No | 118430 | |
著者(漢字) | ギブソン,ウィリアム | |
著者(英字) | Gibson,William | |
著者(カナ) | ギブソン,ウィリアム | |
標題(和) | 横断的結び目理論について | |
標題(洋) | On transversal knot theory | |
報告番号 | 118430 | |
報告番号 | 甲18430 | |
学位授与日 | 2003.03.28 | |
学位種別 | 課程博士 | |
学位種類 | 博士(数理科学) | |
学位記番号 | 博数第230号 | |
研究科 | 数理科学研究科 | |
専攻 | 数理科学専攻 | |
論文審査委員 | ||
内容要旨 | 本論文の主題は、平面曲線を用い、横断的結び目理論の研究を行うことである。修士論文では、divide理論において扱われた3次元球面の単位円盤モデルを用い、結び目理論と同値な平面曲線理論を構成した。本論文ではまず最初に、2種類の2重点を持つ平面曲線による結び目理論の平面曲線モデルを導入する。次に3次元球面内の標準的接触構造に横断的な結び目理論と同値な平面曲線理論を、先ほど平面曲線モデルの一部として新たに構成する。また、その過程において、このモデル内の全ての平面曲線に対し、そのBennequin数を計算するための組み合わせ的な手法を構成する。 CoutureとPerronはdivideからその結び目の閉ブレイド表示を得るアルゴリズムを確立した。Divide理論は、ここで扱う横断的平面曲線理論の特別な場合であり、この論文では、彼等のアルゴリズムを平面曲線ブレイド表示を用いて再構成し、それが結び目の横断性を保っていることを証明する。証明において用いている手法は、divide全てを含む、より大きな平面曲線のクラスにも適用できる。また同様のアイデアを用い、横断的結び目理論におけるAlexanderの定理を証明することもできる。 最近、BirmanとMenascoは3-ブレイドのある特別なクラスが横断的単純(transversally simple)ではないことを証明した。これは結び目の横断的同型類を決定するためには、結び目の同型類とBennequin数だけでは不足であることを意味する。ちなみにiterated torusknotは横断的単純であることが知られている。ここでは、平面曲線のある対称性に注目することにより、結び目が横断的単純であるために必要な条件を示す。 Bennequin数(特に最大Bennequin数)は、Euler類のような、結び目のトポロジカルな性質により特徴づけられる。本論文の後半では、まず、結び目Kの最小ブレイド指数nがKとその鏡像〓の最大Bennequin数の平均に-1をかけたものに等しくなるという性質(つまり、〓が多くの結び目対し成立することを示し、さらにこの等式がどこまで拡張できるかを考察する。次に、等式〓が成り立つ場合はKのHOMFLY多項式が自明であることを示す。特に、もし〓の両方が成立する結び目が存在するならば、HOMFLY多項式は結び目の自明性を判定できないことになる。 よく知られているように、Bennequin数は結び目解消数(gordian数)とも密接に関係している。ここではdivideやfree divideの自然な拡張としてtree divideを導入し、reducibleなtree divideについて、その結び目の解消数がtree divideの2重点の数に等しいことをBennequin数を使って証明する。 | |
審査要旨 | 本論文では,3次元球面の標準的な接触構造に対して横断的な結び目(transversal knot)について,平面曲線モデルを構成し,いくつかの幾何学的応用を得た.結び目の平面曲線モデルは,A'Campoによるdivideの理論に由来し,実数上定義された代数曲線の変形から,複素化された特異点の切り口としてあらわれる結び目を構成する方法として導入された.Gibsonは,divide理論を一般の結び目に拡張し,結び目の同値類が平面曲線モデルにおけるいくつかのmoveによって完全に記述されることを示した.特に,横断的結び目の接触構造に対する横断性を保つイソトピーによる同値関係を平面曲線モデルによって表現した. CoutureとPerronはdivideから結び目の組みひも表示を得るアルゴリズムが確立したが,本論文では,これを平面曲線組みひも表示を用いて再構成し,結び目の横断性を保っていることを証明した.また,同様の手法を用いて,横断的結び目理論におけるAlexanderの定理を証明した. 最近,BirmanとMenascoによって横断的単純ではないような3-braidのクラスが発見された.ここで,横断的単純とは,横断的同値類が,結び目の同値類とBennequin数のみで決定されることを意味する.横断的単純な結び目は,自明な結び目,iterated torus knotがその例として知られているのみである.Gibsonは,平面曲線のある対称性に注目することにより,結び目が横断的単純であるための必要条件を与えた. さらに,結び目の組みひも指数,結び目解消数といった重要な幾何学的不変量について次のような結果を得た.結び目Kとその鏡像〓に対して,それぞれのBennequin数の最大数をβ(K),〓と書くと,Kの組みひも指数n(K)について,不等式〓が成立する.これは,今までに知られているMorton,Franks,Williamsの不等式よりも精密な情報を与える場合がある.また,divideの概念をtree divideと呼ばれるものに拡張し,対応する結び目の結び目解消数がdivideの2重点の数に等しいことをBennequin数を使って証明した. 本論文で得られた結果は、独創的で深い内容を含んでおり,幾何学の分野に大きく貢献するものである。よって、論文提出者William Gibsonは、博士(数理科学)の学位を受けるにふさわしい充分な資格があると認める。 | |
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