No | 120454 | |
著者(漢字) | 陳,智 | |
著者(英字) | ||
著者(カナ) | チン,ヅ | |
標題(和) | 超平面配置の補空間のストラティフィケーションと局所係数ホモロジー | |
標題(洋) | STRATIFICATIONS OF COMPLEMENTARY SPACES OF HYPERPLANE ARRANGEMENTS AND HOMOLOGY GROUPS WITH LOCAL COEFFICIENTS | |
報告番号 | 120454 | |
報告番号 | 甲20454 | |
学位授与日 | 2005.03.24 | |
学位種別 | 課程博士 | |
学位種類 | 博士(数理科学) | |
学位記番号 | 博数理第266号 | |
研究科 | 数理科学研究科 | |
専攻 | 数理科学専攻 | |
論文審査委員 | ||
内容要旨 | この論文はふたつの部分からなっている.第一部はM(A)すなわち超平面配置の補空間のトポロジーについてである.M(A)のあるストラティフィケーションを用いて,複体を構成し,その複体によってM(AC)の局所系を係数とする無限チェインのホモロジーを計算できることを証明した.第二部は組紐群のトポロジカル表現についてである.一般的な條件において私は多重グラフを用いて表現空間の基底を記述し,トポロジカル表現と非可換多項式環との関係を示した. 1 ストラティフィケーションと無限チェインのホモロジー まず,AはRn中の超平面配置とし,ACがAの複素化とする.〓とおき,LはM(AC)上の1次元局所系とする.ホモロジー群H*(M(AC),L)は様々な数学の分野,たとえば,超幾何関数,共形場,岩堀-Hecke代数と組紐群のトポロジカル表現などと関連している. 1985年ごろ,M.SalvettiはM(AC)に含まれM(AC)とホモトピー同値である単体複体SAを構成し,SAを用いてH*(M(AC),L)を計算できるような複体(S*(A,L),∂*)を定義した.本論文で私はHlf*(M(AC),L),すなわちM(AC)の局所系Lを係数とする無限チェインのホモロジーを調べた. 超平面配置Aから,Rnの自然なストラティフィケーションS(A)が得られる.γ:Cn→Rnを実部への射影とする.γを通じて,S(A)はM(AC)のストラティフィケーションS(AC)を誘導する.私はS(AC)のストラタムを用いて,複体(C*(A,L),∂*)を定義し,その複体によってHlf*(M(AC),L)を計算できることを証明した.Hlf*(M(AC),L)はH*(M(AC),LV)と双対的な関係をもつことがよく知られている.私は(C*(A,L),∂*)と(S*(A,LV),∂*)の間双対関係が存在していることを示した.同様に,Cnからその虚部への射影を用いて,M(AC)のほかのストラティフィケーションS(AC)imが得られるので,複体(C*(A,L)im,∂*)が定義できる.Cn(A,L)imの基底は〓中の部屋によって与えられる.複体(C*(A,L)im,∂*)のホモロジー群もHlf*(M(AC),L)と同型てある. 局所系Lが一般的な場合,Hn(M(AC),L)からHlfn(M(AC),L)への自然な写像λnが同型てあることがT.Kohnoによって示された.Hlf*(M(AC),L)のサイクルはH*(M(AC),L)より簡単に構成されるのて,複体(C*(A,L),∂*)と(C*(A,L)im,∂*)の研究への応用が期待できる. 次の結果は自然な写像λnについてである.(C*(M(AC),L),∂*)をM(AC)の局所系Lを係数とする特異チェイン複体とすると,包含写像λ:C*(M(AC),L)→Clf*(M(AC),L)は写像 を誘導する.Imλnの研究は超平面配置理論において重要である.R.Silvottiは共形場理論における共形ブロック空間が超幾何穫分による記述と関連して,そのような像空間を考察した.本論文で私はImλnがHlf*(M(A)C,L)の有界な部屋によって生成される部分空間に含まれることを示した. 2 多重図と組紐群のトポロジカル表現 組紐群Bnのトポロジカル表現はあるGauss-Manin接続のモノドロミとして定義される.LKmn(q,t)をBnのm次トポロジカル表現とする.その表現空間は前に述べたホモロジー群であって,Hlfm(Xmn;q,t)と書く.私は多重グラフを定義し,多重グラフGに付いて〓を構成した.組紐のc(G)上の作用は容易に理解される.私は空間〓上に多重グラフを用いて積を定義し,その積によってHn[t]が非可換代数の構造をもつことを示した.非可換多項式環An[t]は生成元{X1,…,Xn-1}と関係 によって生成される環とすると,Hn[t]がAn[t]同型であることを示した. この構造を用いてトポロジカル表現の簡明な代数的な記述を与えた. | |
審査要旨 | 超平面配置の補集合のトポロジーは、鏡映変換群、超幾何関数などさまざまな分野において、基本的な役割を果たす。本論文の研究対象は実数上定義された複素超平面配置Aの補集合M(A)である。このような空間については、DeligneおよびBrieskorn-Saitoによる先駆的な研究があり、1980年代半ばに、Salvettiによって、M(A)とホモトピー同値な有限複体が構成された。青本、Gelfandらによって導入された、多変数超幾何積分はM(A)上の局所系Lを係数とするホモロジーH*(M(A),L)とdeRhamコホモロジーのペアリングとして定式化される。ホモロジーH*(M(A),L)および、局所有限な無限チェインのホモロジーHlf*(M(A),L)は、局所系Lがジェネリックであるという仮定のもとでは構造がよく知られているが、超幾何関数への応用上、特別な局所系を係数とするホモロジーの構造が必要になる場合がしばしばある。 論文提出者陳智は、本論文において、M(A)のあるストラティフィケーションを構成し、それを用いて、有限複体S*(A,L)を定義した。さらに、この複体のホモロジーが、任意の局所系乙に対して、局所有限な無限チェインのホモロジーHlf*(M(A),L)と同型であることを証明した。また、この複体S*(A,L)がSalvetti複体と双対関係にあることを示した。応用として、H*(M(A),L)からHlf*(M(A),L)への自然な写像の像について、幾何的な特徴付けを与えた。 Xnを複素平面のn個の異なる点の配置空間としてπ:Xn+m→Xnを射影、Xn,mをファイバーとする。論文の後半では、組みひも群Bnの無限チェインのホモロジーHlf*(Xn,m,L)を研究した。このような表現は、Bigelow,Krammerらによって調べられ、m=2の場合に、Bnの忠実な表現が得られることが知られている。陳智は、無限チェインのホモロジーHlf*(Xn,m,L)の、すべてのm〓0に関する直和が、非可換多項式環と同型であることを示し、これを用いて、すべてのmに関して、Bnの表現に簡明な記述を与えた。 論文提出者 陳智の研究は、超平面配置の補集合のトポロジーの分野で基礎的であり、組みひも群の表現についても重要な応用を与えた。よって論文提出者陳智は、博士(数理科学)の学位を受けるにふさわしい充分な資格があると認める。 | |
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