No | 120448 | |
著者(漢字) | 土岐,豊嗣 | |
著者(英字) | ||
著者(カナ) | トギ,トヨシ | |
標題(和) | 超平面配置と周期行列の行列式 | |
標題(洋) | Hyperplane Arrangements and Determinants of Period Matrices | |
報告番号 | 120448 | |
報告番号 | 甲20448 | |
学位授与日 | 2005.03.24 | |
学位種別 | 課程博士 | |
学位種類 | 博士(数理科学) | |
学位記番号 | 博数理第260号 | |
研究科 | 数理科学研究科 | |
専攻 | 数理科学専攻 | |
論文審査委員 | ||
内容要旨 | f0をx1,...,xnの多項式、fi=ui0+〓uijxj(1〓i〓m)を実数係数1次式、Hiを{fi=0}よって定義されるCnの超平面、Aを{H1,...,Hm}によって定義されるCnの超平面配置、LをAのintersection latticeとする。MをAの補集台Cn-〓Hiとし、λi(1〓i〓m)Uを実数としてUをU=exp(f0)〓…〓、で定義されるM上の多価関数とする。接続▽をd+dlogUによって定めLを微分方程式▽h=0の局所解によって定義される局所定数層とし、L∨をその双対とする。局所定数層L,L∨に対して、その(singular)ツイストホモロジ-群H*(M,L∨)と(de Rham)ツイストコホモロジ-群H*(M,L)が定義できる。この両者には完全なpairingH*(M,L∨)×H*(M,L)→Cが超幾何積分(△,ψ)→∫ΔUψによって定義される。H*(M,L∨)の基底c、H*(M,L∨)の基底nをとったときP=(∫△Uψ)△∈C,ψ∈nを周期行列という。 ここではH*(M,L∨)とH*(M,L)の基底を求めることその周期行列の行列式を求めることを問題とする。 f0=0の場合.genericなλに対してツイストホモロジ-群はH*(M,L∨)=0,(*≠n)となり、Hn(M,L∨)=Σ△C△、となる。ここで△はMRn=M∩Rnの有界な部屋全体をわたる。ツイストコホモロジ-群に関してはgenericなλに対してH*(M,L)はH*(M,L)=0,(*≠n)となる。またFalk-Teraoによりβ-nbc基底と呼ばれるHn(M,L)の基底が超平面配置の組み合わせ論的なdataを用いて明示的に与えられた。周期行列の行列式はvarchenkoにより、Aが一般の位置にある超平面配置あるいは無限遠平面において一般の位置にある超平面配置の場合に計算された。Varchenkoはさらに任意の超平面配置に対して周期行列の行列式の予想をし、この予想はDouai-Teraoによりβ-nbc baseを用いて証明された。 この論文ではf0=-1/2(〓+…+〓)の場合を考察する。この場合、ツイストホモロジ-群はH*(M,L∨)=0,*≠0となり、Hn(M,L∨)の基底としてMRnの部屋の集合ch(A)がとれる。UはMRnの各部屋ごとにただひとつの非退化な臨界点をもっており、ツイストホモロジーの基底に対応している。青本はツイストコホモロジ-群H*(M,L)に関してつぎの予想をたてた。 予想1.genericなλに対して、H*(M,L)=0(*≠n), ここでΦ0=dx1∧…∧dxnで、(fi,…,fil)はl個の線形独立な組(fi1,…,fil)全体をわたる。Orlik-Teraoは(1)の右辺のベクトル空間の基底をもとめた。 Proposition 1. ここでnbcとはAの線形順序を決めることにより組み合わせ論的に定義されるAのある部分集合の集合である。 この論文では上の基底nbcとツイストホモロジ-群の基底ch(A)に関する周期行列P(λi,ujk)の行列式の予想を与えいくつかの場合についてこれを示す。 まず任意の超平面配置に関しては次の公式が予想される。 予想2.λi>0(1〓i〓m)ならば、 C0,Ciは次の式により与えられる。 ここで行列AはA=(aij)〓,a00=1,ai0=a0i=ui0,aij=(fi,fj)=〓uikujk,(1〓i〓m,1〓i〓m)によって定義される行列であり、〓はAのi1,...,il行とj1,...,jl列による部分行列式である。 〓はA(ii...il)と省略する。Intersection latticeの元Xに対して||X||は原点からXへの距離で、μ(X)はL上のMobius functionで、nbciはHiをAの最小の元とする順序において定まるnbcである。λX=Σx⊂HλHで,e(PAx)はprojective quotient PAXのオイラー標数とし、X(AX,-1)は超平面配置AをXに制限したときの部屋の個数とすると、α(X)はα(X)=|e(PAX)X(Ax,-1)|によって与えられる。 この論文の主定理は次の定理である。 定理1.上の予想2は一般の位置にある超平面配置あるいは任意の2次元の配置に関して成り立つ。 この定理の結果として超平面配置が一般の位置にある場合あるいは2次元の場合には青本の予想が成り立つことが分かる。以下この主定理の証明のアウトラインを述べる。 一般の位置にある超平面配置の場合 Step1.f0に新しいパラメーターtを導入し、f0=-t/2(〓+…+〓)とし、求める周期行列をP(t,λi,ujk)とおく。まずtに関する微分方程式d/dtP=FPをもとめる。このFを用いるとこのときC(λi,ujk)=exp(-∫trFdt)DetP(t,λi,ujk)はtには依存しない。 Step2.C(λi,ujk)がみたす差分方程式C(λ1,...,λi+1,...,λm)=h(λ)C(λ1,...,λm)をもとめる。ここでh(λ)はλの多項式である。 Step3.C(λi,ujkj)=exp(-∫trFdt)P(t,λi,ujk)をt→∞での極限をとることにより計算する。Pの各行にtのある関数を掛けることによりt→∞とすることでPを上三角行列に変形することが出来る。従ってC(λi,ujk)の計算はLの各要素Xに対応する局所因子qxの積に帰着する。 Step4.局所因子qxのλ→∞における漸近挙動を調べる。まずt→∞におけるUの臨界点でのfiの値の近似値をもとめる。鞍点法を用いて局所因子qxがλ→∞のときrx=Cx,0〓,(Γ-Part)という形(Γ-partはΓ関数の積)の関数と漸近的に等しくなることをしめす。 step5.step4.によりC(λi,ujk)=〓x∈Lqxと〓x∈Lrxが同じ漸近挙動を持つことが分かり、さらに同じ差分方程式をみたすことをしめす。差分方程式の解の一意性によりこの両者は一致し、したがってDetPがもとまる。 2次元の任意の超平面配置の場合 一般の位置にある配置と違うところは、点Xにおいてl本の直線が交わるときそれに対応する局所因子Qxが(l-1)×(l-1)行列になることである。鞍点法よりDet Qxの漸近挙動がCx,0〓(Γ-part)という形を持つことがわかるが、定数項Cx,0を直接計算することは難しい。そこで原点を通るl本の直線の配置に対する周期行列の行列式の計算をを一次元の超幾何関数の行列式の計算に帰着させ、Cx,0を求ある。これでDet Qxのλ→∞としたときの漸近挙動が求まり、従ってC(λi,ujk)の漸近挙動が求まる。差分方程式とあわせてC(λi,ujk)が分かり、P(t,λi,ujk)がもとまる。 | |
審査要旨 | 土岐豊嗣はアファイン空間内の超平面配置に関する合流型超幾何関数を要素とするある行列式に関する研究を行った。超幾何関数は特異コホモロジーとドラム・コホモロジーのペアリングとして解釈されるが、ドラム・コホモロジーに関しては青本氏、オーリック氏、寺尾氏らによる予想がある。論文提出者はこの予想にあげられている集合、及びラグランジアンサイクルの集合に関する行列式に関してひとつの予想を提出し、生成的な場合、及び2次元の直線配置の場合にこの予想を示した。この結果によりこの二つの場合の青本氏の予想を示したこととなる。 提出された論文の結果は美しく、用いられている手法も自然なもので、この方向の研究のひとつの指針を与えている。よって論文提出者 土岐豊嗣は博士(数理科学)の学位を受けるにふさわしい充分な資格があると認める。 | |
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