学位論文要旨



No 115982
著者(漢字) 刀根,佳子
著者(英字)
著者(カナ) トネ,ヨシコ
標題(和) 出芽酵母26Sプロテアソームの機能の解析
標題(洋) Genetic and biochemical analysis of the Regulator of the Yeast 26S Proteasome
報告番号 115982
報告番号 甲15982
学位授与日 2001.03.29
学位種別 課程博士
学位種類 博士(理学)
学位記番号 博理第4026号
研究科 理学系研究科
専攻 生物科学専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 教授 東江,昭夫
 東京大学 教授 大矢,禎一
 東京大学 助教授 梅田,正明
 東京大学 助教授 菊池,淑子
 東京大学 講師 杉山,宗隆
内容要旨 要旨を表示する

序論

 プロテアソームは分子量200万の巨大プロテアーゼであり、プロテアソームによるユビキチン化された標的蛋白質の特異的分解は細胞周期の進行や細胞の分化に必須である。26Sプロテアソームは活性中心である20S(CP)の両端に調節因子複合体である19S(RP)が会合した高次構造体である(図1左)。RPはさらにlidとbaseの複合体に分離され、baseとlidの構成成分はFinleyらにより明らかにされた(図1右)。baseを構成しているATPaseはCPとRPとの結合、基質の20Sへの送り込みに機能していると考えられる。Rpn10はマルチユビキチン結合能を有しており、Rpn9に依存してプロテアソームへ移行する。またRpn9とRpn10はRPの構造維持に作用していることが報告されているが、その他の因子がどのような機能を担っているかは明らかにされていない。私はRpn12/Nin1と相互作用する因子として単離したNob1の生化学的解析を通して調節因子複合体のプロテアソームの機能調節機構の解析を試みた。

結果と考察

(1)Nob1の細胞内での挙動の解析

 プロテアソームにNob1が含まれるかを解析する過程において定常期に移行した細胞からNob1が検出されなかったことから、より詳細に細胞増殖におけるNob1の検出を試みた。その結果Nob1は対数増殖期特異的に細胞内に存在し、細胞が定常期に移行するに従い、すみやかに細胞内から消失した(図2A)。細胞内からのNob1の消失過程がプロテアソームに依存しているかを明らかにすることを目的として、プロテアソームの特異的阻害剤であるMG132添加時におけるNob1の挙動を解析した。対数増殖期から定常期に細胞が移行する際にMG132を添加した細胞ではNob1の分解遅延が観察され、この過程は液胞プロテアーゼの欠損株であるpep4遺伝子破壊株では影響を受けなかった(図2B)。これより対数増殖期から定常期への変換におけるNob1の分解はプロテアソームに依存していることが明らかになった。

 Nob1の発現が転写レベルにおいて制御がなされているかを明らかにすることを目的としてNOB1mRNAの検出を試みた。細胞を-N源培地で培養することにより、Go期に移行させ、YPD培地に加えることにより、増殖を開始させた。-N源培地中ではNOB1mRNAは検出されず、細胞が増殖を開始してから最初のG2/M期が起こる4.5時間から検出された(図3A)。NOB1プロモータの必須領域を同定することを目的として、様々な長さのMOB1プロモータ領域をNVOB1ORFの上流に導入し、nob1遺伝子破壊株に形質転換し、nob1遺伝子破壊株の致死性を相補できるか解析した。lacZの増殖期特異的発現に必須であった上流244塩基までがNOB1プロモータの活性に必須であった(図3B)。NOB1mRNAが増殖期特異的に転写されることからNOB1のプロモータ領域の同定を試みた。様々な長さのNOB1プロモータの下流にレポーター遺伝子であるlacZを融合したプラスミドにより野生株を形質転換させ、細胞増殖におけるlacZの活性を検出した。その結果、NOB1プロモーターの上流244塩基がlacZの増殖期特異的発現に必須であることを明らかにした(図3C)。この領域にはアミノ酸合成遺伝子の転写活性化因子であるGcn4が結合する配列が存在するが、CLB2やSWI5といったG2/M期特異的発現する遺伝子に特徴的なMcm1結合配列は存在しない。このことからNOB1の発現制御はCLB2やSWI5とは別の因子により制御されている可能性が示唆される。

(2)Nob1の機能解析

 2-ハイブリッド法によりRpn12と結合する因子としてNob1を単離したことから、Nob1が26Sプロテアソームと結合しているかを明らかにすることを試みた。グリセロール密度勾配遠心法により、分画を行ったところ、Nob1はプロテアソームの調節因子とよく似た挙動を示した(図4A)。His6-Rpt1を発現した株の細胞抽出液をグリセロール密度勾配遠心法により分画し、分画したフラクシヨンをNi-NTA agaroseによりRpt1を沈降させ、Nob1を検出した。Nob1はRpn12、20S構成因子と共に26Sプロテアソームと結合していることを明らかにした(図4B)。しかし、26Sプロテアソーム構成因子が主としてSuc-LLVY-MCA分解活性ピークであるフラクション21に検出されたに対し、Nob1はフラクション19に主として検出された。Nob1がプロテアソームのどの分子種に含まれるかを明らかにすることを目的として、グリセロール密度勾配遠心法により分画したフラクションをさらに未変性ゲルにより分離した。Nob1は26Sプロテアソームに検出された(図4C)。

 野生株にN末52アミノ酸を欠失したNob1ΔNを高発現した株では顕著な増殖遅延を示した(図5A)。このときさらにC末100アミノ酸のコードする領域を欠失させたところ、Nob1ΔNの増殖遅延効果を回避できた。次にNob1ΔN高発現株におけるプロテアソームの挙動を解析した。グリセロール密度勾配遠心法により分画を行った結果、野生株においてフラクション21にみられる26Sプロテアソームの活性がNob1ΔN高発現株において低下していることが観察された(図5B、図5C)。さらにこのときプロテアソーム構成因子の挙動を解析した結果、Rpn12、Rpt1は26Sプロテアソームが検出されるフラクションに存在した。しかし、Nob1と20Sは軽いフラクション(フラクション番号11-21)に幅広く存在していた(図5B)。このとき野生株とNob1ΔN高発現株における26Sの量の差をフラクション番号21中におけるRpn12の量により確認した(図5D)。この結果からNob1の26Sプロテアソームへの移行が26Sプロテアソームの活性に必須であることが示唆された。

(3)Nob1と共に働く因子の解析

 Nob1をベイトにした2-ハイブリッド法によりNob1と結合する因子の単離を試みた。その結果、Nob1と結合する因子として3つの因子を単離した(表1)。このうち、YOR145c及びUFD1は増殖に必須であることがすでに報告されている。UFD1はユビキチン融合遺伝子分解に欠損を示す株の原因遺伝子として単離されていた。私は未知遺伝子であるYor145cの解析を試みた。Yor145cは進化的に高度に保存されており、C末領域にRNAに結合する蛋白質に存在するKH-domainを持つ(図6)。Yor145cのC末領域にHAタグを導入し、グリセロール密度勾配遠心法による分画を行ったところ、Yor145cはプロテアソームの検出される分画中に存在するが、Nob1や他のブロテアソーム構成因子とは異なった挙動を示した(図7A)。Nob1との結合を検出したところ、Yor145cはNob1と細胞内においても結合していた(図7B)。Yor145cがプロテアソームと結合することを明らかにする目的として、His6-Rpt1とYor145c-HAの双方を持つ株を作成し、Ni-NTAアガロースによりRpt1を沈降させ、Yor145c-HAの検出を試みた。Yor145cはRpt1、20S構成因子と共に26Sプロテアソームと結合していることを明らかにした(図7C)。Yor145cに特徴的なKH-domainのGをRに置換した株は温度感受性を示し、制限温度下においてプロテアソーム変異株におけるポリユビキチン化蛋白質の顕著な蓄積はYor145c温度感受性株において観察されなかった。Yor145cはNob1と結合し、プロテアソームとも結合することから、Nob1と共にプロテアソームの機能調節に関与している可能性が予想される。

まとめ

 26Sプロテアソームと結合している因子として新たにNob1を同定した。Nob1はこれまでに明らかにされた26Sプロテアソームの調節因子とは異なり、対数増殖期特異的に細胞内に存在し、定常期に細胞が移行するとNob1はプロテアソーム依存的に分解される。Nob1の発現は転写レベルにおいても制御されており、Nob1の発現にはNOB1プロモータの上流244塩基が必須であることを明らかにした。Nob1と結合する因子として単離したYor145cは細胞内においてもNob1と結合し、プロテアソームとの結合も観察された。このことはNob1とYor145cは共にプロテアソームの機能調節に作用している可能性を示唆していると考えられる。Nob1の優勢変異型であるNob1ΔNを大量に発現した株は顕著な増殖遅延を示す。この株ではNob1がプロテアソームの高次構造体に移行できず、26Sプロテアソームの形成欠損を示す。これらの結果からNob1は増殖期特異的なプロテアソームの制御因子であると考えられる。

図1 26Sブロテアソームの構造と讃節因子複合体(RP)を形成している因子左図はラットプロテアソームの電子顕微鐘像(Murakami et al. 1992)を示した。本研究にて用いた因子を青で示した。

図2 増殖期におけるNob1の分解 (A)後期増殖期まで培養した野生株を1晩培養した細胞を1lのYPD培地に1×107cells/mlになるように希釈し、25℃にて培養した。細胞内から調整したタンパク質を抗Nob1抗体、抗Rpn12抗体及び抗アクチン抗体を用いてウェスタンブロッティング法により検出した。(B)プロテアソーム活性阻害剤によるNob1の分解erg6破壊株を後期対数増殖期まで培養し、0.1%DMSOもしくは50μM MG132(0.1% DMSOに溶解)を加え、培養した。

図3(A)細胞増殖におけるNOB1の遺伝子の転写 一N源培地に1晩培養した細胞を1lのYPD培地に1×107cells/mlになるように希釈し、25bにて培養した。(a)細胞増殖におけるNOB1遺伝子の転写(b)細胞増殖におけるNob1蛋白質の検出(B)NOB1プロモータの必須領域種々の長さのNOBSプロモータの下流にNOB1遺伝子を導入し、nob1遺伝子破壊株(nob1::TRP/+)に導入し、 胞子形成後1倍体に分離し、nob1遺伝子破壊株の致死性を相補できるか解析した。(C)細胞増殖におけるlacZレポーター遺伝子を用いたNOB1プロモータ活性 種々の長さのNOB1プロモータの下流にlacZ遺伝子を導入し、lacZの活性を測定した。

図4 Nob1とRpt1との結合 (A)野生株とHis6-Rpt1を発現させた株からMg,ATPを含むバッファーにより細胞抽出液を調整し、グリセロール20Sと26Sプロテアソームの位置を記した。(B)野生株および株から調整したフラクション(フラクション番号20と21)をNi-NTAアガロースビーズにて処理し、His6-Rpt1を沈降させた。Total:Eluate:E(C)フラクション(フラクション番号15.17.19と21)を未変性ゲルにより、プロテアソームの分子種を分離した。

図5 Nob1ΔN高発現株における細胞増殖及びプロテアソームの挙動 (A)Nob1ΔN高発現株における細胞増殖への影響 様々な長さNOB1遺伝子を野生株に導入し、細胞増殖への影響を観察した。(B)Nob1ΔN高発現株におけるブロテアソームの挙動 野生株とNob1ΔN高発現株から細胞を回収し、Mg,ATPを含むバッファーにより細胞抽出液を調整し、グリセロール密度勾配遠心法により分画した。分離したフラクションをSDS-PAG日こより、分譲した。上部のグラフの番号と下部の番号は同一である.(C)ゲル中でのペプチダーゼ活性フラクションを未変性ゲルにて分離した。(D)図4Bにて分離したフラクション(フラクション番号20)中のRpn12を検出した。

図6 Yor145cと他のタンパク質とのアライメント(B)FMR1 ,hnRNP K,hRip1 ,Krr1他に存在するKH-domainとのアライメント相同なアミノ酸を黒抜きで、類似性のあるアミノ酸を黒抜きで、類似性のあるアミノ酸を網かけで示した。

図7 Yor145cの挙動 (A)Yor145c-HA導入した株(Y128)をグリセロール密度勾配遠心法により分画した。(B)Y128株からタンパク質を抽出し、抗HA抗体を用いて免疫沈降を行った。(C)野生株、J106(His6-Rpt1)、Y131( His6-Rpt1, Yor145c-HA)、Y128(Yor145c-HA)を用いてNi-NTAアガロースによりRpt1を沈降させた。

表1 .Nob1と2-ハイブリッド相互作用する因子

a)Nob1の1から156番目のアミノ酸をLexAに融合

b)Nob1の159から459番目のアミノ酸をLexAに融合

c)Nob1の1から325番目のアミノ酸をLexAに融合

d)Yor145cの30から274番目のアミノ酸をGal4ADに融合

e)Ufd1の350から527番目のアミノ酸をGal4ADに融合

f)Yn1078wの320から407番目のアミノ酸をGal4ADに融合

審査要旨 要旨を表示する

 プロテアソームは分子量200万の巨大プロテアーゼであり、プロテアソームによるユビキチン化された標的蛋白質の特異的分解は細胞周期の進行や細胞の分化に必須である。26Sプロテアソームは活性中心である20S(CP)の両端に調節因子複合体である19S(RP)が会合した高次構造体である。19S(RP)中の多くのサブユニットがどのような機能を担っているかは明らかにされていない。本論文ではRpn12/Nin1と相互作用する因子として単離したNob1の生化学的解析を通して調節因子複合体のプロテアソームの機能調節機構の解析を試みた。

(1)Nob1の細胞内での挙動の解析

 プロテアソームにNob1が含まれるかを解析する過程において定常期に移行した細胞からNob1が検出されなかったことから、より詳細に細胞増殖におけるNob1の検出を試みた。その結果Nob1は対数増殖期特異的に細胞内に存在し、細胞が定常期に移行するに従い、すみやかに細胞内から消失した。細胞内からのNob1の消失過程がプロテアソームに依存しているかを明らかにすることを目的として、プロテアソームの特異的阻害剤であるMG132添加時におけるNob1の挙動を解析した。対数増殖期から定常期に細胞が移行する際にMG132を添加した細胞ではNob1の分解遅延が観察され、この過程は液胞プロテアーゼの欠損株であるpep4遺伝子破壊株では影響を受けなかった。これより対数増殖期から定常期への変換におけるNob1の分解はプロテアソームに依存していることが明らかになった。

 Nob1の発現が転写レベルにおいて制御がなされているかを明らかにすることを目的としてNOB1mRNAの検出を試みた。細胞を-N源培地で培養することにより、GO期に移行させ、YPD培地に加えることにより、増殖を開始させた。-N源培地中ではNOB1mRNAは検出されず、細胞が増殖を開始してから最初のG2/M期が起こる4.5時間から検出された。NOB1プロモータの必須領域を同定することを目的として、様々な長さのNOB1プロモータ領域をNOB1ORFの上流に導入し、nob1遺伝子破壊株に形質転換し、nob1遺伝子破壊株の致死性を相補できるか解析した。lacZの増殖期特異的発現に必須であった上流244塩基までがNOB1プロモータの活性に必須であった。NOB1mRNAが増殖期特異的に転写されることからNOB1のプロモータ領域の同定を試みた。様々な長さのNOB1プロモータの下流にレポーター遺伝子であるlacZを融合したプラスミドにより野生株を形質転換させ、細胞増殖におけるlacZの活性を検出した。その結果、NOB1プロモーターの上流244塩基がlacZの増殖期特異的発現に必須であることを明らかにした。

(2)Nob1の機能解析

 2-ハイブリッド法によりRpn12と結合する因子としてNob1を単離したことから、Nob1が26Sプロテアソームと結合しているかを明らかにすることを試みた。グリセロール密度勾配遠心法により、分画を行ったところ、Nob1はプロテアソームの調節因子とよく似た挙動を示した。His6-Rpt1を発現した株の細胞抽出液をグリセロール密度勾配遠心法により分画し、分画したフラクションをNi-NTA agaroseによりRpt1を沈降させ、Nob1を検出した。Nob1はRpn12、20S構成因子と共に26Sプロテアソームと結合していることを明らかにした。しかし、26Sプロテアソーム構成因子が主としてSuc-LLVY-MCA分解活性ピークであるフラクション21に検出されたに対し、Nob1はフラクション19に主として検出された。Nob1がプロテアソームのどの分子種に含まれるかを明らかにすることを目的として、グリセロール密度勾配遠心法により分画したフラクションをさらに未変性ゲルにより分離した。Nob1は26Sプロテアソームに検出された。

 野生株にN末52アミノ酸を欠失したNob1ΔNを高発現した株では顕著な増殖遅延を示した。このときさらにC末100アミノ酸のコードする領域を欠失させたところ、Nob1ΔNの増殖遅延効果を回避できた。次にNob1ΔN高発現株におけるプロテアソームの挙動を解析した。グリセロール密度勾配遠心法により分画を行った結果、野生株においてフラクション21にみられる26Sプロテアソームの活性がNob1ΔN高発現株において低下していることが観察された。さらにこのときプロテアソーム構成因子の挙動を解析した結果、Rpn12、Rpt1は26Sプロテアソームが検出されるフラクションに存在した。しかし、Nob1と20Sは軽いフラクション(フラクション番号11-21)に幅広く存在していた。このとき野生株とNob1ΔN高発現株における26Sの量の差をフラクション番号21中におけるRpn12の量により確認した。この結果からNob1の26Sプロテアソームへの移行が26Sプロテアソームの活性に必須であることが示唆された。

(3)Nob1と共に働く因子の解析

 Nob1をベイトにした2-ハイブリッド法によりNob1と結合する因子の単離を試みた。その結果、Nob1と結合する因子として3つの因子を単離した。このうち、YOR145c及びUFD1は増殖に必須であることがすでに報告されている。UFD1はユビキチン融合遺伝子分解に欠損を示す株の原因遺伝子として単離されていた。私は未知遺伝子であるYOR145cの解析を試みた。Yor145cは進化的に高度に保存されており、C末領域にRNAに結合する蛋白質に存在するKH-domainを持つ。Yor145cのC末領域にHAタグを導入し、グリセロール密度勾配遠心法による分画を行ったところ、Yor145cはプロテアソームの検出される分画中に存在するが、Nob1や他のプロテアソーム構成因子とは異なった挙動を示した。Nob1との結合を検出したところ、Yor145cはNob1と細胞内においても結合していた。Yor145cがプロテアソームと結合することを明らかにする目的として、His6-Rpt1とYor145c-HAの双方を持つ株を作成し、Ni-NTAアガロースによりRpt1を沈降させ、Yor145c-HAの検出を試みた。Yor145cはRpt1、20S構成因子と共に26Sプロテアソームと結合していることを明らかにした。Yor145cに特徴的なKH-domainのGをRに置換した株は温度感受性を示し、制限温度下においてプロテアソーム変異株におけるポリユビキチン化蛋白質の顕著な蓄積はYor145c温度感受性株において観察されなかった。Yor145cはNob1と結合し、プロテアソームとも結合することから、Nob1と共にプロテアソームの機能調節に関与している可能性が予想される。

 以上のように、本研究では26Sプロテアソームと結合している因子として新たにNob1を同定した。Nob1はこれまでに明らかにされた26Sプロテアソームの調節因子とは異なり、対数増殖期特異的に細胞内に存在し、定常期に細胞が移行するとNob1はプロテアソーム依存的に分解される。これらの結果からNob1は増殖期特異的なプロテアソームの新奇の制御因子として働くことを提案している。以上の評価に基づき、本研究は博士(理学)の学位に十分値するものであることが、審査委員全員の一致により認められた。

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