疫療法に関する基礎実験を実施した。特に、(1)T細胞エピトープによる免疫寛容誘導がアレルギー性鼻炎の症状改善につながるかどうかを明らかにすること、(2)複数のT細胞エピトープを連結した1つのペプチドを作製し、個々のT細胞エピトープが活性を保持しているかどうかを明らかにすること、(3)T細胞エピトープの曝露方法の違い(口腔内あるいは腸管)によって、免疫寛容誘導効果に違いが認められるかどうかを明らかにすること、を目的とした。

その結果、以下の3点を明らかにした。

(1)マウスのアレルギー性鼻炎モデルが十分に確立されていなかったため、スギ花粉アレルゲンを用いたアレルギー性鼻炎モデルの作製を試みた。ヒトでの感作を模倣した経鼻感作系を用いてCry j 2をに感作し、その後Cry j 2で点鼻惹起した。即時相の反応として、くしゃみ・鼻水・鼻閉・炎症、遅発相の反応として、鼻閉・鼻過敏性を検討した。その結果、くしゃみ回数、鼻水の指標として鼻粘膜の透過性、鼻過敏性の指標としてヒスタミンに対する過敏性の3つの指標において、対照群と比較して有意な上昇を認めた。

次に吉富は、T細胞エピトープペプチドによる免疫寛容誘導として、T細胞応答の抑制を検討した。Cry j 2のT細胞エピトープを用い、Cry j 2経鼻感作前に週2回、計4回経口投与を行い、1週間後にCry j 2を経鼻感作を行った。その結果、PBSを投与した対照群ではT細胞エピトープの濃度依存的にT細胞増殖反応が誘導されたのに対し、T細胞エピトープを経口投与した群ではその増殖反応の抑制を観察した。従って、T細胞エピトープの経口投与により、特異的T細胞の応答が抑制されることが示された。

続いて吉富は、確立した鼻炎モデルを用い、鼻炎症状に対するT細胞エピトープペプチドの薬効評価を実施した。T細胞エピトープを経口投与した後、鼻炎症状を誘発し、鼻炎症状抑制効果を検討したところ、T細胞エピトープを投与していない陽性対照群と比較して、Cry j 2惹起後5分間でのくしゃみ回数、予め静脈内投与したエバンスプルーの鼻粘膜への透過量、ヒスタミン点鼻により誘発される気道抵抗の上昇率において、それぞれ有意な抑制を認めた。

(2)アレルゲンには複数のT細胞エピトープが存在するため、アレルゲンに対する免疫寛容を誘導するためには、複数のT細胞エピトープを投与する必要があると考えられる。T細胞エピトープの混合物を用いた免疫寛容誘導は報告されていたが、T細胞エピトープを連結した場合に個々のT細胞エピトープの活性が保持されるか不明であった。吉富は、マウスのCry j 1、Cry j 2のT細胞エピトープ3箇所を連結した3TD-peptideを作製し、個々のT細胞エピトープの活性、即ちT細胞エピトープが抗原提示されてT細胞応答を誘導する免疫原性、およびT細胞エピトープ特異的な免疫寛容を誘導する免疫寛容原性を保持しているか検討した。その結果、アレルゲン特異的T細胞は個々のT細胞エピトープに対して増殖反応を示し、3TD-peptideに対しては相加的な増殖反応を示した。また、個々のT細胞エピトープ特異的T細胞はそれぞれのT細胞エピトープに対して増殖反応を示し、3TD-peptideに対しても同様の増殖反応を示した。以上の結果から吉富は、3TD-peptideはin vitroで抗原提示され、アレルゲン特異的T細胞あるいはT細胞エピトープ特異的T細胞に増殖反応を誘導する免疫原性を保持していることを示した。

次に、3TD-peptideのin vivo免疫原性についても検討した。マウスに3TD-peptideを免疫し、摘出したリンパ節細胞に対する各T細胞エピトープペプチドのT細胞増殖反応誘導性を検討したところ、リンパ節細胞は各T細胞エピトープに対して増殖反応を示した。従って、3TD-peptideを構成する個々のT細胞エピトープはin vivoで抗原提示され、特異的T細胞を誘導する免疫原性を保持していることが明らかとなった。

ヒトではCry j 1、Cry j 2に7箇所のT細胞エピトープが存在するため、吉富は、この7箇所を連結したペプチドを作製し、スギ花粉症患者の末梢血単核球PBMCに対する増殖反応誘導性を検討した。その結果、連結ペプチドはエピトープ混合物よりも低濃度から増殖反応を誘導することを見いだした。

(3)ゾンデを用いたマウスへの胃内強制投与では、腸管粘膜に曝露されて免疫寛容が誘導されることが報告されているが、口腔内粘膜に曝露させた場合の免疫寛容誘導については報告されていなかった。そこで吉富は、口腔内へのT細胞エピトープ滴下により免疫寛容が誘導されるか検討を行った。その結果、対照群に比較してT細胞エピトープ投与群では投与用量依存的に増殖反応が抑制され、口腔内投与でも免疫寛容が誘導されることが示された。続いて、口腔内投与と胃内強制投与で免疫寛容誘導効果に違いが認められるかについて、治療的スケジュールで検討を行った。その結果、対照群に比較してT細胞エピトープを投与した群では口腔内投与、胃内強制投与ともに、T細胞エピトープに対しても、Cry j 2に対しても増殖反応が抑制された。

本研究から吉富は、スギ花粉アレルゲン蛋白質Cry j 2を用いたマウスアレルギー性鼻炎モデル、T細胞エピトープペプチドの口腔内投与による免疫寛容誘導モデルの構築に成功した。アレルギー性鼻炎モデルは、Cry j 2を用いた点、ヒトでの感作を模倣した経鼻感作で鼻炎症状を捉えた点、マウスでの鼻粘膜の血管透過性亢進を観察した点において初めての報告である。また、構築した鼻炎モデルを用いることで、マウスT細胞エピトープペプチドの経口投与が特異的T細胞応答を抑制するだけでなく、アレルギー性鼻炎症状を抑制することを見出した。一方、T細胞エピトープペプチドの口腔内投与による免疫寛容誘導モデルも初めての報告であり、アレルゲン感作後の治療的プロトコールにおいて口腔内投与の方が胃内強制投与よりも免疫寛容誘導効果が高いことを示し、口腔内粘膜への曝露の重要性を見出すことに成功した。両モデルとも、特異的免疫療法のメカニズム解明に有用なモデルの開発と考えられる。さらに、マウスT細胞エピトープ連結ペプチドを作製し、連結ペプチドの個々のT細胞エピトープが抗原提示され、特異的T細胞反応を誘導する免疫原性を保持すること、連結ペプチドの個々のT細胞エピトープが免疫寛容原性を保持することを確認し、スギ花粉アレルゲンのヒトT細胞エピトープ連結ペプチドが副作用を回避した効果的な治療薬となることを示唆した。

以上の研究成果をふまえて、本研究は、博士(薬学)に充分値するものと判断した。

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