No | 117460 | |
著者(漢字) | 川北,素子 | |
著者(英字) | ||
著者(カナ) | カワキタ,モトコ | |
標題(和) | 多数の有理点を持つ曲線 | |
標題(洋) | Curves with Many Rational Points | |
報告番号 | 117460 | |
報告番号 | 甲17460 | |
学位授与日 | 2002.03.29 | |
学位種別 | 課程博士 | |
学位種類 | 博士(数理科学) | |
学位記番号 | 博数理第204号 | |
研究科 | ||
専攻 | ||
論文審査委員 | ||
内容要旨 | 1977年にGoppaにより代数幾何符号が発見されて以来,有限体上において多数の有理点を持つ代数曲線の研究が盛んに行われるようになった.このような代数曲線が効率的な符号の存在を保証するからである.ここではそれを良い曲線と呼ぶ. 本論文は良い曲線の構築と探索を目的とする.前半では二次形式とファイバー積を利用して最大曲線を構築し,さらに符号理論への応用を考慮して平面曲線としての定義方程式を与えた.後半ではクンマー曲線とそのファイバー積に注目し,この種の代数曲線を探索する方法を提案した.限定した範囲で計算機探索を実行した結果,存在の知られていない代数曲線を見付ける事が出来た. 初めにqを素数のべきとし,有限体Fqm上で考える.まずFqm上のある種の二次形式の有理点数を決定し,それに関連したアルティン−シュウライア曲線の種数と有理点数を定式化した. 定理.自然数hとR(X)∈Rhが存在して Q(X)≡Tr(XR(X))mod(Xqm-X) である.このR(X)を用いて曲線CRを Yq−Y=XR(X) で定義すると以下が成り立つ. (i)a1,a2,…,aM,b1,b2,…,bMが〓上線形独立ならばCRの有限体〓上の有理点数は〓で与えられる. (ii)次のいずれかが成り立つとする. 1.qが偶数であり,deg R(X)〓2である. 2.qが奇数であり,deg R(X)〓1である. この時CRの種数は 〓 で与えられる. さらにこの種のアルティン−シュウライア曲線の種数が下がる条件を与えた.具体的に計算した結果,以下のようなアルティン−シュウライア曲線のファイバー積で得られる最大曲線を見付ける事が出来た.このような最大曲線の存在は知られていたものの定義方程式は与えられていなかった. 命題.mを偶数とする.次のいずれかが成り立つと仮定する. 1.qが偶数であり,〓である. 2.qが奇数であり,〓である. 有限体Fqm上種数 〓 の最大曲線が存在し,以下の曲線のファイバー積で定義される. Yiq−Yi=X・ri(X). ここでi=1,…,lについて 〓 〓である.さらにb1,b2,…,b1はFq上線形独立である. そして上の最大曲線を含む一群のアルティン−シュウライア曲線のファイバー積で作られる代数曲線に平面曲線としての定義方程式を与えた.これにより符号理論へ応用し易くなる. 次に有限体Fqを固定し,nをq−1の約数とする.以下Yn−f(X)∈Fq(X)[Y]で定義される代数曲線をクンマー曲線と呼び,その性質を考える. まずある条件の下で 〓 で定義されるクンマー曲線が原点,(0,1)及び無限遠点以外では非特異な時の種数が 〓 である事を見出した.ここでΔが比較的小さい負でない整数なので,f(Y)とnを固定させ,aとbを走らせる事により有理点を多数持つ代数曲線を探索出来る.種数の計算はプリュカの公式を使った. そして〓の約数n1とn2に対し, 〓 で定義された二つのクンマー曲線のファイバー積がある条件の下で種数が 〓 である事を見出した.ここでuは〓に依存する負でない整数であり,△は比較的小さい負でない整数である.従って〓とn1,n2を固定させ,aとbを走らせる事により有理点を多数持つ代数曲線を探索出来る.種数の計算にはフルビッツの公式を使った. 提案方式で具体的に探索を行った結果,新しい曲線を得た.表1のようにG. van der Geerらがまとめた評価を更新することが出来た. 表1:Nq(g)の評価 | |
審査要旨 | 有限体上定義された代数曲線の有理点は,代数幾何学と数論の両方にまたがる興味深い研究対象である.A. Weilによる,有理点の母関数としての合同ゼータ関数の定義と,それを解明しようとする努力が,数論・代数幾何の大発展につながったことはよく知られている.また,有理点の数に関しては,Hasse-Weilによる限界式が知られており,有理点の数は種数の関数として与えられる上限をもつ.本論文において,川北素子は,有限体上定義された代数曲線で,有理点の数がこの上限に近い代数曲線を構成し,いくつかの場合に,従来知られているよりも有理点の数が多い代数曲線を見い出している. 第1章は,有限体上の代数曲線の有理点について,既知の結果の整理にあてられている.第2章では,射影直線のArtin-Schreier被覆を考え,最大曲線を構成している.Fqmの元a1,a2,…,aM,b1,b2,…,bMと2M−m=ωを充たす非負正数M,ωをとる.トレースTr:Fqm→Fqを用いてFq上の2次形式Q(X)=ΣMi=1Tr(aiX)Tr(biX)を考える.正整数hに対し 〓 とおく.これらの記号の下に,最大曲線構成のための次の定理を示している. 定理.自然数hとR(X)∈Rhに対し,Q(X)≡Tr(XR(X))modXqm−Xが成立する.代数曲線ChをYh−Y=XR(X)で定義すると以下が成り立つ. (i) a1,a2,…,aM,b1,b2,…,bMがFq上線形独立ならば,CRの有限体Fqm上の有理点は〓で与えられる. (ii) qが偶数でありdeg 〓であるか,qが奇数であり〓であるとする.このとき,CRの種数は(q−1)deg R(X)/2で与えられる. mを偶数とする.qが偶数であり〓であるか,qが奇数であり〓であるとき,上記定理を用いて,Fqm上種数(ql−1)q(m−2)/2の最大曲線が存在することを示している. 標数が2のときには,van der GeerとVlugtが同様の結果を示しており,これらの結果はその一般化になっている. 第3章では射影直線のKummer被覆を用いて,有限体Fq上有理点を多数もつ代数曲線を構成している.最終的にはコンピュータによって探索を行っているが,この方法によって,いくつかの種数において,有理点の数についての既知の記録を更新している. 有限体上定義された代数曲線は,Goppaが示しているように,符号理論への応用をもつ.一般的に言って,有理点の多い代数曲線からは良い符号が構成され,この観点からも有理点の数の多い代数曲線を発見することは意味をもつ.本論文は,このように,有理点の数の多い代数曲線を組織的に研究しており,これまで知られていたよりも格段によい結果を得ており,この方面の研究に大きく貢献している. よって、論文提出者 川北 素子は、博士(数理科学)の学位を受けるにふさわしい充分な資格があると認める。 審査委員 主査 東京大学(数理)教授 桂 利行 (数理)教授 織田 孝幸 (数理)教授 川又 雄二郎 (数理)教授 堀川 穎二 (数理)教授 宮岡 洋一 (数理)助教授 寺杣 友秀 | |
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