学位論文要旨



No 118544
著者(漢字)
著者(英字) Kanongchaiyos,Pizzanu
著者(カナ) カノンシャイヨス,ピサヌ
標題(和) レーブグラフによる位相解析を用いた3次元物体の変換の研究
標題(洋) A Study of Transformation of 3D Objects Using Topological Analysis by Reeb Graph-based Models
報告番号 118544
報告番号 甲18544
学位授与日 2003.09.30
学位種別 課程博士
学位種類 博士(理学)
学位記番号 博理第4408号
研究科 理学系研究科
専攻 情報科学専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 教授 池内,克史
 東京大学 教授 今井,浩
 東京大学 教授 萩谷,昌己
 東京大学 講師 五十嵐,健夫
 お茶の水女子大学 教授 藤代,一成
内容要旨 要旨を表示する

近年、医療科学やエンターテインメントなどの多くの分野においてユーザがデータを理解するのを助けるために三次元物体の変形を行うための研究が多くなされている。3次元データの変換は物体の変形や物体間の形状補間などに分類される。複雑な物体を編集する場合、ユーザが物体の対応点を指定することが必要である。本研究は、ユーザが物体の位相情報および幾何情報を認識するのを助け、物体の変形の際の作業時間を減らすことを目標とする。

この論文は3つのトピックから成る。第1のトピックは、3次元物体のアニメーションのためレーブグラフの拡張である。また、レーブグラフの自己交差問題の解決方法も提案する。レーブグラフによって物体の骨格を表現し、輪郭線によって物体表面を表現するため、キーフレームでの物体の操作が容易である。物体の動きは、レーブグラフおよび輪郭の編集により求める。第2のトピックは異なる位相情報を持つ物体間の変形である。対応点を求めるためにレーブグラフは位相変換される。最後のトピックは形状変形のため、物体の輪郭から格子を構築することである。

レーブグラフは物体の位相的な骨格を表し、輪郭線は物体の幾何情報を表す。グラフおよび輪郭構造を容易に理解できるので、ユーザは物体の形状の変形をより正確に、かつ容易に扱うことが可能である。補間と回転は滑らかな結果を保証するために、クオータニオン座標系で行われる。高さ関数と自己交差の問題の解法も提案される。

位相解析に基づいたレーブグラフ変換を用いて異なる位相情報をもつ物体間での対応を求める方法も提案する。物体は完全に対応できるまで自動的に位相変換が行われる。位相変換は8個の変換の中から選ばれる。これはすべての位相変換に対応している。位相的レーブグラフの対応づけは有向グラフマッチングのアルゴリズムを用いる。

本研究は object-shaped lattice と呼ばれる、物体の形状をよく近似した格子の生成にも用いることができる。そうすることで、制御点を動かすことで物体の変形を行うことができる。提案法では物体の変形は局所的にも大局的にも行うことができる。さらに、格子の形状は物体をよく近似しているので、変形はより予測可能で効率的なものとなる。object-shaped lattice は、位相変形と組み合わせることで従来法では不可能であった位相変換も行うことができる。

審査要旨 要旨を表示する

本論文は、“A study of Transformation of 3D Objects Using Topological Analysis by Reeb Graph-based Models”(レーブグラフによる位相解析を用いた3次元物体の変換の研究)と題し、5章よりなっている。

第1章は、“Introduction”と題され、序論であり、研究の動機となったアニメションシステムにおける物体形状変形の必要性、現在提案されている緒手法の問題点、解決方法の提案などについて論じている。レーブグラフと呼ばれる物体記述の既存手法をアニメーションへ応用するために拡張法、異なる位相をもつ物体間の変換に関して、レーブグラフを利用した解決法、形状変換のための物体輪郭から格子を構築する手法の提案などを主題としている。この主題の設定は、学位論文の主題として十分かつ妥当であると認められる。

第2章は、“Articulated Reeb Graphs for Skeleton Animation”と題し、3次元物体の記述法の1つであるリーブグラフと呼ばれる手法を物体変形に応用できるように拡張する。従来のリーブグラフは1軸の高さ関数を物体記述の基本としているため横方向等を含む変形へ応用することは出来なかった。提案された拡張リーブグラフでは、物体の絶対的な高さではなく、相対的な軸方向を局所的なパラメータとして、3次元物体の軸を記述する。これを Articulated Reeb Graph と称している。この拡張レーブグラフにおける拘束条件等も導入し、変形後にも自己交差等がおこることを防ぎ、正常な物体形状が表現できるようにしている。手法は実装され、実例が示されている。

第3章は、“Topological Morphing Using Reeb Graphs”と題し、レーブグラフを利用した位相変換について考察している。レーブグラフは位相情報を担う。このレーブグラフ上での位相変換の8個の基本変換を定義し、全ての位相変換をこれらの組み合わせで行う。2つの物体をレーブグラフで表現し、この2つのレーブグラフの間での変化を、自動的に得られる手法を提案している。手法は実装され、実例が示されている。

第4章は、“Deformation Using Object-shaped Lattices”と題し、形状変換について論じている。3次元物体を、近似する格子生成法を提案する。この格子点を動かすことで物体の変形を行う。格子の自動生成法、これを用いた物体変形のアルゴリズムを提案している。また、位相変換との関連についても考察しているため、物体の変形は局所的にも大局的にも行うことができる。これらの手法は実装され、実例が示されている。

第5章は、“Conclusions and Future Work”と題され、提案手法のまとめと評価、今後の方向性に関して記述がなされている。

以上これを要するに、本論文は、レーブグラフと呼ばれる物体表現を形状変形のために拡張し、それの位相変換のための手法、形状変化のための手法を提案し、実装しており、極めて有意義な成果を得ている。この点で本論文は高く評価でき、審査委員全員で、博士(理学)の学位を授与するにふさわしいと判断した。

なお、本論文の内容の一部は、共著論文として印刷公表済みであるが、論文提出者が主体となって研究および開発を行ったもので、論文提出者の寄与は十分であると判断する。

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