学位論文要旨



No 217468
著者(漢字) 伊藤,隆志
著者(英字)
著者(カナ) イトウ,タカシ
標題(和) α4β1インテグリン阻害薬4-[1-[3-chloro-4-[N'-(2-methylphenyl)ureido]phenylacetyl]-(4S)-fluoro-(2S)-pyrrolidine-2-yl]methoxybenzoic acid (D01-4582)の体内動態のラットブリーダー差・系統差およびイヌにおける個体間変動に関する研究
標題(洋)
報告番号 217468
報告番号 乙17468
学位授与日 2011.03.09
学位種別 論文博士
学位種類 博士(薬学)
学位記番号 第17468号
研究科
専攻
論文審査委員 主査: 東京大学 教授 杉山,雄一
 東京大学 教授 阿部,郁郎
 東京大学 教授 清水,敏之
 東京医大学 准教授 楠原,洋之
 東京大学 特任准教授 樋坂,章博
内容要旨 要旨を表示する

【序論】

医薬品探索過程において医薬品候補化合物は薬効面,物性面,安全性面など様々な観点から評価され,総合的に優れた化合物が臨床試験へと進む.近年では薬理評価と並行して薬物動態面の評価も早期から行われており,動物実験やヒト試料を用いたin vitro実験が行われている.これら薬物動態面の早期検討により,薬物相互作用等の危険性を制限しつつ,ヒトにおいて望ましい血漿中濃度を必要時間維持可能な候補化合物を効率的に獲得できるようになった.このように非臨床段階において効率的に医薬品探索が行われるようになった一方で,臨床において遺伝子変異や環境要因の影響により,薬物動態や薬効発現に個人差が生じてしまうことがある.そのため医薬品探索過程においては個人間変動につながりうる要因を特定し,可能な限り改善して候補化合物を選抜することが求められている.

【研究の経緯】

α4β1インテグリン阻害作用を有する4-[1-[3-chloro-4-[N'-(2-methylphenyl)ureido]phenylacetyl]-(4S)-fluoro-(2S)-pyrrolidine-2-yl]methoxybenzoic acid (D01-4582)を日本SLCから購入したSprague-Dawleyラット(Slc:SD,以下,SDラット)とチャールズリバージャパンから購入したSprague-Dawleyラット(Crj:CD(SD)IGS,以下CDラット)に静脈内投与すると,CDラットにおける血漿中濃度曲線下面積(AUC)はSDラットの6倍であった(Figure 1).経口投与後のAUCはCDラットにおいてSDラットの19倍であり,経口吸収率はCDラットが3倍高かった.一方,ビーグル犬においても血漿中濃度推移に個体間変動が認められ,常に高血漿中濃度を示す個体と常に低血漿中濃度を示す個体に分類できた.この様な体内動態の変動は他のD01-4582誘導体にも認められた.両動物種における変動要因が不明であるため,本化合物が臨床においても同様に薬物動態の個人差を生じ,薬効発現の個人差につながる可能性や,非臨床において化合物の体内動態を正しく評価できていない可能性が懸念された.今後の医薬品探索の方針決定を正しく行うために,実験動物における体内動態の個体差の原因究明と,ヒトにおける個人間変動に関するリスク評価が求められた.

【研究の目的】

本研究ではD01-4582をモデル化合物として動物における体内動態の変動要因を解明し,ヒトにおける体内動態の個人間変動のリスクを評価する.

【第1部 ラットにおける体内動態のブリーダー差・系統差に関する検討】

Wistar, Lewis, Brown Norwayの各系統のラットについて検討したところ,LewisラットはCDラット同様に高い血漿濃度を示し,その他の系統はSDラット同様,低血漿中濃度を示した.RI標識体を用いた検討の結果,D01-4582は肝排泄型化合物であり,代謝物の生成にはブリーダー差がないことが明らかになった.そこで肝臓への取込みを検討したところ,肝取込み過程にブリーダー差が存在し,肝取込みの差が直接,体内動態のブリーダー差へ反映されていることが示唆された.肝細胞の血液側には種々のトランスポーターが発現していることからD01-4582の肝取込みトランスポーターへの認識性を検討した結果,D01-4582は有機アニオントランスポーターによって取り込まれるものの,ブリーダー差の原因ではないことが示唆された.そこでSDラット,CDラットから遊離肝細胞を調製しD01-4582の取込みを評価したところ,buffer中での取込みにはブリーダー差が認められず,血漿共存下でのみ肝取込みに差が認められた.血漿と肝細胞の組み合わせを入れ替えた実験の結果,CDラット血漿存在下において肝取込みが低下した.よってD01-4582の肝取込み過程のブリーダー差は肝細胞によるものではなく,D01-4582と血漿との相互作用によるものであることが示唆された.血漿蛋白結合を超遠心法で評価したところ,SDラットおよびCDラットの非結合型分率はそれぞれ0.26%,0.015%であり,解離定数(Kd)はそれぞれ1.7,0.077μMであった(Figure 2).Wistar, Lewis, Brown Norwayの各系統のラットについても検討したところ,高血漿中濃度を示すLewisラットは高蛋白結合率を示し,低血漿中濃度を示す他のラットは低蛋白結合率を示した.それぞれのラットにおける非結合型血漿中濃度推移を比較したところ,ほぼ同様の推移を示した.以上のことからラット体内動態のブリーダー差・系統差は血漿蛋白結合の差によって引き起こされていることが示唆された.精製アルブミンを用いてもKdに系統差が認められたことから,アルブミンが主な原因蛋白と考えられた.そこでアルブミンの遺伝子配列を解読しGenbankの参照配列(NM134326)と比較したところ,低蛋白結合を示す系統は共通してV238L,T293I,V407Iのアミノ酸変異を伴っていた.このうちV407の変異は高蛋白結合を示すCDラットにも認められたことから,D01-4582の蛋白結合の変化には薬物結合部位近傍に位置しているV238とT293が関与していると考えられた.そこで4種のリコンビナントアルブミン(rSD, rCD, rV238L, rT293I)を作成し,Kdの変動に対するこれら2箇所のアミノ酸変異の相対的な影響を検討した結果,rSD, rCD, rV238L, rT293IのKdはそれぞれ974, 210, 426, 191nMであった.V238Lのみを有するrV238LにおいてKdがrCDの約2倍であったことからV238Lの変異が相対的に重要であることが示唆されたが,V238Lの変異のみでは両方の変異を有するrSDのKdと一致しなかったことから,T293IとV238Lの2つの変異が共に存在することでKdが大きく変化する可能性が示唆された.

【第2部 イヌにおける体内動態の個体差に関する検討】

26頭のビーグル犬について全長cDNA配列を解読し,Genbankの参照配列 (AB090854)と比較した.その結果Ala335Ser, Glu450Aspのアミノ酸変異が認められた.さらに21頭のビーグル犬について全血試料から遺伝子変異を解読し,合計47頭について検討した結果,上記2箇所の変異は同一のアレル上に存在していることが示唆された.変異型アレルの推定存在確率は40%であった.遺伝子型が明らかな35頭のビーグル犬の血漿蛋白結合は野生型のホモ接合体が最も低く (0.015%, CV%=20%, n=10),変異型のホモ接合体が最も高かった (0.059%, CV%=27%, n=5).ヘテロ接合型の個体はその中間であった (0.028%, CV%=39%, n=20) (Figure 3).変異型の個体および野生型の個体から得た血漿のKd値はそれぞれ88.8nMおよび15.2nMであった.予めアルブミンの遺伝子型で群分けしたビーグル犬を用いてD01-4582の体内動態を検討した結果,静脈内投与後のAUCは野生型,ヘテロ接合体,変異のホモ接合体の順に高かった(Figure 4).しかし非結合型濃度推移には差は認められなかった.以上より,イヌにおける体内動態の個体差には蛋白結合の個体差が関与しており,その蛋白結合の個体差はアルブミンの遺伝子変異によるものと考えられた.従来は無作為に群分けしていたため,ばらつきの大きい試験結果が得られていたが,以後はイヌの背景因子をそろえることにより各群においてばらつきの少ない血漿中濃度推移が得られ,精度のよい実験結果に基づいて化合物の体内動態を正しく評価できるようになった.

ヒト血清アルブミン(HSA)には70以上の遺伝子変異が報告されているが,今回検討した変異箇所に対応するアミノ酸変異は報告されていない.またHSAのどのアミノ酸変異も発現頻度が非常に低い.万一,変異アルブミンを有する患者に薬物が経口投与されたとしても,D01-4582にみられる肝排泄型の薬物の場合,薬効・毒性に関与する非結合型濃度のAUCは蛋白結合の変動の影響を受けない.以上,頻度および影響度の観点から,臨床においてアルブミンの遺伝子変異によって体内動態の個人差が起こる可能性は低いと考えられた.本研究に基づく考察をうけて,アルブミン遺伝子型以外の因子による影響の改善・最適化へと方針が修正された.このように医薬品探索の早期に変動要因を特定し,ヒトにおける変動リスクを考察し,誘導体展開を妥当な方向へ導くことは安全で有効な医薬品を効率よく創出するために重要であると考えられた.本研究結果とは逆に,仮にヒトにおける体内動態の変動要因が同定された場合には,構造活性相関解析によって望ましい化合物構造へと導くか,あるいはバイオマーカーを用いた個別化医療によって変動幅を制御する戦略をとるなどの判断が行われる.

【結語】

本研究ではD01-4582に認められたラット体内動態のブリーダー差・系統差およびイヌ体内動態の個体差の原因がアルブミンの遺伝子変異による結合親和性の変化であることを明らかにした.実験動物における体内動態の変動要因を早期に解明し,臨床におけるリスクの考察に基づきその後の医薬品探索の方向づけをした本研究は個別化医療へもつながりうる研究であり,安全で有効な医薬品を創出するために重要な研究と位置づけられる.

Figure 1. Plasma concentration-time curve of D01-4582 in SD rat (●) and CD rat (○) after intravenous (A) and oral (B) administration.

Figure 2. Binding of D01-4582 to plasma prepared from CD rat(○), Lewis rat(□), SD rat(●), Wistar rat(◆) and Brown Norway rat(■). Each point represent the mean (n=3).

Figure 3. Unbound fraction of D01-4582 in beagles in relation to the albumin gene genotype. Symbols represent individual data. Horizontal lines represent the mean of each group and vertical lines represent the 95% confidence intervals. A wild-type allele that is identical to the reference sequence AB090854 is designated as H1, whereas a mutant allele is designated as H2. All: 0.029±0.017% (CV=59%, n=35) (Mean±SD), *:Significantly different (p<0.05) from H1/H1 group by a Dunnett's test.

Figure 4. Plasma concentration- time curves of D01-4582 in genotyped beagles after intravenous administration at a dose of 1mg/kg.●, wild-type; ▲, hetelozygote; ■, mutant. Each point represents the mean and SD (n=3)

審査要旨 要旨を表示する

医薬品開発過程において医薬品候補化合物は薬効面、物性面、安全性面など様々な観点から評価され、総合的に優れた化合物が臨床試験へと進む。近年では薬理評価と並行して薬物動態面からの評価も早期に行われており、動物実験やヒト試料を用いたin vitro実験が実施されている。これらの検討により、薬物相互作用等の危険性を制限しつつ、ヒトにおいて望ましい血漿中濃度を必要時間維持可能な候補化合物を効率的に獲得できるようになった。このように非臨床段階において効率的に医薬品探索が行われるようになった一方で、臨床において遺伝子変異や環境要因の影響により、薬物動態や薬効発現に個人差が生じることがある。そのため医薬品開発過程においては個人間変動につながりうる要因を特定し、可能な限り改善された候補化合物を選抜することが求められている。

4-[1-[3-chloro-4-[N'-(2-methylphenyl)ureido]phenylacetyl]-(4S)-fluoro-(2S)-pyrrolidine-2-yl]methoxybenzoic acid (D01-4582)は申請者が属する製薬企業で見いだされたα4β1インテグリン阻害作用を有する化合物である。このD01-4582を日本SLCから購入したSprague-Dawleyラット (Slc:SD、以下SDラット)とチャールズリバージャパンから購入したSprague-Dawleyラット (Crj:CD(SD)IGS、以下CDラット)に静脈内投与すると、CDラットにおける血漿中濃度曲線下面積 (AUC)はSDラットにおけるAUCの6倍であった。経口吸収率はCDラットが3倍高く、経口投与後のAUCはCDラットにおいてSDラットの19倍であった。一方、ビーグル犬においても血漿中濃度推移に個体間変動が認められ、常に高血漿中濃度を示す個体と常に低血漿中濃度を示す個体に分類できた。この様な体内動態の変動は他のD01-4582誘導体にも認められた。両動物種における変動要因が不明であったことから、本化合物は臨床においても同様に薬物動態の個人差を生じ、薬効発現の個人差につながる可能性や、医薬品探索において化合物の体内動態を正しく評価できていない可能性が懸念された。今後の医薬品探索の方針決定を正しく行うために、申請者はD01-4582をモデル化合物として実験動物における体内動態の個体差の原因究明と、ヒトにおける個人間変動に関するリスク評価を行った。

1.ラットにおける体内動態のブリーダー差および系統差に関する検討

申請者はWistar, Lewis, Brown Norwayの各系統のラットについてD01-4582の体内動態を検討し、LewisラットはCDラット同様に高い血漿濃度を示すこと、その他の系統はSDラット同様、低血漿中濃度を示すことを明らかにした。RI標識体を用いた検討の結果、D01-4582は肝排泄型化合物であり、代謝物の生成にはブリーダー差がないことを示した。次に肝臓への取り込みを検討した結果、肝取り込み過程にブリーダー差が存在し、肝取り込みの差が直接、体内動態のブリーダー差へ反映されていることが示唆された。肝細胞の血液側には種々のトランスポーターが発現していることからD01-4582の肝取り込みトランスポーターによる輸送を検討した結果、D01-4582は有機アニオントランスポーターによって取り込まれるものの、ブリーダー差の原因ではないことが示唆された。次にSDラット、CDラットから調製した遊離肝細胞を用いた取り込み実験の結果、buffer中での取り込みにはブリーダー差が認められず、血漿共存下でのみ肝取り込みに差が認められることを見い出した。血漿と肝細胞の組み合わせを入れ替えた実験の結果、CDラット血漿存在下において肝取り込みが低下した。これによりD01-4582の肝取り込み過程のブリーダー差は肝細胞によるものではなく、D01-4582と血漿との相互作用によるものであることが示唆された。血漿蛋白結合を超遠心法で評価した結果、非結合型分率はSDラットおよびCDラットでそれぞれ0.26%および0.015%であり、解離定数 (Kd)はそれぞれ1.7および0.077μMであることを示した。Wistar, Lewis, Brown Norwayの各系統のラットについても検討し、高血漿中濃度を示すLewisラットは高蛋白結合率を示し、低血漿中濃度を示す他のラットは低蛋白結合率を示すことを明らかにした。それぞれのラットにおける非結合型血漿中濃度推移はほぼ同様の推移であることを示した。以上のことからラット体内動態のブリーダー差および系統差は血漿蛋白結合の差によって引き起こされていることが示唆された。精製アルブミンを用いてもKdに系統差が認められたことから、アルブミンが主な原因蛋白と考えられた。アルブミンの遺伝子配列を解読しGenbankの参照配列 (NM134326)と比較した結果、低蛋白結合を示す系統は共通してV238L、T293I、V407Iのアミノ酸変異を伴っていることを明らかにした。このうちV407の変異は高蛋白結合を示すラットにも認められたことから、D01-4582の蛋白結合の変化には薬物結合部位近傍に位置しているV238とT293が関与していると考えられた。4種のリコンビナントアルブミン (rSD, rCD, rV238L, rT293I)を作成し、Kdの変動に対するこれら2箇所のアミノ酸変異の相対的な影響を検討した結果、rSD, rCD, rV238L, rT293IのKdはそれぞれ974, 210, 426および191nMであった。V238Lのみを有するrV238LにおいてKdがrCDの約2倍であったことからV238Lの変異が相対的に重要であることが示唆されたが、V238Lの変異のみでは両方の変異を有するrSDのKdと一致しなかったことから、T293IとV238Lの2つの変異が共存することでKdが大きく変化する可能性が示唆された。

2.イヌにおける体内動態の個体差に関する検討

申請者は26頭のビーグル犬について全長cDNA配列を解読し、Genbankの参照配列 (AB090854)と比較した。その結果Ala335Ser, Glu450Aspのアミノ酸変異が観察された。さらに21頭のビーグル犬について全血試料から遺伝子型を判定し、合計47頭について検討した結果、上記2箇所の変異は同一のアレル上に存在していることが示唆された。変異型アレルの推定存在確率は40%であった。遺伝子型が明らかな35頭のビーグル犬の血漿蛋白結合は野生型のホモ接合体が最も低く (0.015%, CV%=20%, n=10)、変異型のホモ接合体が最も高かった (0.059%, CV%=27%, n=5)。ヘテロ接合型の個体はその中間であった (0.028%, CV%=39%, n=20)。変異型の個体および野生型の個体から得た血漿のKd値はそれぞれ88.8nMおよび15.2nMであった。予めアルブミンの遺伝子型で群分けしたビーグル犬を用いてD01-4582の体内動態を検討した結果、静脈内投与後のAUCは野生型、ヘテロ接合体、変異のホモ接合体の順に高かった。しかし非結合型濃度推移には差は認められなかった。以上より、イヌにおける体内動態の個体差には蛋白結合の個体差が関与しており、その蛋白結合の個体差はアルブミンの遺伝子変異によるものと考えられた。本検討により、以後はイヌの背景因子をそろえることにより各群においてばらつきの少ない血漿中濃度推移が得られ、精度のよい実験結果に基づいて化合物の体内動態を正しく評価できるものと考えられた。

ヒト血清アルブミン (HSA)には70以上の遺伝子変異が報告されているが、今回観察された変異箇所に対応するアミノ酸変異は報告されていない。またHSAのどのアミノ酸変異も発現頻度が非常に低い。万一、変異アルブミンを有する患者に薬物が経口投与されたとしても、薬効・毒性に関与する非結合型濃度のAUCは蛋白結合の変動の影響を受けない。以上、頻度および影響度の観点から、臨床においてはアルブミンの遺伝子変異に起因する体内動態の個人差が起こる可能性は低いと考えられた。本研究に基づく考察をうけて、医薬品探索研究ではアルブミン遺伝子型以外の因子による影響の改善・最適化へと方針が修正された。このように医薬品探索の早期に変動要因を特定し、ヒトにおける変動リスクを考察し、誘導体展開を妥当な方向へ導いた申請者の研究は安全で有効な医薬品を効率よく創出するための重要な研究であると考えられた。

申請者はD01-4582に認められたラット体内動態のブリーダー差および系統差、並びにイヌ体内動態の個体差が、アルブミンの遺伝子変異による結合親和性の変化によるものであることを明らかにした。実験動物における体内動態の変動要因を早期に解明し、臨床におけるリスクの考察に基づきその後の医薬品探索の方針を決定した本研究は個別化医療への入り口となりうる研究であることから、申請者の得た研究意義は非常に大きく、申請者の研究は安全で有効な医薬品の創製のために重要な研究と位置づけられると考えられ、博士 (薬学)の学位を授与するに値するものと認めた。

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