No | 127199 | |
著者(漢字) | 張,光輝 | |
著者(英字) | ||
著者(カナ) | チョウ,コウキ | |
標題(和) | 二次元定常表面張力重力波の正則性 | |
標題(洋) | Regularity of two dimensional steady capillary gravity water waves | |
報告番号 | 127199 | |
報告番号 | 甲27199 | |
学位授与日 | 2011.03.24 | |
学位種別 | 課程博士 | |
学位種類 | 博士(数理科学) | |
学位記番号 | 博数理第380号 | |
研究科 | 数理科学研究科 | |
専攻 | 数理科学専攻 | |
論文審査委員 | ||
内容要旨 | 本論文では二次元水面波の自由境界の正則性について考察する。流体は非圧縮非粘性で、自由表面を持ち、流体に作用する力は重力と自由表面にはたらく表面張力だけであると仮定する. 流体の運動はオイラーの方程式で表現できる。波速cの進行波について、次のように流れ関数を定義する: ここで(u(x; y; t); v(x; y; t))は時刻tと位置(x; y)における流体の速度であって、cは波の伝播速度である。流体の運動は次の自由境界問題で表現できる: ここでg、σ、γ、kは各々、重力加速度、表面張力係数、流体の渦度、自由境界Γの曲率である。 γ=0、σ= 0のとき、つまり渦度なしで表面張力を無視した場合は、この水面波はストークス(Stokes)波と呼ばれる。1880年にStokesは、最大振幅の水面波の表面が滑らかではなくて、角度2π=3の角を持つ点が存在することを予想した。これをStokes 予想と呼ぶ。Amick-Fraenckel-Toland[1]、Plotnikov [4]はStokes 予想が正しいことを示した。さらにVarvaruca-Weiss [5]は、より一般的なStokes 予想を証明した。 表面張力が0でない時は、水面波の表面に特異点が現れるとは直観的には考えにくい。しかし、これまでは、γ= 0の場合に部分的な結果が知られているだけであった。具体的には、γ= 0という仮定の下に、[2]、[3]が自由境界にある程度の滑かさ(W2;2 やC2:α)の仮定を置くと実解析になるという結果を示している。本論文では、より一般的なクラスの弱解に対して水面波の表面が滑らかであることを証明するとともに、γ= 0という制限を取り除いた。具体的には、渦度γをwの任意の有界関数とするとき、自由境界にW1,1の正則性を仮定し、かつ曲率がRadon測度であると仮定しすると自由境界はC2aになることを証明した。さらに、γが滑らかであるならば、自由境界も滑らかになることを示した。 第一章は序文である. 第二章で、領域変分方法を使って定常水面波についての変分公式を証明し、さらに弱解を定義した。 第三章で、Bonnet 型単調性公式証明した。この単調性公式を使って自由境界点で流れ関数のblow-up 極限が二種類あり、それぞれが自由境界の正則点とcusp 型特異点に対応することを示した。さらにcusp 型特異点は孤立点であることも示した。 第四章、で自由境界はcusp 型特異点以外で滑らかであることを証明した。そして、この正則性を使ってcusp 型特異点は存在しないことを示した。これにより、自由境界は滑らかであることが結論できる。 第五章、で表面張力係数cuspを0に近づけたのとき、解は表面張力をを無視した重力波の変分解に収束することを示した。 | |
審査要旨 | 論文提出者張光輝は,重力と表面張力の影響下にある二次元流体の自由境界(すなわち水面)の正則性について考察し,従前の研究で用いられていたよりも弱い仮定の下で,自由境界の正則性を示すことに成功した.その結果,表面張力が働いている場合は,流体の渦度が0でない場合にも水面波に特異性が生じないことが明らかになった. 本論文で考察した問題の設定は以下の通りである.まず,流体は非圧縮かつ非粘性で,自由表面を持ち,流体に作用する力は重力と自由表面に働く表面張力だけであると仮定する. 流体の運動はオイラー方程式で表現できる.以下,波が速度cで進む進行波である場合を考え,流れ関数を以下の形で定義する: ここで(u(x; y; t); v(x; y; t))は時刻tと位置(x; y)における流体の速度であり,cは波の伝播速度である.このとき,流体の運動は次の自由境界問題として表わされる. ここでg,σ,γ,kは各々,重力加速度,表面張力係数,流体の渦度,自由境界Γの曲率である. γ= 0,σ= 0のとき,つまり渦度なしで表面張力を無視した場合は,この水面波はストークス(Stokes)波と呼ばれる.1880年にStokesは,最大振幅の水面波の表面が滑らかではなく,角度2π/3を持つ特異点が存在することを予想した.これをStokes 予想と呼ぶ.Amick-Fraenckel-Toland (1982),Plotnikov (1982)はStokes 予想が正しいことを示した.さらにVarvaruca-eiss (2009)は,より一般的なStokes 予想を証明している. 一方,表面張力が0でない場合は,水面波の表面に特異点が現れるとは直観的には考えにくい.しかし,これまでは,γ= 0の場合に部分的な結果が知られているだけであった.具体的には,γ= 0という仮定の下に,Buffoni-Dancer-Toland (2000) やCraig-Matei (2007) が自由境界にある程度の滑かさ(W2;2 やC2:a)の仮定を置くと実解析になるという結果を示している.論文提出は,より一般的なクラスの弱解に対して水面波の表面が滑らかであることを証明するとともに,γ= 0という制限を取り除くことに成功した.具体的には,渦度γをの任意の有界関数とするとき,自由境界にW1;1の正則性を仮定し,かつ曲率がRadon 測度であると仮定しすると自由境界はC2:aになることを証明した.さらに,γが滑らかであるならば,自由境界も滑らかになることを示した. また,上記の結果に加えて,表面張力係数σを0に近づけると,解は表面張力をを無視した重力波の変分解に収束することも示されている. 論文提出者の研究は,表面張力が波の表面を滑らかにして特異性の出現を防ぐ効果があるという事実を,従前の研究に見られた渦度がゼロという強い仮定を置かずに示したものであり,高く評価できる. 以上の諸点を考慮した結果,論文提出者 張光輝は,博士(数理科学)の学位を受けるにふさわしい十分な資格があると認める. | |
UTokyo Repositoryリンク | http://hdl.handle.net/2261/51815 |