No | 117123 | |
著者(漢字) | 但馬,敬介 | |
著者(英字) | ||
著者(カナ) | タジマ,ケイスケ | |
標題(和) | メゾポーラスシリカを用いた高分子合成 | |
標題(洋) | Macromolecular Synthesis with Mesoporous Silica Materials | |
報告番号 | 117123 | |
報告番号 | 甲17123 | |
学位授与日 | 2002.03.29 | |
学位種別 | 課程博士 | |
学位種類 | 博士(工学) | |
学位記番号 | 博工第5264号 | |
研究科 | 工学系研究科 | |
専攻 | 化学生命工学専攻 | |
論文審査委員 | ||
内容要旨 | はじめに 高分子の物性は、様々なレベルにおける構造によって支配されている(Fig.1)。すなわち、分子の骨格構造やシークエンスなどの1次構造から、高分子鎖の配列などの高次構造までが、物性を制御する因子となる。そのため、優れた機能を持つ高分子材料の開発には、構造が精密制御された高分子の合成が重要な課題である。これまで、特に一次構造の制御を目的として様々な精密重合触媒が開発されてきた。しかし、金属と配位子の組み合わせを主に用いる均一系の触媒では、ナノメートル以上の大きさを持つ高次構造を制御することは不可能である。一方、自然界においては、これらの制御は高分子の合成段階において達成されており、『秩序を持って配置された重合触媒サイトによる不均一系での合成によるもの』と言える。そこで、人工の系でナノスケールの構造制御を可能にするためには、同じくナノ構造を持つ優れた反応場の開拓が必要であると考えられる。本研究では、メゾポーラスシリカ(Fig.2)に着目し、高分子合成の反応場としての新しい可能性の探求を目的とした[8,9,10]。 メゾポーラスシリカは、界面活性剤の形成するロッド状ミセルをテンプレートして生成する無機材料である。ミセルを除去すると、シリケート骨格からなるパイプ(空孔)が蜂の巣状に集積した構造が残る(Fig.3)。従来のゼオライト(空孔径<12A)とは異なり、空孔径が20A以上と大きい。そのため、メゾポア内部に取り込まれた基質は内部を比較的自由に拡散することができると考えられる。一方、空孔の大きさは、高分子の大きさと同じスケールであり、空孔内での重合反応において、ナノ空間による反応の規制が働くことが十分に考えられる。このような特徴を持つメゾポーラスシリカを高分子合成の反応場として用いることで、生成する高分子の一次構造や、さらには結晶構造などの高次構造を制御できることを期待した。また研究の後半においては、メゾポーラスシリカ前駆体においてミセル分子が空孔内に規則正しく配列することを利用してモノマーを配列させ、そのまま重合を行うことで高分子鎖の配向および孤立化を目指した。 1.メゾポーラスシリカを用いた開環重合反応の制御 従来の精密重合触媒の開発においては、主に有機金属錯体を用い、その配位子をチューニングすることで重合反応を規制しようとしている。しかし反応を制御できる空間は配位子の大きさ、つまり活性点のほんの近傍のみに限られてしまう。メゾポーラスシリカのナノサイズの空孔内表面で重合反応を行うことで、空間による重合反応の規制が可能であると考えた。そこで、ルイス酸性・ブレンステッド酸性の表面を有するアルミニウム含有メゾポーラスシリカを用いて環状エステルのラクトンを活性化し、アルコールを開始剤として重合を行った。 アルミニウムをシリケート骨格内に含有したメゾポーラスシリケートMCM-41を、δ−バレロラクトン(モノマー)とn−ブタノールの50:1混合液中に懸濁させ、50℃に加熱した。時間と共に系の粘度が上昇し、モノマー転化率は1416時間で94%となった。数平均分子量(Mn)5700、分子量分布(Mw/Mn)が1.15のポリマーが得られ、重合反応がコントロールされていることが分かった。さらにFig.4のように、モノマーとn−ブタノールの比率を変えることで生成するポリマーの分子量を制御することが可能であった。また、δ−バレロラクトンとε−カプロラクトンを逐次的に加えることによって、ブロック共重合体を合成することが可能であり、リビング的に重合が進行していることが明らかとなった。メゾポーラスシリカの対照として、7Aの小さな空孔をもつミクロポーラスゼオライトを用いた場合、同一条件下では重合反応は進行しなかった。ヘキサゴナル構造を持たないシリカ/アルミナ触媒を用いた場合、同じアルミニウム含有量を持つメゾポーラスシリカよりも活性が低かった。これらの結果から、メゾポーラスシリカの大きな空孔が、モノマーの活性点へのアクセスを容易にしており、広い表面積がモノマーの活性化に有利に働いていることが考えられる。さらに詳しい検討の結果、この反応にはルイス酸性のアルミニウムとブレンステッド酸性のシラノール基の存在が必須であり、Fig.5のように協同的に作用してモノマーを活性化していることが明らかとなった[1,2]。さらなるモノマーの活性化を目指し、メゾポーラスシリカ中のアルミニウムの含有量を変化させたものを合成し、実験を行った。その結果、アルミニウム含有量が多くなるにつれてラクトンの重合が加速されることがわかった。チタニウムは均一系触媒などに用いられ、ラクトンの活性化に有効であることが報告されている。そこで、チタニウムをメゾポーラスシリカ表面に担持したTi-MCM-41をラクトンの開環重合に用いたところ、重合初期の段階で、存在率は低いものの、分子量100万を越える超高分子量ポリエステルが生成するという、興味深い現象を見いだした[3]。 2.メゾポーラスシリカを用いた微細な繊維構造を持つポリエチレンの合成 自然界のセルロースは繊維方向に分子鎖が配列した結晶構造を有する。これは、微生物による生合成過程で、生体膜内に配列した空孔から高分子鎖が押し出される際、一方向に集合・結晶化するためであると考えられている。このような系を模倣し、重合触媒の組織化を高分子の組織化につなげることができれば、新しい高分子材料の開発が可能になると期待される(Fig.6)。一次元のメゾ空孔(直径27A)がハニカム状に配列したメゾポーラスシリカの反応場を利用することにより、ポリオレフィンの高次構造を、合成と同時に制御することを目的とした[4]。触媒の担体としては、高度に規則正しく配列した空孔を持つメゾポーラスシリカファイバーを用いた。重合触媒であるチタノセンジクロライドをメゾポーラスシリカ表面と反応させ、チタノセンを表面に担持した触媒を得た。 この触媒でエチレンの重合を行ったところ、全体が一塊となり、溶媒を含んだポリエチレン塊が得られた。重合活性は高くはなかったが、生成ポリエチレンの粘度平均分子量は6.2×106と超高分子量であり、しかも非常に高密度であった。13C NMRにより、このポリエチレンは分岐のない直鎖構造を有することが分かった。このポリマーをSEMで観察したところ、物理的加工を行っていないにも関わらず、太さ30-50nmの微細な繊維構造が確認された(Fig.7)。一方、Cp2TiCl2/MAOからなる均一系触媒や、規則的な空孔を持たないアモルファスシリカ担持Cp2TiCl2/MAO系を用いて得られたポリエチレンには、このような構造は観測されなかった。XRD、SAXS、DSC等による検討から、この繊維状ポリエチレンは、主に伸びきったポリエチレン分子鎖から成り立っていることが明らかとなった。このような分子配向の揃ったポリエチレンは、重合後の延伸処理によって作られ、高強度材料として応用されている。しかし、ここで見られたような微細な繊維構造は、重合後の延伸処理では作ることは不可能である。新規な高強度材料への応用が期待できる。 また、膜平面に空孔の出口を有する膜状のメゾポーラスシリカを合成し、これを触媒の担体としてポリエチレンを合成することを検討した。生成したポリエチレン鎖が、膜と垂直方向に配列することで、特異な表面特性を持つハイブリッド材料を合成することを考えた[7]。その結果、エチレンの重合がメゾポーラスシリカ膜表面のみで進行し、ポリエチレン/シリカ複合膜を合成することができた(Fig.8)。 3.ポリジアセチレン/シリカハイブリッド材料の合成 これまでに用いてきたアプローチは、焼成したメゾポーラスシリカにモノマーを外から加えて空孔内で重合を行うものであった。次に、これとは異なる全く新しいアプローチを考えた(Fig.9)。メゾポーラスシリカの合成メカニズムにおいては、界面活性剤が形成するロッドミセルをテンプレートとしてヘキサゴナル構造が形成される。これを利用して、骨格中に重合性部位を有する界面活性剤を用いることで、重合部位をシリカチャネル内に密に配列させることができると考えた。その後重合を行うことで、メゾポーラスシリカの構造をポリマーに転写することができるのではないか?この方法論を用いて、機能性ポリマーとシリカのハイブリッド材料の合成を試みた。モノマーとしては、ジアセチレンを選択した。ジアセチレンは結晶中や二分子膜中などでトポケミカルに光重合し、赤色〜青色の共役ポリマーを与えることが知られている。シリカチャネル内に孤立化することによりポリマーの物性がどのように変化するのか、基礎と応用の両面において非常に興味が持たれるところである。 界面活性剤として、長鎖アルキル骨格にジアセチレンを含むアンモニウム塩(Fig.9 1aおよび1b)を合成した。このモノマーを用いて、酸性水溶液中でメゾポーラスシリカファイバーを合成した[5]。光学顕微鏡によって、ファイバー状シリカ物質の生成を確認した。このファイバー状シリカのIRスペクトルおよびラマンスペクトルから、ジアセチレン部位がシリカ内に取り込まれていることが分かった。またXRDパターンから、メゾ構造シリカのヘキサゴナル構造に由来するピークが確認された。これらのことから、Fig.9に示したような、シリカチャネル中での一次元のモノマー配列が達成できたと考えられる。 この物質を窒素下、170℃で3時間加熱すると、赤褐色に変化した。XRDパターンにおいては、加熱前と同じ位置にピークが観測され、ヘキサゴナル構造を保っていることがわかった。IRスペクトルで三重結合のピークの消失が確認され、またUV-Visスペクトルでは、モノマーに由来する紫外領域の吸収が消え、可視領域にブロードな吸収が見られた。以上のことからFig.9のように、加熱によってチャネル内でジアセチレンの重合反応が進行していると考えられる。蛍光スペクトルにおいては、430nmの励起光によって、共役ポリマーに由来すると思われる発光が550nmに観測された。蛍光顕微鏡による観察で、シリカファイバー全体からの緑色の発光を観測することができた(Fig.10)。以上のように、新たな蛍光性ポリジアセチレン/メゾポーラスシリカハイブリッド材料を合成する事に成功した。 上記のシリカファイバーの系においては、ジアセチレン結晶中で見られるような光による重合は観測されなかった。一般にジアセチレン結晶中での光重合においては赤〜青色のポリジアセチレンが得られ、完全に1,4結合で重合が進行することが知られている。そこで、メゾ構造シリカ中で光重合するジアセチレン界面活性剤の開発を次の目標として研究を進めた。その結果、Fig.11に示したモノマーを用いてメゾ構造シリカフィルムをスピンコーティング法によって合成したところ、UV光の照射によってシリカフィルムが透明から青色に変化することを見いだした[6]。ラマンスペクトルから、ポリマーに由来する2110cm-1のシフトが見られ、ポリジアセチレンが生成していることが確認できた。XRDパターンから、重合の前後でヘキサゴナル相由来のピークが保たれていることから、重合がシリカチャネル内で進行していることが分かった。シリカフィルムの吸収スペクトル(Fig.12a)から、熱重合の場合よりも吸収が長波長化しており、よりπ共役系が伸びていることを示している。さらにこのフィルムを水蒸気にさらすことによって、フィルムの色は青から赤に変化した(Fig.12b)。これは、水分によるポリジアセチレンのコンフォメーション変化によって、ポリマーの共役長が短くなることに由来するものと考えられる。また、青色フィルムは蛍光を発しないが、赤色フィルムは、626nmと567nmにピークトップを有する蛍光を示した(Fig.13a)。ポリジアセチレンの3次非線形光学効果等の機能を考えると、これらの物質の光機能性材料・光デバイスなどへの応用が期待される。 3.まとめ 本研究では、様々なアプローチを用いてメゾポーラスシリカを高分子合成の反応制御に用い、重合反応の制御や、新しい機能性材料の開発にきわめて有用な方法論を提供した。 【原著論文】 [1] K. Kageyama, S. Ogino, T. Aida and T. Tatsumi, Macromolecules, 1988, 31, 4069. [2] K. Kageyama, S.-M. Ng, H. Ichikawa, T. Aida, Macromol. Symp., 1999, 157, 137. [3] K. Kageyama, T. Tatsumi and T. Aida, Polym. J., 1999, 31, 1005. [4] K. Kageyama, J. Tamazawa and T. Aida, Science, 1999, 285, 2113. [5] K. Tajima and T. Aida, Angew. Chem. Int. Ed., 2001, 40, 3803. [6] K. Tajima and T. Aida, in preparation. 【参考論文】 [7] K. Tajima, G. Ogawa, T. Aida, J. Polym. Sci., Part A : Polym. Chem., 2000, 38S, 4821. 【本と総説(英文のみ)】 [8] K. Tajima and T. Aida, Chem. Commun., 2000, 2399 (Feature Article). [9] K. Tajima and T. Aida, Chem. Eur. J., in press.(Concepts) [10] K. Tajima and T. Aida,"Polymerization with Mesoporous Silicates" in : Nanostructured Active Sites in Catalysis (Jones, Scott, and Crudden, Eds), Kluwer, in press. Figure 1.高分子の機能と構造の概念図 Figure 2.メゾポーラスシリカの模式図 Figure3.メゾポーラスシリカ合成機構の模式図 Figure4.分子量とモノマー/n−ブタノール比の関係 Figure5.メゾポーラスシリカによるラクトン重合の概念図 Figure6.メゾポーラスシリカによるポリエチレン合成の概念図 Figure7.微細な繊維構造をもつポリエチレンのSEM写真 Figure8.a)マイカ上に生成したメゾポーラスシリカフィルム及びb)それを用いたエチレン重合後のSEM写真 Figure 9.メゾ構造シリカ内でのジアセチレン重合の概念図 Figure.10 蛍光顕微鏡によるポリジアセチレン/シリカファイバーの観察 Figure11.メゾ構造シリカフィルム合成に用いた界面活性剤モノマー Figure12.(a)光重合後(青色)及び(b)水蒸気にさらした(赤色)メゾ構造フィルムの吸収スペクトル Figure13.赤色メゾ構造フィルムの(a)発光スペクトル(λext=500nm)および(b)励起スペクトル(λem=626nm) | |
審査要旨 | 高分子の物性は、様々なレベルの構造因子によって支配されている。すなわち、分子の骨格構造やシークエンスなどの1次構造から、高分子鎖の配列などの高次構造までが、物性を制御する因子となる。そのため、優れた機能を持つ高分子材料の開発には、これらの構造が精密制御された高分子の合成が重要な課題である。これまで、特に一次構造の制御を目的として様々な精密重合触媒が開発されてきた。しかし、金属と配位子の組み合わせを主に用いる均一系の触媒では、ナノメートル以上の規則性に関わる高次構造を制御することは不可能である。一方、自然界においては、これらの制御は高分子の合成段階において達成されており、『秩序を持って配置された重合触媒サイト』が重要な役割を果たしている。人工の系でナノスケールの構造制御を可能にするためには、同じくナノ構造を持つ優れた反応場の開拓が必要であると考えられる。本研究では、メゾポーラスシリカに着目し、高分子合成の反応場としての新しい可能性を探求している。 第一章では、メゾポーラスシリカを用いたラクトンの開環重合についての研究成果が述べられている。従来の精密重合触媒の開発においては、主に有機金属錯体を用い、その配位子をチューニングすることで重合反応を規制しようとしている。しかし反応を制御できる空間は配位子の大きさ、つまり活性点のほんの近傍のみに限られてしまう。提出者は、メゾポーラスシリカのナノサイズの空孔内表面で重合反応を行うことで、空間による重合反応の規制が可能であると考察している。実際に、ルイス酸性・ブレンステッド酸性の表面を有するアルミニウム含有メゾポーラスシリカを用いて環状エステルのラクトンを活性化し、アルコールを開始剤として重合を行った。その結果、得られる高分子の数平均分子量および分子量分布の制御や、ブロックコポリマーの合成などが可能であると報告されている。 第二章では、メゾポーラスシリカを用いたポリエチレンナノファイバーの合成について研究結果が述べられている。自然界のセルロースは繊維方向に分子鎖が配列した結晶構造を有する。これは、微生物による生合成過程で、生体膜内に配列した空孔から高分子鎖が押し出される際、一方向に集合・結晶化するためであると考えられている。このような系を模倣し、重合触媒の組織化を高分子の組織化につなげることができれば、新しい高分子材料の開発が可能になると期待される。提出者は、一次元のメゾ空孔(直径27A)がハニカム状に配列したメゾポーラスシリカの反応場を利用することにより、ポリオレフィンの高次構造を、合成と同時に制御することをねらい、研究を行った。この触媒でエチレンの重合を行うと、物理的加工を行っていないにも関わらず、太さ30-50nmの微細な繊維構造を持つポリエチレンが生成することが確認されている。XRD、SAXS、DSC等による検討から、この繊維状ポリエチレンは、主に伸びきったポリエチレン分子鎖からなる結晶で成り立っていることが主張されている。このような分子配向の揃ったポリエチレンは、重合後の延伸処理によって作られ、高強度材料として応用されている。しかし、ここで見られたような微細な繊維構造は、重合後の延伸処理では作ることが不可能であり、新規な高強度材料への応用が期待できる。 第三章では、メゾ構造シリカ中での共役ポリマーの合成についての研究結果が述べられている。第一章および第二章において用いてきたアプローチは、焼成したメゾポーラスシリカにモノマーを外から加えて空孔内で重合させる、というものである。提出者は、これらとは異なる全く新しいアプローチを考案している。メゾポーラスシリカの合成メカニズムにおいては、界面活性剤が形成するロッドミセルをテンプレートとしてヘキサゴナル構造が形成される。これを利用して、骨格中に重合性部位を有する界面活性剤を用いることで、重合部位をシリカチャネル内に密に配列させることができ、その後重合を行うことで、メゾポーラスシリカの構造をポリマーに転写することができると考察している。この方法論を用いて、実際にポリジアセチレンとシリカのハイブリッド材料の合成を試みている。その結果、ジアセチレンを含むファイバー状メゾ構造シリカ物質の生成を確認し、シリカチャネル中での一次元のモノマー配列が達成できたと結論している。この物質を加熱すると赤褐色に変化しており、スペクトルによる分析から、加熱によってチャネル内でジアセチレンの重合反応が進行していると結論している。蛍光スペクトルにおいては、共役ポリマーに由来すると思われる発光が観測されている。また蛍光顕微鏡による観察で、シリカファイバー全体からの緑色の発光を観測している。以上のように、提出者は、新たな蛍光性ポリジアセチレン/メゾポーラスシリカハイブリッド材料を合成する事に成功している。ポリジアセチレンの3次非線形光学効果等の機能を考えると、これらの物質の光機能性材料・光デバイスなどへの応用が期待される。 以上のように、提出者は本研究において、様々なアプローチを用いてメゾポーラスシリカを高分子合成の反応制御に用い、重合反応の制御や、新しい機能性材料の開発にきわめて有用な全く新しい方法論を提供している。これらの成果は、ナノ構造を利用する高分子合成という、新しい分野を開拓すると同時に、有機/無機複合ナノテクノロジーや、新規な材料、デバイス開発などに大きく貢献するものである。 よって本論文は博士(工学)の学位請求論文として合格と認められる。 | |
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