No | 116499 | |
著者(漢字) | 崔鍾,聲 | |
著者(英字) | ||
著者(カナ) | チェ,ジョンソン | |
標題(和) | カーレマン評価による空間的な周期境界条件付きの放物型方程式に対する逆問題 | |
標題(洋) | Inverse problem for a parabolic equation with space-periodic boundary conditions by Carleman estimate | |
報告番号 | 116499 | |
報告番号 | 甲16499 | |
学位授与日 | 2001.03.29 | |
学位種別 | 課程博士 | |
学位種類 | 博士(数理科学) | |
学位記番号 | 博数理第170号 | |
研究科 | 数理科学研究科 | |
専攻 | ||
論文審査委員 | ||
内容要旨 | 本論文では、空間的に周期境界条件付き放物型微分方程式において係数及び初期値を決定するという逆問題を考察した。つまり、領域Ω=Πj=1n(0,Li) ,ただしL>0,1〓j〓n、において, を考える。ここで、j=1,…,nに対してΓjoとΓj1はそれぞれ である。係数p=p(x)と初期値μ=μ(x)に対する許容集合を次のように定義する。 ここで、C1+x(Ω)とC3+x(Ω)はHolder空間を表わし、Mとr0は定数である。(p,μ)∈P×Aのとき、(*)の解をu(p,μ)=u(p,μ)(t,x)と書く。θは(0,T)の中で固定されているとする。 我々の逆問題は観測データu(p,μ)|(o,T)xωとu(p,μ)(θ,x),x∈Ωよりpとμを決定する問題である。本論文の目的はこのような逆問題に対して条件付き安定性を与えることにある。 2節では、半群理論を用いて順問題(*)が適切であることを示す。 3節では、FrusikovとImanuvilovの方法に沿って、空間的に周期条件を持つ関数に対するCarleman評価を与える。 4節の主要結果の証明の核心は、BukhgeimとKlibanovによる方法と3節で得られたCarleman評価の結合である。 本論文の主要結果は次である。 ωはΓji(i=0,1,j=1,…,n)の境界を含む固定された部分領域であり、θ∈(0,T)も固定されていると仮定する。そのとき、以下を満たす定数C=C(M,Ω,T,θ,ω>0が存在する:もしp,q∈Pとμ,v∈Aならば、 かつ、 が成り立つ。 | |
審査要旨 | 本論文では、周期境界条件付き放物型微分方程式において係数及び初期値を決定するという逆問題を考察した。つまり、区間の直積(0,Lj),j=1,...,nで表現される領域Ωにおいて、空間変数に依存する熱拡散項をもつ熱方程式の初期値・周期境界値問題を考えた: を考える。ここで、j=1,…,nに対してΓj0とΓj1はそれぞれ である。 係数p(x)ならびに初期値μ(x)が与えられた場合に上を満たす解u(t,x)を求める問題は順問題とよばれ、伝統的に研究され尽くされ、解の存在や一意性や時間が十分経過したときの漸近挙動などに関して多くの結果が知られている。その一方で係数や初期値が未知のときに、それらを解に関する過剰決定的なデータで決定しようとする問題は逆問題とよばれ、媒体内部の物理定数の同定や過去の温度分布の決定に関わる問題として、数理工学上から重要な問題である。 論文提出者のJongsung Choiは、本論文において、次のような逆問題を考察した。すなわち、ωを領域Ωに含まれる部分領域で測度はいくらでも小さくできるが後述するようなある条件を満たすものとする。θを0とTの間の時刻として勝手に固定する。そのとき観測データu(p,μ)|(0,T)xωとu(p,μ)(θ,x),x∈Ωよりpとμを決定するという逆問題である。本論文においてこのような逆問題に対して数学解析を行い、主要結果として条件付き安定性を与えた。 主要結果を述べるために係数p=p(x)と初期値μ=μ(x)に対する許容集合を次のように定義した。 ここで、C1+x(Ω)とC3+x(Ω)はHolder空間を表わし、Mとroは任意に固定した定数である。(p,μ)∈P×Aのとき、初期値・境界値問題の解をu(p,μ)=up,μ(p,μ)(t,x)と書く。 このとき、本論文の主要結果として以下を証明した。 ωはΓji(i=0,1,j=1,…,n)の境界を含む固定された部分領域であり、θ∈(0,T)も固定されていると仮定する。そのとき、以下を満たす定数C=C(M,Ω,T,θ,ω>0が存在する:もしp,q∈Pおよびμ,v∈Aならば、 考察した逆間題は前述したように数理的に意義のあるものであり、さらに証明に要する手法は空間的に周期条件を持つ関数に対するCarleman評価に基づく方法であり、一意接続性などとも関連しそれ自体興味あるものである。よって、論文提出者Jongsung Choiは、博士(数理科学)の学位を受けるにふさわしい充分な資格があると認める。 | |
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